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第51話:胸が張り裂けそうです
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すぐに対応してくれた使用人が、客間へと通してくれた。ここでアレックス様が来るのを待つ。
アレックス様、私たちが2人で訪ねてきたら、どう思うかしら?確かに私は、アレックス様に酷い事を沢山された。傷つき何度涙を流したか。
でも、だからと言ってアレックス様に辛い思いをして欲しくはない。きっとアレックス様は、私たちの姿を見たら傷つくだろう。
アレックス様の悲しそうな顔を想像すると、胸が苦しい。分かっている、私とディアンが結ばれるという事は、アレックス様が傷つくという事だ。
それでも私は、ディアンと幸せになりたい。だから、せめてアレックス様には、誠心誠意自分の気持ちを伝えよう。それが唯一私に出来る事だから。
ぎゅっとディアンの手を握った。
その時だった。ドアが開くと同時に、アレックス様が部屋へと入って来たのだ。私達2人の姿を見るなり、一気に悲しそうな顔になった。
その顔を見た瞬間、胸が締め付けられる。分かっていた事なのに、どうしてこんなに胸が苦しいのだろう。
「アレックス、急に押しかけてしまってすまなかったね。実は僕たち…」
「ディアン、ユーリ。2人が一緒に我が家にやってくるという事は、そういう事だろう?話を聞かなくてもわかるよ。ただ、ディアンはセレナ嬢が好きだったのではないのかい?」
悲しそうにアレックス様が呟いた。アレックス様も、ディアンとセレナ様が恋仲だと思っていた1人だ。
「彼女にはユーリに贈るための指輪について、色々と相談に乗ってもらっていただけだよ。彼女の家は、とても上質な宝石が取れるからね。彼女自身も今、デザインを手掛けている様だよ」
「そうだよね…おかしいと思ったんだ。ディアンはユーリと婚約するために、王都に戻って来たのだものね。それなのに、セレナ嬢にうつつを抜かすだなんて…ディアンが王都に戻ってきた時点で、正直覚悟はしていた。きっとユーリは、ディアンに取られてしまうだろうと。でも…それでもやっぱり、現実を突き付けられると、辛いものだね」
悲しそうに笑ったアレックス様の瞳から、ポロポロと涙が溢れだす。
「アレックス様、本当にごめんなさい。私、領地でディアンに再開して、彼のあの頃と変わらない優しさに触れて。それで傷ついた心が、少しずつ癒えていったのです。ディアンとの生活は、本当に楽しくて…」
「ユーリ、君が謝る必要はないよ。僕はユーリを手に入れられる位置にいながら、ずっと君を傷つけ続けて来た。いつでも手に入る存在と思って、ぞんざいに扱って来たんだ。そう、僕が全て悪いんだよ。だから僕は、ディアンとユーリの幸せを願わないといけない。分かってはいるのだけれど、どうしても頭が付いていかなくて…」
「アレックス様…あの…」
なんて声をかけたらいいのか分からない。アレックス様の事は、本当に大好きだった。だからこそ、彼をこれ以上苦しめたくはない。きっと今のアレックス様には、私が何を言っても苦しませてしまうだろう。
「アレックス、今日は急に押しかけてすまなかったね。でも、どうしても君に、一番に知らせたかったんだ。僕たちの大切な幼馴染であり、親友の君に。結果的に、君を深く傷つけてしまう事になってしまったが…」
「ディアン、ユーリ、僕に一番に報告してくれてありがとう。ごめんね、おめでとうと言ってあげたいのに、今は心の余裕がなさそうだ。申し訳ないが、しばらく時間をくれるかい?」
「ああ、もちろんだよ。今日は急に押しかけてすまなかったね。それじゃあ、僕たちはこれで失礼するよ」
これ以上アレックス様の傍にいる事は良くない、ディアン様もそう思ったのだろう。きっとアレックス様も、今は1人になりたい。私は何度もアレックス様にフラれて来たからわかる。こういう時は、1人になりたいのだ。ましてや、相手の顔なんて見たくない。見るだけで気持ちが溢れ出し、どうしようもなく苦しくなってしまうのだ。
だからこそ、私たちは一刻も早く、この場を立ち去る必要がある。そうディアンも判断したのだろう。
それにしても、アレックス様があんな風に涙を流すだなんて…
「ユーリ、アレックスの事は、どうしようもない事だ。だから君が気にする必要はない。アレックスが言った通り、彼には時間が必要なのだろう。僕たちはアレックスの気持ちが落ち着くまで、そっと見守ろう」
そう言ってディアンが慰めてくれる。
「さあ、僕たちも帰ろう。実はアレックスの家に使いを出したと同時に、家の両親にもユーリの家に来るよう依頼しておいたから。ユーリの気が変わらないうちに、すぐに婚約の話をしたいと思ってね」
「ディアン、私の気が変わらないうちにとは、一体どういう意味?私は逃げたりしないわ。ただ…なんだか心がモヤモヤしていて…」
「アレックスの件かい?気持ちは分かるが、もう僕たちに出来る事はないよ。アレックスの気持ちが落ち着くのを、待つしかない」
確かにディアンの言う通りなのだが…どうしても割り切れない自分がいる。私、ダメね。せっかくディアンと気持ちが通じ合ったのに…
そんな私の気持ちとは裏腹に、この後両家の両親を交えながら話し合いが行われ、私たちが婚約する事が正式に決まったのだった。
アレックス様、私たちが2人で訪ねてきたら、どう思うかしら?確かに私は、アレックス様に酷い事を沢山された。傷つき何度涙を流したか。
でも、だからと言ってアレックス様に辛い思いをして欲しくはない。きっとアレックス様は、私たちの姿を見たら傷つくだろう。
アレックス様の悲しそうな顔を想像すると、胸が苦しい。分かっている、私とディアンが結ばれるという事は、アレックス様が傷つくという事だ。
それでも私は、ディアンと幸せになりたい。だから、せめてアレックス様には、誠心誠意自分の気持ちを伝えよう。それが唯一私に出来る事だから。
ぎゅっとディアンの手を握った。
その時だった。ドアが開くと同時に、アレックス様が部屋へと入って来たのだ。私達2人の姿を見るなり、一気に悲しそうな顔になった。
その顔を見た瞬間、胸が締め付けられる。分かっていた事なのに、どうしてこんなに胸が苦しいのだろう。
「アレックス、急に押しかけてしまってすまなかったね。実は僕たち…」
「ディアン、ユーリ。2人が一緒に我が家にやってくるという事は、そういう事だろう?話を聞かなくてもわかるよ。ただ、ディアンはセレナ嬢が好きだったのではないのかい?」
悲しそうにアレックス様が呟いた。アレックス様も、ディアンとセレナ様が恋仲だと思っていた1人だ。
「彼女にはユーリに贈るための指輪について、色々と相談に乗ってもらっていただけだよ。彼女の家は、とても上質な宝石が取れるからね。彼女自身も今、デザインを手掛けている様だよ」
「そうだよね…おかしいと思ったんだ。ディアンはユーリと婚約するために、王都に戻って来たのだものね。それなのに、セレナ嬢にうつつを抜かすだなんて…ディアンが王都に戻ってきた時点で、正直覚悟はしていた。きっとユーリは、ディアンに取られてしまうだろうと。でも…それでもやっぱり、現実を突き付けられると、辛いものだね」
悲しそうに笑ったアレックス様の瞳から、ポロポロと涙が溢れだす。
「アレックス様、本当にごめんなさい。私、領地でディアンに再開して、彼のあの頃と変わらない優しさに触れて。それで傷ついた心が、少しずつ癒えていったのです。ディアンとの生活は、本当に楽しくて…」
「ユーリ、君が謝る必要はないよ。僕はユーリを手に入れられる位置にいながら、ずっと君を傷つけ続けて来た。いつでも手に入る存在と思って、ぞんざいに扱って来たんだ。そう、僕が全て悪いんだよ。だから僕は、ディアンとユーリの幸せを願わないといけない。分かってはいるのだけれど、どうしても頭が付いていかなくて…」
「アレックス様…あの…」
なんて声をかけたらいいのか分からない。アレックス様の事は、本当に大好きだった。だからこそ、彼をこれ以上苦しめたくはない。きっと今のアレックス様には、私が何を言っても苦しませてしまうだろう。
「アレックス、今日は急に押しかけてすまなかったね。でも、どうしても君に、一番に知らせたかったんだ。僕たちの大切な幼馴染であり、親友の君に。結果的に、君を深く傷つけてしまう事になってしまったが…」
「ディアン、ユーリ、僕に一番に報告してくれてありがとう。ごめんね、おめでとうと言ってあげたいのに、今は心の余裕がなさそうだ。申し訳ないが、しばらく時間をくれるかい?」
「ああ、もちろんだよ。今日は急に押しかけてすまなかったね。それじゃあ、僕たちはこれで失礼するよ」
これ以上アレックス様の傍にいる事は良くない、ディアン様もそう思ったのだろう。きっとアレックス様も、今は1人になりたい。私は何度もアレックス様にフラれて来たからわかる。こういう時は、1人になりたいのだ。ましてや、相手の顔なんて見たくない。見るだけで気持ちが溢れ出し、どうしようもなく苦しくなってしまうのだ。
だからこそ、私たちは一刻も早く、この場を立ち去る必要がある。そうディアンも判断したのだろう。
それにしても、アレックス様があんな風に涙を流すだなんて…
「ユーリ、アレックスの事は、どうしようもない事だ。だから君が気にする必要はない。アレックスが言った通り、彼には時間が必要なのだろう。僕たちはアレックスの気持ちが落ち着くまで、そっと見守ろう」
そう言ってディアンが慰めてくれる。
「さあ、僕たちも帰ろう。実はアレックスの家に使いを出したと同時に、家の両親にもユーリの家に来るよう依頼しておいたから。ユーリの気が変わらないうちに、すぐに婚約の話をしたいと思ってね」
「ディアン、私の気が変わらないうちにとは、一体どういう意味?私は逃げたりしないわ。ただ…なんだか心がモヤモヤしていて…」
「アレックスの件かい?気持ちは分かるが、もう僕たちに出来る事はないよ。アレックスの気持ちが落ち着くのを、待つしかない」
確かにディアンの言う通りなのだが…どうしても割り切れない自分がいる。私、ダメね。せっかくディアンと気持ちが通じ合ったのに…
そんな私の気持ちとは裏腹に、この後両家の両親を交えながら話し合いが行われ、私たちが婚約する事が正式に決まったのだった。
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