上 下
37 / 53
第2章

第15話:ローラに名前を呼んで欲しい~アーサー視点~

しおりを挟む
ローラと本当の夫婦になって以降、俺の誕生日パーティーを開いてくれたり、結婚式をしたり、街に出掛けたりと、楽しい日々を送っている。

そんな中、メイソンが我が家にやって来た。最初は可愛い従兄弟がやって来たと喜んでいたが、次第にローラに懐くようになった。

明らかに好意を抱いているメイソンに対し、全く気が付いていないローラ。相変わらずローラは鈍くて嫌になる。なるべく二人っきりにしたくなくて、キーキを駆り出すことも多い。

あんなに魔力を使う事を嫌だと思っていたが、ローラの事になると話は別だ。それにキーキは、ああ見えていい仕事をするのだ。

そんな中、メイソンの母でもある叔母上が訪ねて来て、母上と一緒にローラを連れまわすという事件が起きた。

モカラの話しでは、随分と叔母上がローラを気に入った様子で

「ローラちゃんをメイソンのお嫁さんに欲しい!」

と母上に詰め寄り、母上が激怒したとの事。本当に叔母上はどうしようもない。

そして今、俺には一つ悩みがある。それはローラが俺の事を“旦那様”と呼ぶことだ。正直名前で呼んで欲しい。でも、名前で呼んで欲しいと中々伝えられないのだ。

「は~~」

つい大きなため息が出てしまう。

「アーサー、今度はどうしたんだ、そんなに大きなため息を付いて」

心底面倒くさそうにそう言ったのは、レオナルドだ。そう、今俺は騎士団の執務室で作業をしているのだ。そうだ、こいつに相談してみるか。

「ローラが俺の事を“旦那様”と呼ぶんだ。だが俺たちは、もう完全に夫婦になった。だから、名前で呼んで欲しいんだ。お前やメイソンの事は名前で呼んでいるのに、どうして俺の事は名前で呼んでくれないんだ!」

「そんな事、俺に怒っても仕方ないだろう。そもそも、ローラちゃんに名前で呼んでくれ。と言えばいい事だろう?」

「確かにそうなのだが…そもそも、なぜ俺だけ名前で呼ばれないんだ!どうしてお前はローラに名前で呼ばれているんだ」

「そんな事、俺が知るか!でもアルフィーの事も“お義兄様”と呼んでいるぞ。お前だけじゃないじゃないか。良かったな」

そう言って俺の肩を叩くレオナルド。こいつ、ふざけているのか!

「何が“良かったな”だ。ふざけるな!とにかく俺はローラに名前で呼ばれたいんだよ。正直ローラが、メイソンの事を名前で呼んでいること自体気に入らない」

「要するに、醜い嫉妬心むき出しって訳だな…とにかく、そんなに呼んで欲しいなら、自分で頼むしかないだろう。散々嫉妬心剥き出しでダサい姿を見せているのだから、今更そんな事で恥ずかしがるな。いいな、分かったな」

そう言うと、がに股で出て行ったレオナルド。本当に役に立たない男だ!こういう時は、やっぱり義姉上か。早速アルフィーに手紙を書き、義姉上との面会を取り付けた。

そう、ものすごく嫉妬深いアルフィーに許可を取らないと、義姉上には会えないのだ。本当に、嫉妬深い男は嫌になる。

早速レーフエス侯爵家に向かい、義姉上に相談した。

「それでしたら、私からローラに話をしますわ」

そう言ってくれた義姉上。さすが義姉上だ!本当に頼りになる。そんな義姉上に水を差したのは、アルフィーだ。

「待てメーラ、お前からローラちゃんに話すのは止めておけ。アーサー、いい歳こいた男が、自分の妻に名前を呼んでもらう事も頼めないのか。情けない。いいか、アーサー、そんな事は自分で頼め!それからくだらん事でメーラに頼るな。メーラ、お前は何もするな、いいな!」

クソ、ケチアルフィーによって、義姉上の助けを受けられなくなった。本当にケチな男で嫌になる。義姉上はとてもモテたと聞くが、どうしてあんなケチ嫉妬男と結婚したんだ?全く理解できない。

悶々としたまま、屋敷に戻った。結局ローラに俺の名前を呼んで欲しいと言えないまま、数日が過ぎた。


そんなある日
「あの、アーサー様…」

恥ずかしそうに俺の名前を呼んだローラ。最初俺の聞き間違いかとも思ったが、確かに今“アーサー様”と言ったよな。

「実は今日、お姉様が来まして“いつまでも旦那様の名前を呼ばないなんておかしいわよ”と、叱られましたの。それで、名前を呼んでみたのですが…駄目でしたか?」

不安そうに、ローラがこちらを見つめる。義姉上が話をしてくれたのか!さすが義姉上だ。嬉しくて、ローラをギューッと抱きしめた。

「ローラ、嬉しいよ。俺はずっとローラに名前を呼んで欲しいと思っていたんだ。もう一度俺の名前を呼んでくれるかい?」

「はい、アーサー様」

恥ずかしそうに俺の名前を呼ぶローラ。あぁ、やっぱりローラは最高だ。その後何度も俺の名前を呼ばせた。ローラから“アーサー様”と呼ばれると、嬉しいし何より興奮する。

「アーサー様、名前で呼んで欲しいのなら、そう言って下さればよかったのに。これからは、私に何かして欲しい事があれば、何でも言ってくださいね」

そう言って微笑んでくれたローラ。そうか、最初から自分で言えばよかったのか。今回は結局義姉上に協力てもらったが、これからはどんどんローラに思った事を伝えていこう。

ローラを抱きしめながら、そう決意したのであった。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。