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第74話:夢ではない様です
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ゆっくり振り向くと、真っ赤な瞳と目が合った。これは夢?
私、夢を見ているの?
「ディアン?」
「ユーリ…」
再びディアンの声が聞こえる。
「ディアン!!」
ディアンに駆け寄り、そのまま思いっきり抱き着いた。
「ディアン、あなた、目が覚めたの?ずっとずっと眠ったままだから、もう二度と目覚めないと思っていたのに…これは夢なの?本当にディアンが…」
今まで抑えていた感情が、一気に涙と一緒に溢れ出す。
「ユーリ、泣いているのかい?僕…一体どうしたのだっけ?馬車に乗っていたら、急に衝撃が襲って…」
「ディアン、ごめんね。今は少しだけこうして居させて…お願い…」
子供の様に泣きじゃくる私を、ギュッと抱きしめてくれるディアン。本当にディアンが目覚めたんだ。本当に…
それがまだ信じられず、涙が次から次へと溢れ出る。もう二度とディアンは目覚めない、そう思っていた。だから私がディアンを支えよう、そう心に決めていた。でも、ディアンは…
「ユーリ、落ち着いて。ここは一体…」
ゆっくり体を起こすディアン。
「ごめんなさい、私、随分と取り乱してしまったわね。ここは領地よ。半期休みを利用して、ここに来たの」
「領地だって?半期休み?一体どうなっているのだい?」
「ディアン、あなたはあの日、事故に遭ったの。一命をとりとめたのだけれど、ずっと意識が戻らなかったのよ…」
「事故に?ずっと意識が戻らなかった?一体何が起こったのだ?」
かなり混乱しているディアン。
その時だった。
「ユーリ、使用人から聞いたよ。ディアン殿が目覚めたのだってね」
やって来たのは、お兄様だ。
「お兄様、ええ、さっきディアンが」
「オルガノ殿…それにディーゼルも…この景色は、確かに領地だ。僕、本当にずっと眠っていたの?」
「ええ、そうよ。8ヶ月も眠っていたのよ。もう二度と、ディアンは目覚めないのではないかと思っていたのよ。でも、本当によかった。ディアン、目覚めてくれて、本当にありがとう」
再びディアンに抱き着いた。そんな私を、抱きしめ返してくれるディアン。それが嬉しくてたまらない。
「僕は8ヶ月も眠っていたのか。という事は、婚約披露パーティーはどうなったの?」
「婚約披露パーティーは、ささやかだけれどクラスメイトに見守られながら、ひっそりと行ったわ。皆ディアンの事を、物凄く心配してくれたのよ。だから、王都に戻ったら皆にお礼を言わないとね」
どれほどディアンの事を、皆が心配してくれたか。
「そうだわ、ディアンが目を覚ました事を、おじ様やおば様に報告しないと。それにアレックス様にも。レーナ達にも報告しないといけないわ。すぐに手紙を書くから、紙とペンを準備して頂戴。お兄様、ディアンが目覚めたので、今日のこの後の予定はキャンセルでいいかしら?私、やらなければいけない事が沢山あって」
「ああ、もちろんだよ。ディアン殿、君が目覚めてくれてよかった。ユーリの事、よろしくお願いします」
「オルガノ殿…正直まだ頭が混乱していて、何が起こっているのか分からないのですが。なんだか僕、凄く皆に心配をかけてしまった様で。オルガノ殿にも心配をかけた様で、申し訳ございませんでした」
「僕の事は気にしなくてもいいよ。それよりもユーリ、ここに君の大切なサンクトスの羽が落ちているよ。しまっておいた方がいいのではないのかい?」
お兄様が手渡してくれたのは、サンクトスの羽だ。この羽が光ったタイミングで、ディアンが目覚めた。
という事は…
“ありがとうございます。サンクトスの羽さん“
そっと心の中でお礼を言い、再び宝石箱にしまった。
「若奥様、今通信機を使い、旦那様や奥様には連絡を入れました。他の方たちにも、私共が連絡をいたしますのでご安心を」
「ありがとう、さすがディーゼル、仕事が早いから助かるわ」
長年領地をまとめている事だけある。仕事が早いわ。
「なんだかかなり大事になっている様だね。それにしても、目覚めたら領地にいるだなんて。ユーリ、詳しく話を聞かせて…わぁっ」
「ディアン」
ディアンがベッドから出て立ち上がろうとしたのだが、上手く立てずにそのまま座り込んでしまった。
「坊ちゃま、8か月間も眠っていらしたのですから、すぐに立ち上がる事は難しいかと。とにかく、しばらくはベッドにいて下さい」
すぐに使用人たちが、ディアンをベッドに寝かした。
「まさかこんなに力が入らないだなんて、情けないよ。本当に僕、8ヶ月も眠っていたのだね」
「そうよ、ディアン。だからどうか、無理はしないでね。少しずつ、動く練習をしましょう。食事も食べやすいものを、私が食べさせてあげるからね」
「ユーリが食べさせてくれるのか。それは嬉しいな。ユーリ、8ヶ月も1人きりにしてごめんね。その…アレックスに言い寄られたりしていない?」
心配そうな顔で訴えてくるディアン。そんなディアンの顔が、愛おしくてたまらない。
「アレックス様は、ディアンを誰よりも大切に思っているわ。だから私に、何か言ってくることはないし、何より今は、私にとても協力的なのよ」
「そうか…それならいいのだけれど…」
何だか不満そうなディアン。彼ってこんなタイプだったかしら?それでもどんなディアンでも、愛おしくてたまらない。
この日はずっとディアンに寄り添って過ごした。
そしてその日の夜、今日もディアンの布団に入り込んだ。
「ユーリ、何をしているのだい?僕の布団に入るだなんて」
「あら、ディアンが入院したその日と、退院前日、それから、昨日もこうやって寝たのよ。私ね、ディアンの温もりを感じると、よく寝られるの。領地にいる間は寝室も同じだし、今日もディアンの温もりを感じながら眠るわ」
緊張気味のディアンを他所に、瞳を閉じた。するとディアンが、ギュッと抱きしめてくれたのだ。それが嬉しくて、涙が溢れそうになるのを必死に堪えながら、眠りについたのだった。
※次回、最終話です。
よろしくお願いします。
私、夢を見ているの?
「ディアン?」
「ユーリ…」
再びディアンの声が聞こえる。
「ディアン!!」
ディアンに駆け寄り、そのまま思いっきり抱き着いた。
「ディアン、あなた、目が覚めたの?ずっとずっと眠ったままだから、もう二度と目覚めないと思っていたのに…これは夢なの?本当にディアンが…」
今まで抑えていた感情が、一気に涙と一緒に溢れ出す。
「ユーリ、泣いているのかい?僕…一体どうしたのだっけ?馬車に乗っていたら、急に衝撃が襲って…」
「ディアン、ごめんね。今は少しだけこうして居させて…お願い…」
子供の様に泣きじゃくる私を、ギュッと抱きしめてくれるディアン。本当にディアンが目覚めたんだ。本当に…
それがまだ信じられず、涙が次から次へと溢れ出る。もう二度とディアンは目覚めない、そう思っていた。だから私がディアンを支えよう、そう心に決めていた。でも、ディアンは…
「ユーリ、落ち着いて。ここは一体…」
ゆっくり体を起こすディアン。
「ごめんなさい、私、随分と取り乱してしまったわね。ここは領地よ。半期休みを利用して、ここに来たの」
「領地だって?半期休み?一体どうなっているのだい?」
「ディアン、あなたはあの日、事故に遭ったの。一命をとりとめたのだけれど、ずっと意識が戻らなかったのよ…」
「事故に?ずっと意識が戻らなかった?一体何が起こったのだ?」
かなり混乱しているディアン。
その時だった。
「ユーリ、使用人から聞いたよ。ディアン殿が目覚めたのだってね」
やって来たのは、お兄様だ。
「お兄様、ええ、さっきディアンが」
「オルガノ殿…それにディーゼルも…この景色は、確かに領地だ。僕、本当にずっと眠っていたの?」
「ええ、そうよ。8ヶ月も眠っていたのよ。もう二度と、ディアンは目覚めないのではないかと思っていたのよ。でも、本当によかった。ディアン、目覚めてくれて、本当にありがとう」
再びディアンに抱き着いた。そんな私を、抱きしめ返してくれるディアン。それが嬉しくてたまらない。
「僕は8ヶ月も眠っていたのか。という事は、婚約披露パーティーはどうなったの?」
「婚約披露パーティーは、ささやかだけれどクラスメイトに見守られながら、ひっそりと行ったわ。皆ディアンの事を、物凄く心配してくれたのよ。だから、王都に戻ったら皆にお礼を言わないとね」
どれほどディアンの事を、皆が心配してくれたか。
「そうだわ、ディアンが目を覚ました事を、おじ様やおば様に報告しないと。それにアレックス様にも。レーナ達にも報告しないといけないわ。すぐに手紙を書くから、紙とペンを準備して頂戴。お兄様、ディアンが目覚めたので、今日のこの後の予定はキャンセルでいいかしら?私、やらなければいけない事が沢山あって」
「ああ、もちろんだよ。ディアン殿、君が目覚めてくれてよかった。ユーリの事、よろしくお願いします」
「オルガノ殿…正直まだ頭が混乱していて、何が起こっているのか分からないのですが。なんだか僕、凄く皆に心配をかけてしまった様で。オルガノ殿にも心配をかけた様で、申し訳ございませんでした」
「僕の事は気にしなくてもいいよ。それよりもユーリ、ここに君の大切なサンクトスの羽が落ちているよ。しまっておいた方がいいのではないのかい?」
お兄様が手渡してくれたのは、サンクトスの羽だ。この羽が光ったタイミングで、ディアンが目覚めた。
という事は…
“ありがとうございます。サンクトスの羽さん“
そっと心の中でお礼を言い、再び宝石箱にしまった。
「若奥様、今通信機を使い、旦那様や奥様には連絡を入れました。他の方たちにも、私共が連絡をいたしますのでご安心を」
「ありがとう、さすがディーゼル、仕事が早いから助かるわ」
長年領地をまとめている事だけある。仕事が早いわ。
「なんだかかなり大事になっている様だね。それにしても、目覚めたら領地にいるだなんて。ユーリ、詳しく話を聞かせて…わぁっ」
「ディアン」
ディアンがベッドから出て立ち上がろうとしたのだが、上手く立てずにそのまま座り込んでしまった。
「坊ちゃま、8か月間も眠っていらしたのですから、すぐに立ち上がる事は難しいかと。とにかく、しばらくはベッドにいて下さい」
すぐに使用人たちが、ディアンをベッドに寝かした。
「まさかこんなに力が入らないだなんて、情けないよ。本当に僕、8ヶ月も眠っていたのだね」
「そうよ、ディアン。だからどうか、無理はしないでね。少しずつ、動く練習をしましょう。食事も食べやすいものを、私が食べさせてあげるからね」
「ユーリが食べさせてくれるのか。それは嬉しいな。ユーリ、8ヶ月も1人きりにしてごめんね。その…アレックスに言い寄られたりしていない?」
心配そうな顔で訴えてくるディアン。そんなディアンの顔が、愛おしくてたまらない。
「アレックス様は、ディアンを誰よりも大切に思っているわ。だから私に、何か言ってくることはないし、何より今は、私にとても協力的なのよ」
「そうか…それならいいのだけれど…」
何だか不満そうなディアン。彼ってこんなタイプだったかしら?それでもどんなディアンでも、愛おしくてたまらない。
この日はずっとディアンに寄り添って過ごした。
そしてその日の夜、今日もディアンの布団に入り込んだ。
「ユーリ、何をしているのだい?僕の布団に入るだなんて」
「あら、ディアンが入院したその日と、退院前日、それから、昨日もこうやって寝たのよ。私ね、ディアンの温もりを感じると、よく寝られるの。領地にいる間は寝室も同じだし、今日もディアンの温もりを感じながら眠るわ」
緊張気味のディアンを他所に、瞳を閉じた。するとディアンが、ギュッと抱きしめてくれたのだ。それが嬉しくて、涙が溢れそうになるのを必死に堪えながら、眠りについたのだった。
※次回、最終話です。
よろしくお願いします。
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