離縁前提で嫁いだのにいつの間にか旦那様に愛されていました

Karamimi

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第2章

第25話:ついに陣痛が来ました

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数日後、メイソン様が帰国する日を迎えた。

「ローラ、今まで本当にお世話になった。ありがとう。君のおかげで、随分とマシな人間になれたよ。これからは自国で、次期公爵になる為に一生懸命勉強しようと思う。それから騎士団にも入って、引き続き強くなれる様に頑張るよ」

「是非そうして下さい。今のメイソン様なら必ず出来ますわ。どうかお気を付けて」

「ありがとう、ローラも元気な赤ちゃんを産むんだよ。赤ちゃんが産まれたら、また見に来るからね。いつか、モンサラ王国にも遊びに来てくれ」

「もちろんですわ。きっといつか、遊びに行きます」

それがいつになるかは分からない。でも、いつかきっと…

「それじゃあ、また会おう」

そう言って馬車に乗り込んでいったメイソン様。馬車が見えなくなるまで手を振ってくれている。私もずっと手を振り続ける。こうしていると、討伐部隊にアーサー様とメイソン様を送り出した時の事を思い出すわ。

そう思ったら、涙が込み上げて来た。駄目よ!もう泣かないって決めたのだから。必死に涙をこらえた。

メイソン様を見送った後、寝室へとやって来た。

「アーサー様、今メイソン様を送り出してきましたわ。それにしても、メイソン様は随分と立派になりましたね。あの様子だと、きっと立派な次期公爵様になれると思いますわよ」

相変わらず意識のないアーサー様に声を掛ける。さあ、私たちのぬいぐるみも、もうすぐ完成だ!いつもの様にソファーに座り、ぬいぐるみを作る。どうやら出産より先に、ぬいぐるみが完成しそうだ。

そして数日後、無事ぬいぐるみが完成した。せっかくなので、寝室のベッドの所に飾った。

「本当に素晴らしい出来栄えですね。とても素敵ですわ」

そう言って私の作ったぬいぐるみを褒めてくれるのは、モカラとダリアだ。確かに我ながら自信作だ。ちなみに産まれてくる予定の赤ちゃんのぬいぐるみは、アーサー様と同じ金色の髪に、水色の瞳で作ってある。

幸せそうに微笑むぬいぐるみの私とアーサー様を見つめていると、何だか幸せな気持ちになるのはなぜだろう。もしかしたら、この状況は一生叶わないかもしれない。それでも、せめてぬいぐるみの中だけでも、幸せな家族を再現できた事が嬉しく思う。

さあ、ぬいぐるみも完成した事だし、そろそろ本格的に赤ちゃんを迎える準備をしないと。

翌日から皆に手伝ってもらいながら、赤ちゃんを迎える準備をしていく。ベビーベッドにゆりかご。さらに赤ちゃんが遊ぶ為のおもちゃたちも準備する。他にもオムツや産着などなど。

基本的に私が赤ちゃんのお世話をし、モカラとダリアがフォローしてくれる感じで育児を進めていく予定だ。さらに本家からも、ベテランのメイドたちがしばらく手伝いに来てくれる事になっているので、特に問題はないだろう。

着々と準備が進む中、ついに臨月を迎えた。臨月を迎えてからは、中庭を最低でも一時間は歩くようにしている。庭を歩くときは、マテオが付き添ってくれる。大きなお腹を抱えて歩くのだ。万が一転んでは大変との事で、いつも心配そうに付き添ってくれる。

今日も散歩を終え、中庭でティータイムだ。モカラが妊娠中に飲むと良いというお茶を準備してくれた。

「今日もいい天気ね。あなたはいつ産まれてくるの?お母様はいつでも大歓迎よ」

お腹を撫でながら、赤ちゃんに話しかける。そう言えば、赤ちゃんの名前を考えていなかったわね。すっかり忘れていたわ。せっかくなら、アーサー様にちなんだ名前がいい。でもまあ、産まれてからゆっくり決めるのもいいわね。今度皆に相談してみよう。

その時だった!

お腹がギューッと締め付けられるような違和感を感じた。これは一体何?もしかして…そう思ったが、すぐに違和感は治まって行く。

気のせいだったのかしら?なんだか不安になって来たので、急いでアーサー様の眠る寝室へと戻って来た。

いつもの様にソファーに座り、赤ちゃんの靴下や帽子を作る。今は一旦新規のぬいぐるみの依頼は断っている為、急いでぬいぐるみを作る事も無い。そのため、赤ちゃん用品を中心に作っているのだ。

もちろん、バーエンス公爵領で取れた生地で作っている。

その時だった、今度はお腹に痛みが走る。でも、そこまで強い痛みではなく、しばらくすると落ち着いた。もしかしてこれは陣痛?確か陣痛が来ても、すぐには産まれないと言っていた。それに陣痛が来た!と思っても、いつの間にか消えていく事もあると言う。

とにかく、まだ今は様子を見よう。そう思い、アーサー様の眠るベッドに腰を下ろす。そして、アーサー様の手をギューッと握った。温かくて大きな手。この手を握ると、落ち着くのだ。

アーサー様は意識が無くても、しっかり私を安心させてくれる。本当に凄い人だ!しばらくすると、再び痛みが襲って来た。そしてまたしばらくすると、痛みが嘘の様に消えていく。そんな事を何度も繰り返し、気が付けば夕方になっていた。

「ローラ様、お食事の時間です」

モカラが呼びに来た。

「ありがとう、すぐに行くわ」

そう思ってベッドから起き上がろうとした時だった。今までに感じた事のない痛みが、お腹を襲う。

「イタタタタタタ」

痛みに耐えられずに、ベッドの上でうずくまる。

「ローラ様!大丈夫でございますか?誰か、今すぐ医者を!ローラ様、しっかりして下さいませ」
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