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第23話:歪みだすデイジーへの想い~クラウディオ視点~

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婚約者候補の辞退を阻止する事が出来そうだと確信した僕は、少しだけ心が軽くなった。そう言えば再来週は、デイジーの16歳の誕生日だな。あの誕生日会の時に、彼女は階段から転げ落ちたのだったな。あれからもう1年か。

まさかこの1年で、彼女に対する想いがここまで変わるだなんて…今回のデイジーの誕生日パーティーは、ずっと彼女の傍にいよう。そう思っていた。

そして迎えたデイジーの誕生日パーティー。毎年ドレスと宝石を贈っていた為、今回も贈ろうと思ったのだが

“もう私はグランディオ殿下の正式な婚約者ではありませんので、ご遠慮させていただきますわ”

と、笑顔で断られてしまったのだ。それでも僕は彼女に何かを贈りたくて、僕の瞳の色の宝石を贈る事にした。

早速準備を整え、今日の会場でもあるクレスティン公爵家に向かう。僕がホールに着くと、クレスティン公爵とデイジーが笑顔で迎えてくれた。

「殿下、今日は娘の為にわざわざお越しいただき、ありがとうございます。どうぞ楽しんでいってください」

公爵の隣で、一緒に頭を下げるデイジー。

「それでは私たちはまだ挨拶がありますので、これで失礼いたします」

今日の主役でもあるデイジーを連れ、公爵が足早に去って行った。デイジーは今日の主役だものね、挨拶回りで忙しいか…仕方ない、本当はデイジーとダンスを踊りたかったが、後にしよう。

そう、僕は今日、デイジーとダンスを踊るのを楽しみにしていたのだ。実はデイジーとはまだ一度もダンスを踊った事がない。何しろ昔のデイジーは、強烈でダンスどころではなかったのだ。

デイジーの挨拶を待っていると

「殿下、こちらにいらしたのですね。私とダンスを踊って頂けますか?」

「いいえ、私と」

デイジーが婚約者候補になってから、やたらと令嬢たちにダンスを誘われるのだ。でも…なんだか踊る気になれず、毎回断っている。今回も

「申し訳ないが、遠慮しておくよ」

そう令嬢たちに伝えた。でも、そんな事で諦める令嬢たちじゃない。僕の周りをがっちりと囲い、僕に必死に話しかけてくる。昔はデイジーが目を光らせていたから、僕に令嬢たちがここまで強引に近づいてくる事はなかったな…

ふとデイジーの方を見る。あれ?デイジーがいないぞ。どこに行ったんだ?

辺りを見渡すと、僕は一瞬にして凍り付いた。そこには楽しそうにジャックと一緒に、ダンスを踊っているデイジーの姿が。お互い微笑み合い、それはそれは幸せそうに踊っていた。

その姿を見た時、体中から怒りがこみ上げてくるのを感じた。そうか…やっぱりデイジーはジャックと結婚するつもりなんだ。デイジーのあんな顔、絶対に僕には見せないのに…

デイジーはジャックに好意を抱いている、そう確信した。
でも、君は僕のものだ…誰にも渡さない。もちろん、親友のジャックにもだ!

音楽が終わりそうなタイミングで2人の元に向かう。そして

「随分と楽しそうにダンスを踊っていたね。デイジー、次は僕と踊ってくれるかい?」

極力冷静を装い、デイジーに話しかけた。

「あの…でも…」

デイジーの顔が強張る。もちろん、逃がすつもりはない。

「ジャックとも踊っていたのだから、問題ないよね。さあ、踊ろう」

強引にデイジーの手を握り、そのまま腰に手を回した。

「あの…殿下、私は…」

「ほら、音楽が流れだしたよ。一緒に踊ろう」

きっとデイジーは、僕とのダンスを断りたかったのだろう。でも…僕は絶対に、デイジーを手に入れたい。たとえ嫌われていても。

それにしても、デイジーの手は柔らかいな。それに、いい匂いもするし…あぁ、ダメだ、興奮してきた。どさくさに紛れて、デイジーを引き寄せる。このまま王宮に連れて帰って、ずっと閉じ込めておきたい。

ジャックの瞳にはもう映したくない…ジャックだけじゃない、他の令息たちの視界にも入れたくない。デイジーを見ていいのは、僕だけだ。もちろんデイジーにも、僕だけを見て欲しい。

そんな事を考えているうちに、ダンスが終わった。

「殿下、踊って下さり、ありがとうございます。では、私はこれで…」

「そう言えば今日は公爵家の中庭もライトアップしているのだよね。せっかくだから、散歩をしよう」

「あの…殿下…」

「デイジー、君は僕の婚約者候補なんだよ。僕たちはお互いを知る権利も義務もあると思うんだ。さあ、行こうか」

デイジーの手をギュッと握り、そのまま歩き出す。僕から逃げる事は許さない、そう言わんばかりに、手を強く握った。するとデイジーも観念したのか、そのまま僕についてくる。

ホールの外に出ると、人気もまばらだ。ふと空を見上げると、美しい星空が広がっていた。

「星空がとても綺麗だよ。見てごらん」

「まあ、本当に綺麗ですわ…キャアァ」

上を見上げた瞬間、デイジーが躓き転びそうになり、僕の胸にダイブしてきた。そのまま抱きしめる様に、彼女を受け止める。その瞬間、温かく柔らかい感触が体中に伝わる。無意識に強く抱きしめていた。

このままずっと、腕の中に閉じ込めたい…そんな感情が僕を支配していく。

「申し訳ございません、殿下」

急いで僕の腕から抜け出すデイジー。その瞬間、何とも言えない喪失感が僕を襲った。

「それでは私はこれで失礼いたしますわ」

「待って、デイジー…」

僕の言葉も聞かずに、足早に去って行ってしまった。クソ、また逃げられたか。
それにしてもデイジーの体、柔らかくて温かかった。やっぱり僕は、デイジーが好きだ。

いいや…好きだなんて言葉では表せない程、彼女を愛している。でも…
デイジーはどうやら他の男が好きな様だ。デイジー、他に好きな男が出来たから、僕との婚約を解消しようとしたのだね…

もしかして、あんなに我が儘に振舞っていたのも、僕と婚約破棄をするための演技だったのかもしれない。もしそうなら…

デイジー、君は僕のものだ、絶対に誰にも渡さないよ…
どんな手を使ってもね…
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