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第68話:ディアンの退院を皆が喜んでくれました

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「お嬢様、そろそろご夕食のお時間です」

「分かったわ、ありがとう」

 急いでサンクトスの羽をしまい、夕食を頂く。病院で食べる夕食も、今日で最後か…そう思うと、なんだか寂しいわね。

 湯あみを済ませ、ベッドに入るが、何だか落ち着かない。

 今日くらい、いいわよね。

 そっとディアンのベッドに入り込んだ。

「お嬢様、またカスタマーディス伯爵令息様のベッドに入り込んで!」

「あら、明日には退院するのだから、最後ぐらいいいでしょう?明日からディアンはカスタマーディス伯爵家、私は自宅で生活するのだから。また夜は離れ離れになってしまうのよ。最後の日くらい、一緒に寝ても構わないでしょ。早朝にはちゃんとベッドから出るから」

 そう笑顔で使用人に伝え、そのまま瞳を閉じた。温かくて落ち着くディアンの温もり。この温もりがあれば、私は生きていける。そんな事を考えながら、眠りについた。

 翌日
 アレックス様も手伝いに来てくれ、無事にディアンを退院させることが出来た。

「先生、皆様、大変お世話になりました」

「今までよく頑張りましたね。ディアン様には素敵な婚約者と、ご両親、それに沢山のご友人が付いていらっしゃいます。いつかきっと、目覚めて下さると私は信じていますよ」

 先生の言葉が、胸に響く。いつかきっと目覚める…私もディアンが目覚める事を、信じたい。

「ありがとうございます。ディアンはたくさんの人に愛されて、本当に幸せ者です。それでは私共はこれで失礼いたします。本当にお世話になりました」

 お見送りをしてくれる先生たちに頭を下げ、私たちも馬車に乗り込んだ。今日の為に準備された、ベッド付きの特殊な馬車に乗り込み、ディアンの家を目指す。

 相変わらず眠ったままのディアン。でも、やっと家に帰れるのだ。しばらく進むと、懐かしいカスタマーディス伯爵家が見えて来た。

 そこにはたくさんの使用人…だけではない。レーナたちを含めた、クラスメイト達も待ってくれていたのだ。

 これは一体、どういう事だろう。

 困惑する私を他所に、馬車の扉が開いた。

 ゆっくり馬車から降りると

「「「「「ディアン(様)、退院おめでとう(ございます)」」」」

 皆が一斉に声を上げたのだ。

「皆、一体どうしてここに?」

「僕が皆に声をかけたんだ。ディアンの事、皆心配していたから。皆でディアンを迎えたくてね。カスタマーディス伯爵には、話をしておいたのだけれど…」

 皆がおじ様の方を向く。

「ああ、実はアレックス殿からぜひと言われていて…まさかこんなにたくさんの方たちが、来てくださるだなんて。ディアンも喜んでいる事でしょう」

 おじ様が目頭を押さえている。確かにこんなにたくさんの人が、ディアンを迎えてくれているだなんてね。

「皆様、今日はディアンの為に集まって下さり、ありがとうございます。ささやかですが、今からディアンの退院祝いを行おうと思っております。ぜひご参加ください」

 おじ様の案内で、皆が伯爵家の大広間に通された。そこにはたくさんのご馳走と、ディアンの退院のお祝いを祝う幕が張られていた。

「まあ、こんなに立派な会場を準備してくださっていたのですね。でも、おじ様、1つ忘れていることがありますわ」

 そう、今日は本来なら、私たちの婚約披露パーティーを行う日だったのだ。

「皆、今日はディアンの退院祝いに来てくれてありがとう。それから、今日は私とディアンの婚約披露パーティーの日だったの。せっかくだから、その件も一緒にお祝いしてもいいかしら?」

 せっかく皆が集まってくれたのだ。私達のお祝いもしたい。

「実はね、そう言うと思って、あなたの家から今日着るはずだったドレスを借りて来たのよ」

「私はユーリ様が付けて下さる予定の、アクセサリーを持ってまいりましたの。そうですわ、せっかくですから、ディアン様もお着替えを行いましょう。お着替えくらいなら、問題なででしょう?」

 どうやら女性たちは、私たちの婚約披露パーティーの件を覚えてくれていた様で、準備をしてくれていた様だ。

「皆、ありがとう。まさかドレスまで持ってきてくれているだなんて、思わなかったわ。それじゃあ、早速着替えないとね。おば様、お部屋をお借りしてもいいかしら?」

「ええ、もちろんよ。この部屋を使って頂戴」

 おば様に案内された部屋で、着替えを済ませた。

「ユーリちゃん、そのドレス、本当に素敵よ。それにアクセサリーも。とてもよく似合っているわ。本来なら今日、ディアンと笑顔で婚約披露パーティーを迎える予定だったのにね…」

 目頭を押さえているおば様。きっと込みあげるものがあるのだろう。

「おば様、泣かないで下さい。私はこうやってドレスを着て、気心知れた友人たちにお祝いしてもらえるだけで、十分幸せですわ。レーナ、カリン、マリアン、それにセレナ様。本当にありがとう。私にとってもディアンにとっても、最高の思い出になったわ」

「またユーリは大げさなのだから。ほら、皆が待っているから、行きましょう」

 友人たちに手を引かれ、再び大広間に戻ってきた。

 ディアンも着替えを済ませた様で、青いタキシードを身にまとっている。

「皆そろったな。それではディアンの退院及び、ユーリ、ディアンの婚約をお祝いして、乾杯!」

「「「「乾杯」」」」」
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