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第22話:早く手を打たないと~クラウディオ視点~

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貴族学院に入学してから、早3ヶ月。貴族学院に入学すれば、毎日デイジーに会える、それが楽しみで入学を心待ちにしていた。

ただ、すっかり魅力的な女性になったデイジーは、あっという間にクラスの人気者になってしまった。令嬢はもちろん、令息とも毎日楽しそうに話をしている。特に僕の幼馴染でもあるジャックとは仲が良く、よく2人で話をしている。

どうやらデイジーは、ジャックに興味がある様だ。ずっとデイジーを見ている僕にはわかる、ジャックにはやたら話しかけるし、あいつの話をしている時のデイジーは、本当に嬉しそうなのだ。

あんな顔、僕には絶対にしないのに…
どうしてジャックには、あんな嬉しそうな顔を…
候補とはいえ、デイジーは僕の婚約者なのに。やっぱりデイジーが婚約を白紙に戻したいと言ってきた時、何が何でも突っぱねればよかった。そうすれば、今でもデイジーは僕の婚約者だったのに…

悔やんでも仕方がない。きっとデイジーは、婚約者候補になってから1年後に、辞退してくるだろう。既にデイジーの父でもあるクレスティン公爵が、動き出している様だし。

デイジーが婿を取ろうとした時、爵位もある程度ある家の次男や三男を迎え入れたいと考えるだろう。となるとやっぱり…

隣にいるジャックを睨みつける。

「何だよ、そんな怖い顔をして」

「ジャック、君はデイジーの事をどう思っているのだい?最近デイジーと随分仲が良いじゃないか?」

「どうって、人懐っこくて可愛らしい子だなって思っているよ」

「それじゃあ、もしデイジーの家から婿に来て欲しいと言われたら、どうするつもりだい?」

「クレスティン公爵家からかい?そりゃもちろん、婿に行くよ。デイジー嬢はいい子だし、クレスティン公爵家はこの国一番の権力者だし。そう言えば、デイジー嬢がクラウディオの婚約者候補になって、もう9ヶ月経つのか。あと3ヶ月で候補を辞退できる様になるのだね」

そう言ってにっこり笑ったジャック。やっぱりジャックは、クレスティン公爵家から打診があれば、婿養子に行くつもりなのだな。まあ、当然と言えば当然だ!でも僕は!

とにかく、こんな奴に構っている暇はない。
急いで王宮に戻ると、王宮図書館へと向かう。このままいけば、デイジーは間違いなく僕との婚約者候補を辞退してくるだろう。でも僕は、デイジーと結婚したい。

それに、デイジーを他の男なんかに絶対に渡したくはないのだ。だからと言って、今のデイジーが僕に振り向いてくれることもないだろう。だからこそ、まずは婚約者候補を辞退できない状況を作ろうと考えているのだが…

もう一度法律に関する本を読み漁る。婚約者候補を辞退できない何か抜け道の様なものが書かれていないか、必死に探した。

「クソ、特にこれと言った書物は見つからないか…このままだと、3ヶ月後には婚約者候補を辞退されてしまう。何とかしないと!」

その日から僕は、必死に本を読み漁った。さらに公爵についても色々と調べさせた。公爵の弱みを握れば、それを理由に公爵と交渉できると考えたのだ。

我ながら卑怯と言われるかもしれないが、僕はどんな手を使ってでもデイジーを傍に置いておきたいのだ。たとえ嫌われていたとしても…

「クラウディオ、あなたは一体何をしているの?毎日毎日、何かに憑りつかれた様に部屋に籠って…」

デイジーが婚約者候補になって早10ヶ月半、この1ヶ月半、ほぼ部屋に籠っていた僕を心配して訪ねて来たのは母上だ。

「別に何でもありませんよ。ただ…あと少しで僕は、デイジーを失う。だから、なんとしてでも彼女を失わない方法を、今考えているのです」

「クラウディオ、あなたの気持ちもわかるわ。でも、これはルールなのよ。だから、いくら抜け道を探しても、そんなものは見つからないわ。でも…もとはと言えば私が無理やりデイジーちゃんと婚約をさせたせいね。ごめんなさい」

悲しそうに呟く母上。悪いが今は、母上に構っている余裕はない。

「謝ってもらわなくても結構です。ですから、どうか僕には構わないで下さい」

母上を追い出し、再び公爵家についての資料を読み漁る。すると…

「これは…」

ニヤリと笑う。この資料をうまく使えば、公爵を説得できるかもしれない。

「悪いけれどこの情報、もっと詳しく調べてくれるかい?」

「かしこまりました」

デイジーが婚約者候補を辞退できるようになるまで、後1ヶ月。何とかこの資料を使って、公爵に圧が掛けられそうだ。
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