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第29話:ジャック様が…
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クラウディオ殿下とルイーダ様の密会を邪魔してしまってから、3ヶ月が過ぎた。私の断罪まで、後3ヶ月あるかないかのところまで迫っている。この3ヶ月、正直不安でたまらない日々を過ごした。
どうすれば私とお父様は生き残る事が出来るのだろうか…その事ばかり考えているのだ。
きっとクラウディオ殿下は、私とお父様を潰しに来るだろう。さすがにお父様が、薬物の密輸に関わっているとなると、断罪は逃れられない。その為、私は他国に亡命する事を本気で考えている。
ただきっと、あの腹黒王太子は、私の事も厳重に監視しているだろう。そうなると、あまり目立った動きは出来ない。
正直亡命先を実際にこの目で見て、ある程度財産を持ったまま亡命したいのだが、きっとそれを許さないだろう。クラウディオ殿下は、本当に手段を択ばない、冷酷な男なのだ。
こうなったらお父様に相談するしかないわね。でも、どうやって話をしようかしら?
考えれば考えるほど、頭が痛くなってきた。
「お嬢様、また灯りも付けずに暗いお部屋で過ごして…ご夕食のお時間です」
灯りを付ける事も忘れ、1人で考え事をしていると、ジェシカが呼びに来てくれた。
「わかったわ、ありがとう」
最近私の食欲があまりない事を、お父様がとても心配しているのだ。とにかくお父様をあまり心配させたくはない。急いで食堂に向かう。
「お父様、お待たせしてごめんなさい。さあ、食べましょう」
「デイジー、また痩せてしまったのではないのかい?やっぱり、クラウディオ殿下の婚約者候補を辞退できなかった事が、ショックでやつれてしまったのかい?」
心配そうに私に駆け寄ってくるお父様。
「心配をかけてごめんなさい。ちょっと色々と考え事をしていて。別に殿下の婚約者候補を辞退できない事がショックとかいう訳ではないので、心配しないで下さい。今日の夕食も美味しそうですわ。早速頂きましょう」
正直食欲はないが、笑顔で食べ物を口に放り込む。
「デイジー、レクシティーオ公爵家のジャック殿なのだが、急遽クラビア王国の第一王女の元に婿に行く事が決まったんだよ」
「えっ…ジャック様が?急にどうして…」
「クラビア王国とは古くから交流がある事は知っているね。クラビア王国は第一子が王位を継ぐことが決まっている。それで、先日16歳になられたルシータ王女の婿探しが始まった様でね。…どうやらクラウディオ殿下が、ジャック殿を強く推した様で。ジャック殿は公爵家の三男で非常に優秀だからね。相手方もジャック殿を元々気に入っていた様で。急遽ジャック殿がクラビア王国に婿養子に行く事が決まったんだよ」
「そう…ジャック様がクラビア王国の王女様と…」
漫画ではジャック様は、エンディングまでクラウディオ殿下を傍で支え続けていた。それなのに、どうして急に…
ただ1つ言える事は、もうジャック様と私が結ばれることはない。その現実が、胸に突き刺さる。分かっている、今は傷心に浸っている場合ではない。生き延びる事を考えないといけないのに。分かっているが、どうしようもないほど胸が苦しいのだ。
「デイジー、すまない。私のせいで…デイジーがジャック殿に一目置いている事は何となく分かっていた。だから私も、ジャック殿にこの家を継いでもらえたらと考えていたんだ。全て私の責任だ。許してくれ…」
「どうしてお父様が謝るのですか?ジャック様は、隣国の女王の配偶者になれるのでしょう。それにルシータ王女は、聡明で心優しく、とても美しい女性と聞いております。ジャック様にとって、この上ない幸せな事でしょう」
そうだ、いつ断罪されるか分からない私なんかと婚約させられるより、隣国の王女様と結婚した方が、絶対にジャック様は幸せになれる。私も一度だけルシータ王女を見た事があるが、とても美しくて笑顔が素敵な女性だった。
彼女ならきっと、ジャック様を幸せにしてくれるだろう。
わかっている、頭では分かっているが、心が付いて行かないのだ。でも、お父様をこれ以上心配させる訳にはいかない。極力笑顔で食事を済ませ、自室に戻ってきた。
自室に戻ると、今まで抑えていた感情が一気にあふれ出し、涙が次から次へと溢れてくる。
やっぱり私は、悪役令嬢のデイジーなんだ。いくらもがいても、私の運命は変えられないのだろう。それでも私は、幸せになりたかった。
クラウディオ殿下とルイーダ様を遠巻きで見守りながら、私は公爵家を継ぎ、ジャック様と結婚する。そんな理想をずっと夢見て来た。でも現実は…
結局私は、どうあがいても悪役令嬢として生きるしかないのかもしれない。
その日はとにかく泣き続けた。
そして翌日、ジャック様がルシータ王女に婿に行くという話でもちきりだった。どうやらすぐにでもクラビア王国に来て欲しいという事で、学院は今日が最後だそうだ。
皆がジャック様に挨拶をしている。私もそっとジャック様に近づいた。
「ジャック様、この度はルシータ殿下とのご婚約、おめでとうございます。どうかお幸せに」
本当はもっと伝えたい気持ちが沢山あった。でも、ジャック様の顔を見たら、涙が込みあげてきたのだ。
「ありがとう、デイジー嬢。実は私は、デイジー嬢と結婚して公爵家を継ぐのではと…心のどこかで期待していた。でも、それは叶わなかった。デイジー嬢、クラウディオは…いいや、何でもない。デイジー嬢も元気で」
そう言うと、ジャック様が少し寂しそうに笑った。あぁ、ジャック様も私との結婚を考えてくれていたのね。その言葉が聞けただけでも、私は幸せだわ。
それに何より、私はもうすぐ断罪される。万が一ジャック様と婚約をしていたら、ジャック様も無傷ではいられなかっただろう。そう考えると、これでよかったのかもしれない。
さようなら、ジャック様。
前世から大好きだったジャック様、必ず幸せになってくださいね。そっと心の中で願ったのだった。
次回、クラウディオ視点です。
よろしくお願いします。
どうすれば私とお父様は生き残る事が出来るのだろうか…その事ばかり考えているのだ。
きっとクラウディオ殿下は、私とお父様を潰しに来るだろう。さすがにお父様が、薬物の密輸に関わっているとなると、断罪は逃れられない。その為、私は他国に亡命する事を本気で考えている。
ただきっと、あの腹黒王太子は、私の事も厳重に監視しているだろう。そうなると、あまり目立った動きは出来ない。
正直亡命先を実際にこの目で見て、ある程度財産を持ったまま亡命したいのだが、きっとそれを許さないだろう。クラウディオ殿下は、本当に手段を択ばない、冷酷な男なのだ。
こうなったらお父様に相談するしかないわね。でも、どうやって話をしようかしら?
考えれば考えるほど、頭が痛くなってきた。
「お嬢様、また灯りも付けずに暗いお部屋で過ごして…ご夕食のお時間です」
灯りを付ける事も忘れ、1人で考え事をしていると、ジェシカが呼びに来てくれた。
「わかったわ、ありがとう」
最近私の食欲があまりない事を、お父様がとても心配しているのだ。とにかくお父様をあまり心配させたくはない。急いで食堂に向かう。
「お父様、お待たせしてごめんなさい。さあ、食べましょう」
「デイジー、また痩せてしまったのではないのかい?やっぱり、クラウディオ殿下の婚約者候補を辞退できなかった事が、ショックでやつれてしまったのかい?」
心配そうに私に駆け寄ってくるお父様。
「心配をかけてごめんなさい。ちょっと色々と考え事をしていて。別に殿下の婚約者候補を辞退できない事がショックとかいう訳ではないので、心配しないで下さい。今日の夕食も美味しそうですわ。早速頂きましょう」
正直食欲はないが、笑顔で食べ物を口に放り込む。
「デイジー、レクシティーオ公爵家のジャック殿なのだが、急遽クラビア王国の第一王女の元に婿に行く事が決まったんだよ」
「えっ…ジャック様が?急にどうして…」
「クラビア王国とは古くから交流がある事は知っているね。クラビア王国は第一子が王位を継ぐことが決まっている。それで、先日16歳になられたルシータ王女の婿探しが始まった様でね。…どうやらクラウディオ殿下が、ジャック殿を強く推した様で。ジャック殿は公爵家の三男で非常に優秀だからね。相手方もジャック殿を元々気に入っていた様で。急遽ジャック殿がクラビア王国に婿養子に行く事が決まったんだよ」
「そう…ジャック様がクラビア王国の王女様と…」
漫画ではジャック様は、エンディングまでクラウディオ殿下を傍で支え続けていた。それなのに、どうして急に…
ただ1つ言える事は、もうジャック様と私が結ばれることはない。その現実が、胸に突き刺さる。分かっている、今は傷心に浸っている場合ではない。生き延びる事を考えないといけないのに。分かっているが、どうしようもないほど胸が苦しいのだ。
「デイジー、すまない。私のせいで…デイジーがジャック殿に一目置いている事は何となく分かっていた。だから私も、ジャック殿にこの家を継いでもらえたらと考えていたんだ。全て私の責任だ。許してくれ…」
「どうしてお父様が謝るのですか?ジャック様は、隣国の女王の配偶者になれるのでしょう。それにルシータ王女は、聡明で心優しく、とても美しい女性と聞いております。ジャック様にとって、この上ない幸せな事でしょう」
そうだ、いつ断罪されるか分からない私なんかと婚約させられるより、隣国の王女様と結婚した方が、絶対にジャック様は幸せになれる。私も一度だけルシータ王女を見た事があるが、とても美しくて笑顔が素敵な女性だった。
彼女ならきっと、ジャック様を幸せにしてくれるだろう。
わかっている、頭では分かっているが、心が付いて行かないのだ。でも、お父様をこれ以上心配させる訳にはいかない。極力笑顔で食事を済ませ、自室に戻ってきた。
自室に戻ると、今まで抑えていた感情が一気にあふれ出し、涙が次から次へと溢れてくる。
やっぱり私は、悪役令嬢のデイジーなんだ。いくらもがいても、私の運命は変えられないのだろう。それでも私は、幸せになりたかった。
クラウディオ殿下とルイーダ様を遠巻きで見守りながら、私は公爵家を継ぎ、ジャック様と結婚する。そんな理想をずっと夢見て来た。でも現実は…
結局私は、どうあがいても悪役令嬢として生きるしかないのかもしれない。
その日はとにかく泣き続けた。
そして翌日、ジャック様がルシータ王女に婿に行くという話でもちきりだった。どうやらすぐにでもクラビア王国に来て欲しいという事で、学院は今日が最後だそうだ。
皆がジャック様に挨拶をしている。私もそっとジャック様に近づいた。
「ジャック様、この度はルシータ殿下とのご婚約、おめでとうございます。どうかお幸せに」
本当はもっと伝えたい気持ちが沢山あった。でも、ジャック様の顔を見たら、涙が込みあげてきたのだ。
「ありがとう、デイジー嬢。実は私は、デイジー嬢と結婚して公爵家を継ぐのではと…心のどこかで期待していた。でも、それは叶わなかった。デイジー嬢、クラウディオは…いいや、何でもない。デイジー嬢も元気で」
そう言うと、ジャック様が少し寂しそうに笑った。あぁ、ジャック様も私との結婚を考えてくれていたのね。その言葉が聞けただけでも、私は幸せだわ。
それに何より、私はもうすぐ断罪される。万が一ジャック様と婚約をしていたら、ジャック様も無傷ではいられなかっただろう。そう考えると、これでよかったのかもしれない。
さようなら、ジャック様。
前世から大好きだったジャック様、必ず幸せになってくださいね。そっと心の中で願ったのだった。
次回、クラウディオ視点です。
よろしくお願いします。
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