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第2話:これでダメならもう諦めます
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2人の衝撃的な姿を見た私は、その場を動く事が出来ない。
あまりにも楽しそうに話しをしている2人を見ていると、胸がぎゅっと締め付けられるのだ。
私、本当にこのままでいいのだろうか。友人たちはどんどん意中の殿方と婚約を結んでいく。そんな中、私は…
このままではいけない。いつまでもアレックス様に振り向いてもらえる様に、努力するだけではダメだ。そろそろ私も、前に進まないと!
しばらくすると、アレックス様とセレナ様が席を立った。どうやらお茶が終わり、2人で帰る様だ。楽しそうに話しをしながら、馬車を目指す2人。そして
「アレックス様、美味しいお菓子と楽しい時間をありがとうございました。それではまた明日」
「僕の方こそ、楽しい時間をありがとう。また美味しいお菓子を準備するから、楽しみにしていて欲しい。それじゃあ、また明日」
セレナ様が馬車に乗り込むのを見送るアレックス様が、笑顔で手を振っている。セレナ様には、あんな風に馬車に乗り込むまで見送るのね。私にはそんな事をしてくれた事なんて、一度もないのに。
やっぱりこのままではダメだわ。
セレナ様の馬車が見えなくなるまで手を振り続けたアレックス様が、馬車に乗り込もうとしたところで、声をかける。
「アレックス様」
ゆっくり振り向くアレックス様。
「ユーリ、まだ残っていたのかい?君も早く帰った方がいいよ。もう少しすると暗くなるからね。それじゃあ、僕はこれで」
「お待ちください、少しだけ話をしたいのですが」
「ごめんね、もう遅いし、明日にしてくれないかな?」
「お願いです、少しだけ…」
「しつこいな。明日と言っているだろう?僕はしつこい女は嫌いだよ。それじゃあね」
そう言うと、アレックス様は馬車に乗り込み、さっさと帰ってしまった。私、なんだか惨めね…
仕方なく1人馬車に乗り込んだ。
よく考えてみれば、いつも私からアレックス様に話しかけてきた。彼から話し掛けられるときは、私に何かお願いを聞いて欲しい時くらいだった。
それに比べセレナ様には、彼女の欲しがっていたお菓子を準備したり(準備したのは私だけれど)、馬車までエスコートしたりするのね。
やっぱり私には、もう見込みがないのかもしれない…
でも…このまま諦める事なんて出来ない。そう、私は白黒はっきりさせたい性格なのだ。
明日もう一度、アレックス様と話をしよう。それでアレックス様に気持ちを伝えよう。もし私を受け入れて下さらないときは、きっぱりと彼を諦めよう。
よし!
なぜだろう、進む道が見えてきたら、今までモヤモヤしていた気持ちがスッと軽くなった。
たとえどんな結果になろうと、明日は自分の気持ちを全力でぶつけよう。それが今の私にできる、唯一の事だから。
そして翌日
「アレックス様、少しお話があるのですが、よろしいでしょうか?」
「話かい?そう言えば昨日、そんな様なことを言っていたね。別に構わないが、あまり君と2人きりになりたくないんだ。手短にお願いしたいな」
手短にか…
「分かりましたわ。それでは参りましょう」
出来るだけ人気のない場所に、アレックス様を連れて行った。そして
「アレックス様、私たちは親同士が仲が良かったことから、物心ついた時からずっと一緒にいましたね。いつも私に優しく接してくださるアレックス様が、大好きです。もちろん、今もその気持ちは変わりません。どうか私と、将来を共に歩んでくださいませんか?」
真っすぐアレックス様を見つめ、そう伝えた。すると、少し困った顔をしたアレックス様。
「ごめんね…何度も言っているが、僕もユーリの事は嫌いじゃないよ。でも、ユーリはなんというか、妹みたいと言うか…正直令嬢として見られない。だからユーリと婚約する事は出来ないよ。でもね、僕は本当にユーリの事を大切に思っているんだ。だから、どうかこれからも今まで通り、過ごしていきたい」
今まで通り、過ごすか…いつもの私なら、このまま引き下がっていた。でも今日は!
「アレックス様、往生際が悪いと思われるかもしれませんが、私は本当にアレックス様を心から愛しております。どうしても私を受け入れる事は出来ませんか?」
往生際が悪い事は分かっている。でも…やっぱり諦めきれないのだ。
「ごめん、僕がユーリを令嬢として受け入れられない以上、どう転んでも君と結婚する事は出来なんだ。この気持ちは、一生変わらない。本当にごめんね。ユーリ、君には幸せになって欲しいと思っている。どうか素敵な令息を見つけて、幸せになってくれ」
そう言ってアレックス様が頭を下げたのだ。
「分かりましたわ。はっきりと気持ちを伝えて下さり、ありがとうございます。これで私も、前に進めそうです。どうかアレックス様も、お幸せに」
ここまではっきりとフラれたのだ。私もさすがに諦めるしかない。それがどんなに辛い事であっても…
あまりにも楽しそうに話しをしている2人を見ていると、胸がぎゅっと締め付けられるのだ。
私、本当にこのままでいいのだろうか。友人たちはどんどん意中の殿方と婚約を結んでいく。そんな中、私は…
このままではいけない。いつまでもアレックス様に振り向いてもらえる様に、努力するだけではダメだ。そろそろ私も、前に進まないと!
しばらくすると、アレックス様とセレナ様が席を立った。どうやらお茶が終わり、2人で帰る様だ。楽しそうに話しをしながら、馬車を目指す2人。そして
「アレックス様、美味しいお菓子と楽しい時間をありがとうございました。それではまた明日」
「僕の方こそ、楽しい時間をありがとう。また美味しいお菓子を準備するから、楽しみにしていて欲しい。それじゃあ、また明日」
セレナ様が馬車に乗り込むのを見送るアレックス様が、笑顔で手を振っている。セレナ様には、あんな風に馬車に乗り込むまで見送るのね。私にはそんな事をしてくれた事なんて、一度もないのに。
やっぱりこのままではダメだわ。
セレナ様の馬車が見えなくなるまで手を振り続けたアレックス様が、馬車に乗り込もうとしたところで、声をかける。
「アレックス様」
ゆっくり振り向くアレックス様。
「ユーリ、まだ残っていたのかい?君も早く帰った方がいいよ。もう少しすると暗くなるからね。それじゃあ、僕はこれで」
「お待ちください、少しだけ話をしたいのですが」
「ごめんね、もう遅いし、明日にしてくれないかな?」
「お願いです、少しだけ…」
「しつこいな。明日と言っているだろう?僕はしつこい女は嫌いだよ。それじゃあね」
そう言うと、アレックス様は馬車に乗り込み、さっさと帰ってしまった。私、なんだか惨めね…
仕方なく1人馬車に乗り込んだ。
よく考えてみれば、いつも私からアレックス様に話しかけてきた。彼から話し掛けられるときは、私に何かお願いを聞いて欲しい時くらいだった。
それに比べセレナ様には、彼女の欲しがっていたお菓子を準備したり(準備したのは私だけれど)、馬車までエスコートしたりするのね。
やっぱり私には、もう見込みがないのかもしれない…
でも…このまま諦める事なんて出来ない。そう、私は白黒はっきりさせたい性格なのだ。
明日もう一度、アレックス様と話をしよう。それでアレックス様に気持ちを伝えよう。もし私を受け入れて下さらないときは、きっぱりと彼を諦めよう。
よし!
なぜだろう、進む道が見えてきたら、今までモヤモヤしていた気持ちがスッと軽くなった。
たとえどんな結果になろうと、明日は自分の気持ちを全力でぶつけよう。それが今の私にできる、唯一の事だから。
そして翌日
「アレックス様、少しお話があるのですが、よろしいでしょうか?」
「話かい?そう言えば昨日、そんな様なことを言っていたね。別に構わないが、あまり君と2人きりになりたくないんだ。手短にお願いしたいな」
手短にか…
「分かりましたわ。それでは参りましょう」
出来るだけ人気のない場所に、アレックス様を連れて行った。そして
「アレックス様、私たちは親同士が仲が良かったことから、物心ついた時からずっと一緒にいましたね。いつも私に優しく接してくださるアレックス様が、大好きです。もちろん、今もその気持ちは変わりません。どうか私と、将来を共に歩んでくださいませんか?」
真っすぐアレックス様を見つめ、そう伝えた。すると、少し困った顔をしたアレックス様。
「ごめんね…何度も言っているが、僕もユーリの事は嫌いじゃないよ。でも、ユーリはなんというか、妹みたいと言うか…正直令嬢として見られない。だからユーリと婚約する事は出来ないよ。でもね、僕は本当にユーリの事を大切に思っているんだ。だから、どうかこれからも今まで通り、過ごしていきたい」
今まで通り、過ごすか…いつもの私なら、このまま引き下がっていた。でも今日は!
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「ごめん、僕がユーリを令嬢として受け入れられない以上、どう転んでも君と結婚する事は出来なんだ。この気持ちは、一生変わらない。本当にごめんね。ユーリ、君には幸せになって欲しいと思っている。どうか素敵な令息を見つけて、幸せになってくれ」
そう言ってアレックス様が頭を下げたのだ。
「分かりましたわ。はっきりと気持ちを伝えて下さり、ありがとうございます。これで私も、前に進めそうです。どうかアレックス様も、お幸せに」
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