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第2章

第5話:キーキとメイソン様は仲が悪い様です

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翌日
「ローラ、ローラ」

う~ん、誰かが私を揺すっている…
ゆっくり目を開けると、目の前には旦那様の姿が!

「旦那様、おはようございます」

「おはよう、ローラ」

ふと隣を見ると、まだキーキも眠そうな目をこすり、起きていた。

「ローラ、昨日は悪かったな。キーキ、ローラの傍にいてくれてありがとう」

「あら、アーサー、おはよう。約束通り、魔力を頂戴」

早速魔力を催促するキーキ。面倒くさそうに旦那様が人差し指を出した。嬉しそうにキーキが旦那様の指に吸い付いている。この姿、何度見ても可愛いわ。

「あ~お腹いっぱい。それよりアーサー。あなた、いくらあの生意気な従兄弟が大切だからって、ローラをほったらかしにするなんて、どういう了見よ。ローラは寂しくて泣いていたのよ」

ちょっとキーキ。どうして今その事を話すのよ。

「あの、旦那様。私は…」

「そうだったのか。まさか昨夜泣いていたのは、俺がいなくて寂しかったからなのか?」

「あの…それは…」

「もうアーサー、そんな野暮な事を聞くもんじゃないわ。普段はローラにベッタリなくせに、ローラに寂しい思いをさせるなんて、どういうつもりよ!」

「キーキ、あまり旦那様に酷い事を言わないで。私は大丈夫だから」

「いいや…キーキの言う通りだ。昨日は夕食も寝るときもローラを一人にしてしまって、すまなかった。寂しい思いをさせてしまったこと、本当に申し訳なく思っている。今日からは今まで通り一緒に食事をとり、一緒に寝よう。俺もやっぱり、ローラが傍にいないと、寂しいし…」

恥ずかしそうにそう言って、私を強く抱きしめてくれた旦那様。

「私も…寂しかったです。これからはずっと傍にいて下さいね」

「もちろんだ!あぁ、俺の可愛いローラ。寂しい思いをさせて本当にすまなかった。まだ騎士団に行くまでに時間がある。せっかくだから、今から愛し合おう」

「えっ?今からです…んんんっつ」

一気に唇を塞がれた。でも次の瞬間

「ちょっとアーサー、私の存在を忘れているでしょう。いちゃつくなら、二人っきりの時にしてよね」

すかさず文句を言うのはキーキだ。

「お前、いいところを邪魔しやがって…」

「アーサー様、お取込み中失礼いたします。メイソン様が食堂でお待ちです。至急お越しください」

旦那様がキーキに文句を言おうとしたタイミングで、モカラが呼びに来た。不満そうな顔の旦那様と一緒に、食堂へと向かう。後ろからキーキもついてきていた。

「アーサー兄さん。随分来るのが遅かったんだね。もしかしてあんたがアーサー兄さんを引き留めていたのか?本当に、どうしようもない女だな」

私に向かって文句を言うメイソン様。相変わらず口が悪い。

「ちょっとあんた、ローラの事を悪く言うのは止めなさいよ。第一、居候の癖に生意気なのよ」

近くにいたキーキが、すかさずメイソン様に文句を言っている。

「何だお前。アーサー兄さん、どうしてここに妖精がいるんだよ。兄さんは妖精が嫌いだから、出さないはずだろう?」

どうやらメイソン様も、旦那様が精霊魔法使いと知っている様だ。

「メイソン、落ち着いてくれ。キーキはローラの友達なんだ。昨日は俺の代わりに、キーキにローラの傍にいてもらったんだよ」

「何だって。お前、一人で寝る事も出来ないのか。情けない。アーサー兄さん、こんなちょろちょろした妖精が飛んでいたら目障りだ。消してくれ」

そう言うと、キーキに向かってメイソン様が、シッシッと追い払う様な素振りを見せたのだ。

「メイソン様、キーキは私の大切な友達です。そんな言い方をしないで下さい」

「そうよ。本当にアーサーの従兄弟は、どうしようもない男ね。私だってあんたが目障りよ。さっさと本宅に行きなさい」

「何だと。お前、俺をバカにしやがって。握りつぶしてやる」

「キーキ!」

キーキを捕まえようとメイソン様が手を伸ばしてきた。危ない!そう思ったのだが、スルリとよけたキーキ。その拍子にバランスを崩し、イスからメイソン様が転げ落ちてしまった。

「うぁぁ、痛い!!」

「メイソン、大丈夫か?」

急いで旦那様がメイソン様の元に駆け寄った。

「アハハハハハ、自分で椅子から転げ落ちるなんて、カッコ悪いわね。あぁ可笑し」

お腹を抱えて笑っているキーキ。相変わらずね…

「うるさい。お前、今笑っただろう。ただじゃ置かないからな」

笑い転げているキーキに向かって怒鳴るメイソン様。

「あら、どうただじゃ置かないのかしら?あなたの様などんくさい男なんて、怖くもなんともないわ」

「言ったな!クソ!」

キーキに手を伸ばそうとするメイソン様を、旦那様や使用人たちが必死に支えている。

「いいかげんにしろ!キーキ、お前は口が悪すぎる。メイソンも、怪我をしているのだから、大人しくしていないか」

旦那様に怒られ、不満そうな顔をしている一人と一匹。キーキにいたっては、頬を膨らまし、プイっとあちらの方向を向いている。

どうやらこの二人、かなり仲が悪い様だ…
これは、増々先が思いやられるわね…
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