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第36話:アレックス様がやたらと絡んでくるのですが…

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「領地で買ったお土産も持ったし。忘れ物はないわね」

 久しぶりに貴族学院の制服を着て、馬車に乗り込む。今日から新学期だ。先日アレックス様が、訳の分からない事を言っていたのが気になるが、それでも大切な友人たちに会えるのが楽しみでたまらない。

 皆、元気にしていたかしら?ディアンが準備してくれたポプリ、気に入ってくれるといいな。

 領地を出るとき、ディアンが沢山のポプリを持たせてくれたのだ。それも以前私がディアンの領地に行った時、可愛いと手に取っていた物ばかり。彼は本当によく私を見てくれている。

 ディアン、元気にしているかしら?

 ふと馬車の窓から空を見上げると、雲一つない青空が広がっていた。

「なんて綺麗な空なのかしら?ディアンも同じ空を見ているといいな」

 ポツリとそんな事を呟いてしまう。いけない、またディアンの事を考えてしまったわ。私、よほど領地が楽しかったのね。

 さあ、学院に着いたわ。それにしても、随分久しぶりに貴族学院に来た気がする。最後の貴族学院は本当に辛くて仕方がなかったけれど、今は心が穏やかだ。

 せっかく心も落ち着いてきたのですもの、学院生活も目いっぱい楽しまないと。

 馬車を降りると

「ユーリ、おはよう。よかった、学院に来るかどうか心配していたのだよ」

 私の傍に駆け寄ってきたのは、なんとアレックス様だ。

「アレックス様、おはようございます。今日からまた学院に通いますので、これからもクラスメイトとしてよろしくお願いしますね」

 ニコリとほほ笑むと、急ぎ足でその場を立ち去る。一体何だったのかしら?今まで学院内で私に話しかけて来たことなんて、ほとんどなかったのに。

「まって、ユーリ。一緒に教室まで行こう」

 なぜかアレックス様が、追いかけて来たのだ。

「あの、アレックス様。私は…」

「ユーリの気持ちは分かっているよ。今まで散々君の気持ちを否定し続けて来た僕が、今更何を考えているのだ。そう思われても仕方がない。自分でもどうしようもない人間だと思っている。失って初めてユーリがどれほど大切な存在か、分かったんだよ。今更遅いと言われるかもしれないけれど、でもこのまま諦めたくないんだ」

 真っすぐ私を見つめ、必死に訴えてくるアレックス様。本当に今更そんな事を言われても困る。でも…

「アレックス様の気持ちは分かりました。でも私は、あなた様の事を必死に諦めたのです。今更アレックス様とどうこうなりたいとは思っておりません。ただ…アレックス様は大切な幼馴染です。ですから気持ちには応えられませんが、これからも幼馴染として、良きクラスメイトとして過ごさせてください」

 本当は、もう私に関わらないで下さい!そう言わないといけないのだろう。でも、アレックス様の悲しそうな瞳を見ていると、これ以上強くは言えない自分が情けない。

「ありがとう、ユーリ。それじゃあ、一緒に教室に行こう」

 嬉しそうに歩き出したアレックス様。彼のこんな嬉しそうな顔を見たのは、いつぶりだろう。ディアンがいた頃は、アレックス様も私にこんな風に優しい笑顔を向けてくれていたな…

 あの頃の事を思い出すと、なんだか胸が温かくなった。

「ユーリ、教室に着いちゃったね。今日は午前中で貴族学院も終わりだし、午後は一緒にお茶をしないかい?僕がユーリのお家に、お邪魔させてもらってもいいかな?」

「ごめんなさい、今日はレーナたちと一緒に過ごすことになっておりますので。半期休みの話とか、色々と話したい事もありますし」

 本当はレーナたちと約束をしている訳ではないが、とっさに嘘を付いてしまった。

「そうか、友達との時間も大事だものね。分かったよ、それじゃあ、また明日にでも、ゆっくりお茶をしようね」

 そう言って、アレックス様が笑顔で去って行った。あの人、本当にどうしちゃったのかしら?

「おはよう、ユーリ。ねえ、一体どうなっているの?」

「アレックス様と一緒にやってくるだなんて。もしかして…」

「ユーリ、何がどうなっているの?わかるように説明して」

 レーナたち3人が、私の元に飛んできてくれたのだ。

「私もよくわからなくて…ねえ、今日お昼から時間ある?色々と話したい事があるし、家でお茶をしない?」

 学院ではなんだか話づらい。家でゆっくり話がしたいのだ。

「ええ、もちろんいいわよ。それじゃあ今日は、ユーリの家でお茶をしましょう」

 3人も了承してくれた。

 早く3人と話をしたい。3人には本当に心配をかけたものね。

 そして無事午前の授業も終わり、家に帰ろうとした時だった。

「ユーリ、一緒に門まで行こう」

 何を思ったのか、再びアレックス様が私の元にやって来たのだ。どうしてこんなに絡んでくるのだろう。困惑していると

「ユーリ、アレックス様、私たちもお供いたしますわ」
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