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第11話:ディアンは相変わらず優しいです
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「実はね、領地に来てすぐに、この美しい夕焼けに気が付いたんだ。いつかユーリに見せてあげられたらなって、ずっと思っていて。今日ユーリにこの景色を見せられて、僕も嬉しいよ」
「そうだったのね。それにしても本当に美しい景色ね。この景色を見ていると、今までの悩みが一気に吹き飛ぶ様だわ」
「それは良かったよ。実はファルスィン伯爵夫人から、最近ユーリが元気がないと聞いていて、心配していたんだ。もしかして、アレックスの事で悩んでいたのかい?」
「ええ…でも、なんだかもう、アレックス様の事は吹っ切れそうな気がするわ。私ももう15歳でしょう?アレックス様の事は綺麗さっぱり忘れて、素敵な殿方を見つけたいと思っているの。実はね、アレックス様の事を忘れるために、領地に来ることにしたのよ」
「そうだったのだね。ユーリ、明日には領地に向かうのだろう?またユーリの家の領地にも、遊びに行ってもいいかな?ここから馬車で3時間程度だし」
「もちろんよ、ぜひ遊びに来て。ねえ、ディアンはこの7年、ずっと領地にいたのでしょう?何をしていたの?」
「僕かい?僕は自然豊かなこの領地で、伸び伸びと暮らしていたよ。お陰様ですっかり元気になったし。もちろん、貴族としての勉強もやっていたし、体を鍛えるために武術も行っていたよ。そうだ、この森の奥に、美味しい木の実が沢山なっているんだ。今度連れて行ってあげるよ」
「まあ、本当?嬉しいわ。子供の頃、よく3人でピクニックに行ったわよね」
「そう言えばそうだったね、ユーリはいつもアレックスにくっ付いていて…それでも僕の事も、ちゃんと気にかけてくれていたよね。僕が迷子になってしまった時も、必死に探してくれて」
「そんな事もあったわね。懐かしいわ。なんだかディアンといると、昔に戻ったみたいで、とても懐かしい気持ちになるの」
「僕もユーリと話していると、あの時の気持ちが蘇るよ。懐かしいな…」
ディアンが目を細め、遠くを見つめている。すっかり大きくなったけれど、あの時と変わっていないディアン。それがなんだか嬉しい。
「さあ、そろそろ日も暮れて来たし、屋敷に戻ろう。今日はユーリたちの為に、ちょっとした宴が催されることになっているんだよ」
「まあ、私たちの為に?それは楽しみね。早く戻りましょう」
無意識にディアンの手を握り、歩き出した。いつの間にか、大きくなったディアンの手。でも、あの頃とは変わらない感じが、なんだか心地いい。
屋敷に戻り、2人で食堂に行くと、既に皆が待っていた。
「あら?2人とも手を繋いでくるだなんて。随分と仲良しね」
「本当ね。そうやってしていると、まるで恋人同士みたいよ」
ちょっと、お母様、なんて事を言うのよ。そんな事を言われたら、なんだか恥ずかしいじゃない。
すっとディアンの手を離そうとしたのだが、ガッチリ握られていて、離れない。
「ユーリ、恥ずかしがっているのかい?照れているユーリも可愛いね。今日はこの地で取れた沢山の料理がいっぱいあるよ。たくさん食べてね。ユーリは野菜が好きだったよね。僕が取ってあげるね」
照れる私を座らせると、ディアンが美味しそうな野菜をたくさんとってくれた。せっかくなので頂く。
「この人参、甘くて美味しいわ。こっちのトマトも、とてもみずみずしいのね。なんて美味しいのかしら?」
今まで食べた事がないほど、みずみずしくて美味しいのだ。こんなおいしい野菜、初めて食べたわ。
「ユーリが喜んでくれて、よかったよ。こっちは大根のステーキだよ」
「まあ、大根をステーキにしたものがあるの?珍しいわね」
他にも、お肉と野菜の蒸し焼きなど、色々なお料理を頂いたが、どれもとても美味しい。
ふとディアンの方をみると、私にお節介を焼いているばかりで、ほとんど食べていない。昔からディアンは私の事を優先してくれて、自分の事は後回しなのだ。相変わらずディアンは優しいのね。
「ディアン、あなたも食べて。このお肉をキャベツで包んで焼いてあるものも、とても美味しいわよ」
「僕はいいよ。ユーリが美味しそうに食べている姿を見るだけで、僕は幸せだから」
「もう、何を言っているのよ。あなたはただでさえ体が弱いのだから、しっかり食べないと。ほら、食べて」
ディアンの口に、お肉をキャベツで包んで焼いてあるお料理を放り込んだ。ディアンは昔から、食が細かったのよね。すぐに熱を出すし。
「ユーリは相変わらず世話焼きだね。でももう僕は、昔のひ弱な僕ではなくなったのだよ。それに、沢山食べる様にもなったし。ユーリの2倍は食べるよ」
「またそんな事を言って。それじゃあ、どっちが沢山食べられるか、競争しましょう」
「望むところだ」
その後2人でたくさんの料理を食べた。それこそお腹がはち切れそうになるくらいに…
「そうだったのね。それにしても本当に美しい景色ね。この景色を見ていると、今までの悩みが一気に吹き飛ぶ様だわ」
「それは良かったよ。実はファルスィン伯爵夫人から、最近ユーリが元気がないと聞いていて、心配していたんだ。もしかして、アレックスの事で悩んでいたのかい?」
「ええ…でも、なんだかもう、アレックス様の事は吹っ切れそうな気がするわ。私ももう15歳でしょう?アレックス様の事は綺麗さっぱり忘れて、素敵な殿方を見つけたいと思っているの。実はね、アレックス様の事を忘れるために、領地に来ることにしたのよ」
「そうだったのだね。ユーリ、明日には領地に向かうのだろう?またユーリの家の領地にも、遊びに行ってもいいかな?ここから馬車で3時間程度だし」
「もちろんよ、ぜひ遊びに来て。ねえ、ディアンはこの7年、ずっと領地にいたのでしょう?何をしていたの?」
「僕かい?僕は自然豊かなこの領地で、伸び伸びと暮らしていたよ。お陰様ですっかり元気になったし。もちろん、貴族としての勉強もやっていたし、体を鍛えるために武術も行っていたよ。そうだ、この森の奥に、美味しい木の実が沢山なっているんだ。今度連れて行ってあげるよ」
「まあ、本当?嬉しいわ。子供の頃、よく3人でピクニックに行ったわよね」
「そう言えばそうだったね、ユーリはいつもアレックスにくっ付いていて…それでも僕の事も、ちゃんと気にかけてくれていたよね。僕が迷子になってしまった時も、必死に探してくれて」
「そんな事もあったわね。懐かしいわ。なんだかディアンといると、昔に戻ったみたいで、とても懐かしい気持ちになるの」
「僕もユーリと話していると、あの時の気持ちが蘇るよ。懐かしいな…」
ディアンが目を細め、遠くを見つめている。すっかり大きくなったけれど、あの時と変わっていないディアン。それがなんだか嬉しい。
「さあ、そろそろ日も暮れて来たし、屋敷に戻ろう。今日はユーリたちの為に、ちょっとした宴が催されることになっているんだよ」
「まあ、私たちの為に?それは楽しみね。早く戻りましょう」
無意識にディアンの手を握り、歩き出した。いつの間にか、大きくなったディアンの手。でも、あの頃とは変わらない感じが、なんだか心地いい。
屋敷に戻り、2人で食堂に行くと、既に皆が待っていた。
「あら?2人とも手を繋いでくるだなんて。随分と仲良しね」
「本当ね。そうやってしていると、まるで恋人同士みたいよ」
ちょっと、お母様、なんて事を言うのよ。そんな事を言われたら、なんだか恥ずかしいじゃない。
すっとディアンの手を離そうとしたのだが、ガッチリ握られていて、離れない。
「ユーリ、恥ずかしがっているのかい?照れているユーリも可愛いね。今日はこの地で取れた沢山の料理がいっぱいあるよ。たくさん食べてね。ユーリは野菜が好きだったよね。僕が取ってあげるね」
照れる私を座らせると、ディアンが美味しそうな野菜をたくさんとってくれた。せっかくなので頂く。
「この人参、甘くて美味しいわ。こっちのトマトも、とてもみずみずしいのね。なんて美味しいのかしら?」
今まで食べた事がないほど、みずみずしくて美味しいのだ。こんなおいしい野菜、初めて食べたわ。
「ユーリが喜んでくれて、よかったよ。こっちは大根のステーキだよ」
「まあ、大根をステーキにしたものがあるの?珍しいわね」
他にも、お肉と野菜の蒸し焼きなど、色々なお料理を頂いたが、どれもとても美味しい。
ふとディアンの方をみると、私にお節介を焼いているばかりで、ほとんど食べていない。昔からディアンは私の事を優先してくれて、自分の事は後回しなのだ。相変わらずディアンは優しいのね。
「ディアン、あなたも食べて。このお肉をキャベツで包んで焼いてあるものも、とても美味しいわよ」
「僕はいいよ。ユーリが美味しそうに食べている姿を見るだけで、僕は幸せだから」
「もう、何を言っているのよ。あなたはただでさえ体が弱いのだから、しっかり食べないと。ほら、食べて」
ディアンの口に、お肉をキャベツで包んで焼いてあるお料理を放り込んだ。ディアンは昔から、食が細かったのよね。すぐに熱を出すし。
「ユーリは相変わらず世話焼きだね。でももう僕は、昔のひ弱な僕ではなくなったのだよ。それに、沢山食べる様にもなったし。ユーリの2倍は食べるよ」
「またそんな事を言って。それじゃあ、どっちが沢山食べられるか、競争しましょう」
「望むところだ」
その後2人でたくさんの料理を食べた。それこそお腹がはち切れそうになるくらいに…
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