25 / 43
第25話:婚約者候補を辞退できない様です
しおりを挟む
貴族学院に入学して、6ヶ月が経とうとしていた。すっかり学院生活にも慣れ、毎日楽しい日々を送っている。推しのジャック様との仲も随分深まって来た。
お父様にも、クラウディオ殿下の婚約者候補を辞退したら、ジャック様を婿にしたいという話を、それとなくしている。
正式にクラウディオ殿下の婚約者候補を辞退した後、すぐにでもレクシティーオ公爵に話しをしてくれるとの事。お父様の話では、ジャック様は今のところ婚約者などもいないので、多分断られることはないだろうと言っていた。
とにかく、一刻も早くクラウディオ殿下の婚約者候補を辞退したくて、毎日毎日、指折り日にちを数えているのだ。
ただ、なぜかクラウディオ殿下は、私によく絡んでくる。先日我が家で行われた私の誕生日パーティーでは、強引にダンスに誘われ、さらに中庭にまで連れて行かれたのだ。
あの時のクラウディオ殿下の顔が、漫画でルイーダ様に見せた顔によく似ていて、背筋が凍り付いた。どうして私に、あの様な顔をするのか理解できない。
この頃には、既にルイーダ様とクラウディオ殿下は、もうお互い好き合っているはずなのだが…
ただ、私は入学式の2人の出会いの場面しか見ておらず、正直2人が今どれくらい仲を深めているのかわからない。
確か漫画でも2人は、人目を忍んで会っていたのよね。それをあざとくデイジーが見つけて、嫌がらせをしていたのだが…
ただ、デイジーが嫌がらせをしなくても、きっと殿下に好意を抱いている令嬢たちが、しっかり嫌がらせをしてくれているだろうから、問題はないだろう。
とにかく私は、さっさと殿下の婚約者候補を辞退して、推しのジャック様と幸せになろう。それに何より、私がクラウディオ殿下の婚約者候補を辞退する事で、きっと彼とのつながりも完全に切れるはず。
そうなれば、漫画にある私とお父様が極刑に処せられることもないはずだ。そう、実は私は、いくら私が漫画とは違う動きをしたとしても、強制力の様なものが働き、結局私とお父様は殺されるのではないかという心配をしているのだ。
とにかく後1週間足らずで、婚約者候補も辞退できるのだ。辞退できる様になったら、さっさと辞退しよう。きっと殿下も私が辞退したら、もう私に気を使う必要もないので、絡んでくることもないだろう。
そう私は思っているのだ。
「お嬢様、旦那様がお呼びです」
1人部屋で今後の事を考え、ニヤニヤしていると、メイドのジェシカが私を呼びに来た。
「お父様が私を?わかったわ、すぐに行くわね」
一体何の用かしら?そう言えば今日は、クラウディオ殿下に呼び出されて王宮に行くと言っていたわね。もしかして、少し早いけれど婚約者候補辞退の件を話してきてくれたのかしら?
もう思いながらお父様のところへ向かう。
「お待たせいたしました。今日はどうされましたか?」
「デイジー…」
私の顔を見るなり、悲しそうな顔をしているお父様。一体どうしたのかしら?
「お父様、何があったのですか?どうしてその様な悲しそうな顔を?」
「すまない…クラウディオ殿下の婚約者候補を辞退する話だが…その…できなくなってしまったのだ」
何ですって?辞退できない?
「どうしてですか?確か1年経てば、辞退は可能だったはずです。それなのに、どうして?」
「本当にすまない…全て私の責任だ。申し訳ない」
お父様が涙を流しながら頭を下げる。やめて!そんな姿、見たくないわ。
「お父様、そんな顔をしないで下さい。私は大丈夫ですわ。ですから、どうか心穏やかに」
「デイジーは本当に優しい子だね。まるで君の母親、シャリーを見ている様だ」
そう言うと、泣きながら私を抱きしめるお父様。シャリー…そう、私が小さいときに亡くなったお母様の名前。漫画で一瞬だけ登場したことがあった、デイジーとは似ても似つかない、心の優しい女性だった。
しばらく私を抱きしめた後、少し落ち着いたのかお父様が私から離れた。もしかしたら、殿下に何かを言われたのかしら?
とにかく一度頭を整理したい。
「お父様、私は一度部屋に戻りますね。それから、お父様は何も悪くありませんわ。ですから、どうかご自分を責めないで下さい」
「ありがとう、デイジー」
お父様に軽く頭を下げ、自室へと戻る。普通に考えると今日殿下から、婚約者候補の辞退は認めないと言われたのだろう。でも、婚約者候補の辞退は、いくら王族に引き留められようと、候補者の権利でもある。
そもそも、辞退しようとする令嬢に圧力をかける事は、法律で禁止されているはず。
それにお父様の性格上、百歩譲ってどんなに殿下に泣きつかれたとしても、絶対におれたりしない。それなのに、どうして…
お父様にも、クラウディオ殿下の婚約者候補を辞退したら、ジャック様を婿にしたいという話を、それとなくしている。
正式にクラウディオ殿下の婚約者候補を辞退した後、すぐにでもレクシティーオ公爵に話しをしてくれるとの事。お父様の話では、ジャック様は今のところ婚約者などもいないので、多分断られることはないだろうと言っていた。
とにかく、一刻も早くクラウディオ殿下の婚約者候補を辞退したくて、毎日毎日、指折り日にちを数えているのだ。
ただ、なぜかクラウディオ殿下は、私によく絡んでくる。先日我が家で行われた私の誕生日パーティーでは、強引にダンスに誘われ、さらに中庭にまで連れて行かれたのだ。
あの時のクラウディオ殿下の顔が、漫画でルイーダ様に見せた顔によく似ていて、背筋が凍り付いた。どうして私に、あの様な顔をするのか理解できない。
この頃には、既にルイーダ様とクラウディオ殿下は、もうお互い好き合っているはずなのだが…
ただ、私は入学式の2人の出会いの場面しか見ておらず、正直2人が今どれくらい仲を深めているのかわからない。
確か漫画でも2人は、人目を忍んで会っていたのよね。それをあざとくデイジーが見つけて、嫌がらせをしていたのだが…
ただ、デイジーが嫌がらせをしなくても、きっと殿下に好意を抱いている令嬢たちが、しっかり嫌がらせをしてくれているだろうから、問題はないだろう。
とにかく私は、さっさと殿下の婚約者候補を辞退して、推しのジャック様と幸せになろう。それに何より、私がクラウディオ殿下の婚約者候補を辞退する事で、きっと彼とのつながりも完全に切れるはず。
そうなれば、漫画にある私とお父様が極刑に処せられることもないはずだ。そう、実は私は、いくら私が漫画とは違う動きをしたとしても、強制力の様なものが働き、結局私とお父様は殺されるのではないかという心配をしているのだ。
とにかく後1週間足らずで、婚約者候補も辞退できるのだ。辞退できる様になったら、さっさと辞退しよう。きっと殿下も私が辞退したら、もう私に気を使う必要もないので、絡んでくることもないだろう。
そう私は思っているのだ。
「お嬢様、旦那様がお呼びです」
1人部屋で今後の事を考え、ニヤニヤしていると、メイドのジェシカが私を呼びに来た。
「お父様が私を?わかったわ、すぐに行くわね」
一体何の用かしら?そう言えば今日は、クラウディオ殿下に呼び出されて王宮に行くと言っていたわね。もしかして、少し早いけれど婚約者候補辞退の件を話してきてくれたのかしら?
もう思いながらお父様のところへ向かう。
「お待たせいたしました。今日はどうされましたか?」
「デイジー…」
私の顔を見るなり、悲しそうな顔をしているお父様。一体どうしたのかしら?
「お父様、何があったのですか?どうしてその様な悲しそうな顔を?」
「すまない…クラウディオ殿下の婚約者候補を辞退する話だが…その…できなくなってしまったのだ」
何ですって?辞退できない?
「どうしてですか?確か1年経てば、辞退は可能だったはずです。それなのに、どうして?」
「本当にすまない…全て私の責任だ。申し訳ない」
お父様が涙を流しながら頭を下げる。やめて!そんな姿、見たくないわ。
「お父様、そんな顔をしないで下さい。私は大丈夫ですわ。ですから、どうか心穏やかに」
「デイジーは本当に優しい子だね。まるで君の母親、シャリーを見ている様だ」
そう言うと、泣きながら私を抱きしめるお父様。シャリー…そう、私が小さいときに亡くなったお母様の名前。漫画で一瞬だけ登場したことがあった、デイジーとは似ても似つかない、心の優しい女性だった。
しばらく私を抱きしめた後、少し落ち着いたのかお父様が私から離れた。もしかしたら、殿下に何かを言われたのかしら?
とにかく一度頭を整理したい。
「お父様、私は一度部屋に戻りますね。それから、お父様は何も悪くありませんわ。ですから、どうかご自分を責めないで下さい」
「ありがとう、デイジー」
お父様に軽く頭を下げ、自室へと戻る。普通に考えると今日殿下から、婚約者候補の辞退は認めないと言われたのだろう。でも、婚約者候補の辞退は、いくら王族に引き留められようと、候補者の権利でもある。
そもそも、辞退しようとする令嬢に圧力をかける事は、法律で禁止されているはず。
それにお父様の性格上、百歩譲ってどんなに殿下に泣きつかれたとしても、絶対におれたりしない。それなのに、どうして…
20
お気に入りに追加
2,718
あなたにおすすめの小説
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

執着王子の唯一最愛~私を蹴落とそうとするヒロインは王子の異常性を知らない~
犬の下僕
恋愛
公爵令嬢であり第1王子の婚約者でもあるヒロインのジャンヌは学園主催の夜会で突如、婚約者の弟である第二王子に糾弾される。「兄上との婚約を破棄してもらおう」と言われたジャンヌはどうするのか…
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

勝手にしなさいよ
棗
恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……
ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。
もう一度言おう。ヒロインがいない!!
乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。
※ざまぁ展開あり
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

皇太子殿下の御心のままに~悪役は誰なのか~
桜木弥生
恋愛
「この場にいる皆に証人となって欲しい。私、ウルグスタ皇太子、アーサー・ウルグスタは、レスガンティ公爵令嬢、ロベリア・レスガンティに婚約者の座を降りて貰おうと思う」
ウルグスタ皇国の立太子式典の最中、皇太子になったアーサーは婚約者のロベリアへの急な婚約破棄宣言?
◆本編◆
婚約破棄を回避しようとしたけれど物語の強制力に巻き込まれた公爵令嬢ロベリア。
物語の通りに進めようとして画策したヒロインエリー。
そして攻略者達の後日談の三部作です。
◆番外編◆
番外編を随時更新しています。
全てタイトルの人物が主役となっています。
ありがちな設定なので、もしかしたら同じようなお話があるかもしれません。もし似たような作品があったら大変申し訳ありません。
なろう様にも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる