悪役令嬢は退散したいのに…まずい方向に進んでいます

Karamimi

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第26話:漫画の世界と同じように進んでいます

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もう一度漫画の中の話を思い出してみる。

クラウディオ殿下はどんどんルイーダ様に執着していく。それと同時に、悪役令嬢デイジーは、嫉妬心を露わにしていく事になる。

暴言はもちろんの事、階段から突き落としたり、水をかけたりやりたい放題。そしてついに、父親に頼んでこの国では使用を禁止されている毒物を手配してもらい、ルイーダ様に飲ませようとしたところをバレて、断罪される。

もちろん、薬物を取り寄せたお父様も…
お父様が断罪されるとき

“私が愚かだった。どうか…どうか娘だけでも助けてやって欲しい”

そうクラウディオ殿下に懇願するのだ。お父様は最後まで私を、デイジーを守ろうとしてくれていた。今思うと、あんなにも優しいお父様を犯罪に加担させてしまうだなんて、本当に申し訳なくて涙が出る。

頬を伝う涙をそっと拭いた。
今はそんな事を考えている場合ではない。

よく考えてみれば、お父様はどうして薬物を簡単に手配出来たのかしら?いくら公爵と言えど、他国の密売人とそう簡単に知り合える機会はないはず。それなのに、短期間でお父様は毒物を手に入れた。

思い出すのよ、デイジー。漫画の言葉を!

必死に過去の記憶を探る。何度も何度も読んだ大好きだった漫画だ。

そいうえば!

確かお父様と密売人の会話で

“もう二度と利用する事はないと思っていたが、また君のお世話になるだなんてな…”

という言葉があった。漫画を読んだときは、この男、以前にも毒を取り寄せていたのか!と思っていたけれど…

もしかして過去にお父様は、何らかの理由で毒物を手に入れたのかもしれない。でも、何の為に?

とにかく、一度調べてみよう。

それから、一番の謎がなぜ殿下は、私を婚約者候補に置いておきたいのだろう。私が婚約者候補にいれば、ルイーダ様との結婚も遠のくのに…

とにかく、2人の仲も一度調べてみないと。

翌日、いつも通り学院へと向かう。馬車から降りると、クラウディオ殿下が待っていた。

「おはよう、デイジー。君の誕生日プレゼント、遅くなってごめんね。はい、これ」

そう言って手渡してきたのは、水色の大きな宝石が付いたイヤリングだ。でもこのデザインは…

一瞬にして、体が凍り付く。確かこれは、漫画でクラウディオ殿下がデイジーの16歳の誕生日に贈ったものと同じだ。

ただし、このイヤリングは、ただのイヤリングではない。このイヤリングには居場所が特定できる機能だけでなく、音声も聞けるようになっている。そう、クラウディオ殿下は、これでデイジーの動きを逐一監視していたのだ。

もちろん、デイジーを監視する理由はただ1つ。愛するルイーダ様を守るためだ。このイヤリングを、私に贈ってくるだなんて。もしかしてクラウディオ殿下は、私がルイーダ様にとって脅威になると思っているのかしら?

どうやら私がいくら漫画とは違った動きをしても、漫画と同じように話しは進んでいるのかもしれない。となると、半年後には、私は断罪されることになる…

一気に血の気が引くのを感じた。怖い…私、死にたくない。それに、あんなにもお優しいお父様をも、私のせいで命を奪われることになるだなんて…

「どうしたんだい?デイジー、顔色が悪いよ。もしかして、僕のプレゼントが気に入らなかったかい?このイヤリングに付いている宝石は、隣国から取り寄せた最高級の宝石なんだよ。そうだ、僕が付けてあげるよ。デイジーにきっと似合うよ。」

不敵な笑み(世間から見たら普通の微笑)を浮かべながら、私に近づいてくるクラウディオ殿下。

「イヤ…来ないで下さい…どうか、どうか私に近づかないで!」

クラウディオ殿下にイヤリングを突き返し、そのまま走り出す。
どうして…どうしてクラウディオ殿下から離れられないの?怖い…怖いよ…

やっぱり私とお父様は、あの人に殺される運命なの?
気が付くと涙が溢れていた。そして、体中が震えだす。校舎裏に来ると、その場にしゃがみ込んだ。ガタガタと震え、涙が止まらない。

私がクラウディオ殿下にさえ近づかなければ、何事もなく過ごせると思っていた。でも…

イヤ…死にたくない。私は何も悪い事をしていないのに、やっぱり殺される運命なの?


「デイジー嬢?こんなところでどうしたんだい?」

この声は…

ゆっくり顔を上げると、心配そうな顔のジャック様が。

「一体どうしたんだい?泣いていたのかい?それに、震えているではないか。一体何があったのだい?」

心配そうに私に話し掛けてくるジャック様。

「何でもありませんわ。ちょっと怖い事を思い出してしまいまして…でも、もう大丈夫です」

必死に涙をぬぐい、笑顔を作る。もし漫画と同じように話しが進めば、私もお父様も犯罪者になる。犯罪者の私と仲良くしていたら、ジャック様にとっても良くないだろう。だから…

「大丈夫な訳がないでしょう。震えているではないか。それに涙だって止まっていない。とにかく、落ち着いて」

そう言って優しく背中を撫でてくれるジャック様。その温かい手が、体中に伝わる。お優しいジャック様、彼と一緒にいられたら。

でも…
それはきっと、もう叶わないだろう。私が出来る事は、彼に迷惑を掛けない様にすることだけだ。でも、今だけは、このままでいさせて欲しい。
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