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第42話:ディアンが我が家に来ました
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「ユーリ、そんな仏頂面をしてどうしたの?いつもニコニコしているあなたが、珍しいわね」
「別に仏頂面なんてしていないわ。ねえ、今日の放課後一緒にお茶でもしない?久しぶりに皆で」
ディアンをアレックス様に取られた事が、なんだかやけにモヤモヤする。このまま1人屋敷に帰るのも空しいので、友人たちに声をかけたのだが…
「ごめんなさい、今日は用事があって」
「私も、ドリトル様と約束が…」
「私も…ごめんね」
皆が気まずそうに呟いたのだ。そうよね、皆私と違って、婚約者がいるのだもの。忙しいわよね。
「急に誘ってごめんなさい。私の事は気にしなくていいのよ」
そう笑顔を作った。どうやら私は、今日は独りぼっちの様だ。まあ、仕方がない。授業が終わると、そのまま馬車に乗り込み、家へと帰る。
せっかくディアンが王都に戻って来たのに、なんだか寂しいな…
「おかえりなさい、ユーリ。あら?元気がないようだけれど、何かあったの?そうそう、今日からディアン様が学院に来ているでしょう?」
出迎えてくれたお母様が、嬉しそうに話しかけてきたのだ。
「お母様はディアンが王都に戻って来た事を、知っていらしたのね。ええ、ディアンが今日、学院に来ましたわ。ただ…ディアンは令嬢の私といるよりも、令息のアレックス様といる方がいいみたいです」
「それでユーリのご機嫌が悪いのね。アレックス様とディアン様は、元々幼馴染で仲が良かったものね。それにしても、アレックス様に嫉妬するだなんて、ユーリったら」
そう言ってお母様が笑っている。
「私は別に、嫉妬などしておりませんわ!いい加減な事を言わないで下さい」
お母様ったら、勝手な事を言って。私は別に、アレックス様に嫉妬なんてしていないわよ。ただ…せっかくディアンが王都に戻って来たのに、なんだか寂しいなと感じただけだ。
ダメだわ、今日はなんだか心の中がモヤモヤして落ち着かない。こんな時は、お茶とお菓子を頂きながら、読書をしよう。
そう思い、早速お茶とお菓子を頂くが、なんだかモヤモヤが晴れない。
本を読んでも、なんだか集中できないし…今日はもうダメね。
「はぁ~」
ついため息が出てしまう。
その時だった。
「お嬢様、カスタマーディス伯爵夫妻と令息様がいらしております」
「ディアン達がいらしているの?わかったわ、すぐに行くわね」
ディアンが我が家に来ている!なんだか嬉しくて、急いで客間へと向かった。
「ディアン、おじ様、おば様、ようこそいらっしゃいました。領地では大変お世話になり、ありがとうございました。それで今日は、どうされたのですか?」
令嬢らしく、挨拶をする。
「ユーリちゃん、久しぶりね。元気そうでよかったわ。“ディアンが王都に戻ってきたお祝いに、ぜひ家で食事を“とファルスィン伯爵が招待してくれたのよ」
「カスタマーディス伯爵家には、妻とユーリが大変お世話になった様だからね。私の知らないところで、随分と楽しんだと聞いた。だから今日は、そのお礼をと考えたのだよ」
にっこり笑ったお父様に対し、気まずそうに俯くお母様。
「と…とにかく今日は、ディアン様が帰ってきたお祝いを我が家でやろうという事になったのよ。それじゃあ、早速宴にしましょう」
お母様が慌てて話をそらしている。あの時のお母様、ちょっと羽目を外しすぎていたものね。
気を取り直して、皆で食堂へと向かう。
「ユーリ、今日はごめんね」
話しかけてきたのは、ディアンだ。
「ディアンが謝る事ではないわ。それで、アレックス様たちとの剣の稽古はどうだったの?お友達は出来た?」
「ああ、皆僕に親切にしてくれたよ。ただ僕は、ユーリと一緒にいる方がいいかな…」
少し恥ずかしそうに、ディアンが呟いた。私と一緒にいる方がいい、たとえお世辞だとしても、なんだか嬉しい。
「もう、ディアンったら。あなたはこれから伯爵家を継いでいくのでしょう?ある程度、令息たちとも仲良くしておいた方がいいわよ。でも、ありがとう。ディアンがそう言ってくれると、私も嬉しいわ。それじゃあ、明日こそ私と一緒にお茶をしてくれる?」
「ああ、もちろんだよ。そうだ、明日は僕の家でお茶をしよう」
「あら、わざわざディアンのお家でお茶をしなくても、学院の中庭でお茶をすればいいわ。学院の中庭は、とても素敵だし」
「それはそうなのだけれど…」
なんだかいいにくそうに、ディアンが呟く。もしかして、私と一緒にいるところを、他の人に見られたくはないのかしら?なんだか悲しいが、仕方ない。
「ディアンがそう言うなら、明日はディアンのお家でお茶をしましょう」
「ユーリ、そんな悲しそうな顔をしないで。僕だって学院で君と一緒に過ごしたいけれど…いいや、何でもないよ」
ディアンが困った顔をしている。よくわからないが、これ以上ディアンを困らせる訳にはいかない。
「私はディアンが王都に戻ってきてくれただけで、とても嬉しいわ。今日はディアンの為に、きっと料理長が沢山美味しい料理を作ってくれていると思うし。なんたって今日は、ディアンが王都に戻ってきてくれたのですもの。目いっぱい楽しんでいって」
何はともあれ、ディアンが王都に戻ってきてくれたのだ。こんなに嬉しい事はない。
「ユーリの家のお料理は、とても美味しいからね。今から楽しみだ」
そう言って笑ったディアン。その後は我が家のお料理を堪能しつつ、夜遅くまで話に花を咲かせたのだった。
※次回、ディアン視点です。
よろしくお願いします。
「別に仏頂面なんてしていないわ。ねえ、今日の放課後一緒にお茶でもしない?久しぶりに皆で」
ディアンをアレックス様に取られた事が、なんだかやけにモヤモヤする。このまま1人屋敷に帰るのも空しいので、友人たちに声をかけたのだが…
「ごめんなさい、今日は用事があって」
「私も、ドリトル様と約束が…」
「私も…ごめんね」
皆が気まずそうに呟いたのだ。そうよね、皆私と違って、婚約者がいるのだもの。忙しいわよね。
「急に誘ってごめんなさい。私の事は気にしなくていいのよ」
そう笑顔を作った。どうやら私は、今日は独りぼっちの様だ。まあ、仕方がない。授業が終わると、そのまま馬車に乗り込み、家へと帰る。
せっかくディアンが王都に戻って来たのに、なんだか寂しいな…
「おかえりなさい、ユーリ。あら?元気がないようだけれど、何かあったの?そうそう、今日からディアン様が学院に来ているでしょう?」
出迎えてくれたお母様が、嬉しそうに話しかけてきたのだ。
「お母様はディアンが王都に戻って来た事を、知っていらしたのね。ええ、ディアンが今日、学院に来ましたわ。ただ…ディアンは令嬢の私といるよりも、令息のアレックス様といる方がいいみたいです」
「それでユーリのご機嫌が悪いのね。アレックス様とディアン様は、元々幼馴染で仲が良かったものね。それにしても、アレックス様に嫉妬するだなんて、ユーリったら」
そう言ってお母様が笑っている。
「私は別に、嫉妬などしておりませんわ!いい加減な事を言わないで下さい」
お母様ったら、勝手な事を言って。私は別に、アレックス様に嫉妬なんてしていないわよ。ただ…せっかくディアンが王都に戻って来たのに、なんだか寂しいなと感じただけだ。
ダメだわ、今日はなんだか心の中がモヤモヤして落ち着かない。こんな時は、お茶とお菓子を頂きながら、読書をしよう。
そう思い、早速お茶とお菓子を頂くが、なんだかモヤモヤが晴れない。
本を読んでも、なんだか集中できないし…今日はもうダメね。
「はぁ~」
ついため息が出てしまう。
その時だった。
「お嬢様、カスタマーディス伯爵夫妻と令息様がいらしております」
「ディアン達がいらしているの?わかったわ、すぐに行くわね」
ディアンが我が家に来ている!なんだか嬉しくて、急いで客間へと向かった。
「ディアン、おじ様、おば様、ようこそいらっしゃいました。領地では大変お世話になり、ありがとうございました。それで今日は、どうされたのですか?」
令嬢らしく、挨拶をする。
「ユーリちゃん、久しぶりね。元気そうでよかったわ。“ディアンが王都に戻ってきたお祝いに、ぜひ家で食事を“とファルスィン伯爵が招待してくれたのよ」
「カスタマーディス伯爵家には、妻とユーリが大変お世話になった様だからね。私の知らないところで、随分と楽しんだと聞いた。だから今日は、そのお礼をと考えたのだよ」
にっこり笑ったお父様に対し、気まずそうに俯くお母様。
「と…とにかく今日は、ディアン様が帰ってきたお祝いを我が家でやろうという事になったのよ。それじゃあ、早速宴にしましょう」
お母様が慌てて話をそらしている。あの時のお母様、ちょっと羽目を外しすぎていたものね。
気を取り直して、皆で食堂へと向かう。
「ユーリ、今日はごめんね」
話しかけてきたのは、ディアンだ。
「ディアンが謝る事ではないわ。それで、アレックス様たちとの剣の稽古はどうだったの?お友達は出来た?」
「ああ、皆僕に親切にしてくれたよ。ただ僕は、ユーリと一緒にいる方がいいかな…」
少し恥ずかしそうに、ディアンが呟いた。私と一緒にいる方がいい、たとえお世辞だとしても、なんだか嬉しい。
「もう、ディアンったら。あなたはこれから伯爵家を継いでいくのでしょう?ある程度、令息たちとも仲良くしておいた方がいいわよ。でも、ありがとう。ディアンがそう言ってくれると、私も嬉しいわ。それじゃあ、明日こそ私と一緒にお茶をしてくれる?」
「ああ、もちろんだよ。そうだ、明日は僕の家でお茶をしよう」
「あら、わざわざディアンのお家でお茶をしなくても、学院の中庭でお茶をすればいいわ。学院の中庭は、とても素敵だし」
「それはそうなのだけれど…」
なんだかいいにくそうに、ディアンが呟く。もしかして、私と一緒にいるところを、他の人に見られたくはないのかしら?なんだか悲しいが、仕方ない。
「ディアンがそう言うなら、明日はディアンのお家でお茶をしましょう」
「ユーリ、そんな悲しそうな顔をしないで。僕だって学院で君と一緒に過ごしたいけれど…いいや、何でもないよ」
ディアンが困った顔をしている。よくわからないが、これ以上ディアンを困らせる訳にはいかない。
「私はディアンが王都に戻ってきてくれただけで、とても嬉しいわ。今日はディアンの為に、きっと料理長が沢山美味しい料理を作ってくれていると思うし。なんたって今日は、ディアンが王都に戻ってきてくれたのですもの。目いっぱい楽しんでいって」
何はともあれ、ディアンが王都に戻ってきてくれたのだ。こんなに嬉しい事はない。
「ユーリの家のお料理は、とても美味しいからね。今から楽しみだ」
そう言って笑ったディアン。その後は我が家のお料理を堪能しつつ、夜遅くまで話に花を咲かせたのだった。
※次回、ディアン視点です。
よろしくお願いします。
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