悪役令嬢は退散したいのに…まずい方向に進んでいます

Karamimi

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第16話:貴族学院の入学式当日を迎えました

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ジャック様の家の夜会に参加してから、早3ヶ月が過ぎた。どうやら私のあまりの変わりように、貴族たちの間ではかなり話題になっている様だ。

“デイジーは今回の夜会で、話題の的になっているよ。もちろん、いい意味でな。それにデイジーが公爵家を継ぐのではという噂が一気に広まっていてね。デイジーと結婚したいと考えている令息たちが、私に近づこうと必死だよ。さすが私の可愛いデイジーだ”

そう言ってお父様が笑っていた。ただ私は、一応かたち上は、クラウディオ殿下の婚約者候補だ。ただ、貴族たちの間では、私が婚約者候補を辞退すると思われているらしい。

確かに私もいずれは婚約者候補を辞退して、ジャック様と結婚する予定だけれどね。

そして今日は、貴族学院の入学式。ちなみにこの国では、ある程度勉強は個人が家庭教師を雇って行っている為、貴族学院では主に人脈作りを目的にしているらしい。その為、入学月齢が比較的高い段階で入学するのだ。

そして、いよいよ漫画のストーリーが今日から始まるのだ。まずは今日、貴族学院で迷子になったルイーダ様を、クラウディオ殿下が助けるというイベントがある。


まあ、オープニングよね。ここで2人は出会うのだ。せっかく好きだった漫画のお話しが今日から始まるのだ。出来れば2人の出会いを見届けたいと思っている。

なんだか楽しみになって来たわ。

真新しい制服に袖を通し、鏡に映る自分を見る。

そうよ、この姿。悪役令嬢のデイジーそのものだわ。なんだかドキドキしてきた。

早速馬車に乗り込み、学院を目指す。馬車から降りると、なぜかクラウディオ殿下が待っていた。

「おはよう、デイジー。3ヶ月ぶりだね。会いたかったよ」

笑顔で私の方に向かってくる、クラウディオ殿下。

「おはようございます、殿下。それでは私はこの辺で失礼いたしますわ」

私は今から、ヒロインのルイーダ様とヒーローのクラウディオ殿下の出会いをこの目で見届けなければいけないのだ。こんなところで、殿下に構っている暇はない…て、どうしてクラウディオ殿下がこんなところにいるのよ!

確か殿下は、婚約者のデイジーや気の強い令嬢たちに会いたくなくて、中庭で1人ベンチに座っているはずなのに。

「殿下、どうしてこんなところにいらっしゃるのですか?早く中庭に向かってください!」

あなたがここにいたら、誰が迷子になったルイーダ様を助けるのよ!

「えっと…デイジーは何を言っているのだい?今日の入学式の会場はホールだろう?訳の分からない事を言っていないで、早くホールに向かおう」

スッと私の手を取り、歩き出そうとしている。ちょっと、あなたはヒーローなのよ!もう、世話が焼けるわね。

「殿下、私は少し用事がありますので、これで失礼いたします。殿下はどうか、中庭に向かってください。いいですね、絶対に向かってくださいよ!」

そう伝え、急いでその場を後にする。

「待ってくれ、デイジー」

後ろで殿下の叫び声が聞こえるが、無視して小走りで中庭へと向かう。本当に殿下は、一体何を考えているのかしら?あなたが心から愛する、ルイーダ様が中庭で困っているというのに。

確かここらへんで、殿下とルイーダ様が出会うのよね。よし、この辺に隠れておこう。

ニヤニヤしながら、近くの茂みに隠れる。まさか好きだった漫画が、現実世界で見られるだなんて。想像しただけで、ニヤニヤが止まらない。

しばらく待っていると、来た!ルイーダ様だわ。不安そうに辺りを見渡しながら歩いている。あぁ、やっぱりルイーダ様は可愛いわ。ピンク色のフワフワの髪。それに宝石の様な緑色の瞳。さすがヒロイン、ダメだ、鼻血が出そうなくらい可愛い。

そこに、やって来た。クラウディオ殿下だ!よしよし、いいぞいいぞ、ここで2人が初めて出会うのよね。

「あの…すみません、私、迷子になってしまった様で。ホールにはどう行ったらいいのでしょうか?」

目に涙を浮かべ、クラウディオ殿下に助けを求めるルイーダ様。あぁ、なんて可愛らしいの。漫画でもとても可愛かったけれど、現実で見ると破壊力抜群ね。

「君は確か…サメロ子爵家のルイーダ嬢だったね。迷子になってしまったのかい?仕方ないな…僕がホールまで案内してあげるよ。さあ、行こうか」

ん?なんだかちょっとセリフが違う様な…まあいいわ、これが2人の運命の出会いなのだ。こうやってヒロインとヒーローが並んでいる姿を、この目で見られるだなんて!

転生した時はショックで倒れそうだったけれど、転生も悪くはないわね。それにしてもルイーダ様の庇護欲をそそるか弱さ。私も見習いたいわ。あんなにもお可愛らしい令嬢を目の前にしたら、そりゃクラウディオ殿下もルイーダ様を監禁したくなるわよね。

ニヤニヤしたまま、2人の後を付ける。そして無事、ルイーダ様をホールまで連れて来た殿下。でも2人が一緒に入場してきたことで、悪役令嬢のデイジーを始め、他の令嬢が激怒するのよね。

ニヤニヤしながら辺りを見渡す…て、デイジーは私か。という事は、私がルイーダ様に文句を言わないといけないの?あのお可愛らしいルイーダ様に?そんな可哀そうな事、出来ないわ。

でも、私が文句を言わないと始まらないし…そう思っていると、別の令嬢たちがやって来たのだ。
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