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第4話:誘拐された様です
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「あの…ごめんなさい。どうか私を、連れ戻さないで下さい。お願いします」
腰が抜けて動けない私は、その場に座り込み、必死に頭を下げた。
「お前、もしかして貴族か?」
あれ?なんだか声が太いし、話し方がおかしい?
ゆっくり顔をあげると、そこにはがっちりとした体の男性が3人立っていた。見るからに悪そうなことをしていますと言う雰囲気を漂わせて…
「あの…申し訳ございませんでした。それでは、失礼いたします」
何とか立ち上がり、その場を去ろうとしたのだが…
「待てよ!この女、よく見ると綺麗な顔をしているぞ。それに着ている寝具は、高級素材でできているし。この耳に付いているイヤリング、本物のエメラルドじゃないか!これは上玉だ。よし、この女を連れていくぞ。急げ」
そう言うと、イヤリングを奪い取り、私を担いだ男性。
「離してください。どこに連れていくのですか?」
必死に暴れるが、もちろん歯が立つわけがない。
「静かにしろ!クソ、どうして今日はこんなに騎士が多いんだ。一体何があったんだ?」
そう言いながらも、近くにあった古ぼけた馬車の荷台に放り込まれた。
「逃げられたら大変だからな」
そう言って男たちは、私をロープで縛りあげた。そして口にもしゃべれない様に、布を巻かれる。どうやら私は、この男たちに誘拐される様だ。私、一体どんな目に合うのかしら?恐怖から体が震えた。
そして馬車は動き出した。しばらく走ると、急に馬車が停まったのだ。一体どうしたのかしら?もしかして、目的地に着いたとか?
耳を澄ませると、何やら男性たちの話声が聞こえる。
「お前たち、水色の髪をした令嬢を見なかったか?」
「いいえ、見ておりませんが…」
水色の髪の令嬢?それは私の事ね。という事は、騎士たちに呼び止められたのだわ。一瞬にして、体が凍り付く。
「嘘を付け!アナスタシア様の居場所を特定する機械が、お前たちの動きと同じように動いているんだ!エメラルドのイヤリングを付けた令嬢だぞ!」
何と…あのイヤリングには、私の居場所が特定できる機械が付いていたなんて…
「エメラルドのイヤリングなら持っていますよ。これですよね。広場のところに落ちているのをたまたま見つけまして…」
「それは本当か!ではアナスタシア様は、お前たちと一緒にいないんだな?」
「はい、おりません」
「…分かった、行っていいぞ」
再びゆっくりと馬車が動き出した。もしかしたら、あそこで声をあげれば、助かったかもしれない。口を布で覆われいても、唸り声くらいはあげられる。でも…
どうしても声をあげる事ができなかった。たとえ騎士たちに助けられたところで、私はずっと離宮に閉じ込められ、寂しい一生を過ごす事だろう。仲睦まじい2人の姿を見せつけられながら…
それならまだこの男たちに囚われ、酷い扱いを受けた方がいい。私が酷い扱いを受けたら、もしかしたらリーナへの罪も、少しは和らぐかしら?
そんな事を考えてしまう。しばらく走ると、再び馬車が停まった。
「目的地に着いたぞ。早くこの女を運ぼう。それにしてもお前、やっぱりどこかの令嬢だったんだな。お前なら相当高く売れそうだ」
そう言うと、ニヤリと笑った男。そのまま担がれ、馬車の荷台から出る。すると目の前には、大きな港が…
あの大きな船に乗るのかしら?そう思っていたのだが、私が乗せられたのは小さな船だ。6畳くらいの小さな部屋に放り込まれると、そのまま縄と口の布が解かれた。
「あの、私は今からどこに連れていかれるのですか?」
「お前は知らなくていい。とにかく、お前は大事な商品だ。ここで大人しくしていろ。暴れなければ、俺たちも手荒な真似はしないからな」
商品?よくわからないが、どうやら私は他国に売られる様だ。売られたら私、どうなるのかしら?なんだか急に怖くなってきた。でも…自国にいても惨めな思いをするだけだもの。
もしかしたら売られた先で、それなりの生活が出来るかもしれないし。そんな事を考えてしまう。
ふと周りを見渡すと、小さなベッドに机、イスが置かれていた。奥にはトイレもある。そういえば私、着替えなどを一切持ってこなかったわ。あの人たちが服を準備してくれるとは思えないし…
とりあえず考えても仕方がない。そのまま固いベッドに横になり、眠りについた。
翌日、案の定着替え等はない様だ。それでも朝昼晩と、食事を与えてくれた。その次の日も、またその次の日も、食事だけ運んでくる男たち。気が付くと船に乗せられて、10日が過ぎていた。この10日間、お風呂にも入っていないし、着替えもしていない。さすがに気持ち悪いわ。
それに、いつまで船の中で過ごすのかしら?
船に乗せられて11日目、今日は天候が良くない様で、船がよく揺れる。ギシギシいっているし、この船、大丈夫かしら?そんな不安が私を襲った。
激しく船が揺れるから、なんだか気持ち悪い。そんな中、いつもの様に男性が食事を持ってきた。
「あの…この船、大丈夫なのでしょうか?」
「あぁ…嵐が来ているけれど、問題ない。お前はいらん事を気にするな!これでも食って、大人しくしていろ」
そう言うと、荒々しくドアを閉め、鍵を掛けて出て行った男性。でも、あまりの揺れに、食事がそのままひっくり返ってしまった。本当にこの船、大丈夫なのかしら?
怖くて隅の方に丸くなって、嵐が過ぎるのを待つ。でも、どんどん揺れは激しくなっていく。そしてついに、バリバリバリという大きな音共に、扉や壁が破壊され、そのまま海水が入り込んできた。とっさに近くにあった机にしがみつく。でも…
冷たい海に放り込まれた私は、そのまま意識を無くしてしまったのだった。
腰が抜けて動けない私は、その場に座り込み、必死に頭を下げた。
「お前、もしかして貴族か?」
あれ?なんだか声が太いし、話し方がおかしい?
ゆっくり顔をあげると、そこにはがっちりとした体の男性が3人立っていた。見るからに悪そうなことをしていますと言う雰囲気を漂わせて…
「あの…申し訳ございませんでした。それでは、失礼いたします」
何とか立ち上がり、その場を去ろうとしたのだが…
「待てよ!この女、よく見ると綺麗な顔をしているぞ。それに着ている寝具は、高級素材でできているし。この耳に付いているイヤリング、本物のエメラルドじゃないか!これは上玉だ。よし、この女を連れていくぞ。急げ」
そう言うと、イヤリングを奪い取り、私を担いだ男性。
「離してください。どこに連れていくのですか?」
必死に暴れるが、もちろん歯が立つわけがない。
「静かにしろ!クソ、どうして今日はこんなに騎士が多いんだ。一体何があったんだ?」
そう言いながらも、近くにあった古ぼけた馬車の荷台に放り込まれた。
「逃げられたら大変だからな」
そう言って男たちは、私をロープで縛りあげた。そして口にもしゃべれない様に、布を巻かれる。どうやら私は、この男たちに誘拐される様だ。私、一体どんな目に合うのかしら?恐怖から体が震えた。
そして馬車は動き出した。しばらく走ると、急に馬車が停まったのだ。一体どうしたのかしら?もしかして、目的地に着いたとか?
耳を澄ませると、何やら男性たちの話声が聞こえる。
「お前たち、水色の髪をした令嬢を見なかったか?」
「いいえ、見ておりませんが…」
水色の髪の令嬢?それは私の事ね。という事は、騎士たちに呼び止められたのだわ。一瞬にして、体が凍り付く。
「嘘を付け!アナスタシア様の居場所を特定する機械が、お前たちの動きと同じように動いているんだ!エメラルドのイヤリングを付けた令嬢だぞ!」
何と…あのイヤリングには、私の居場所が特定できる機械が付いていたなんて…
「エメラルドのイヤリングなら持っていますよ。これですよね。広場のところに落ちているのをたまたま見つけまして…」
「それは本当か!ではアナスタシア様は、お前たちと一緒にいないんだな?」
「はい、おりません」
「…分かった、行っていいぞ」
再びゆっくりと馬車が動き出した。もしかしたら、あそこで声をあげれば、助かったかもしれない。口を布で覆われいても、唸り声くらいはあげられる。でも…
どうしても声をあげる事ができなかった。たとえ騎士たちに助けられたところで、私はずっと離宮に閉じ込められ、寂しい一生を過ごす事だろう。仲睦まじい2人の姿を見せつけられながら…
それならまだこの男たちに囚われ、酷い扱いを受けた方がいい。私が酷い扱いを受けたら、もしかしたらリーナへの罪も、少しは和らぐかしら?
そんな事を考えてしまう。しばらく走ると、再び馬車が停まった。
「目的地に着いたぞ。早くこの女を運ぼう。それにしてもお前、やっぱりどこかの令嬢だったんだな。お前なら相当高く売れそうだ」
そう言うと、ニヤリと笑った男。そのまま担がれ、馬車の荷台から出る。すると目の前には、大きな港が…
あの大きな船に乗るのかしら?そう思っていたのだが、私が乗せられたのは小さな船だ。6畳くらいの小さな部屋に放り込まれると、そのまま縄と口の布が解かれた。
「あの、私は今からどこに連れていかれるのですか?」
「お前は知らなくていい。とにかく、お前は大事な商品だ。ここで大人しくしていろ。暴れなければ、俺たちも手荒な真似はしないからな」
商品?よくわからないが、どうやら私は他国に売られる様だ。売られたら私、どうなるのかしら?なんだか急に怖くなってきた。でも…自国にいても惨めな思いをするだけだもの。
もしかしたら売られた先で、それなりの生活が出来るかもしれないし。そんな事を考えてしまう。
ふと周りを見渡すと、小さなベッドに机、イスが置かれていた。奥にはトイレもある。そういえば私、着替えなどを一切持ってこなかったわ。あの人たちが服を準備してくれるとは思えないし…
とりあえず考えても仕方がない。そのまま固いベッドに横になり、眠りについた。
翌日、案の定着替え等はない様だ。それでも朝昼晩と、食事を与えてくれた。その次の日も、またその次の日も、食事だけ運んでくる男たち。気が付くと船に乗せられて、10日が過ぎていた。この10日間、お風呂にも入っていないし、着替えもしていない。さすがに気持ち悪いわ。
それに、いつまで船の中で過ごすのかしら?
船に乗せられて11日目、今日は天候が良くない様で、船がよく揺れる。ギシギシいっているし、この船、大丈夫かしら?そんな不安が私を襲った。
激しく船が揺れるから、なんだか気持ち悪い。そんな中、いつもの様に男性が食事を持ってきた。
「あの…この船、大丈夫なのでしょうか?」
「あぁ…嵐が来ているけれど、問題ない。お前はいらん事を気にするな!これでも食って、大人しくしていろ」
そう言うと、荒々しくドアを閉め、鍵を掛けて出て行った男性。でも、あまりの揺れに、食事がそのままひっくり返ってしまった。本当にこの船、大丈夫なのかしら?
怖くて隅の方に丸くなって、嵐が過ぎるのを待つ。でも、どんどん揺れは激しくなっていく。そしてついに、バリバリバリという大きな音共に、扉や壁が破壊され、そのまま海水が入り込んできた。とっさに近くにあった机にしがみつく。でも…
冷たい海に放り込まれた私は、そのまま意識を無くしてしまったのだった。
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