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第61話:一命は取り留めたけれど…
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ここにきてどれくらい時間が経っただろう。お母様もおじ様もおば様も、全く口を開かない。重い空気だけが流れ続けている。そしてみんな、中々開かない扉をじっと見つめていた。
今手術はどれくらい進んでいるのだろうか?ディアンは大丈夫なのだろうか?不安で胸が押しつぶされそうだ。
その時だった。手術室のドアが開いたのだ。そして中から男性が出て来た。きっとお医者様なのだろう。
「先生、ディアンの容態はどうなのですか?」
一斉にお医者様に駆け寄った。
「ディアン・カスタマーディス様のご家族の方ですね。結論から言いますと、ディアン様は一命を取り留めました。ただ、出血が酷く、もしかしたら意識が戻らないかもしれません」
「ディアンの意識が戻らないとは、一体どういうことですか?一命は取り留めたのですよね?先生、金ならいくらでも支払います。どうかディアンの意識を、取り戻してください。お願いします」
「カスタマーディス伯爵殿、私共は出来るだけの事をいたしました。後はディアン様の生命力に掛けるしかないのです。すぐに目を覚まされるかもしれませんし、一生目覚めない事も…」
「そんな…もしディアンが一生目覚めなかったら…」
あまりのショックに、その場に座り込んでしまった。
そんな…せっかくディアンと気持ちが通じ合って、やっとこれから幸せになれると思っていたのに。どうして?どうしてこんな事になったの?嫌よ…そんなの、嫌!
「先生、ディアンに会わせてください。ディアンは…ディアン!」
手術室から出てきたのは、包帯でぐるぐる巻きにされたディアンだ。急いで駆け寄る。
「ディアン、なんて事なの。こんなに傷だらけで…可哀そうに」
変わり果てたディアンの姿を見て、涙が込みあげてきた。きっとものすごく痛かっただろう。想像しただけで、胸が潰れそうになる。
おじ様やおば様、お母様もディアンの元に駆け寄ってきた。
「皆様、今からディアン様を病室に運びますので、どうか少し離れて下さい。病室はこちらになります」
看護師さんに案内されたのは、手術室のすぐ近くの部屋だ。初めて病室に来たが、思ったより広い。まるで貴族の部屋の様な造りをしている。
「私、病室なんて始めて来たけれど、意外と立派なのね…」
お母様がポツリと呟いた。私達貴族は、各家に専属の医者がおり、よほど大きな病気をしない限りは、自宅で治療を受けるため、病院にお世話になる事はほとんどない。その為、病室を見るのは初めてなのだ。
「カスタマーディス伯爵様、しばらくディアン様は入院になりますので、同意書にサインをお願いします。それから、付き添われる方のお部屋は隣になります。あの扉から、自由に行き来出来ますので。詳しくは使用人に説明させていただきますね」
どうやら付き添いとして、ディアンの傍にいられる様だ。
おじ様たちが手続きをしている間に、そっとディアンに近づき、手を握る。
温かい…
よかった、生きているのね。
でも、瞳は固く閉ざされたまま。顔や体も包帯が巻かれている。そんなディアンの姿を見たら、また涙が溢れだした。
どうしてこんな事になってしまったのだろう。つい数時間前まで、元気だったのに…
「ディアン、お願い…目を覚まして…お願い」
気が付くとそんな事を呟いていた。もしこのままずっと、目を覚まさなかったら、私は…
「ユーリ、ディアン様の手術もとりあえず終わったし、私たちはもう帰りましょう」
お母様は一体、何を言っているのだろう。ディアンがこんな状況なのに、帰れるわけがないだろう。もし私が屋敷に戻っている間に、容態が急変してしまったら…
考えただけで恐ろしい。
「ディアンがこんな状況なのに、屋敷には戻れませんわ。どうかお母様1人で戻ってください。おじ様、おば様、ディアンの事がどうしても心配なのです。どうか今夜は、私に付き添いをさせていただけませんか?」
さっき看護師さんが、付き添い用の部屋が準備されていると言っていた。という事は、ディアンの傍にいてもいいという事だろう。
「ユーリ嬢、気持ちは嬉しいが、明日も貴族学院があるのだろう?それにさっき医者から詳しく聞いたが、ディアンの容態はある程度安定している様だから、わざわざ付き添う必要はないとの事だ」
「お言葉ですがおじ様、万が一容態が急変しないとも限りませんわ。見て下さい、ディアンの姿を。こんなに包帯を巻かれて…もし私が屋敷に戻っている間に、ディアンにもしもの事があったら、私は…」
とても今、ディアンから離れられる状況ではない。きっと屋敷に戻っても、ディアンが心配で、何も手につかないだろう。
「ユーリちゃん、ありがとう。きっとディアンも、ユーリちゃんが傍にいてくれた方が嬉しいと思うわ。あなた、リリー、ユーリちゃんに付き添いをお願いしてもいいわよね」
「アンがそう言うなら、私はいいけれど…」
「分かったよ、ユーリ嬢がそうしたいと言ってくれているのだから、お言葉に甘えよう。もしディアンが目覚めた時、ユーリ嬢がいた方が嬉しいだろうからな」
どうやら付き添いの許可が下りた様だ。
「ありがとうございます、おじ様、おば様、お母様。私、精一杯ディアンのお世話をいたしますわ」
今手術はどれくらい進んでいるのだろうか?ディアンは大丈夫なのだろうか?不安で胸が押しつぶされそうだ。
その時だった。手術室のドアが開いたのだ。そして中から男性が出て来た。きっとお医者様なのだろう。
「先生、ディアンの容態はどうなのですか?」
一斉にお医者様に駆け寄った。
「ディアン・カスタマーディス様のご家族の方ですね。結論から言いますと、ディアン様は一命を取り留めました。ただ、出血が酷く、もしかしたら意識が戻らないかもしれません」
「ディアンの意識が戻らないとは、一体どういうことですか?一命は取り留めたのですよね?先生、金ならいくらでも支払います。どうかディアンの意識を、取り戻してください。お願いします」
「カスタマーディス伯爵殿、私共は出来るだけの事をいたしました。後はディアン様の生命力に掛けるしかないのです。すぐに目を覚まされるかもしれませんし、一生目覚めない事も…」
「そんな…もしディアンが一生目覚めなかったら…」
あまりのショックに、その場に座り込んでしまった。
そんな…せっかくディアンと気持ちが通じ合って、やっとこれから幸せになれると思っていたのに。どうして?どうしてこんな事になったの?嫌よ…そんなの、嫌!
「先生、ディアンに会わせてください。ディアンは…ディアン!」
手術室から出てきたのは、包帯でぐるぐる巻きにされたディアンだ。急いで駆け寄る。
「ディアン、なんて事なの。こんなに傷だらけで…可哀そうに」
変わり果てたディアンの姿を見て、涙が込みあげてきた。きっとものすごく痛かっただろう。想像しただけで、胸が潰れそうになる。
おじ様やおば様、お母様もディアンの元に駆け寄ってきた。
「皆様、今からディアン様を病室に運びますので、どうか少し離れて下さい。病室はこちらになります」
看護師さんに案内されたのは、手術室のすぐ近くの部屋だ。初めて病室に来たが、思ったより広い。まるで貴族の部屋の様な造りをしている。
「私、病室なんて始めて来たけれど、意外と立派なのね…」
お母様がポツリと呟いた。私達貴族は、各家に専属の医者がおり、よほど大きな病気をしない限りは、自宅で治療を受けるため、病院にお世話になる事はほとんどない。その為、病室を見るのは初めてなのだ。
「カスタマーディス伯爵様、しばらくディアン様は入院になりますので、同意書にサインをお願いします。それから、付き添われる方のお部屋は隣になります。あの扉から、自由に行き来出来ますので。詳しくは使用人に説明させていただきますね」
どうやら付き添いとして、ディアンの傍にいられる様だ。
おじ様たちが手続きをしている間に、そっとディアンに近づき、手を握る。
温かい…
よかった、生きているのね。
でも、瞳は固く閉ざされたまま。顔や体も包帯が巻かれている。そんなディアンの姿を見たら、また涙が溢れだした。
どうしてこんな事になってしまったのだろう。つい数時間前まで、元気だったのに…
「ディアン、お願い…目を覚まして…お願い」
気が付くとそんな事を呟いていた。もしこのままずっと、目を覚まさなかったら、私は…
「ユーリ、ディアン様の手術もとりあえず終わったし、私たちはもう帰りましょう」
お母様は一体、何を言っているのだろう。ディアンがこんな状況なのに、帰れるわけがないだろう。もし私が屋敷に戻っている間に、容態が急変してしまったら…
考えただけで恐ろしい。
「ディアンがこんな状況なのに、屋敷には戻れませんわ。どうかお母様1人で戻ってください。おじ様、おば様、ディアンの事がどうしても心配なのです。どうか今夜は、私に付き添いをさせていただけませんか?」
さっき看護師さんが、付き添い用の部屋が準備されていると言っていた。という事は、ディアンの傍にいてもいいという事だろう。
「ユーリ嬢、気持ちは嬉しいが、明日も貴族学院があるのだろう?それにさっき医者から詳しく聞いたが、ディアンの容態はある程度安定している様だから、わざわざ付き添う必要はないとの事だ」
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とても今、ディアンから離れられる状況ではない。きっと屋敷に戻っても、ディアンが心配で、何も手につかないだろう。
「ユーリちゃん、ありがとう。きっとディアンも、ユーリちゃんが傍にいてくれた方が嬉しいと思うわ。あなた、リリー、ユーリちゃんに付き添いをお願いしてもいいわよね」
「アンがそう言うなら、私はいいけれど…」
「分かったよ、ユーリ嬢がそうしたいと言ってくれているのだから、お言葉に甘えよう。もしディアンが目覚めた時、ユーリ嬢がいた方が嬉しいだろうからな」
どうやら付き添いの許可が下りた様だ。
「ありがとうございます、おじ様、おば様、お母様。私、精一杯ディアンのお世話をいたしますわ」
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