悪役令嬢は退散したいのに…まずい方向に進んでいます

Karamimi

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第19話:食事に誘われました

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「デイジー、一緒に帰ろう」

先生の話が終わった後、嬉しそうに私元にやって来たのはクラウディオ殿下だ。どうして私が、殿下と帰らなければいけないのだろう。

「殿下、私は…」

「そうそう、母上がずっと君に会いたがっていてね。今日は一緒に昼食を食べようと思って、君のメイドにも伝えておいたんだよ。さあ、行こうか」

昼食を一緒に食べるですって。私はさっき、殿下にはなるべく近づかないでおこうと誓ったのに…

そんな私の気持ちを知らない殿下に手を引かれ、教室を出ようとした時だった。

「デイジー様、それに殿下も。今からクラスの都合のつく人たちと一緒に、食事に行こうと思っているのですが、いかがですか?」

令嬢が私たちに話しかけてきてくれたのだ。確かこの子は、侯爵令嬢のミーナ様だわ。穏やかな性格で、既に侯爵令息との結婚が決まっている子。

「ファクトルス侯爵令嬢、悪いが今日は…」

「ええ、是非参加させていただきますわ!私、貴族学院に入学したら、皆で街に食事に行ったり、買い物をしたりするのが夢だったのです。出来れば私と、お友達になって下さると嬉しいですわ」

ミーナ様の手を握り、そう伝えた。

「まあ、デイジー様ったら。でも、嬉しいですわ。では、早速参りましょう。殿下はどうされますか?」

「デイジーが行くなら、僕も行くよ…」

「そうですか、それでは参りましょう」

見た感じ、ジャック様も行く様だ。これは仲良くなるチャンスかもしれないわ。さらにクラウディオ殿下が行く事に気が付いた一部の令嬢たちも、急遽参加を表明していた。

「今回の会場はここですわ。それでは、現地でお会いしましょう」

美しい微笑を浮かべ、メモをくれたミーナ様は、自分の家の馬車に乗り込んでいった。

「デイジー、僕の家の馬車で一緒に行こう。さあ、こっちにおいで」

「私は自分の…」


馬車で行きますわ!と言おうと思ったのだが、そのまま王宮の馬車に乗せられてしまった。仕方がない、一応婚約者候補だし、どうせクラウディオ殿下はルイーダ様を愛するのだから、今の家は付き合ってあげよう。

そう思い、イスに座る。すると、なぜか隣座るクラウディオ殿下。

「デイジー、やっと2人きりになれたね。僕、ずっとデイジーと話がしたいと思っていたんだ。君は僕をずっと避けていただろう。でも君は、候補とはいえ僕の婚約者なんだ。どうか僕に、君と一緒にいる時間を与えて欲しい」

真っすぐ私を見つめるクラウディオ殿下。なんだか少し切なそうだ。今日ヒロインに会ったのに、どうしてそんな事を言うのかしら?もしかしてヒロインに惹かれている事に対し、私に申し訳なく思っているとか?それなら、全然気にしなくてもいいのに。そんな思いから

「殿下、私の事は気にしなくても大丈夫ですわ。どうかご自分の気持ちに正直になってください。私は、殿下のお気持ちを尊重いたしますわ」

満面の笑みでそう伝えた。すると…

「ありがとう、デイジー。君は優しいね。それじゃあお言葉に甘えて、自分の気持ちに正直に生きるよ。それからデイジー、君の今の笑顔、とても素敵だよ。やっぱりデイジーは、笑顔が良く似合うね」

「まあ、殿下ったら、お世辞がうまいのだから」

どうやら私が言った言葉で、殿下の心が軽くなった様だ。よかった。私のせいでルイーダ様と結婚できないなんて思われたら困るものね。私はとても聞き訳がいい子ですアピールをしておけば、きっと命を奪われることはないだろう。

そんな話をしているうちに、立派なホテルの前に停まった。どうやらここが、会場の様だ。

「ここの様だね。それじゃあ、行こうか」

なぜか私の手を取り、クラウディオ殿下が歩き出す。ん?なぜ私の手を握るのだろう…もしかして、私が遠回しにルイーダ様との恋を応援すると伝えたから、お礼の気持ちなのかしら?

もしかして私がまだ殿下の事を好きだと思っているとか?確かに昔の私は、異常なまでに殿下に近づく令嬢に嫉妬していたものね。殿下がまだ私を好きだと思っても仕方がないか。

「あの、殿下。私はもうあなた様の…」

「クラウディオ殿下、デイジー様、こっちですわ」

ミーナ様が私たちの方に向かって手を振ってくれている。さらに

「殿下、一緒に行きましょう」

「ちょっと、抜け駆けしないでよ。殿下は私と行くのよ」

次期王妃を狙っている令嬢たちが、一斉にクラウディオ殿下に群がる。

「ちょっと、君たち、僕はデイジーと…」

何かを叫んでいる殿下だが、令嬢の波はすさまじく、あっという間に先に行ってしまった。

「まあ、殿下は随分と人気があるのですね。さすがですわ。それではデイジー様、一緒に行きましょう」

ミーナ様がクスクスと笑いながら、私に話し掛けてくれる。

「はい、参りましょう」

2人で並んで、ホテルの中に入って行ったのだった。
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