10 / 43
第10話:ジャック様のお陰で疲れも吹っ飛びました
しおりを挟む
「デイジー、大丈夫かい?令嬢たちに心無い暴言を吐かれていた様だが…」
お父様が心配そうに私の顔を見つめてくる。どうやら私が令嬢たちに何か言われている事を察知したお父様が、助けてくれた様だ。
「ええ、大丈夫ですわ。ただ、少し疲れてしまった様で…」
「そうか、わかったよ。それじゃあ、何か飲み物を持って来るから、デイジーは隅の方で休んでいなさい」
「ありがとうございます、お父様」
私の為に、飲み物を持ってきてくれたお父様と一緒に、少し休憩をする事にした。すると、次から次へと、貴族たちが挨拶に来る。そのたびに私の変わりように、一同が目を丸くするのだ。最初は皆が驚く姿を見て喜んでいたのだが、あまりにも皆が驚くものだから、段々面倒になって来た。
お父様も
「確かにデイジーは少し我が儘なところがあったが、あんなに驚かなくてもいいだろう」
と、怒っていた。でも、それだけ昔の私が酷かったという事だろう。ちなみに、今まで言いがかりをつけていた令嬢たちには一応謝罪をしておいた。ただ、よく考えてみれば公爵令嬢の私と婚約している王太子殿下に絡む様な令嬢たちだ。元々気の強い令嬢ばかり。特に何とも思っていない様だ。
逆に嫌味を言われてしまった。さらに婚約者候補になった事で、自分にもチャンスがあると思い込んでいる令嬢たちから、感謝される事も…
昔の私もそうだってけれど、令嬢ってチヤホヤされて育っているせいか、異常なまでにポジティブ思考の子が多いのよね…
現に今も、クラウディオ殿下に群がっているし…ただ、なぜかクラウディオ殿下は、私のところに逃げてくるのだ。殿下、私はもう以前の様に、気が強く令嬢に文句を言える人間ではなくなったから、逃げて来ても助けてあげられませんよ。そう言いたいが、もちろん言える訳もない。それに、ジャック様とも最初に少しお話ししただけで、全く話せていないし…
せっかく憧れのジャック様に会えたのに、このまま帰るだなんて、なんだか嫌だわ。ふとジャック様の方を見ると、1人で料理を取りに行っている。クラウディオ殿下は、令嬢に捕まっている様だし。よし、今がチャンスだわ。
お父様の傍からすっと抜けると、私も何食わぬ顔をして料理を取りに行くふりをする。そして、すっとジャック様の隣をキープした。
「まあ、どれも美味しそうなお料理です事。ジャック様、公爵家のお料理は、どれがお勧めですか?」
近くにいたジャック様に、それとなく声を掛けた。
「あぁ、デイジー嬢か。君が食べ物に興味を示すなんて、やっぱり随分と変わったんだね。そうだな、このカモ肉のソテーなんて美味しいよ。我が領地では、カモが取れるんだ。それから、この果物たっぷりのタルトもお勧めだよ」
「まあ、カモ肉ですか!それは珍しいですわね。早速頂きますわ。それにタルトも」
早速美味しそうなカモ肉とタルトをお皿に乗せた。本当に美味しそうね、よだれが出そうだわ…て、私は公爵令嬢なのだから、食い意地を張ってはダメよ。つい日本人だった時の自分が出てしまうのよね。
「そんなに嬉しそうな顔で料理を盛りつけてもらえると、私も嬉しいよ。そうだ、このクリームチーズと生ハムも美味しいよ。それから、こっちのプリンは、今朝生んだ卵をふんだんに使っているんだよ」
一生懸命料理の説明をして下さるジャック様。漫画ではいつも冷静な姿しか見た事がなかったけれど、こうやって一生懸命説明してくださる姿、素敵だわ。
「ありがとうございます、早速頂きますわ。それにしても、レクシティーオ公爵家は美味しいものがたくさんあるのですね」
「クレスティン公爵家も酪農が盛んだと聞く。ワインの製造もおこなっている様だし」
「ええ、我が家の領地では、沢山の牛や馬、ヤギ、豚、鳥などを飼育しておりますわ。特に牛の飼育に力を入れておりまして、脂の乗ったとても美味しい牛肉が取れますの。そうですわ、今度我が家で夜会を開いた時、是非ご賞味ください。とても美味しいのですよ」
「なんだかデイジー嬢の口から、領地の話が聞けるなんて思わなかったよ。本当に公爵家を継ぐ気でいるのかい?」
「はい、出来れば継ぎたいと考えておりますわ。母を早くに亡くし、父は男手一つで必死に私を育てて下さいました。そんな父に、昔の私は我が儘ばかり言って…本当にどうしようもない人間だったのです。ですからこれからは、父の力になりたいと思っておりますわ。だから今、領地の勉強もしておりますし、定期的に領地にも足を運んでおりますの」
「そうなんだね。それにしても、人はそんなに変わるものなのか…て、すまない。失礼な事を言ってしまって。それじゃあ、私はこれで失礼するよ。今日は君と話が出来てよかった」
そう言うと、ほほ笑んでくれたジャック様。あのクールなジャック様が、私にほほ笑んでくれるだなんて…これは夢かしら?あぁ、なんて幸せなのかしら?
彼の微笑を見ただけで、一気に疲れなんて吹っ飛んで行ったわ。
その後私は夢見心地のまま、公爵家のお料理を堪能したのだった。
※次回、クラウディオ視点です。
お父様が心配そうに私の顔を見つめてくる。どうやら私が令嬢たちに何か言われている事を察知したお父様が、助けてくれた様だ。
「ええ、大丈夫ですわ。ただ、少し疲れてしまった様で…」
「そうか、わかったよ。それじゃあ、何か飲み物を持って来るから、デイジーは隅の方で休んでいなさい」
「ありがとうございます、お父様」
私の為に、飲み物を持ってきてくれたお父様と一緒に、少し休憩をする事にした。すると、次から次へと、貴族たちが挨拶に来る。そのたびに私の変わりように、一同が目を丸くするのだ。最初は皆が驚く姿を見て喜んでいたのだが、あまりにも皆が驚くものだから、段々面倒になって来た。
お父様も
「確かにデイジーは少し我が儘なところがあったが、あんなに驚かなくてもいいだろう」
と、怒っていた。でも、それだけ昔の私が酷かったという事だろう。ちなみに、今まで言いがかりをつけていた令嬢たちには一応謝罪をしておいた。ただ、よく考えてみれば公爵令嬢の私と婚約している王太子殿下に絡む様な令嬢たちだ。元々気の強い令嬢ばかり。特に何とも思っていない様だ。
逆に嫌味を言われてしまった。さらに婚約者候補になった事で、自分にもチャンスがあると思い込んでいる令嬢たちから、感謝される事も…
昔の私もそうだってけれど、令嬢ってチヤホヤされて育っているせいか、異常なまでにポジティブ思考の子が多いのよね…
現に今も、クラウディオ殿下に群がっているし…ただ、なぜかクラウディオ殿下は、私のところに逃げてくるのだ。殿下、私はもう以前の様に、気が強く令嬢に文句を言える人間ではなくなったから、逃げて来ても助けてあげられませんよ。そう言いたいが、もちろん言える訳もない。それに、ジャック様とも最初に少しお話ししただけで、全く話せていないし…
せっかく憧れのジャック様に会えたのに、このまま帰るだなんて、なんだか嫌だわ。ふとジャック様の方を見ると、1人で料理を取りに行っている。クラウディオ殿下は、令嬢に捕まっている様だし。よし、今がチャンスだわ。
お父様の傍からすっと抜けると、私も何食わぬ顔をして料理を取りに行くふりをする。そして、すっとジャック様の隣をキープした。
「まあ、どれも美味しそうなお料理です事。ジャック様、公爵家のお料理は、どれがお勧めですか?」
近くにいたジャック様に、それとなく声を掛けた。
「あぁ、デイジー嬢か。君が食べ物に興味を示すなんて、やっぱり随分と変わったんだね。そうだな、このカモ肉のソテーなんて美味しいよ。我が領地では、カモが取れるんだ。それから、この果物たっぷりのタルトもお勧めだよ」
「まあ、カモ肉ですか!それは珍しいですわね。早速頂きますわ。それにタルトも」
早速美味しそうなカモ肉とタルトをお皿に乗せた。本当に美味しそうね、よだれが出そうだわ…て、私は公爵令嬢なのだから、食い意地を張ってはダメよ。つい日本人だった時の自分が出てしまうのよね。
「そんなに嬉しそうな顔で料理を盛りつけてもらえると、私も嬉しいよ。そうだ、このクリームチーズと生ハムも美味しいよ。それから、こっちのプリンは、今朝生んだ卵をふんだんに使っているんだよ」
一生懸命料理の説明をして下さるジャック様。漫画ではいつも冷静な姿しか見た事がなかったけれど、こうやって一生懸命説明してくださる姿、素敵だわ。
「ありがとうございます、早速頂きますわ。それにしても、レクシティーオ公爵家は美味しいものがたくさんあるのですね」
「クレスティン公爵家も酪農が盛んだと聞く。ワインの製造もおこなっている様だし」
「ええ、我が家の領地では、沢山の牛や馬、ヤギ、豚、鳥などを飼育しておりますわ。特に牛の飼育に力を入れておりまして、脂の乗ったとても美味しい牛肉が取れますの。そうですわ、今度我が家で夜会を開いた時、是非ご賞味ください。とても美味しいのですよ」
「なんだかデイジー嬢の口から、領地の話が聞けるなんて思わなかったよ。本当に公爵家を継ぐ気でいるのかい?」
「はい、出来れば継ぎたいと考えておりますわ。母を早くに亡くし、父は男手一つで必死に私を育てて下さいました。そんな父に、昔の私は我が儘ばかり言って…本当にどうしようもない人間だったのです。ですからこれからは、父の力になりたいと思っておりますわ。だから今、領地の勉強もしておりますし、定期的に領地にも足を運んでおりますの」
「そうなんだね。それにしても、人はそんなに変わるものなのか…て、すまない。失礼な事を言ってしまって。それじゃあ、私はこれで失礼するよ。今日は君と話が出来てよかった」
そう言うと、ほほ笑んでくれたジャック様。あのクールなジャック様が、私にほほ笑んでくれるだなんて…これは夢かしら?あぁ、なんて幸せなのかしら?
彼の微笑を見ただけで、一気に疲れなんて吹っ飛んで行ったわ。
その後私は夢見心地のまま、公爵家のお料理を堪能したのだった。
※次回、クラウディオ視点です。
26
お気に入りに追加
2,718
あなたにおすすめの小説
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

執着王子の唯一最愛~私を蹴落とそうとするヒロインは王子の異常性を知らない~
犬の下僕
恋愛
公爵令嬢であり第1王子の婚約者でもあるヒロインのジャンヌは学園主催の夜会で突如、婚約者の弟である第二王子に糾弾される。「兄上との婚約を破棄してもらおう」と言われたジャンヌはどうするのか…
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

勝手にしなさいよ
棗
恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……
ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。
もう一度言おう。ヒロインがいない!!
乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。
※ざまぁ展開あり
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

皇太子殿下の御心のままに~悪役は誰なのか~
桜木弥生
恋愛
「この場にいる皆に証人となって欲しい。私、ウルグスタ皇太子、アーサー・ウルグスタは、レスガンティ公爵令嬢、ロベリア・レスガンティに婚約者の座を降りて貰おうと思う」
ウルグスタ皇国の立太子式典の最中、皇太子になったアーサーは婚約者のロベリアへの急な婚約破棄宣言?
◆本編◆
婚約破棄を回避しようとしたけれど物語の強制力に巻き込まれた公爵令嬢ロベリア。
物語の通りに進めようとして画策したヒロインエリー。
そして攻略者達の後日談の三部作です。
◆番外編◆
番外編を随時更新しています。
全てタイトルの人物が主役となっています。
ありがちな設定なので、もしかしたら同じようなお話があるかもしれません。もし似たような作品があったら大変申し訳ありません。
なろう様にも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる