私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi

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第70話:何が起こっているのだ?~ジェイデン視点~

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 扉の向こうには、大勢の貴族が集まっている。これは一体…

「ジェイデン、来たか。さあ、入ってくれ」

 奥の方には父上と母上、それに…

「どうしてサミュエルが、ここにいるのだい?君は今、体調が悪くて寝ているはずでは…」

 今まさに最後の毒を飲んで、息絶えようとしているはずのサミュエルが、まっすぐ僕の方を見つめているのだ。隣には、キャリーヌの姿もある。

 一体何が起こっているのだ?

「兄上、僕が元気にここに座っていることが、そんなに不思議ですか?そうですよね、あなたの呪いがかかった毒のせいで、僕は今から命を落とすはずだったのですから」

 にっこり微笑みながら、あり得ない事を言っているサミュエル。どうして僕が、サミュエルを毒殺しようとした事を知っているのだ?

「ジェイデン、お前がティーヌン侯爵と手を組んで、サミュエルを亡き者にしようとした事は、既にわかっている。まさかティーヌン侯爵が、グラディーン王国の魔術師と知り合いだっただなんてな。そうだろ?ティーヌン侯爵」

 父上の視線の先には、端に座っているティーヌン侯爵の姿が。真っ青な顔をして俯いている。

「ティーヌン侯爵、まさか僕を裏切ったのかい?」

 もしかしてティーヌン侯爵が、父上たちに全てを話したのかもしれない。そう思ったのだが…

「ティーヌン侯爵は、お前を裏切っていないよ。ただ、ジェイデンもティーヌン侯爵も、キャリーヌ嬢の事を甘く見ていた様だね」

「キャリーヌの事を?それは一体…」

 ビックリしてキャリーヌ方を見た。よく見ると、キャリーヌの後ろにはモニターが設置されており、そこには女性と男性が映っていた。彼らは一体…

「ジェイデン殿下、あなた様はシュテルベンの花の毒に呪いをかけて、サミュエル様に飲ませましたね。まさか医師や使用人、護衛の中にもあなた様の息のかかった者がいただなんて…」

 はぁっとため息をつくキャリーヌ。

「どうして君が、シュテルベンの花の毒の事を知っているのだい?あの毒は、この国には存在しないし、何より魔力を持った者でないと、暴く事が出来ないものだ!」

 そうだ、魔力を持っていないこの国の住民、キャリーヌが知る由もない事なのだ。

「どうして私が、シュテルベンの花の毒の事を知っているかですって?それは私の大切な親友、カリアン王国のミリアム殿下とその婚約者、カイロ様が色々と調べて下さったからです。カリアン王国には、魔術師様がいらっしゃるので」

 カリアン王国のミリアム殿下と、その婚約者だって?ミリアム殿下…もしかして、今モニターに映っている女が…

 “初めまして、ジェイデン殿下。ミリアム・キャリア・カリアンと申しますわ。あなた様がどうしようもないクズと言う事は存じ上げておりましたが、まさか実の弟まで殺そうとするだなんて。本当に、どうしようもない人ですね”

 汚らわしいものを見る様な眼差しで、女が僕の方を見ている。その上、僕の事を今クズだと言ったな?そもそもこの女のせいで、僕はカリアン王国に留学する事が出来なかったんだ。確かラミア王女を国に帰したのも、この女の策略だと聞く。

 “ミリアム、気持ちは分かるが、相手は一応王族だ。言葉遣いには気を付けるべきだ。ただ…まさか実の弟に手を掛けようとするだなんて…本当に恐ろしい男だな”

「黙って聞いていれば、好き勝手言って。部外者でもある君たちに、とやかく言われる筋合いはない!第一、僕がサミュエルに毒を盛ったという証拠はどこにあるんだよ!あまり勝手な事を言うと、いくら他国の王族だからって、容赦しないぞ!」

「ミリアム様とカイロ様は、部外者ではありません。私とサミュエル様の、大切な友人です。彼らはサミュエル様の一大事と聞いて、必死に動いて下さったのです!それから、証拠ならこちらにありますわ!」

 キャリーヌの合図で、映像が流れだした。そこには先ほどの僕とティーヌン侯爵の会話が映されていた。

 さらに僕がシュテルベンの花のエキスに、自分の血を混ぜるシーン。他にも医者がそのエキスを薬に混ぜているシーン。薬を受け取ったメイドが、サミュエルの元に運んでいくシーン。

 僕とティーヌン侯爵の密会シーンや、協力者でもある医者がメイド、護衛騎士たちの会話なども次々と流れていく。

「この映像を見ていただければ、あなた様とティーヌン侯爵が主犯と言うことが、よくわかりますわ。まさか実の弟でもあるサミュエル様を、亡き者にしようとするだなんて…」

 悲しそうに僕を見つめるキャリーヌ。

「そうだよ…僕がティーヌン侯爵と共謀して、サミュエルを亡き者にしようとしたんだ。サミュエルさえいなくなればまた、キャリーヌは僕のものになる。そう思ったんだ…僕はそれほど、君を愛している」

 そうだ、僕はただ、キャリーヌを愛していただけなんだ。
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