悪役令嬢は退散したいのに…まずい方向に進んでいます

Karamimi

文字の大きさ
上 下
8 / 43

第8話:ジャック様とご対面です

しおりを挟む
「デイジー、公爵家に着いたよ。それじゃあ、行こうか」

「はい」

お父様の腕にそっと手を添えた。

「デイジー、まさかお父様と一緒に入場してくれるのかい?いつも私との入場を嫌がっていたのに」

「あの時は…ごめんなさい。でもこれからは、お父様と一緒に参加するときは、お父様と入場しますわ。私はもう、殿下の正式な婚約者ではなくなった事ですし…」

「なんて嬉しい事を言ってくれるんだ。私はずっと、デイジーと一緒に入場する事が夢だったんだよ。ありがとう、デイジー。それじゃあ、行こうか」

それはそれは嬉しそうに微笑むお父様と一緒に、入場していく。

「クレスティン公爵殿、デイジー嬢、ご入場です」

私たちの入場のアナウンスが流れるや否や、一斉にこちらを振り向く貴族たち。見たければ見ればいいわ。生まれ変わった私の姿をね。背筋をまっすぐと伸ばし、堂々とお父様と一緒に入場する。どうだ、私の堂々たる入場、参ったか!

「やはり皆デイジーを見ているね。大丈夫かい?」

「あら、それだけ私を皆注目してくださっている事でしょう?特に問題ありませんわ。さあ、お父様、レクシティーオ公爵家の皆様に挨拶に行きましょう」

「…ああ、そうだな。行こうか」

お父様と一緒に、レクシティーオ公爵家の皆様の元に挨拶に行く。そこには、居た!ジャック様だわ。漫画とほぼ同じ姿のジャック様が、ご両親とお兄様たちと一緒にいらっしゃったのだ。

あぁ…なんて素敵なのかしら。あの燃える様な赤い髪、騎士団で鍛えられた腹筋、やっぱりカッコいいわ…私、彼のお嫁さんになりたい…

「レクシティーオ公爵、夫人、それにご子息殿、本日はお招きいただき、ありがとうございます」

「クレスティン公爵殿、よく来てくださった。お隣にいらっしゃるのは」

「デイジー・クレスティンでございます。今回は夜会にお招きいただき、ありがとうございます」

渾身のカーテシーを決める。この3ヶ月、貴族令嬢としての最低限のマナーを再度叩き込んだのだ。どうだ、私のカーテシーは、すごいだろう!

「えっと…ご丁寧にありがとう、デイジー嬢。その…なんと言いますか…なんだか雰囲気が随分変わりましたね…昔はもっと…その…」

レクシティーオ公爵が言いにくそうにそう呟いた。ジャック様のお母様やお兄様たち、当のジャック様、さらに周りにいた貴族たちも、口を開けて固まっている。

「実はデイジーは、階段から落ちて頭を打ったせいで、人格が変わってしまった様で…それですっかり昔の面影が無くなってしまいまして…かつての行いを悔い恥じたデイジーが、陛下たちに頼んで、婚約を白紙に戻してもらう様に頼んだのですが…色々あって婚約者候補に落ち着いた次第です」

お父様がここぞとばかりに、嬉しそうにレクシティーオ公爵に経緯を話している。

「なるほど。確かに急に王族との婚約を白紙に戻すのは難しいですからね。それで一旦、婚約者候補に落ち着いたという事なのですね」

「そういう事です。ただ、デイジーは我が公爵家を継ぎたいと申しておりまして…いずれ殿下とは…おっと、これ以上いらん事は話すべきではありませんな。私はついおしゃべりなところがありまして」

お父様、その割には随分と大きな声で話されておりますが。よほど私が貴族界で悪く言われていたのが気に入らなかったのだろう。

婚約を白紙に戻したいと言ったのは、我が公爵家からという事を強調するだなんて。でも、あまりベラベラと話すのは、いかがなものかと…一応王族にも、プライドというものがあるでしょうし…

「そうだったのですね。確かに公爵家はデイジー嬢しかいらっしゃらないから、婿を取りたいと考えるのも無理はありません。どうです?家の次男か三男を養子にするのは」

冗談ぽくレクシティーオ公爵がお父様に話しをしている。まあ、公爵の方からそんな嬉しい話をして下さるだなんて。嬉しいわ。

「そうですな。まあ、デイジーもまだ15歳ですし、何よりまだ王太子殿下の婚約者候補ではありますから」

そう言って笑っているお父様。ちょっと、せっかくジャック様のお父様が、素敵な話を提案してくれたのに。お父様ったら!て、さすがにお父様に文句は言えないわよね。そうだわ、この際だから、ジャック様と仲良くなっておきましょう。

スッとお父様から離れると、ジャック様の方へと向かった。

「あの、ジャック様。もしよろしければ…」

「王太子殿下のご入場です」

私が話をしようとした瞬間、間の悪い事に、クラウディオ殿下が入場してきたのだ。そうか、クラウディオ殿下とジャック様は、幼馴染で親友だものね。親友の家のパーティーに参加するのは普通か。

そう言えば私が婚約者候補に格下げ下げたことで、他にも候補になりたい令嬢が沢山名乗り出ていると聞いた。きっと今回も、令嬢たちに囲まれるのだろう。

案の定、殿下が入場するや否や、一気に令嬢に囲まれていた。凄い人気ね。でもあなた達、いくら彼に媚を売っても、クラウディオ殿下はルイーダ様と運命的な出会いをはたすのだから、無駄よ。

何て言える訳がない。とにかく私は、これ以上彼に関わる気はないのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

執着王子の唯一最愛~私を蹴落とそうとするヒロインは王子の異常性を知らない~

犬の下僕
恋愛
公爵令嬢であり第1王子の婚約者でもあるヒロインのジャンヌは学園主催の夜会で突如、婚約者の弟である第二王子に糾弾される。「兄上との婚約を破棄してもらおう」と言われたジャンヌはどうするのか…

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

勝手にしなさいよ

恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……

ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。 もう一度言おう。ヒロインがいない!! 乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。 ※ざまぁ展開あり

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

皇太子殿下の御心のままに~悪役は誰なのか~

桜木弥生
恋愛
「この場にいる皆に証人となって欲しい。私、ウルグスタ皇太子、アーサー・ウルグスタは、レスガンティ公爵令嬢、ロベリア・レスガンティに婚約者の座を降りて貰おうと思う」 ウルグスタ皇国の立太子式典の最中、皇太子になったアーサーは婚約者のロベリアへの急な婚約破棄宣言? ◆本編◆ 婚約破棄を回避しようとしたけれど物語の強制力に巻き込まれた公爵令嬢ロベリア。 物語の通りに進めようとして画策したヒロインエリー。 そして攻略者達の後日談の三部作です。 ◆番外編◆ 番外編を随時更新しています。 全てタイトルの人物が主役となっています。 ありがちな設定なので、もしかしたら同じようなお話があるかもしれません。もし似たような作品があったら大変申し訳ありません。 なろう様にも掲載中です。

処理中です...