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第9話:なぜ私に絡んでくるの?
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「デイジー殿は、クラウディオ…殿下の元に行かなくても良いかい?あなたは、一応婚約者候補なのでしょう」
私に声を掛けてきたのは、ジャック様だ。あぁ、ジャック様の声、初めて聞いたわ。思ったよりも、可愛らしい声をしているのね。
「私は婚約者候補とは名ばかりなので。それに、いずれ候補を辞退しようと思っておりますから」
だから、どうか私を1人の令嬢として見て下さい!と、都合の悪い事は、心の中で呟く。
「…本当にデイジー嬢は、変わったのだね。実はクラウディオから、君の事を色々と聞いていたのだけれど。でも、やはり私には信じられなくて…」
口を押え、そう呟くジャック様。あぁ、困惑した顔も素敵ね。
「ジャック様が困惑されるのも無理はありませんわ。私は傲慢で我が儘で、どうしようもない女だったので。私の様な人間が、王妃様は務まりませんわ」
「今の君なら、立派な王妃になれると思うが…」
「そうでしょうか?私はそうは思いません。それに私は…」
「ジャック!どうしてデイジーと一緒にいるんだい?デイジー、今日の夜会に参加するなら、そう言ってくれればよかったのに。そうしたら、僕がエスコートしたのに」
真っすぐこっちにやってくるクラウディオ殿下。せっかくジャック様とお話をしていたのに。この男、私に恨みでもあるのかしら?
「デイジー嬢は父上と一緒に、我が家に挨拶に来てくれたんだよ」
「ジャック様の言う通りですわ。今ちょうど、公爵家の皆様にご挨拶をしておりましたの」
「そうだったのか。それよりも、何度誘っても王宮に来てくれないから、体調でも悪いのかと心配していたんだよ。公爵に何を聞いても“娘は今熱心に勉強に取り組んでおりますので”の一点張りでね。気になって君の家を訪ねても、君は家にいないし」
「それは申し訳ございませんでした。私は今まであまり公爵令嬢としてのマナーや勉強をしてこなかったので、貴族学院に入学するまでに、ある程度貴族としての最低限の事を覚えておこうと思いまして…これからは夜会やお茶会にも、少しずつ参加して行こうと思っておりますの」
「そうだったのか。やっぱりデイジーは随分と変わったんだね。もちろん、いい方に。でも、あまり無理は良くないよ」
「ありがとうございます、殿下。殿下には随分とご迷惑をお掛けしましたので、どうかこれからは、私に構わずお好きな様に生きて下さいね。もう私たちは、婚約者ではないのですから。気を使って話しかけて下さらなくても、大丈夫ですわ」
遠回しに、もう私には構わないで下さいという気持ちを込めて、そう伝えたのだが…
「何を言っているのだい?君は僕の、婚約者候補だ。今のところ候補者は君しかいないし。それに僕は、今まで君としっかり向き合ってこなかった事を、後悔していてね。これからは、出来るだけ君との時間を、大切にしたいと思って…」
「殿下、こちらにいらしたのですね。私もお話しに参加してもよろしいでしょうか?」
「デイジー様、お久しぶりですわ。殿下とのご婚約者ではなくなったと聞き、心配していたのですよ。お可哀そうに、まさか婚約者候補に下げられてしまわれるだなんて」
「本当ですわ…婚約者から候補に下げられるという事は、実質婚約破棄をされた事と同じ事ですもの。でも、気に病むことはございませんわ。あなた様は公爵令嬢なのですから。きっと公爵様が、素敵な殿方を連れてきてくださいますわ」
あら?私が少しまともになったと聞きつけて、暴言を吐きに来るだなんて。まあ、言いたい人たちには言わせておけばいいわ。でも…
「世間では私と殿下は、もう婚約破棄をしたものという認識なのですね。でも、近い将来そうなるでしょう。私も自分のかつての愚かさを反省し、散々迷惑を掛けた父を、これからは支えて行きたいと考えておりますの。だからいずれは婿を取り、我がクレスティン公爵家を支えて行けたらと今は考えておりますわ」
そう、私は殿下とはこれ以上関わるつもりもない。せっかく皆がこう言ってくれているのだから、その気持ちに応えないと。そんな思いで、笑顔で答えてあげた。あわよくば、ジャック様が婿として来てくれたら嬉しいのだが…
「まあ、クレスティン公爵家をですか?それはよろしいですわ」
「何がよろしいですわ、なのかな?デイジーは確かに僕の婚約者候補に下がってしまったが、それは彼女がどうしても僕と婚約を白紙に戻したいというから、苦肉の策として候補者に下げただけだよ。僕も父上も母上も、僕の結婚相手はデイジーをと考えているんだ」
ゾクリとするほど美しい笑顔で、なぜか私の方を向いて呟くクラウディオ殿下。この顔…よくルイーダ様に向けられていた顔…の訳がないか。
きっと気のせいだわ。そうよ、私にこんな顔をする訳ないものね。きっと漫画でのクラウディオ殿下のイメージが強すぎて、ついあの顔に見えてしまうんだわ。そうよ、そうに違いないわ。
「デイジー、そろそろ別の方々に挨拶に行こうか」
絶妙なタイミングで、お父様が私の元へとやってきてくれた。助かったわ。
「それでは、私は失礼いたします」
皆に頭を下げて、お父様と一緒にその場を後にしたのだった。
私に声を掛けてきたのは、ジャック様だ。あぁ、ジャック様の声、初めて聞いたわ。思ったよりも、可愛らしい声をしているのね。
「私は婚約者候補とは名ばかりなので。それに、いずれ候補を辞退しようと思っておりますから」
だから、どうか私を1人の令嬢として見て下さい!と、都合の悪い事は、心の中で呟く。
「…本当にデイジー嬢は、変わったのだね。実はクラウディオから、君の事を色々と聞いていたのだけれど。でも、やはり私には信じられなくて…」
口を押え、そう呟くジャック様。あぁ、困惑した顔も素敵ね。
「ジャック様が困惑されるのも無理はありませんわ。私は傲慢で我が儘で、どうしようもない女だったので。私の様な人間が、王妃様は務まりませんわ」
「今の君なら、立派な王妃になれると思うが…」
「そうでしょうか?私はそうは思いません。それに私は…」
「ジャック!どうしてデイジーと一緒にいるんだい?デイジー、今日の夜会に参加するなら、そう言ってくれればよかったのに。そうしたら、僕がエスコートしたのに」
真っすぐこっちにやってくるクラウディオ殿下。せっかくジャック様とお話をしていたのに。この男、私に恨みでもあるのかしら?
「デイジー嬢は父上と一緒に、我が家に挨拶に来てくれたんだよ」
「ジャック様の言う通りですわ。今ちょうど、公爵家の皆様にご挨拶をしておりましたの」
「そうだったのか。それよりも、何度誘っても王宮に来てくれないから、体調でも悪いのかと心配していたんだよ。公爵に何を聞いても“娘は今熱心に勉強に取り組んでおりますので”の一点張りでね。気になって君の家を訪ねても、君は家にいないし」
「それは申し訳ございませんでした。私は今まであまり公爵令嬢としてのマナーや勉強をしてこなかったので、貴族学院に入学するまでに、ある程度貴族としての最低限の事を覚えておこうと思いまして…これからは夜会やお茶会にも、少しずつ参加して行こうと思っておりますの」
「そうだったのか。やっぱりデイジーは随分と変わったんだね。もちろん、いい方に。でも、あまり無理は良くないよ」
「ありがとうございます、殿下。殿下には随分とご迷惑をお掛けしましたので、どうかこれからは、私に構わずお好きな様に生きて下さいね。もう私たちは、婚約者ではないのですから。気を使って話しかけて下さらなくても、大丈夫ですわ」
遠回しに、もう私には構わないで下さいという気持ちを込めて、そう伝えたのだが…
「何を言っているのだい?君は僕の、婚約者候補だ。今のところ候補者は君しかいないし。それに僕は、今まで君としっかり向き合ってこなかった事を、後悔していてね。これからは、出来るだけ君との時間を、大切にしたいと思って…」
「殿下、こちらにいらしたのですね。私もお話しに参加してもよろしいでしょうか?」
「デイジー様、お久しぶりですわ。殿下とのご婚約者ではなくなったと聞き、心配していたのですよ。お可哀そうに、まさか婚約者候補に下げられてしまわれるだなんて」
「本当ですわ…婚約者から候補に下げられるという事は、実質婚約破棄をされた事と同じ事ですもの。でも、気に病むことはございませんわ。あなた様は公爵令嬢なのですから。きっと公爵様が、素敵な殿方を連れてきてくださいますわ」
あら?私が少しまともになったと聞きつけて、暴言を吐きに来るだなんて。まあ、言いたい人たちには言わせておけばいいわ。でも…
「世間では私と殿下は、もう婚約破棄をしたものという認識なのですね。でも、近い将来そうなるでしょう。私も自分のかつての愚かさを反省し、散々迷惑を掛けた父を、これからは支えて行きたいと考えておりますの。だからいずれは婿を取り、我がクレスティン公爵家を支えて行けたらと今は考えておりますわ」
そう、私は殿下とはこれ以上関わるつもりもない。せっかく皆がこう言ってくれているのだから、その気持ちに応えないと。そんな思いで、笑顔で答えてあげた。あわよくば、ジャック様が婿として来てくれたら嬉しいのだが…
「まあ、クレスティン公爵家をですか?それはよろしいですわ」
「何がよろしいですわ、なのかな?デイジーは確かに僕の婚約者候補に下がってしまったが、それは彼女がどうしても僕と婚約を白紙に戻したいというから、苦肉の策として候補者に下げただけだよ。僕も父上も母上も、僕の結婚相手はデイジーをと考えているんだ」
ゾクリとするほど美しい笑顔で、なぜか私の方を向いて呟くクラウディオ殿下。この顔…よくルイーダ様に向けられていた顔…の訳がないか。
きっと気のせいだわ。そうよ、私にこんな顔をする訳ないものね。きっと漫画でのクラウディオ殿下のイメージが強すぎて、ついあの顔に見えてしまうんだわ。そうよ、そうに違いないわ。
「デイジー、そろそろ別の方々に挨拶に行こうか」
絶妙なタイミングで、お父様が私の元へとやってきてくれた。助かったわ。
「それでは、私は失礼いたします」
皆に頭を下げて、お父様と一緒にその場を後にしたのだった。
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