14 / 35
第14話:彼女は何者なんだ~カイ視点~
しおりを挟む
女が目覚めた次の日。
「陛下、やはりアナスタシア様はスパイとは思えません。今日は海に一緒に行ったのですが、海に手紙を入れた小瓶を流し、涙を流しながら手を合わせておられました。きっと大切な方が亡くなったのでしょう。お可哀そうに。それに時折悲しそうに海を見つめられていらっしゃいます。やはり彼女は…」
「それで、小瓶は回収したのか?もしかしたら、小瓶に入っていた手紙は、我が国の情報が書かれているかもしれないだろう」
「陛下、私はアナスタシア様が手紙を書いている時、後ろでこっそり見ておりましたが、内容はスパイ活動に関するものではありませんでした。私の口から手紙の内容はお伝え出来ませんが、どうやらかつてのメイドに宛てた謝罪の手紙の様でしたわ。それに、アナスタシア様はスパイにしては無防備すぎます!ほとんど部屋から出られませんし、夜もしっかり眠られている様です。逐一映像で監視していますが、おかしな動きは見受けられません!」
「クロハ、君は随分とアナスタシア嬢という女性の肩を持つのだね。今まで数々の女スパイの悪事を見破って来たクロハがそこまで言うなら、信じよう…ただ、引き続き監視は頼む」
「はい、かしこまりました」
その後もアナスタシア嬢は特に怪しい動きをする事はなく、日々を過ごしている様だ。ただ、なぜか私に直接お礼を言いたいとの事だが、丁重にお断りした。すると、可愛らしい刺しゅう入りのハンカチが、私の元に届いたのだ。
「わざわざ私の様な男にハンカチを渡すだなんて、やはりスパイか?」
令嬢が震えあがるほど恐ろしい顔をしている私に、刺しゅう入りのハンカチをくれるだなんて…
「陛下、アナスタシア様はあなた様の姿を知りません。どうやら彼女は、義理堅い性格なのでしょう。そうそう、最近では湯あみや着替えを自分で行える様に、日々練習をしておりますよ。本当にスパイでしたら、着替えも湯あみも1人で出来ますし、何よりあんなに一生懸命なされません」
「もう彼女をスパイだとは疑っていない!しつこいな」
「それならよろしいです。陛下、良かったですね。令嬢からの初めてのプレゼントです。大事にしてください。それでは私はこれで」
そう言うと、クロハはさっさと去って行った。クソ、私の事をバカにして。でも…確かに令嬢から初めて貰ったプレゼント。それも私の為に、刺繍を入れてくれたのか…と言っても、私の顔を見ていないのだ。きっと美しい男性でも想像しているのだろう。
それでもこうやって贈り物をもらうと嬉しいものだな。
彼女がこの国に来て、もうすぐ2週間。助けた時の泥だらけの姿しか見ていないが、クロハの話ではとても美しい女性の様だ。
“陛下も一度ご覧になってはいかがですか?”と言われたが、万が一私の姿を見られたら、きっと怯えられてしまうだろう。そんな思いから、まだ元気になった彼女の姿を一度も見ていない。
まあ、彼女がスパイでないのであれば、王宮に好きなだけ居てもらっても構わないと思っている。
そんなある日、いつもの様に海に行くと、そこにはクロハを連れたアナスタシア嬢の姿が。あの時とは打って変わって、美しい水色の髪の毛をなびかせ、貝殻を拾っている。クロハの言う通り、とても綺麗な令嬢だ。瞳の色はエメラルドグリーンか。この海と同じ色だな。
万が一私の姿を見られたら、彼女に怯えられる。分かっているが、なぜか彼女から目が離せない。その時だった。彼女と目があってしまったのだ。
しまった!見られた!
急いでその場を去ろうとしたのだが…なんと彼女から貰ったハンカチを落としてしまったのだ。
そのハンカチを拾って渡してくれたアナスタシア嬢。その時、目が合ってしまった。きっと彼女を怖がらせてしまっただろう。そう思い、急いでその場を去ろうとしたのだが。
何とアナスタシア嬢は、私を怖がることなく話しかけてきたのだ。初めて近くで見る彼女は、とても美しかった。さらに私に必死に話かけてくるアナスタシア嬢に、“私が怖くないのか?”と聞くと、“なぜ怖いのですか?”と、心底不思議そうな顔で首をコテンと傾けている。
な…何なんだ…この可愛い生き物は…
一気に鼓動が早くなるをの感じる。そんな私にはお構いなしに、話しかけてくるアナスタシア嬢。
クロハも私たちの元にやって来て、あろう事か私の正体をばらしてしまったのだ。私の様な男が国王だと知って、さぞショックを受けるだろう…そう思っていたのだが。アナスタシア嬢の顔がぱぁぁっと明るくなったかと思ったら、改めて助けた事のお礼を言われた。
さらに私の為にまたハンカチに刺繍を入れてくれると言ってくれた上、令嬢になれていない私の為に、色々と協力してくれると申し出てくれたのだ。
早速アナスタシア嬢をエスコートする。そっと私の腕に手を添えるアナスタシア嬢。近い…近いぞ…それにいい匂いもする。さっきアナスタシア嬢の手が私に触れた時、とても柔らかかった。令嬢とはこんなにも柔らかいものなのか…
結局部屋に着くまで、興奮を抑えるのに必死だった。
「陛下、やはりアナスタシア様はスパイとは思えません。今日は海に一緒に行ったのですが、海に手紙を入れた小瓶を流し、涙を流しながら手を合わせておられました。きっと大切な方が亡くなったのでしょう。お可哀そうに。それに時折悲しそうに海を見つめられていらっしゃいます。やはり彼女は…」
「それで、小瓶は回収したのか?もしかしたら、小瓶に入っていた手紙は、我が国の情報が書かれているかもしれないだろう」
「陛下、私はアナスタシア様が手紙を書いている時、後ろでこっそり見ておりましたが、内容はスパイ活動に関するものではありませんでした。私の口から手紙の内容はお伝え出来ませんが、どうやらかつてのメイドに宛てた謝罪の手紙の様でしたわ。それに、アナスタシア様はスパイにしては無防備すぎます!ほとんど部屋から出られませんし、夜もしっかり眠られている様です。逐一映像で監視していますが、おかしな動きは見受けられません!」
「クロハ、君は随分とアナスタシア嬢という女性の肩を持つのだね。今まで数々の女スパイの悪事を見破って来たクロハがそこまで言うなら、信じよう…ただ、引き続き監視は頼む」
「はい、かしこまりました」
その後もアナスタシア嬢は特に怪しい動きをする事はなく、日々を過ごしている様だ。ただ、なぜか私に直接お礼を言いたいとの事だが、丁重にお断りした。すると、可愛らしい刺しゅう入りのハンカチが、私の元に届いたのだ。
「わざわざ私の様な男にハンカチを渡すだなんて、やはりスパイか?」
令嬢が震えあがるほど恐ろしい顔をしている私に、刺しゅう入りのハンカチをくれるだなんて…
「陛下、アナスタシア様はあなた様の姿を知りません。どうやら彼女は、義理堅い性格なのでしょう。そうそう、最近では湯あみや着替えを自分で行える様に、日々練習をしておりますよ。本当にスパイでしたら、着替えも湯あみも1人で出来ますし、何よりあんなに一生懸命なされません」
「もう彼女をスパイだとは疑っていない!しつこいな」
「それならよろしいです。陛下、良かったですね。令嬢からの初めてのプレゼントです。大事にしてください。それでは私はこれで」
そう言うと、クロハはさっさと去って行った。クソ、私の事をバカにして。でも…確かに令嬢から初めて貰ったプレゼント。それも私の為に、刺繍を入れてくれたのか…と言っても、私の顔を見ていないのだ。きっと美しい男性でも想像しているのだろう。
それでもこうやって贈り物をもらうと嬉しいものだな。
彼女がこの国に来て、もうすぐ2週間。助けた時の泥だらけの姿しか見ていないが、クロハの話ではとても美しい女性の様だ。
“陛下も一度ご覧になってはいかがですか?”と言われたが、万が一私の姿を見られたら、きっと怯えられてしまうだろう。そんな思いから、まだ元気になった彼女の姿を一度も見ていない。
まあ、彼女がスパイでないのであれば、王宮に好きなだけ居てもらっても構わないと思っている。
そんなある日、いつもの様に海に行くと、そこにはクロハを連れたアナスタシア嬢の姿が。あの時とは打って変わって、美しい水色の髪の毛をなびかせ、貝殻を拾っている。クロハの言う通り、とても綺麗な令嬢だ。瞳の色はエメラルドグリーンか。この海と同じ色だな。
万が一私の姿を見られたら、彼女に怯えられる。分かっているが、なぜか彼女から目が離せない。その時だった。彼女と目があってしまったのだ。
しまった!見られた!
急いでその場を去ろうとしたのだが…なんと彼女から貰ったハンカチを落としてしまったのだ。
そのハンカチを拾って渡してくれたアナスタシア嬢。その時、目が合ってしまった。きっと彼女を怖がらせてしまっただろう。そう思い、急いでその場を去ろうとしたのだが。
何とアナスタシア嬢は、私を怖がることなく話しかけてきたのだ。初めて近くで見る彼女は、とても美しかった。さらに私に必死に話かけてくるアナスタシア嬢に、“私が怖くないのか?”と聞くと、“なぜ怖いのですか?”と、心底不思議そうな顔で首をコテンと傾けている。
な…何なんだ…この可愛い生き物は…
一気に鼓動が早くなるをの感じる。そんな私にはお構いなしに、話しかけてくるアナスタシア嬢。
クロハも私たちの元にやって来て、あろう事か私の正体をばらしてしまったのだ。私の様な男が国王だと知って、さぞショックを受けるだろう…そう思っていたのだが。アナスタシア嬢の顔がぱぁぁっと明るくなったかと思ったら、改めて助けた事のお礼を言われた。
さらに私の為にまたハンカチに刺繍を入れてくれると言ってくれた上、令嬢になれていない私の為に、色々と協力してくれると申し出てくれたのだ。
早速アナスタシア嬢をエスコートする。そっと私の腕に手を添えるアナスタシア嬢。近い…近いぞ…それにいい匂いもする。さっきアナスタシア嬢の手が私に触れた時、とても柔らかかった。令嬢とはこんなにも柔らかいものなのか…
結局部屋に着くまで、興奮を抑えるのに必死だった。
215
お気に入りに追加
5,991
あなたにおすすめの小説
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
【完結】偽りの婚約のつもりが愛されていました
ユユ
恋愛
可憐な妹に何度も婚約者を奪われて生きてきた。
だけど私は子爵家の跡継ぎ。
騒ぎ立てることはしなかった。
子爵家の仕事を手伝い、婚約者を持つ令嬢として
慎ましく振る舞ってきた。
五人目の婚約者と妹は体を重ねた。
妹は身籠った。
父は跡継ぎと婚約相手を妹に変えて
私を今更嫁に出すと言った。
全てを奪われた私はもう我慢を止めた。
* 作り話です。
* 短めの話にするつもりです
* 暇つぶしにどうぞ
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
【完結】もう辛い片想いは卒業して結婚相手を探そうと思います
ユユ
恋愛
大家族で大富豪の伯爵家に産まれた令嬢には
好きな人がいた。
彼からすれば誰にでも向ける微笑みだったが
令嬢はそれで恋に落ちてしまった。
だけど彼は私を利用するだけで
振り向いてはくれない。
ある日、薬の過剰摂取をして
彼から離れようとした令嬢の話。
* 完結保証付き
* 3万文字未満
* 暇つぶしにご利用下さい
【完結】どうかその想いが実りますように
おもち。
恋愛
婚約者が私ではない別の女性を愛しているのは知っている。お互い恋愛感情はないけど信頼関係は築けていると思っていたのは私の独りよがりだったみたい。
学園では『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と陰で言われているのは分かってる。
いつまでも貴方を私に縛り付けていては可哀想だわ、だから私から貴方を解放します。
貴方のその想いが実りますように……
もう私には願う事しかできないから。
※ざまぁは薄味となっております。(当社比)もしかしたらざまぁですらないかもしれません。汗
お読みいただく際ご注意くださいませ。
※完結保証。全10話+番外編1話です。
※番外編2話追加しました。
※こちらの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。
【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる