悪役令嬢は退散したいのに…まずい方向に進んでいます

Karamimi

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第33話:どういう事でしょうか

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私の前まで来ると、私と視線を合わせるようにその場にしゃがみ込んだ殿下。無意識に瞳から涙が溢れ出す。

「デイジー、君は一体何を言っているのだい?言っている意味があまりよく分からないが、ただ1つわかる事は、君が僕を捨ててこの国を出ようとしているという事だ。悪いが君をこの国から逃がすつもりはない。もちろん、君の命を奪うつもりもね」

そう言うと、私の頬から流れる涙を、ペロリと舐めたのだ。えっ?今私の頬を舐めた?一体どういうことなの?

それに今、私の命を奪うつもりはないと言った?という事は…

「殿下は、私とお父様を処刑するつもりでいるのではないのですか?」

「処刑?一体どんな罪で、君と公爵を処刑するのだい?そんな物騒な事を、君は心配していたのかい?僕はただ、君が欲しいだけなんだけれどな」

私が欲しい?この人は一体、何を言っているのだろう。

「クラウディオ殿下は、ルイーダ様を心から愛しているのではないのですか?私がいる以上、ルイーダ様と結婚する事は出来ません。ですので、私とお父様を亡き者に…」

「ルイーダ嬢?ああ、サメロ子爵令嬢の事か。何をどうしたら、僕とサメロ子爵令嬢が愛し合っていると思う要素があるのだい?もしかして、君がデイジーに嘘を吹き込んだのか?」

近くで様子を伺っていたルイーダ様に向かって、低い声で問いかけるクラウディオ殿下。

「め…滅相もございません。私はデイジー様とお話しした事も、ほとんどございませんわ」

「それならどうしてデイジーが、そんな誤解をしているのだ!おかしいだろう!貴様、まさかデイジーを亡き者して、次期王妃の座を狙っていたのか?なんて恐ろしい女だ!すぐにこの女を捕まえろ!サメロ子爵家も、すぐに家宅捜索をするのだ!」

クラウディオ殿下の言葉で、護衛騎士たちが一斉にルイーダ様を捕まえた。

えっ?何?どういう事?

「私は本当に何も知りません。本当です、信じて下さい」

美しい緑色の瞳から涙を流し、青ざめた表情をしたルイーダ様が必死に叫んでいる。待って、どうしてルイーダ様が捕まるの?これはマズイわ。

「お待ちください、殿下。確かにルイーダ様のおっしゃった通り、私たちはお話ししたことはほとんどございません。ですから、どうかルイーダ様を放してあげて下さい」

「それならどうして僕と彼女が愛し合っているだなんて、バカげた勘違いをしたのだい?」

「それは…その…そう、入学式の日に、殿下とルイーダ様が仲睦まじくしていたので。それに以前校舎奥の丘に訪れた時、殿下とルイーダ様がいらしたので。それで…」

さすがにこの世界は、私が前世に読んでいた漫画の世界で、2人はヒーローとヒロインだなんて言えない。

「確かに入学式の日、僕は彼女を助けたこともあったかもしれない。ただ、入学式の日も丘に向かった日も、デイジーを追って向かっただけだよ。それに僕は、サメロ子爵令嬢と話をしたのは、入学式だけだ」

「デイジー様、私は本当に殿下とお話しさせていただいたのは、入学式の時だけです。丘の上には確かによく行っておりましたが、あの場所は人が来ず静かに本が読めるため、好んで行っていただけです。確かに一度デイジー様と殿下が丘にいらした事がありましたが、私は2人の邪魔をしてはいけないと思い、その日は引き返しましたし」

そんな…
一体どうなっているの?2人が愛し合っていないだなんて。2人が結ばれないだなんて、根底から覆される事態だわ。

「それでは、私の勘違い?」

そんな…この数ヶ月、命の危機を感じ、毎日眠れぬ夜を過ごしていた私の日々は、一体何だったのだろう…

「デイジー様、もしかしてここ数ヶ月、ずっと元気がなかったのは、殿下とルイーダ様の仲を疑い、さらに自分が殿下に処刑されるという、その…なんと申しますか、あり得ない妄想を信じ切っていたからですか?」

ポツリと呟いたのは、ミーナ様だ。あり得ない妄想だなんて…まあ、漫画の世界を知らない人から見たら、あり得ない妄想と思うのも無理はないが。

私は本当にこの数ヶ月、生きた心地がしなかったくらい、悩んでいたのに…

「はい、信じておりましたわ…どうやら間違っていた様ですが…」

ポツリと呟いた。

「デイジー様、前にも申しましたが、殿下のデイジー様への愛情は誰がどう見ても深いものでしたわ。それなのに、どうして…」

ミーナ様が私を残念な者を見る目で見つめている。確かにはたから見たら、私にやたら絡んできたり、お父様を脅してまで婚約者候補を辞退しない様に訴えたりと、私に好意を持っているのではという疑惑を持ってもおかしくない。

でも、私には前世の記憶があるのだ。漫画の世界では、2人は本当に愛し合っていた。だからこそ、まさか悪役令嬢の私を、殿下が好きになるだなんて!という先入観が私の頭にあったのだ。

「デイジー、僕の愛情が足りなかったのだね。辛い思いをさせてしまってすまなかった」

がっくり肩を落とす私を抱きかかえたのは、クラウディオ殿下だ。
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