68 / 75
第68話:ディアンの退院を皆が喜んでくれました
しおりを挟む
「お嬢様、そろそろご夕食のお時間です」
「分かったわ、ありがとう」
急いでサンクトスの羽をしまい、夕食を頂く。病院で食べる夕食も、今日で最後か…そう思うと、なんだか寂しいわね。
湯あみを済ませ、ベッドに入るが、何だか落ち着かない。
今日くらい、いいわよね。
そっとディアンのベッドに入り込んだ。
「お嬢様、またカスタマーディス伯爵令息様のベッドに入り込んで!」
「あら、明日には退院するのだから、最後ぐらいいいでしょう?明日からディアンはカスタマーディス伯爵家、私は自宅で生活するのだから。また夜は離れ離れになってしまうのよ。最後の日くらい、一緒に寝ても構わないでしょ。早朝にはちゃんとベッドから出るから」
そう笑顔で使用人に伝え、そのまま瞳を閉じた。温かくて落ち着くディアンの温もり。この温もりがあれば、私は生きていける。そんな事を考えながら、眠りについた。
翌日
アレックス様も手伝いに来てくれ、無事にディアンを退院させることが出来た。
「先生、皆様、大変お世話になりました」
「今までよく頑張りましたね。ディアン様には素敵な婚約者と、ご両親、それに沢山のご友人が付いていらっしゃいます。いつかきっと、目覚めて下さると私は信じていますよ」
先生の言葉が、胸に響く。いつかきっと目覚める…私もディアンが目覚める事を、信じたい。
「ありがとうございます。ディアンはたくさんの人に愛されて、本当に幸せ者です。それでは私共はこれで失礼いたします。本当にお世話になりました」
お見送りをしてくれる先生たちに頭を下げ、私たちも馬車に乗り込んだ。今日の為に準備された、ベッド付きの特殊な馬車に乗り込み、ディアンの家を目指す。
相変わらず眠ったままのディアン。でも、やっと家に帰れるのだ。しばらく進むと、懐かしいカスタマーディス伯爵家が見えて来た。
そこにはたくさんの使用人…だけではない。レーナたちを含めた、クラスメイト達も待ってくれていたのだ。
これは一体、どういう事だろう。
困惑する私を他所に、馬車の扉が開いた。
ゆっくり馬車から降りると
「「「「「ディアン(様)、退院おめでとう(ございます)」」」」
皆が一斉に声を上げたのだ。
「皆、一体どうしてここに?」
「僕が皆に声をかけたんだ。ディアンの事、皆心配していたから。皆でディアンを迎えたくてね。カスタマーディス伯爵には、話をしておいたのだけれど…」
皆がおじ様の方を向く。
「ああ、実はアレックス殿からぜひと言われていて…まさかこんなにたくさんの方たちが、来てくださるだなんて。ディアンも喜んでいる事でしょう」
おじ様が目頭を押さえている。確かにこんなにたくさんの人が、ディアンを迎えてくれているだなんてね。
「皆様、今日はディアンの為に集まって下さり、ありがとうございます。ささやかですが、今からディアンの退院祝いを行おうと思っております。ぜひご参加ください」
おじ様の案内で、皆が伯爵家の大広間に通された。そこにはたくさんのご馳走と、ディアンの退院のお祝いを祝う幕が張られていた。
「まあ、こんなに立派な会場を準備してくださっていたのですね。でも、おじ様、1つ忘れていることがありますわ」
そう、今日は本来なら、私たちの婚約披露パーティーを行う日だったのだ。
「皆、今日はディアンの退院祝いに来てくれてありがとう。それから、今日は私とディアンの婚約披露パーティーの日だったの。せっかくだから、その件も一緒にお祝いしてもいいかしら?」
せっかく皆が集まってくれたのだ。私達のお祝いもしたい。
「実はね、そう言うと思って、あなたの家から今日着るはずだったドレスを借りて来たのよ」
「私はユーリ様が付けて下さる予定の、アクセサリーを持ってまいりましたの。そうですわ、せっかくですから、ディアン様もお着替えを行いましょう。お着替えくらいなら、問題なででしょう?」
どうやら女性たちは、私たちの婚約披露パーティーの件を覚えてくれていた様で、準備をしてくれていた様だ。
「皆、ありがとう。まさかドレスまで持ってきてくれているだなんて、思わなかったわ。それじゃあ、早速着替えないとね。おば様、お部屋をお借りしてもいいかしら?」
「ええ、もちろんよ。この部屋を使って頂戴」
おば様に案内された部屋で、着替えを済ませた。
「ユーリちゃん、そのドレス、本当に素敵よ。それにアクセサリーも。とてもよく似合っているわ。本来なら今日、ディアンと笑顔で婚約披露パーティーを迎える予定だったのにね…」
目頭を押さえているおば様。きっと込みあげるものがあるのだろう。
「おば様、泣かないで下さい。私はこうやってドレスを着て、気心知れた友人たちにお祝いしてもらえるだけで、十分幸せですわ。レーナ、カリン、マリアン、それにセレナ様。本当にありがとう。私にとってもディアンにとっても、最高の思い出になったわ」
「またユーリは大げさなのだから。ほら、皆が待っているから、行きましょう」
友人たちに手を引かれ、再び大広間に戻ってきた。
ディアンも着替えを済ませた様で、青いタキシードを身にまとっている。
「皆そろったな。それではディアンの退院及び、ユーリ、ディアンの婚約をお祝いして、乾杯!」
「「「「乾杯」」」」」
「分かったわ、ありがとう」
急いでサンクトスの羽をしまい、夕食を頂く。病院で食べる夕食も、今日で最後か…そう思うと、なんだか寂しいわね。
湯あみを済ませ、ベッドに入るが、何だか落ち着かない。
今日くらい、いいわよね。
そっとディアンのベッドに入り込んだ。
「お嬢様、またカスタマーディス伯爵令息様のベッドに入り込んで!」
「あら、明日には退院するのだから、最後ぐらいいいでしょう?明日からディアンはカスタマーディス伯爵家、私は自宅で生活するのだから。また夜は離れ離れになってしまうのよ。最後の日くらい、一緒に寝ても構わないでしょ。早朝にはちゃんとベッドから出るから」
そう笑顔で使用人に伝え、そのまま瞳を閉じた。温かくて落ち着くディアンの温もり。この温もりがあれば、私は生きていける。そんな事を考えながら、眠りについた。
翌日
アレックス様も手伝いに来てくれ、無事にディアンを退院させることが出来た。
「先生、皆様、大変お世話になりました」
「今までよく頑張りましたね。ディアン様には素敵な婚約者と、ご両親、それに沢山のご友人が付いていらっしゃいます。いつかきっと、目覚めて下さると私は信じていますよ」
先生の言葉が、胸に響く。いつかきっと目覚める…私もディアンが目覚める事を、信じたい。
「ありがとうございます。ディアンはたくさんの人に愛されて、本当に幸せ者です。それでは私共はこれで失礼いたします。本当にお世話になりました」
お見送りをしてくれる先生たちに頭を下げ、私たちも馬車に乗り込んだ。今日の為に準備された、ベッド付きの特殊な馬車に乗り込み、ディアンの家を目指す。
相変わらず眠ったままのディアン。でも、やっと家に帰れるのだ。しばらく進むと、懐かしいカスタマーディス伯爵家が見えて来た。
そこにはたくさんの使用人…だけではない。レーナたちを含めた、クラスメイト達も待ってくれていたのだ。
これは一体、どういう事だろう。
困惑する私を他所に、馬車の扉が開いた。
ゆっくり馬車から降りると
「「「「「ディアン(様)、退院おめでとう(ございます)」」」」
皆が一斉に声を上げたのだ。
「皆、一体どうしてここに?」
「僕が皆に声をかけたんだ。ディアンの事、皆心配していたから。皆でディアンを迎えたくてね。カスタマーディス伯爵には、話をしておいたのだけれど…」
皆がおじ様の方を向く。
「ああ、実はアレックス殿からぜひと言われていて…まさかこんなにたくさんの方たちが、来てくださるだなんて。ディアンも喜んでいる事でしょう」
おじ様が目頭を押さえている。確かにこんなにたくさんの人が、ディアンを迎えてくれているだなんてね。
「皆様、今日はディアンの為に集まって下さり、ありがとうございます。ささやかですが、今からディアンの退院祝いを行おうと思っております。ぜひご参加ください」
おじ様の案内で、皆が伯爵家の大広間に通された。そこにはたくさんのご馳走と、ディアンの退院のお祝いを祝う幕が張られていた。
「まあ、こんなに立派な会場を準備してくださっていたのですね。でも、おじ様、1つ忘れていることがありますわ」
そう、今日は本来なら、私たちの婚約披露パーティーを行う日だったのだ。
「皆、今日はディアンの退院祝いに来てくれてありがとう。それから、今日は私とディアンの婚約披露パーティーの日だったの。せっかくだから、その件も一緒にお祝いしてもいいかしら?」
せっかく皆が集まってくれたのだ。私達のお祝いもしたい。
「実はね、そう言うと思って、あなたの家から今日着るはずだったドレスを借りて来たのよ」
「私はユーリ様が付けて下さる予定の、アクセサリーを持ってまいりましたの。そうですわ、せっかくですから、ディアン様もお着替えを行いましょう。お着替えくらいなら、問題なででしょう?」
どうやら女性たちは、私たちの婚約披露パーティーの件を覚えてくれていた様で、準備をしてくれていた様だ。
「皆、ありがとう。まさかドレスまで持ってきてくれているだなんて、思わなかったわ。それじゃあ、早速着替えないとね。おば様、お部屋をお借りしてもいいかしら?」
「ええ、もちろんよ。この部屋を使って頂戴」
おば様に案内された部屋で、着替えを済ませた。
「ユーリちゃん、そのドレス、本当に素敵よ。それにアクセサリーも。とてもよく似合っているわ。本来なら今日、ディアンと笑顔で婚約披露パーティーを迎える予定だったのにね…」
目頭を押さえているおば様。きっと込みあげるものがあるのだろう。
「おば様、泣かないで下さい。私はこうやってドレスを着て、気心知れた友人たちにお祝いしてもらえるだけで、十分幸せですわ。レーナ、カリン、マリアン、それにセレナ様。本当にありがとう。私にとってもディアンにとっても、最高の思い出になったわ」
「またユーリは大げさなのだから。ほら、皆が待っているから、行きましょう」
友人たちに手を引かれ、再び大広間に戻ってきた。
ディアンも着替えを済ませた様で、青いタキシードを身にまとっている。
「皆そろったな。それではディアンの退院及び、ユーリ、ディアンの婚約をお祝いして、乾杯!」
「「「「乾杯」」」」」
400
お気に入りに追加
2,385
あなたにおすすめの小説
夫と親友が、私に隠れて抱き合っていました ~2人の幸せのため、黙って身を引こうと思います~
小倉みち
恋愛
元侯爵令嬢のティアナは、幼馴染のジェフリーの元へ嫁ぎ、穏やかな日々を過ごしていた。
激しい恋愛関係の末に結婚したというわけではなかったが、それでもお互いに思いやりを持っていた。
貴族にありがちで平凡な、だけど幸せな生活。
しかし、その幸せは約1年で終わりを告げることとなる。
ティアナとジェフリーがパーティに参加したある日のこと。
ジェフリーとはぐれてしまったティアナは、彼を探しに中庭へと向かう。
――そこで見たものは。
ジェフリーと自分の親友が、暗闇の中で抱き合っていた姿だった。
「……もう、この気持ちを抑えきれないわ」
「ティアナに悪いから」
「だけど、あなただってそうでしょう? 私、ずっと忘れられなかった」
そんな会話を聞いてしまったティアナは、頭が真っ白になった。
ショックだった。
ずっと信じてきた夫と親友の不貞。
しかし怒りより先に湧いてきたのは、彼らに幸せになってほしいという気持ち。
私さえいなければ。
私さえ身を引けば、私の大好きな2人はきっと幸せになれるはず。
ティアナは2人のため、黙って実家に帰ることにしたのだ。
だがお腹の中には既に、小さな命がいて――。
振られたあとに優しくされても困ります
菜花
恋愛
男爵令嬢ミリーは親の縁で公爵家のアルフォンスと婚約を結ぶ。一目惚れしたミリーは好かれようと猛アタックしたものの、彼の氷のような心は解けず半年で婚約解消となった。それから半年後、貴族の通う学園に入学したミリーを待っていたのはアルフォンスからの溺愛だった。ええとごめんなさい。普通に迷惑なんですけど……。カクヨムにも投稿しています。
たとえこの想いが届かなくても
白雲八鈴
恋愛
恋に落ちるというのはこういう事なのでしょうか。ああ、でもそれは駄目なこと、目の前の人物は隣国の王で、私はこの国の王太子妃。報われぬ恋。たとえこの想いが届かなくても・・・。
王太子は愛妾を愛し、自分はお飾りの王太子妃。しかし、自分の立場ではこの思いを言葉にすることはできないと恋心を己の中に押し込めていく。そんな彼女の生き様とは。
*いつもどおり誤字脱字はほどほどにあります。
*主人公に少々問題があるかもしれません。(これもいつもどおり?)
好きな人の好きな人
ぽぽ
恋愛
"私には10年以上思い続ける初恋相手がいる。"
初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。
恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。
そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。
【完結】どうかその想いが実りますように
おもち。
恋愛
婚約者が私ではない別の女性を愛しているのは知っている。お互い恋愛感情はないけど信頼関係は築けていると思っていたのは私の独りよがりだったみたい。
学園では『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と陰で言われているのは分かってる。
いつまでも貴方を私に縛り付けていては可哀想だわ、だから私から貴方を解放します。
貴方のその想いが実りますように……
もう私には願う事しかできないから。
※ざまぁは薄味となっております。(当社比)もしかしたらざまぁですらないかもしれません。汗
お読みいただく際ご注意くださいませ。
※完結保証。全10話+番外編1話です。
※番外編2話追加しました。
※こちらの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。
人生の全てを捨てた王太子妃
八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。
傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。
だけど本当は・・・
受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。
※※※幸せな話とは言い難いです※※※
タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。
※本編六話+番外編六話の全十二話。
※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。
愛する婚約者の君へ。
水垣するめ
恋愛
私エレナ・スコット男爵令嬢には婚約者がいる。
名前はレイ・ライランス。この国の騎士団長の息子で、次期騎士団長だ。
金髪を後ろで一束にまとめていて、表情と物腰は柔らかく、とても武人には見えないような端正な顔立ちをしている。
彼は今、戦場にいる。
国の最北端で、恐ろしい魔物と戦っているのだ。
魔物との戦いは長い年月に及び、この国の兵士は二年、最北端で魔物と戦う義務がある。
レイは今、その義務を果たしているところだ。
婚約者としては心配なことこの上ないが、次期騎士団長ということもあり、比較的安全な後方に置かれているらしい。
そんな私の愛する婚約者からは、毎日手紙が届く。
【完結】私を忘れてしまった貴方に、憎まれています
高瀬船
恋愛
夜会会場で突然意識を失うように倒れてしまった自分の旦那であるアーヴィング様を急いで邸へ連れて戻った。
そうして、医者の診察が終わり、体に異常は無い、と言われて安心したのも束の間。
最愛の旦那様は、目が覚めると綺麗さっぱりと私の事を忘れてしまっており、私と結婚した事も、お互い愛を育んだ事を忘れ。
何故か、私を憎しみの籠った瞳で見つめるのです。
優しかったアーヴィング様が、突然見知らぬ男性になってしまったかのようで、冷たくあしらわれ、憎まれ、私の心は日が経つにつれて疲弊して行く一方となってしまったのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる