これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi

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第30話:僕の幼馴染~アレックス視点~

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 僕には子供頃、いつも一緒に遊んでいた幼馴染がいた。1人は伯爵令息のディアン、もう1人が伯爵令嬢のユーリだ。親同士が仲が良かったのと、家が近くだったという事もあり、いつも3人で遊んでいた。

 僕もディアンもユーリが大好きで、いつもユーリにバレない様に、ユーリを取り合っていた。あの時の僕は、本当にユーリが大好きだった。絶対にディアンになんて渡したくない。ユーリと結婚するのは、僕だ!

 そんな思いで、ディアンと張り合っていた。少しでもユーリに好かれたくて、ユーリをとても大切にした。ユーリが嬉しそうに笑うと、僕も嬉しい気持ちになるのだ。僕はユーリの笑顔が大好きだ。

 この笑顔を、絶対に僕の手で守りたい。ずっとそう思っていた。ユーリには僕だけを見て欲しい。日に日にユーリに対する想いは増していく。でも、ユーリの隣には僕だけでなく、常にディアンもいた。

 ディアンさえいなければ、ユーリは僕だけのものになるのに!そう思っていたある日。急にディアンから呼び出されたのだ。ディアンは元々体が弱いため、領地で暮すことになったらしい。その話を聞いた時、僕は嬉しくてたまらなかった。

 さらにディアンは

「アレックス、僕はユーリの事を諦める。だから、どうかユーリの事を幸せにしてやって欲しい」

 そんな事を言いだしたのだ。ディアンがユーリを諦めるだなんて、一体どういう事だろう?よくわからなかったが、ライバルが自ら身を引くというのだ。わざわざ僕が、とやかく言う必要はない。

 これでやっと、ユーリは僕だけのものだ!

「僕がディアンの分まで、ユーリを大切にするから安心して」

 そう笑顔で伝えた。それでもまだ心配そうな顔のディアンに、何度も何度も念押しをされた。そんなに僕って、信用ないのかな?本当に失礼な奴だな。そう思ったが、極力冷静な顔で、必ずユーリを幸せにすると約束したのだ。

 僕の言葉を聞いたディアンは、少し寂しそうに笑っていた。そして翌日、ディアンは領地へと旅立って行った。

 もう僕にライバルはいなくなった。これでユーリは僕のものだ。すぐにでもユーリと婚約を結べるように、両親やユーリの両親に話しをしようと思ったが、最大のライバルでもあるディアンが居なくなった今、別に焦る必要はないか。

 そうだ、別に今すぐ婚約を結ばなくても、ユーリは逃げないだろう。それにユーリ自身の気持ちもわからない。もしかしたら、ユーリに断られるかもしれないものな。

 その日から僕は、増々ユーリの傍にいる様になった。ディアンが居なくなったせいか、最初は寂しそうにしていたユーリだが、半年もするとすっかり元気になったのだ。

 さらに

「アレックス、あなたが好きなサンドウィッチを料理長に作ってもらって来たの。家の領地で大切に育てた牛肉を使ったサンドウィッチで、とても美味しいのよ」

 そう言って僕の為に、色々と尽くしてくれる様になったのだ。お茶会に参加した時も、極力僕の傍から離れないユーリ。きっとユーリも、僕の事が好きなのだろう。

 ちょうどユーリの気持ちに気が付いたころから、よく令嬢たちに話し掛けられる様になった。どうやら僕は、令嬢から人気がある様だ。僕が令嬢たちと話をしていると、不安そうな顔で見つめてくるユーリ。

 彼女なりに、僕が急にモテだしたから心配なのだろう。ユーリは僕に釣り合う令嬢になるべく、マナーやダンスのレッスンに力を入れ始めたのだ。僕の為に、色々と頑張るユーリを見ていると、なんだか嬉しい気持ちになった。

 さらに僕たちが10歳になったある日。

「アレックス様、私、アレックス様の事が大好きです。どうか私と、婚約してくださいませんでしょうか?」

 真剣な表情で、ユーリが訴えて来たのだ。まさかユーリから、そんな事を言いだすだなんて思わなかった。ただ…なぜだろう、あれほど好きだったユーリを、まだ受け入れる気にはなれなかったのだ。

 その為、やんわりと断りを入れた。悲しそうに僕の傍を去っているユーリの姿を見た瞬間、胸がチクリと痛んだ。

 ユーリ、ショックだったかな?もしかしてこのまま、ユーリが僕を避けだしたら。そんな不安が、僕を襲った。でも、翌日からユーリは、いつも通り僕に話しかけてきたのだ。それどころか

「私、やっぱりアレックス様の事が大好きです。いつかアレックス様に振り向いてもらえる様に、頑張りますわ」

 そう笑顔で伝えてくれたのだ。

 その後も、僕の為に色々と尽くしてくれるユーリ。そんな日々を送っているうちに、僕たちは貴族学院に入学したのだった。
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