これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi

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第56話:アレックス様が学院に戻って来てくれました

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 レーナに話しを聞いてもらったその日、早速レーナに教えてもらったデザインを持って、ディアンの家へと向かった。

 ただ…

「ごめんなさい、ユーリちゃん。今ディアンは少し出掛けていて。せっかくユーリちゃんが来てくれたのだから、ディアンが帰ってくるまで、私と一緒にお茶をしましょう」

 どうやらディアンは出掛けている様で、おば様と一緒にお茶をしながら、ディアンを待つ事にした。せっかくなので、おば様にもデザインを見せた。

「まあ、素敵ね。そうだわ、ここのメイン会場の木には、宝石で作ったお花を飾るのはどうかしら?」

「まあ、素敵ですね。それでしたら、私とディアンの瞳をイメージしたお花なんてどうでしょう?」

「いいわ、とても素敵ね。よかった…ユーリちゃん、最近あまり元気がないとリリーが話していたから、心配していたの。ユーリちゃん、改めてディアンを選んでくれてありがとう。あの子、ずっとユーリちゃんが好きだったから。私達も嬉しくてね。でも、ユーリちゃんが無理をしていないか心配で…」

 おば様…

 まさかおば様にまで、心配をかけてしまっていただなんて…私、何をやっているのかしら…

「ご心配をおかけしてごめんなさい。お礼を言うのは私の方ですわ。ディアンがいてくれたから私は、前に進むことが出来たのです。ディアンが傍にいてくれるから、今とても幸せなのです。私はディアンが大好きで、ディアンと共に未来を歩みたい、そう強く思っています。でも、私は弱くて…」

「ユーリちゃんは弱く何てないわ。ごめんなさい、嫌な話をしてしまったわね。さあ、装飾の話の続きをしましょう。それじゃあ、早速宝石商を呼ばないとね。なんだか増々楽しくなって来たわ。ちょっとあなた、明日にでも宝石商に来てもらう様に手配しておいて」

 近くにいたメイドに、指示を出すおば様。

「おば様、ディアンに報告してからの方がいいのではありませんか?ディアンの考えも聞かないと」

「いいのよ、あの子は。男はね、そう言うのにあまり興味がないから。きっとディアンも“ユーリの言う事に従うよ”と言うに決まっているわ」

 そう言っておば様が笑っていた。その時だった。

「ユーリ、来ていたのだね。なんだかとても楽しそうに話していた様だけれど、一体何の話をしていたのだい?」

「おかえりなさい、ディアン。今日話していた装飾の件、早速レーナに話したの。それで色々と教えてもらって、私なりにデザインを描いてみたから、ディアンにみてほしくて持ってきたのよ。それで今、おば様に見てもらっていたの」

「そうだったのだね。僕にも見せて」

 ディアンに早速デザインを見せた。

「さっきユーリちゃんとも話していたのだけれど、メイン会場の木には、あなた達の瞳の色の宝石を使った造花を飾ろうと思っているの。どうかしら?」

「ユーリがそれでいいと言っているなら、僕はそれでいいと思うよ」

 ディアンが嬉しそうに呟いている。そんなディアンを見た私とおば様が、2人で顔を見合わせ笑った。

「まあ、ディアンったら」

「男はすぐこれだものね。ユーリちゃん、私達で勝手に決めましょう」

 私達がなぜ笑っているのか分からない様で、ディアンが首をかしげている。その姿がおかしくて、また声を上げて笑った。

 こんな風に笑ったのは、いつぶりだろう。そう思うほど、笑ったのだ。

 その後はディアンも加わり、和やかな空気の中過ごした。

 そして…

「ユーリ、今日は訪ねてきてくれてありがとう。今日ユーリの笑顔を見られて、嬉しかったよ」

 いつもの様に家まで送ってくれるディアンと一緒に、帰りの馬車に乗っていた時の事。ディアンがポツリと呟いたのだ。

「ディアン、今まで本当にごめんなさい。まだアレックス様の事は心配だけれど、私がくよくよしていたらきっと、アレックス様も喜ばないものね。これからは少しずつ、私も気持ちを切り替えていくわ」

「ユーリ、無理はしなくてもいいよ。君がどれほどアレックスの事を大切に思っているか、僕も知っているからね。それにアレックスは、もう大丈夫だと思うよ…」

「えっ、それはどういう事…」

「もう君の家に着いたね。それじゃあ、また明日ね」

 私を馬車から降ろすと、足早に去って行ってしまった。

 一体どういう意味かしら?

 よくわからないまま翌日を迎えた。

 いつもの様に貴族学院に向かうと

「おはよう、ユーリ。ごめんね、君には随分と心配をかけたね。正直まだ辛いけれど、もう僕は大丈夫だよ」

 何と目の前には、制服を着たアレックス様の姿が。

「アレックス様、学院に出て来てくださったのですね。ですが、随分とお窶れになって…その、私…」

「ユーリ、そんな顔をしないで。実は昨日、ディアンが家に尋ねてきてくれてね。それで色々と話をして、少しだけれど気持ちが吹っ切れたんだ。ユーリ、もしディアンに泣かされる様なことがあったら、すぐに僕に言ってね。僕がディアンをぶっ飛ばすから」

 そう言って笑ったアレックス様。

 よかった、アレックス様も、前に進むことが出来たのね。
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