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第17話:陛下と街に出ます
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この国に来て早半年、すっかりこの生活にも慣れた。陛下に王宮内を案内してもらってからは、中庭にもよく足を運ぶ様になった。夜は陛下と客間でお茶を飲んだり、王宮内を散歩したりと、自由に動き回っている。
王宮内を動き回って分かったのだが、どうやらこの王宮には女性の使用人が極端に少ないという事。それも皆クロハくらいの歳の人ばかりなのだ。カルビア王国の王宮には、沢山の若い女性が働いていたのに…
疑問に思って聞いてみたら
「若い女性は、陛下の顔を見ると怯えてしまいますので…」
そう言って苦笑いしていたクロハ。いくら陛下の顔が勇ましいからって、主に怯える使用人だなんて。本当にこの国の女性たちは、一体何を考えているのかしら?それに陛下は、とてもお優しくて素敵な男性なのに!そう思ったら、なんだか腹が立ってきた。
さらにクロハは
「アナスタシア様がご要望でしたら、若い使用人を雇いますよ」
と言われた。陛下を見て怯える様な失礼な使用人は、こっちから願い下げだ!そんな思いから、丁重に断った。
なんだか思い出したら腹が立ってきたわ!
「アナスタシア嬢、怖い顔をしてどうしたのだい?何か気に入らない事でもあったのかい?」
前で食事をしている陛下が、心配そうに訪ねて来た。今は陛下と晩御飯を頂いているところなのだ。
「いえ、何でもありませんわ。そういえば陛下、明日は公務がお休みと聞きましたわ。せっかくですから、一緒に中庭でお茶でもしませんか?」
「その件なのだが…その、せっかくだから、明日は一緒に王都の街に出てみないかい?アナスタシア嬢はこの国に来て、まだ一度も王宮から出ていないだろう?それで、その…」
「王都の街にですか?それは楽しみですわ。ぜひ案内してください」
この国に来てから今まで、一度も王都の街を見た事がないのだ。これは楽しみね。
翌日、動きやすいワンピースに着替えた。さすがにこの国に来て半年経っているので、ワンピースくらい普通に着られる様になったのだが…なぜかクロハが最近よくお世話をしてくれるのだ。
これじゃあ公爵家にいた時と変わらないわ…
そう思ってクロハに伝えたのだが…
“長らく王宮には女性がおりませんでしたので、お世話できるのが嬉しいのです。どうか私の願いを叶えていると思って、甘えて下さいませ”
そう言われてしまっては、さすがにこれ以上反論できない。
「アナスタシア様、せっかく街に出るのです。遠慮せずに、どんどん陛下にいろいろな物を買ってもらってくださいね」
そう言ってほほ笑んでいるクロハ。さすがに居候の身で、物を買っていただくなんて、申し訳なさすぎる。ただでさえ、ドレスやアクセサリーなども買ってもらっているのだ。これ以上、我が儘なんて言える訳がない。
そう思いつつ、部屋から出る。すると陛下が待ってくれていた。黒のズボンに白いシャツを着たシンプルな装いだが、とても似合っている。
「お待たせして申し訳ございません。今日の装い、とても似合っていらっしゃいますわ」
「私も今来たところだ。アナスタシア嬢も…その…とても似合っている」
そう言うと、クルリと反対を向いてしまった。どうやら恥ずかしい様だ。陛下は少し恥ずかしがり屋なところがある。それでも私を褒めてくれるのが嬉しくて、スッと陛下の手を取った。
「陛下、そろそろ参りましょう。私、今日をとても楽しみにしておりましたの」
「そ…そうだな。行こうか」
陛下と一緒に、門へと向かう。この半年、一度も外に出たことがなかったが、門はこんな風になっているのね。
この国の門は、何重にもなっている。他国が襲ってきた時に、王宮内への侵入を遅らせるためとの事。
「さあ、行こう」
陛下にエスコートされ、馬車に乗り込んだ。さすが王宮の馬車、広くて座り心地がいい。
しばらく馬車に揺られていると、街に入った。さすが王都の街、かなりの活気だ。いたるところで魚介類も売られている。あら?あの建屋は、孤児院かしら?懐かしいわ、私も王妃教育の一環で、よく孤児院を訪れていた。子供たちの無邪気な顔を見ると、心が安らぐのよね。
そんな事を考えているうちに、馬車が停まった。
「アナスタシア嬢、この国は比較的治安がいいが、それでも悪い奴らがいる。十分気を付けてくれ」
「はい、分かりました。陛下の傍から離れないようにいたします」
陛下はとても強いから、きっと万が一盗賊が出ても、やっつけてくれるだろう。スッと陛下の手を取り、馬車から降りる。
せっかくなので、街を見て回る事にした。
「陛下、見て下さい!こんなにも大きなお魚が売られておりますわ。まあ、こっちにも」
“アナスタシア嬢、今日はお忍びで来ているのだ。あまり大きな声で、陛下と呼ぶのは控えてくれ”
陛下から注意された。確かにそうよね。
“それでしたら…カイ様とお呼びしてもよいですか?それから、私の事はアナスタシアと呼び捨てでお呼びください。その方が良いかと”
“わ…分かった…アナスタシア”
なぜか恥ずかしそうに私の名前を呼んだ陛下…じゃなくて、カイ様。なんだか名前で呼ぶのって、照れ臭いわね。でも、距離が縮まったみたいで嬉しいわ。
王宮内を動き回って分かったのだが、どうやらこの王宮には女性の使用人が極端に少ないという事。それも皆クロハくらいの歳の人ばかりなのだ。カルビア王国の王宮には、沢山の若い女性が働いていたのに…
疑問に思って聞いてみたら
「若い女性は、陛下の顔を見ると怯えてしまいますので…」
そう言って苦笑いしていたクロハ。いくら陛下の顔が勇ましいからって、主に怯える使用人だなんて。本当にこの国の女性たちは、一体何を考えているのかしら?それに陛下は、とてもお優しくて素敵な男性なのに!そう思ったら、なんだか腹が立ってきた。
さらにクロハは
「アナスタシア様がご要望でしたら、若い使用人を雇いますよ」
と言われた。陛下を見て怯える様な失礼な使用人は、こっちから願い下げだ!そんな思いから、丁重に断った。
なんだか思い出したら腹が立ってきたわ!
「アナスタシア嬢、怖い顔をしてどうしたのだい?何か気に入らない事でもあったのかい?」
前で食事をしている陛下が、心配そうに訪ねて来た。今は陛下と晩御飯を頂いているところなのだ。
「いえ、何でもありませんわ。そういえば陛下、明日は公務がお休みと聞きましたわ。せっかくですから、一緒に中庭でお茶でもしませんか?」
「その件なのだが…その、せっかくだから、明日は一緒に王都の街に出てみないかい?アナスタシア嬢はこの国に来て、まだ一度も王宮から出ていないだろう?それで、その…」
「王都の街にですか?それは楽しみですわ。ぜひ案内してください」
この国に来てから今まで、一度も王都の街を見た事がないのだ。これは楽しみね。
翌日、動きやすいワンピースに着替えた。さすがにこの国に来て半年経っているので、ワンピースくらい普通に着られる様になったのだが…なぜかクロハが最近よくお世話をしてくれるのだ。
これじゃあ公爵家にいた時と変わらないわ…
そう思ってクロハに伝えたのだが…
“長らく王宮には女性がおりませんでしたので、お世話できるのが嬉しいのです。どうか私の願いを叶えていると思って、甘えて下さいませ”
そう言われてしまっては、さすがにこれ以上反論できない。
「アナスタシア様、せっかく街に出るのです。遠慮せずに、どんどん陛下にいろいろな物を買ってもらってくださいね」
そう言ってほほ笑んでいるクロハ。さすがに居候の身で、物を買っていただくなんて、申し訳なさすぎる。ただでさえ、ドレスやアクセサリーなども買ってもらっているのだ。これ以上、我が儘なんて言える訳がない。
そう思いつつ、部屋から出る。すると陛下が待ってくれていた。黒のズボンに白いシャツを着たシンプルな装いだが、とても似合っている。
「お待たせして申し訳ございません。今日の装い、とても似合っていらっしゃいますわ」
「私も今来たところだ。アナスタシア嬢も…その…とても似合っている」
そう言うと、クルリと反対を向いてしまった。どうやら恥ずかしい様だ。陛下は少し恥ずかしがり屋なところがある。それでも私を褒めてくれるのが嬉しくて、スッと陛下の手を取った。
「陛下、そろそろ参りましょう。私、今日をとても楽しみにしておりましたの」
「そ…そうだな。行こうか」
陛下と一緒に、門へと向かう。この半年、一度も外に出たことがなかったが、門はこんな風になっているのね。
この国の門は、何重にもなっている。他国が襲ってきた時に、王宮内への侵入を遅らせるためとの事。
「さあ、行こう」
陛下にエスコートされ、馬車に乗り込んだ。さすが王宮の馬車、広くて座り心地がいい。
しばらく馬車に揺られていると、街に入った。さすが王都の街、かなりの活気だ。いたるところで魚介類も売られている。あら?あの建屋は、孤児院かしら?懐かしいわ、私も王妃教育の一環で、よく孤児院を訪れていた。子供たちの無邪気な顔を見ると、心が安らぐのよね。
そんな事を考えているうちに、馬車が停まった。
「アナスタシア嬢、この国は比較的治安がいいが、それでも悪い奴らがいる。十分気を付けてくれ」
「はい、分かりました。陛下の傍から離れないようにいたします」
陛下はとても強いから、きっと万が一盗賊が出ても、やっつけてくれるだろう。スッと陛下の手を取り、馬車から降りる。
せっかくなので、街を見て回る事にした。
「陛下、見て下さい!こんなにも大きなお魚が売られておりますわ。まあ、こっちにも」
“アナスタシア嬢、今日はお忍びで来ているのだ。あまり大きな声で、陛下と呼ぶのは控えてくれ”
陛下から注意された。確かにそうよね。
“それでしたら…カイ様とお呼びしてもよいですか?それから、私の事はアナスタシアと呼び捨てでお呼びください。その方が良いかと”
“わ…分かった…アナスタシア”
なぜか恥ずかしそうに私の名前を呼んだ陛下…じゃなくて、カイ様。なんだか名前で呼ぶのって、照れ臭いわね。でも、距離が縮まったみたいで嬉しいわ。
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