悪役令嬢は退散したいのに…まずい方向に進んでいます

Karamimi

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第31話:お父様、逃げましょう

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ジャック様がこの国を出てから、早1ヶ月。私は相当追い詰められていた。そろそろ私の断罪が行われてもおかしくはない期間に入ってきたからだ。

そう、私は何月何日に断罪されるか、詳しい日付を知らないのだ。漫画ではそこまで詳しく書かれていなかったからだ。私の感覚では、後1ヶ月ちょっとは猶予がある気がするが…でも、色々とひずみが出ている為、早まる可能性も十分考えられる。

とにかく一刻も早く、お父様と一緒に国を出ないといけない。それが私たちが生き残る唯一の方法だから。

ただ…
最近のお父様はなんだかかなり忙しい様で、ろくに話が出来ていないのだ。早く話しをしないと!そんな思いで、毎日ヤキモキしながら過ごしている。

今日も帰りが遅い様で、夕食も1人で食べた。寝る時間になっても帰ってこない。もう、お父様ったら何をしているのかしら?これ以上は待てないわ。

そんな思いから、今日はお父様が帰ってくるまで待つ事にした。

すると…
夜中に帰って来たお父様。かなり疲れているのか、少しやつれてしまっている。

「おかえりなさいませ、お父様」

「デイジー、こんな時間まで起きていたのか?さあ、もう寝なさい。明日も学院があるのだろう?」

「お父様、大事な話があります。少しだけ私にお時間をくださいませんか?」

「わかったよ。それじゃあ、居間で話をしよう。着替えてくるから待っていなさい」

急いで着替えに行くお父様を見送り、居間へと向かう。しばらくすると、お父様がやって来た。

「デイジー、そんなに真剣な表情をして、どうしたんだい?最近随分と悩んでいる様だけれど」

「お父様、1つお伺いしたいのですが、私が婚約者候補から外れられなかったのは、殿下に頼まれた…いいえ、脅されたからですよね。かつて薬物を密輸したことを、脅迫の材料にされたのではないのですか?」

「デイジー…どうしてそれを…まさか、殿下に聞いたのかい?」

やっぱり…お父様は薬物の密輸をしていたのね。

「どうして…薬物の密輸なんかに手を出したのですか?正直私は、お父様がそんな事をするような人には見えなくて…」

漫画でもお父様は、最後に後悔して涙を流していた。それに何より、近くでずっと見て来た私には、お父様が悪い事をする人には見えないのだ。

「デイジーの母親、シャリーの為だ。当時シャリーは不治の病に侵されていてね。そんな中、この国では許可されていない薬が病に効くかもしれないという話を聞いて。既に命の灯が消えかけていたシャリーを助けたくて。私は良くないと思いながら、密売人から薬を輸入してしまった。でも、結局シャリーは助からなかったが」

そう言って悲しそうに呟くお父様。
何と!お母様を助けるための薬だったなんて!やっぱりお父様は、心優しい人だったのだわ。

「そうだったのですね。それにしても、お母様を助けるために密輸した事を、脅しの材料に使うだなんて!」

クラウディオ殿下が手段を択ばない事は知っている。でも、さすがにこれはあんまりだわ!愛する妻を助けようとしたお父様の気持ちを、断罪の材料に使おうとするだなんて!

「お父様は悪くありません。それにしても、恐ろしい男…お父様、クラウディオ殿下は、過去のお父様の密輸を理由に、私とお父様を断罪しようとしています。ですから、今すぐに他国に亡命しましょう。既によさそうな国は調べてあります。シャルシア国が良いかと」

シャルシア国はここら辺では珍しく、民主主義の国家で、比較的治安もいい。他国からの民も温かく迎えてくれる、まさに私たちが亡命するにはもってこいの国なのだ。

「デイジー、君は何を言っているのだい?殿下は私達の命など狙っていない。むしろ殿下が狙っているのは…」

「お父様、大丈夫ですわ。ある程度のお金を持って行けば、それなりの暮らしも出来ますし。メイドを雇う事も出来るでしょう。とにかく、一度シャルシア王国に逃げましょう。もう時間がありません。私はそんな理不尽な理由で断罪されたくはありませんし、死にたくもありません。何より、お父様にも生きて欲しいのです!」

あまりの私の気迫に、お父様も固まっている。

「えっと…デイジーの気持ちは分かったよ。ただ、亡命するにしても時間がいる。一度シャルシア王国を見てみないといけないし…何より今の殿下なら、私たちを地の果てまで探しに来るだろう。とにかく、少し落ち着きなさい。それから、他国に亡命したいだなんて、絶対に誰にも言ってはいけないよ。分かったね」

「そんな悠長な事を言っていたら、殺されてしまいます」

「デイジーの気持ちはわかったよ。ただ、今日はもう遅い。とにかく明日また話をしよう。さあ、今日はもう休みなさい」

「分かりましたわ…明日、絶対に亡命の話を進めて下さい。もう時間がないのです。お願いします」

「ああ、わかったよ。とにかく寝なさい」

そう言うと、私を居間から追い出したお父様。もう、時間がないというのに。ただ、明日お父様が話を聞いてくれると言っていた。

お父様は非常に動きが早い。もしかしたら明日、動いてくれるかもしれない。とにかく私は、いつでも国を出られる様に準備だけは進めておかないと!
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