11 / 49
第11話:僕の大切な子、リリアーナ~アレホ視点~
しおりを挟む
「殿下、おかえりなさいませ。ずいぶん遅かったですね。それでリリアーナ様は…」
「彼女には直接会って謝罪する事は出来た。でも、僕とはもう話をしたくない様で、触れたら振り払われてしまったよ。当然と言えば当然だけれどね…」
僕はその場で頭を抱え、ソファに倒れ込む様に座った。そして今までの事を思い出す。
初めてリリアーナに会ったのは、僕たちが5歳の時だった。元々親同士が仲良しという事もあり、この日は夫人に連れられて初めてリリアーナが王宮に遊びに来たのだ。
銀色の美しい髪、透き通った真っ白な肌、大きくてクリクリした青色の瞳。まるで妖精の様な、とても可愛らしい女の子だった。僕は彼女を見た瞬間、一目で恋に落ちた。さらにリリアーナはとても人懐っこくて、僕に笑顔で色々と話しかけてくれた。
リリアーナの笑顔を見るだけで、僕の鼓動は一気に早くなり、顔が赤くなるのを感じた。ダメだ…リリアーナが可愛すぎる。僕はリリアーナのあまりの美しさに緊張してしまい、思う様に話すことが出来なかった。
それでもリリアーナは、王宮に遊びに来るたびに、嬉しそうに僕に話しかけてきてくれた。それが嬉しくてたまらなかった。もっとリリアーナの事が知りたくて、リリアーナの事をノートにまとめた。どんな些細な事でも、リリアーナの事は全て記していたのだ。
そのノートが増えていくたびに、なんだかリリアーナの事を僕が一番知っている気がして、嬉しかった。でも、やはり僕は、リリアーナの前に出ると緊張してしまい、上手く話せない。
それでも僕は、結婚するなら絶対にリリアーナがいい!リリアーナ以外の人と結婚なんて考えられない。もし万が一、リリアーナが他の令息に取られたら…そう思うと、夜も眠れない程、気が気ではなかった。
そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、何と公爵の方から、リリアーナと僕を婚約させたいと言ってくれたのだ。元々両親も、リリアーナと僕を結婚させたかった様で、その後はとんとん拍子で話が進んでいった。そして僕たちが10歳の時、正式に婚約した。
僕はこの日の事を、鮮明に覚えている。たくさんの貴族が見守る中、王宮で盛大に婚約披露パーティをしたのだ。幸せそうに微笑むリリアーナの顔を見た時、本当に幸せだった。必ず彼女を幸せにしよう、この笑顔を守ろう、そう心に決めた。
ただ…
相変わらず僕はリリアーナの前では、なぜか自分をうまく出せないのだ。ついそっけない態度を取っては、酷く後悔する日々。
このままだとリリアーナに愛想を付かされてしまう。どうしよう…
そんな日々を送っていたある日、ずっと領地で暮らしていたというガレイズ伯爵家のマルティ嬢が、初めて王宮のお茶会にやって来たのだ。
桃色の髪の彼女は、なぜか僕にベタベタくっ付いてきて、上目使いで見つめてくる。正直不快以外何物でもなかった。さらに僕に王宮の中庭を案内して欲しいと言い出したのだ。
やんわりと断りを入れたのだが、強引な彼女に無理やり腕を引っ張られ、中庭の奥へと連れて行かれた。こんなところを、万が一リリアーナに見られたら…ただでさえ僕はリリアーナの前ではうまく話せず、印象が良くない。もし他の令嬢と2人でいるところを見られたら、今度こそ愛想をつかされるかもしれない。
僕は誰よりもリリアーナを愛しているのだ!そんな事になっては大変だ。
「悪いが僕はもう戻るよ。僕には心から愛するリリアーナがいるからね」
そう伝え、来た道を引き返そうとした時だった。急にマルティ嬢が、呪文を唱え始めたのだ。これはもしかして…しまった!そう思った時には、僕はもう彼女の虜になっていた。
その日から僕は、マルティが愛おしくてたまらなくなった。それと同時に、婚約者でもあるリリアーナを酷く憎む様になった。マルティがリリアーナに酷い事をされたと聞けば、彼女に酷く抗議した。
リリアーナは泣きながら必死に
「私は何もしていません。本当です!信じて下さい」
そう訴えていたが、僕の可愛いマルティが嘘を付く訳がない。そう思い込み、リリアーナに暴言を吐き続けた。日に日にリリアーナに対する憎しみが募っていく。自分でもびっくりする程感情が抑えられず、リリアーナにつらく当たった。彼女が悲しそうな顔をすると、なぜかすっきりするのだ。
次第に彼女は、僕と目も合わさないし話しかけても来なくなった。そして、どんどんやつれていったのだ。いっその事、このままリリアーナがいなくなってくれたら…
そんな風に考える事もあった。
そう、この頃の僕は、完全にマルティの魅了魔法に掛かっていたのだ。
「彼女には直接会って謝罪する事は出来た。でも、僕とはもう話をしたくない様で、触れたら振り払われてしまったよ。当然と言えば当然だけれどね…」
僕はその場で頭を抱え、ソファに倒れ込む様に座った。そして今までの事を思い出す。
初めてリリアーナに会ったのは、僕たちが5歳の時だった。元々親同士が仲良しという事もあり、この日は夫人に連れられて初めてリリアーナが王宮に遊びに来たのだ。
銀色の美しい髪、透き通った真っ白な肌、大きくてクリクリした青色の瞳。まるで妖精の様な、とても可愛らしい女の子だった。僕は彼女を見た瞬間、一目で恋に落ちた。さらにリリアーナはとても人懐っこくて、僕に笑顔で色々と話しかけてくれた。
リリアーナの笑顔を見るだけで、僕の鼓動は一気に早くなり、顔が赤くなるのを感じた。ダメだ…リリアーナが可愛すぎる。僕はリリアーナのあまりの美しさに緊張してしまい、思う様に話すことが出来なかった。
それでもリリアーナは、王宮に遊びに来るたびに、嬉しそうに僕に話しかけてきてくれた。それが嬉しくてたまらなかった。もっとリリアーナの事が知りたくて、リリアーナの事をノートにまとめた。どんな些細な事でも、リリアーナの事は全て記していたのだ。
そのノートが増えていくたびに、なんだかリリアーナの事を僕が一番知っている気がして、嬉しかった。でも、やはり僕は、リリアーナの前に出ると緊張してしまい、上手く話せない。
それでも僕は、結婚するなら絶対にリリアーナがいい!リリアーナ以外の人と結婚なんて考えられない。もし万が一、リリアーナが他の令息に取られたら…そう思うと、夜も眠れない程、気が気ではなかった。
そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、何と公爵の方から、リリアーナと僕を婚約させたいと言ってくれたのだ。元々両親も、リリアーナと僕を結婚させたかった様で、その後はとんとん拍子で話が進んでいった。そして僕たちが10歳の時、正式に婚約した。
僕はこの日の事を、鮮明に覚えている。たくさんの貴族が見守る中、王宮で盛大に婚約披露パーティをしたのだ。幸せそうに微笑むリリアーナの顔を見た時、本当に幸せだった。必ず彼女を幸せにしよう、この笑顔を守ろう、そう心に決めた。
ただ…
相変わらず僕はリリアーナの前では、なぜか自分をうまく出せないのだ。ついそっけない態度を取っては、酷く後悔する日々。
このままだとリリアーナに愛想を付かされてしまう。どうしよう…
そんな日々を送っていたある日、ずっと領地で暮らしていたというガレイズ伯爵家のマルティ嬢が、初めて王宮のお茶会にやって来たのだ。
桃色の髪の彼女は、なぜか僕にベタベタくっ付いてきて、上目使いで見つめてくる。正直不快以外何物でもなかった。さらに僕に王宮の中庭を案内して欲しいと言い出したのだ。
やんわりと断りを入れたのだが、強引な彼女に無理やり腕を引っ張られ、中庭の奥へと連れて行かれた。こんなところを、万が一リリアーナに見られたら…ただでさえ僕はリリアーナの前ではうまく話せず、印象が良くない。もし他の令嬢と2人でいるところを見られたら、今度こそ愛想をつかされるかもしれない。
僕は誰よりもリリアーナを愛しているのだ!そんな事になっては大変だ。
「悪いが僕はもう戻るよ。僕には心から愛するリリアーナがいるからね」
そう伝え、来た道を引き返そうとした時だった。急にマルティ嬢が、呪文を唱え始めたのだ。これはもしかして…しまった!そう思った時には、僕はもう彼女の虜になっていた。
その日から僕は、マルティが愛おしくてたまらなくなった。それと同時に、婚約者でもあるリリアーナを酷く憎む様になった。マルティがリリアーナに酷い事をされたと聞けば、彼女に酷く抗議した。
リリアーナは泣きながら必死に
「私は何もしていません。本当です!信じて下さい」
そう訴えていたが、僕の可愛いマルティが嘘を付く訳がない。そう思い込み、リリアーナに暴言を吐き続けた。日に日にリリアーナに対する憎しみが募っていく。自分でもびっくりする程感情が抑えられず、リリアーナにつらく当たった。彼女が悲しそうな顔をすると、なぜかすっきりするのだ。
次第に彼女は、僕と目も合わさないし話しかけても来なくなった。そして、どんどんやつれていったのだ。いっその事、このままリリアーナがいなくなってくれたら…
そんな風に考える事もあった。
そう、この頃の僕は、完全にマルティの魅了魔法に掛かっていたのだ。
28
お気に入りに追加
2,776
あなたにおすすめの小説
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
必要ないと言われたので、元の日常に戻ります
黒木 楓
恋愛
私エレナは、3年間城で新たな聖女として暮らすも、突如「聖女は必要ない」と言われてしまう。
前の聖女の人は必死にルドロス国に加護を与えていたようで、私は魔力があるから問題なく加護を与えていた。
その違いから、「もう加護がなくても大丈夫だ」と思われたようで、私を追い出したいらしい。
森の中にある家で暮らしていた私は元の日常に戻り、国の異変を確認しながら過ごすことにする。
数日後――私の忠告通り、加護を失ったルドロス国は凶暴なモンスターによる被害を受け始める。
そして「助けてくれ」と城に居た人が何度も頼みに来るけど、私は動く気がなかった。
久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる