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第2章
第20話:アーサー様が怪我をしたそうです
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アーサー様が討伐に出掛けてから、もうすぐ三ヶ月が経とうとしている。妊娠五ヶ月になった私は、ほんの少しだけお腹がポッコリして来た。そして少しずつだが、妊娠生活にも慣れて来た。
大好きなぬいぐるみ作りも、少しずつ進めている。さらに、妊娠や出産に関する本も読んでいる。随分と知識も豊富になって来た。
つわりも、随分とマシになった。天気がいい日は、なるべく中庭を歩くようにしている。今も中庭を散歩しているところだ。
やっぱり美しい花々を見ていると、心もリラックスできる。
「ローラ様、メーラ様とミラ様がいらっしゃいました」
「ありがとう、そのまま中庭に通してくれる?」
「かしこまりました」
頻繁に私の様子を見に来てくれるお姉様とミラ様。今日も私の様子を見に来てくれた様だ。他にもお義母様やお母様、お義姉様もよく来てくれる。
特にお義姉様はリアルタイムでアドバイスをくれるので、とても助かっている。出産時期からして同い年になる為、きっと子供同士も仲良くなるだろうと、勝手に思っている。そう言えば、そろそろお義姉様の所は産まれる時期よね。早く甥か姪に会いたいわ。
「ローラ、調子はどう?」
「お陰様で順調ですわ」
お姉様とミラ様が私の向かいに座った。
「それは良かったわ。でも無理は駄目よ!そう言えば、もうすぐアーサー様が帰って来るのね。妊娠している事を知ったら、きっととても喜ぶでしょうね」
そう言ってクスクス笑っているお姉様。隣でミラ様も笑っている。その時だった。
「ローラ様!大変です。アーサー様が怪我をして、王都の大病院に運ばれたそうです」
「何ですって、アーサー様が…」
アーサー様が怪我…
嘘…
「ローラ、しっかりして!それで、アーサー様の怪我の具合はどうなの?」
「申し訳ございません。そこまでは…」
「すぐに行きましょう。王都の大病院よね。ほら、ローラちゃん、しっかりして!」
椅子に座り込んで動かない私を、なんとか立たせたお姉様とミラ様。そのまま馬車に乗せられた。
「ローラ、大丈夫よ。きっとちょっと怪我をしただけよ」
「そうよ、ローラちゃん、アーサー様はとても強いのよ。大したことはないわ」
そう言って慰めてくれる二人。でも…心配でたまらないのだ。もし旦那様にもしもの事があったら…そう思うと、恐怖で震えが止まらない。
「ローラ、しっかりしなさい!あなたのお腹には赤ちゃんがいるのよ。とにかく、あなたが動揺すると赤ちゃんにもよくないわ。気を確かに」
そうよ、私のお腹には、アーサー様の子供がいるのよ。しっかりしないと。
そうしているうちに、病院が見えて来た。
「ミラ、ローラをお願い。私は受付に行って、アーサー様の病室を聞いて来るから」
そう言ってさっさと馬車から降りて行ったお姉様。
「さあ、ローラちゃん、ゆっくりでいいから行きましょう」
ミラ様が私を連れて、馬車から降りた。そして病院内に入って行く。すると、お姉様がこちらに向かってやって来た。
「三階の集中治療室で、今治療を受けているそうよ。さあ、行きましょう」
集中治療室ですって!
「お姉様、集中治療室って、かなりの重傷なのではなくって。ねえ、アーサー様は大丈夫なの?ねえ、お姉様!」
「ローラ、落ち着いて。とにかく行きましょう」
お姉様とミラ様に連れられ、三階の集中治療室の前まで来た。そこには、真っ青な顔をしたレオナルド様とメイソン様の姿が。
「レオ、アーサー様の様子は?」
ミラ様がレオナルド様に声を掛けた。
「ミラ、お前がローラちゃんを連れて来てくれたのか?」
「ええ、たまたまローラちゃんに会いに行っていたのよ」
「レオナルド様、アーサー様はどうなのですか?アーサー様は…」
二人が話をしているところに割って入り、レオナルド様に必死に訴えた。自然と涙が溢れる。次から次へと溢れる涙を止める事が出来ない。しっかりしなきゃ、そう思っても、涙が止まらないのだ。
「ローラちゃん、落ち着いて聞いて。アーサーは最後に残った巨大コブラを倒した時に、運悪く毒を受けてしまったんだ。急いで解毒剤を飲ませて、今治療を受けているところだ。ただ…意識が戻らない。とにかく巨大コブラの毒は強力で、助かる可能性は五分五分と言われている…」
悔しそうに唇を噛むレオナルド様。
「そんな…ではアーサー様は…」
フラフラとアーサー様のいる治療室に近付く。
「アーサー様、しっかりして下さい!アーサー様、お願いします、私はアーサー様の妻です。どうか中に入れてください」
必死でドアを叩いた。
「止めなさい、ローラ。とにかく落ち着いて」
私を必死に止めるお姉様。
「放して!どうして落ち着いていられるの?アーサー様が生きるか死ぬかの瀬戸際にいると言うのに」
お姉様を振りほどき、再び扉を叩いた。
「お願いします、開けてください!お願いします!」
その時だった、ドアが開き、中から先生が出て来た。すぐに中に入ろうとしたものの、すかさず扉を閉められてしまった。
「先生、アーサー様は、アーサー様はどうなったのですか?」
仕方ないので先生に詰め寄る。一刻も早くアーサー様に会いたい。
「アーサー・バーエンス様の奥様ですね?今必死に治療を行っていますが、厳しい状況です。最悪な事態になる事も覚悟しておいてください」
「そんな…」
アーサー様が…
「ローラ、しっかりして」
あまりのショックに、そのまま意識を手放したのであった。
大好きなぬいぐるみ作りも、少しずつ進めている。さらに、妊娠や出産に関する本も読んでいる。随分と知識も豊富になって来た。
つわりも、随分とマシになった。天気がいい日は、なるべく中庭を歩くようにしている。今も中庭を散歩しているところだ。
やっぱり美しい花々を見ていると、心もリラックスできる。
「ローラ様、メーラ様とミラ様がいらっしゃいました」
「ありがとう、そのまま中庭に通してくれる?」
「かしこまりました」
頻繁に私の様子を見に来てくれるお姉様とミラ様。今日も私の様子を見に来てくれた様だ。他にもお義母様やお母様、お義姉様もよく来てくれる。
特にお義姉様はリアルタイムでアドバイスをくれるので、とても助かっている。出産時期からして同い年になる為、きっと子供同士も仲良くなるだろうと、勝手に思っている。そう言えば、そろそろお義姉様の所は産まれる時期よね。早く甥か姪に会いたいわ。
「ローラ、調子はどう?」
「お陰様で順調ですわ」
お姉様とミラ様が私の向かいに座った。
「それは良かったわ。でも無理は駄目よ!そう言えば、もうすぐアーサー様が帰って来るのね。妊娠している事を知ったら、きっととても喜ぶでしょうね」
そう言ってクスクス笑っているお姉様。隣でミラ様も笑っている。その時だった。
「ローラ様!大変です。アーサー様が怪我をして、王都の大病院に運ばれたそうです」
「何ですって、アーサー様が…」
アーサー様が怪我…
嘘…
「ローラ、しっかりして!それで、アーサー様の怪我の具合はどうなの?」
「申し訳ございません。そこまでは…」
「すぐに行きましょう。王都の大病院よね。ほら、ローラちゃん、しっかりして!」
椅子に座り込んで動かない私を、なんとか立たせたお姉様とミラ様。そのまま馬車に乗せられた。
「ローラ、大丈夫よ。きっとちょっと怪我をしただけよ」
「そうよ、ローラちゃん、アーサー様はとても強いのよ。大したことはないわ」
そう言って慰めてくれる二人。でも…心配でたまらないのだ。もし旦那様にもしもの事があったら…そう思うと、恐怖で震えが止まらない。
「ローラ、しっかりしなさい!あなたのお腹には赤ちゃんがいるのよ。とにかく、あなたが動揺すると赤ちゃんにもよくないわ。気を確かに」
そうよ、私のお腹には、アーサー様の子供がいるのよ。しっかりしないと。
そうしているうちに、病院が見えて来た。
「ミラ、ローラをお願い。私は受付に行って、アーサー様の病室を聞いて来るから」
そう言ってさっさと馬車から降りて行ったお姉様。
「さあ、ローラちゃん、ゆっくりでいいから行きましょう」
ミラ様が私を連れて、馬車から降りた。そして病院内に入って行く。すると、お姉様がこちらに向かってやって来た。
「三階の集中治療室で、今治療を受けているそうよ。さあ、行きましょう」
集中治療室ですって!
「お姉様、集中治療室って、かなりの重傷なのではなくって。ねえ、アーサー様は大丈夫なの?ねえ、お姉様!」
「ローラ、落ち着いて。とにかく行きましょう」
お姉様とミラ様に連れられ、三階の集中治療室の前まで来た。そこには、真っ青な顔をしたレオナルド様とメイソン様の姿が。
「レオ、アーサー様の様子は?」
ミラ様がレオナルド様に声を掛けた。
「ミラ、お前がローラちゃんを連れて来てくれたのか?」
「ええ、たまたまローラちゃんに会いに行っていたのよ」
「レオナルド様、アーサー様はどうなのですか?アーサー様は…」
二人が話をしているところに割って入り、レオナルド様に必死に訴えた。自然と涙が溢れる。次から次へと溢れる涙を止める事が出来ない。しっかりしなきゃ、そう思っても、涙が止まらないのだ。
「ローラちゃん、落ち着いて聞いて。アーサーは最後に残った巨大コブラを倒した時に、運悪く毒を受けてしまったんだ。急いで解毒剤を飲ませて、今治療を受けているところだ。ただ…意識が戻らない。とにかく巨大コブラの毒は強力で、助かる可能性は五分五分と言われている…」
悔しそうに唇を噛むレオナルド様。
「そんな…ではアーサー様は…」
フラフラとアーサー様のいる治療室に近付く。
「アーサー様、しっかりして下さい!アーサー様、お願いします、私はアーサー様の妻です。どうか中に入れてください」
必死でドアを叩いた。
「止めなさい、ローラ。とにかく落ち着いて」
私を必死に止めるお姉様。
「放して!どうして落ち着いていられるの?アーサー様が生きるか死ぬかの瀬戸際にいると言うのに」
お姉様を振りほどき、再び扉を叩いた。
「お願いします、開けてください!お願いします!」
その時だった、ドアが開き、中から先生が出て来た。すぐに中に入ろうとしたものの、すかさず扉を閉められてしまった。
「先生、アーサー様は、アーサー様はどうなったのですか?」
仕方ないので先生に詰め寄る。一刻も早くアーサー様に会いたい。
「アーサー・バーエンス様の奥様ですね?今必死に治療を行っていますが、厳しい状況です。最悪な事態になる事も覚悟しておいてください」
「そんな…」
アーサー様が…
「ローラ、しっかりして」
あまりのショックに、そのまま意識を手放したのであった。
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