これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi

文字の大きさ
上 下
42 / 75

第42話:ディアンが我が家に来ました

しおりを挟む
「ユーリ、そんな仏頂面をしてどうしたの?いつもニコニコしているあなたが、珍しいわね」

「別に仏頂面なんてしていないわ。ねえ、今日の放課後一緒にお茶でもしない?久しぶりに皆で」

 ディアンをアレックス様に取られた事が、なんだかやけにモヤモヤする。このまま1人屋敷に帰るのも空しいので、友人たちに声をかけたのだが…

「ごめんなさい、今日は用事があって」

「私も、ドリトル様と約束が…」

「私も…ごめんね」

 皆が気まずそうに呟いたのだ。そうよね、皆私と違って、婚約者がいるのだもの。忙しいわよね。

「急に誘ってごめんなさい。私の事は気にしなくていいのよ」

 そう笑顔を作った。どうやら私は、今日は独りぼっちの様だ。まあ、仕方がない。授業が終わると、そのまま馬車に乗り込み、家へと帰る。

 せっかくディアンが王都に戻って来たのに、なんだか寂しいな…

「おかえりなさい、ユーリ。あら?元気がないようだけれど、何かあったの?そうそう、今日からディアン様が学院に来ているでしょう?」

 出迎えてくれたお母様が、嬉しそうに話しかけてきたのだ。

「お母様はディアンが王都に戻って来た事を、知っていらしたのね。ええ、ディアンが今日、学院に来ましたわ。ただ…ディアンは令嬢の私といるよりも、令息のアレックス様といる方がいいみたいです」

「それでユーリのご機嫌が悪いのね。アレックス様とディアン様は、元々幼馴染で仲が良かったものね。それにしても、アレックス様に嫉妬するだなんて、ユーリったら」

 そう言ってお母様が笑っている。

「私は別に、嫉妬などしておりませんわ!いい加減な事を言わないで下さい」

 お母様ったら、勝手な事を言って。私は別に、アレックス様に嫉妬なんてしていないわよ。ただ…せっかくディアンが王都に戻って来たのに、なんだか寂しいなと感じただけだ。

 ダメだわ、今日はなんだか心の中がモヤモヤして落ち着かない。こんな時は、お茶とお菓子を頂きながら、読書をしよう。

 そう思い、早速お茶とお菓子を頂くが、なんだかモヤモヤが晴れない。

 本を読んでも、なんだか集中できないし…今日はもうダメね。

「はぁ~」

 ついため息が出てしまう。

 その時だった。

「お嬢様、カスタマーディス伯爵夫妻と令息様がいらしております」

「ディアン達がいらしているの?わかったわ、すぐに行くわね」

 ディアンが我が家に来ている!なんだか嬉しくて、急いで客間へと向かった。

「ディアン、おじ様、おば様、ようこそいらっしゃいました。領地では大変お世話になり、ありがとうございました。それで今日は、どうされたのですか?」

 令嬢らしく、挨拶をする。

「ユーリちゃん、久しぶりね。元気そうでよかったわ。“ディアンが王都に戻ってきたお祝いに、ぜひ家で食事を“とファルスィン伯爵が招待してくれたのよ」

「カスタマーディス伯爵家には、妻とユーリが大変お世話になった様だからね。私の知らないところで、随分と楽しんだと聞いた。だから今日は、そのお礼をと考えたのだよ」

 にっこり笑ったお父様に対し、気まずそうに俯くお母様。

「と…とにかく今日は、ディアン様が帰ってきたお祝いを我が家でやろうという事になったのよ。それじゃあ、早速宴にしましょう」

 お母様が慌てて話をそらしている。あの時のお母様、ちょっと羽目を外しすぎていたものね。

 気を取り直して、皆で食堂へと向かう。

「ユーリ、今日はごめんね」

 話しかけてきたのは、ディアンだ。

「ディアンが謝る事ではないわ。それで、アレックス様たちとの剣の稽古はどうだったの?お友達は出来た?」

「ああ、皆僕に親切にしてくれたよ。ただ僕は、ユーリと一緒にいる方がいいかな…」

 少し恥ずかしそうに、ディアンが呟いた。私と一緒にいる方がいい、たとえお世辞だとしても、なんだか嬉しい。

「もう、ディアンったら。あなたはこれから伯爵家を継いでいくのでしょう?ある程度、令息たちとも仲良くしておいた方がいいわよ。でも、ありがとう。ディアンがそう言ってくれると、私も嬉しいわ。それじゃあ、明日こそ私と一緒にお茶をしてくれる?」

「ああ、もちろんだよ。そうだ、明日は僕の家でお茶をしよう」

「あら、わざわざディアンのお家でお茶をしなくても、学院の中庭でお茶をすればいいわ。学院の中庭は、とても素敵だし」

「それはそうなのだけれど…」

 なんだかいいにくそうに、ディアンが呟く。もしかして、私と一緒にいるところを、他の人に見られたくはないのかしら?なんだか悲しいが、仕方ない。

「ディアンがそう言うなら、明日はディアンのお家でお茶をしましょう」

「ユーリ、そんな悲しそうな顔をしないで。僕だって学院で君と一緒に過ごしたいけれど…いいや、何でもないよ」

 ディアンが困った顔をしている。よくわからないが、これ以上ディアンを困らせる訳にはいかない。

「私はディアンが王都に戻ってきてくれただけで、とても嬉しいわ。今日はディアンの為に、きっと料理長が沢山美味しい料理を作ってくれていると思うし。なんたって今日は、ディアンが王都に戻ってきてくれたのですもの。目いっぱい楽しんでいって」

 何はともあれ、ディアンが王都に戻ってきてくれたのだ。こんなに嬉しい事はない。

「ユーリの家のお料理は、とても美味しいからね。今から楽しみだ」

 そう言って笑ったディアン。その後は我が家のお料理を堪能しつつ、夜遅くまで話に花を咲かせたのだった。

 ※次回、ディアン視点です。
 よろしくお願いします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫と親友が、私に隠れて抱き合っていました ~2人の幸せのため、黙って身を引こうと思います~

小倉みち
恋愛
 元侯爵令嬢のティアナは、幼馴染のジェフリーの元へ嫁ぎ、穏やかな日々を過ごしていた。  激しい恋愛関係の末に結婚したというわけではなかったが、それでもお互いに思いやりを持っていた。  貴族にありがちで平凡な、だけど幸せな生活。  しかし、その幸せは約1年で終わりを告げることとなる。  ティアナとジェフリーがパーティに参加したある日のこと。  ジェフリーとはぐれてしまったティアナは、彼を探しに中庭へと向かう。  ――そこで見たものは。  ジェフリーと自分の親友が、暗闇の中で抱き合っていた姿だった。 「……もう、この気持ちを抑えきれないわ」 「ティアナに悪いから」 「だけど、あなただってそうでしょう? 私、ずっと忘れられなかった」  そんな会話を聞いてしまったティアナは、頭が真っ白になった。  ショックだった。  ずっと信じてきた夫と親友の不貞。  しかし怒りより先に湧いてきたのは、彼らに幸せになってほしいという気持ち。  私さえいなければ。  私さえ身を引けば、私の大好きな2人はきっと幸せになれるはず。  ティアナは2人のため、黙って実家に帰ることにしたのだ。  だがお腹の中には既に、小さな命がいて――。

振られたあとに優しくされても困ります

菜花
恋愛
男爵令嬢ミリーは親の縁で公爵家のアルフォンスと婚約を結ぶ。一目惚れしたミリーは好かれようと猛アタックしたものの、彼の氷のような心は解けず半年で婚約解消となった。それから半年後、貴族の通う学園に入学したミリーを待っていたのはアルフォンスからの溺愛だった。ええとごめんなさい。普通に迷惑なんですけど……。カクヨムにも投稿しています。

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。 そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。 婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。

竜人のつがいへの執着は次元の壁を越える

たま
恋愛
次元を超えつがいに恋焦がれるストーカー竜人リュートさんと、うっかりリュートのいる異世界へ落っこちた女子高生結の絆されストーリー その後、ふとした喧嘩らか、自分達が壮大な計画の歯車の1つだったことを知る。 そして今、最後の歯車はまずは世界の幸せの為に動く!

たとえこの想いが届かなくても

白雲八鈴
恋愛
 恋に落ちるというのはこういう事なのでしょうか。ああ、でもそれは駄目なこと、目の前の人物は隣国の王で、私はこの国の王太子妃。報われぬ恋。たとえこの想いが届かなくても・・・。  王太子は愛妾を愛し、自分はお飾りの王太子妃。しかし、自分の立場ではこの思いを言葉にすることはできないと恋心を己の中に押し込めていく。そんな彼女の生き様とは。 *いつもどおり誤字脱字はほどほどにあります。 *主人公に少々問題があるかもしれません。(これもいつもどおり?)

ガネス公爵令嬢の変身

くびのほきょう
恋愛
1年前に現れたお父様と同じ赤い目をした美しいご令嬢。その令嬢に夢中な幼なじみの王子様に恋をしていたのだと気づいた公爵令嬢のお話。 ※「小説家になろう」へも投稿しています

(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?

水無月あん
恋愛
本編は完結してます。8/6より、番外編はじめました。よろしくお願いいたします。 私は、公爵令嬢のアリス。ピンク頭の女性を腕にぶら下げたルイス殿下に、婚約解消を告げられました。美形だけれど、無表情の婚約者が苦手だったので、婚約解消はありがたい! はれて自由の身になれて、うれしい! なのに、なぜ、近づいてくるんですか? 私に興味なかったですよね? 無表情すぎる、美形王子の本心は? こじらせ、ヤンデレ、執着っぽいものをつめた、ゆるゆるっとした設定です。お気軽に楽しんでいただければ、嬉しいです。

処理中です...