51 / 53
第2章
第29話:家族三人で幸せな家庭を築いていきます
しおりを挟む
しばらくアーニーの様子を見ていたキーキだったが、飽きてきたのか
「ローラ、アーニー、また来るわね」
と言い残し、妖精界に帰って行った。
「やっとうるさいのが帰ったな。さあ、そろそろ俺の両親が押しかけてきそうだ。それまでローラはゆっくりしていてくれ」
そう言ってアー二ーをあやし始めたアーサー様。
その時だった。
「ローラちゃん、赤ちゃんが産まれたのですってね。おめでとう」
やって来たのは、お義父様とお義母様だ。
「母上、急に入って来るな!非常識だろう」
すかさずアーサー様がお義母様を怒鳴りつけた。
「アーサー…あなた…目が覚めたのね」
「本当だ、アーサーが…」
アーサー様に抱き着く義両親。お義母様はもちろん、お義父様も涙を流している。お義父様が涙を流す姿、初めて見たわ…
「もう、目が覚めたなら、なぜすぐに教えてくれないのよ!どれほど心配したと思っているの」
「昨日のローラの出産中に目が覚めたんだ。昨日はそれどころではなかったので…でも、心配をおかけして申し訳ございませんでした」
アーサー様が義両親に謝っている。
「もう、本当よ。でも、目を覚ましてくれて本当によかったわ」
再びお義母様が、アーサー様に抱き着いた。アーサー様も、お義母様を抱きしめている。
しばらくは親子の再会を見守った。少し落ち着いた後は、早速アーニーを見せた。
「まあ、なんて可愛いのかしら。それにしても、アーサーにそっくりね」
「本当にそっくりだ。可愛いなぁ」
二人共嬉しそうに抱っこしていた。そうしている間に、家の両親、姉家族、兄家族、さらにレオナルド様家族もやって来た。
「アーサー、お前いつ目覚めたんだよ!俺たちがどれほど心配したか!」
そう言ってレオナルド様がアーサー様に抱き着いていた。アルフィーお義兄様も目に涙を浮かべている。
「レオナルド、お前には色々と迷惑を掛けてすまなかったな。昨日ローラの出産中に目が覚めたんだ。明日にでも一度騎士団に行って、今後の事を話そうと思っている」
「分かったよ。とにかく、元気そうでよかった」
そう言って涙を拭うレオナルド様。その後、皆がアーニーを抱っこした。そして全員が「アーサー(様)にそっくり」と言っていた。確かに髪も瞳の色も同じだものね。まさか、ここまでそっくりな子が産まれて来るなんて。
しばらくアーニーを抱っこした面々は、一斉に帰って行った。
「やっとうるさいのが帰って行ったな。やっぱり今日の朝、使いを出してよかった。あんなにもうるさい奴らが一気に来たら、ローラもゆっくりできなかっただろう」
確かにそうね。昨日はさすがに疲れていたから、あの人数の相手は大変だったかもしれない。そう思うと、アーサー様のファインプレーだ。
翌日、アーサー様は今後の話をする為、騎士団へと向かった。そして、昼過ぎには帰って来た。随分と早い帰宅だ。
「アーサー様、随分と早かったのですね」
「ああ、今日は正式に辞表を出して来ただけだからな」
「え、騎士団を辞めるのですか?どうして?」
あんなに一生懸命頑張っていた騎士団を辞めるだなんて!
「今回の魔物討伐で感じたんだ。これ以上は無理だって。それに俺には、守るべき大切な人たちが出来た。もちろん、ローラとアーニーだ。二人をこれからしっかり守る為にも、騎士団はもう続けられない。それに、父上から近々公爵を譲り受ける事になったしな。俺はそこまで器用ではない。公爵の仕事と騎士団長、両方は無理だ。それにどうやらアーニーは魔力持ちの様だし。出来るだけ傍にいてやりたいと思っている。とにかく、これからは本家に通いながら、本格的に公爵の仕事を引き継いでいく予定だ」
「そうですか、分かりました。アーサー様が決めた事なら、私はそれに従うまでです。それじゃあ、早速お疲れ様でした会&快気祝いをしないといけませんね」
「アーニーの出産のお祝いもな」
そう言って笑ったアーサー様。アーサー様の話しでは、レオナルド様も近々騎士団を辞めるらしい。レオナルド様もアーサー様と同じ23歳。そろそろ侯爵家を本格的に継ぐ準備をするとの事。
「さあ、ローラ、そろそろ横にならないと。お前はまだ産後三日目なんだぞ。とにかく今は体を休める事を最優先に考えるんだ」
そう言って私を抱きかかえたアーサー様によって、そのままベッドに寝かされた。そしてなぜかアーサー様もベッドに潜り込んできた。
「ローラ、巨大コブラの毒を食らい、意識が薄れゆく中、真っ先に顔が浮かんだ相手はローラだった。ローラを残して死ねない。そう思って、無意識にコレを握ったんだ」
胸元から取り出したのは、私が最初の討伐の時にあげたお守りだ。もうボロボロすぎて、ただのボロキレにしか見えないが…
「その後、長い夢を見ていた。正直どんな夢か全然覚えていないが。そんな中、ローラの声が聞こえたんだ。”アーサー様、起きて下さい!アーサー様”てな。それで、気が付いたらローラが陣痛で苦しんでいたって訳だ。結局俺は、いつもローラに助けられてばかりだな。今回も、ローラのおかげで目覚めた様なものだ」
「まあ、そんな事があったのですね。でも、私は何もしておりませんわ。きっとアーサー様の、生きたい!目覚めたいと言う強い思いが、奇跡を生んだのだと思います」
「そうかな、俺はローラが俺を目覚めさせてくれたと思っている。ローラ、討伐に行っていた期間も含めると約八ヶ月間、寂しい思いをさせてしまい本当にすまなかった。でも、これからはずっと一緒だ。アーニーが少し大きくなったら、領地にも三人で行こう。それから、メイソンに会いにモンサラ王国に行くのもいいな」
「領地にモンサラ王国ですか。それは楽しみですわ。領地の皆、元気にしているかしら?アーニーを連れて行ったら、きっと喜びますね」
エヴァちゃんのお誕生日のお祝い用にと、ミラ様から頼まれたカエルのぬいぐるみ。肌の弱いエヴァちゃんの為に、領地に出向いて生地選びをしたのだったわ。
懐かしいわね…
あの時はまさかアーサー様とこんな風になるなんて、思ってもみなかった。人生本当に何が起こるか分からない。
それにこれからはずっと、アーサー様とアーニーと一緒にいられる。そう思ったら、ものすごく嬉しい。辛くて寂しくてどうしようもない事もあった。ずっと眠ったままのアーサー様を見つめ、心が折れてしまいそうな時もあった。
でも、今は…
これからきっと、楽しい事が沢山待っているだろう。そう、家族三人で、沢山の思い出を作っていきたい。
「ホンギャーーー」
「アーニーが泣き出したわ。もうお腹が空いたのかしら?」
「ローラ、俺がアーニーを連れて来るよ、ちょっと待っていてくれ」
ベビーベッドで泣きじゃくるアーニーを抱きかかえたアーサー様が、急いで私の元へと連れてきてくれた。アーサー様からアーニーを受け取ろうとした瞬間、なぜかピタと泣き止んだのだ。
その姿がなんだか可笑しくて、アーサー様と二人で笑った。
そう、その姿はまさに、私の作った親子三人のぬいぐるみの姿そのものだった。
おしまい
※第二章の修正版は、これにて完結です。
今後、また番外編を投稿していくかもしれません。
その時は、どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m
最後までお読みいただき、ありがとうございました(*^-^*)
「ローラ、アーニー、また来るわね」
と言い残し、妖精界に帰って行った。
「やっとうるさいのが帰ったな。さあ、そろそろ俺の両親が押しかけてきそうだ。それまでローラはゆっくりしていてくれ」
そう言ってアー二ーをあやし始めたアーサー様。
その時だった。
「ローラちゃん、赤ちゃんが産まれたのですってね。おめでとう」
やって来たのは、お義父様とお義母様だ。
「母上、急に入って来るな!非常識だろう」
すかさずアーサー様がお義母様を怒鳴りつけた。
「アーサー…あなた…目が覚めたのね」
「本当だ、アーサーが…」
アーサー様に抱き着く義両親。お義母様はもちろん、お義父様も涙を流している。お義父様が涙を流す姿、初めて見たわ…
「もう、目が覚めたなら、なぜすぐに教えてくれないのよ!どれほど心配したと思っているの」
「昨日のローラの出産中に目が覚めたんだ。昨日はそれどころではなかったので…でも、心配をおかけして申し訳ございませんでした」
アーサー様が義両親に謝っている。
「もう、本当よ。でも、目を覚ましてくれて本当によかったわ」
再びお義母様が、アーサー様に抱き着いた。アーサー様も、お義母様を抱きしめている。
しばらくは親子の再会を見守った。少し落ち着いた後は、早速アーニーを見せた。
「まあ、なんて可愛いのかしら。それにしても、アーサーにそっくりね」
「本当にそっくりだ。可愛いなぁ」
二人共嬉しそうに抱っこしていた。そうしている間に、家の両親、姉家族、兄家族、さらにレオナルド様家族もやって来た。
「アーサー、お前いつ目覚めたんだよ!俺たちがどれほど心配したか!」
そう言ってレオナルド様がアーサー様に抱き着いていた。アルフィーお義兄様も目に涙を浮かべている。
「レオナルド、お前には色々と迷惑を掛けてすまなかったな。昨日ローラの出産中に目が覚めたんだ。明日にでも一度騎士団に行って、今後の事を話そうと思っている」
「分かったよ。とにかく、元気そうでよかった」
そう言って涙を拭うレオナルド様。その後、皆がアーニーを抱っこした。そして全員が「アーサー(様)にそっくり」と言っていた。確かに髪も瞳の色も同じだものね。まさか、ここまでそっくりな子が産まれて来るなんて。
しばらくアーニーを抱っこした面々は、一斉に帰って行った。
「やっとうるさいのが帰って行ったな。やっぱり今日の朝、使いを出してよかった。あんなにもうるさい奴らが一気に来たら、ローラもゆっくりできなかっただろう」
確かにそうね。昨日はさすがに疲れていたから、あの人数の相手は大変だったかもしれない。そう思うと、アーサー様のファインプレーだ。
翌日、アーサー様は今後の話をする為、騎士団へと向かった。そして、昼過ぎには帰って来た。随分と早い帰宅だ。
「アーサー様、随分と早かったのですね」
「ああ、今日は正式に辞表を出して来ただけだからな」
「え、騎士団を辞めるのですか?どうして?」
あんなに一生懸命頑張っていた騎士団を辞めるだなんて!
「今回の魔物討伐で感じたんだ。これ以上は無理だって。それに俺には、守るべき大切な人たちが出来た。もちろん、ローラとアーニーだ。二人をこれからしっかり守る為にも、騎士団はもう続けられない。それに、父上から近々公爵を譲り受ける事になったしな。俺はそこまで器用ではない。公爵の仕事と騎士団長、両方は無理だ。それにどうやらアーニーは魔力持ちの様だし。出来るだけ傍にいてやりたいと思っている。とにかく、これからは本家に通いながら、本格的に公爵の仕事を引き継いでいく予定だ」
「そうですか、分かりました。アーサー様が決めた事なら、私はそれに従うまでです。それじゃあ、早速お疲れ様でした会&快気祝いをしないといけませんね」
「アーニーの出産のお祝いもな」
そう言って笑ったアーサー様。アーサー様の話しでは、レオナルド様も近々騎士団を辞めるらしい。レオナルド様もアーサー様と同じ23歳。そろそろ侯爵家を本格的に継ぐ準備をするとの事。
「さあ、ローラ、そろそろ横にならないと。お前はまだ産後三日目なんだぞ。とにかく今は体を休める事を最優先に考えるんだ」
そう言って私を抱きかかえたアーサー様によって、そのままベッドに寝かされた。そしてなぜかアーサー様もベッドに潜り込んできた。
「ローラ、巨大コブラの毒を食らい、意識が薄れゆく中、真っ先に顔が浮かんだ相手はローラだった。ローラを残して死ねない。そう思って、無意識にコレを握ったんだ」
胸元から取り出したのは、私が最初の討伐の時にあげたお守りだ。もうボロボロすぎて、ただのボロキレにしか見えないが…
「その後、長い夢を見ていた。正直どんな夢か全然覚えていないが。そんな中、ローラの声が聞こえたんだ。”アーサー様、起きて下さい!アーサー様”てな。それで、気が付いたらローラが陣痛で苦しんでいたって訳だ。結局俺は、いつもローラに助けられてばかりだな。今回も、ローラのおかげで目覚めた様なものだ」
「まあ、そんな事があったのですね。でも、私は何もしておりませんわ。きっとアーサー様の、生きたい!目覚めたいと言う強い思いが、奇跡を生んだのだと思います」
「そうかな、俺はローラが俺を目覚めさせてくれたと思っている。ローラ、討伐に行っていた期間も含めると約八ヶ月間、寂しい思いをさせてしまい本当にすまなかった。でも、これからはずっと一緒だ。アーニーが少し大きくなったら、領地にも三人で行こう。それから、メイソンに会いにモンサラ王国に行くのもいいな」
「領地にモンサラ王国ですか。それは楽しみですわ。領地の皆、元気にしているかしら?アーニーを連れて行ったら、きっと喜びますね」
エヴァちゃんのお誕生日のお祝い用にと、ミラ様から頼まれたカエルのぬいぐるみ。肌の弱いエヴァちゃんの為に、領地に出向いて生地選びをしたのだったわ。
懐かしいわね…
あの時はまさかアーサー様とこんな風になるなんて、思ってもみなかった。人生本当に何が起こるか分からない。
それにこれからはずっと、アーサー様とアーニーと一緒にいられる。そう思ったら、ものすごく嬉しい。辛くて寂しくてどうしようもない事もあった。ずっと眠ったままのアーサー様を見つめ、心が折れてしまいそうな時もあった。
でも、今は…
これからきっと、楽しい事が沢山待っているだろう。そう、家族三人で、沢山の思い出を作っていきたい。
「ホンギャーーー」
「アーニーが泣き出したわ。もうお腹が空いたのかしら?」
「ローラ、俺がアーニーを連れて来るよ、ちょっと待っていてくれ」
ベビーベッドで泣きじゃくるアーニーを抱きかかえたアーサー様が、急いで私の元へと連れてきてくれた。アーサー様からアーニーを受け取ろうとした瞬間、なぜかピタと泣き止んだのだ。
その姿がなんだか可笑しくて、アーサー様と二人で笑った。
そう、その姿はまさに、私の作った親子三人のぬいぐるみの姿そのものだった。
おしまい
※第二章の修正版は、これにて完結です。
今後、また番外編を投稿していくかもしれません。
その時は、どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m
最後までお読みいただき、ありがとうございました(*^-^*)
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6,384
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。