63 / 73
第63話:何かがおかしい気がします
しおりを挟む
「サミュエル様、どうか少しでもお食事をして下さい。食べやすい果物を持ってまいりましたわ」
「ごめんね…キャリーヌ。食欲がなくて…」
「…分かりましたわ、せめてお水だけでも飲んでください」
サミュエル様が飲みやすい様に、水を口元に持って行くが、ほとんど飲んでくれない。水も飲んでもらえないだなんて…それに、さっきより明らかに体調が悪化している様な気がする。
それにしても、凄い汗ね。きっと気持ち悪いだろう。
「サミュエル様、かなりの汗をかいていらっしゃるようなので、着替えをいたしましょう」
さすがに男性でもあるサミュエル様を着替えさせるのは不可能なので、男性の使用人に頼み、サミュエル様の着替えを依頼した。それでも少しでも何かしたくて、サミュエル様の体を綺麗に拭いていく。
「あら?この花の様なアザは何かしら?」
首の後ろを拭いている時、ふとピンク色のアザに気が付いたのだ。確かサミュエル様の首には、こんなアザはなかったはず。
「ねえ、あなた、サミュエル様のこのアザ、一体何かしら?」
近くにいた使用人に問いかけた。
「私には分かりかねます。申し訳ございません。ただ、アザと言うよりも、体に刻まれた模様の様に見えますね。殿下がご自分で刻まれたのではないでしょうか?」
確かに使用人の言う様に、体に刻まれたような綺麗な花の形をしている。でも、サミュエル様が自らこんな模様を、体にいれるとは思えないわ。
その時だった。ドアがガチャリと開いたと思ったら、何とジェイデン殿下がやって来たのだ。
「ジェイデン殿下、勝手にお部屋に入られては困ります。今すぐ出て行ってください」
すぐに護衛が止めに来たが
「僕はただ、サミュエルが心配で様子を見に来ただけだよ。サミュエル、随分具合が悪そうだね。大丈夫かい?」
「あ…にうえ…出て行って…」
「言葉を話すことも辛いのだね。可哀そうに…大丈夫だよ、すぐに楽になるだろうから」
すぐに楽になる?この人は一体何を言っているの?
「キャリーヌ、サミュエルの看病をしているのかい?君は優しいな。今のうちにサミュエルとの時間を…いいや、何でもないよ。それじゃあ、僕はもう行くよ」
ジェイデン殿下はニヤリと笑うと、そのまま部屋から出て行った。
一体何だったのかしら?サミュエル様の事が心配で、お見舞いに来た感じではなかった気がするけれど…
「キャリ…ヌ」
ふとサミュエル様の声に気が付き、彼の方を見た。さっきよりも明らかに顔色が悪いし、言葉も発しにくそうだ。それでも私の方に必死に手を伸ばしてきている。
急いでサミュエル様の手を握った。さっきよりも、さらに手が熱い。
「クラミー、すぐに医者を呼んで頂戴。明らかにサミュエル様の容態が悪化しているわ」
こんな短時間で、こんなに容態が悪化するだなんて。本当にただの疲れからくる体調不良なの?
…いいえ、私にはとてもそうは思えないわ。もしかして、何か重大な病気が隠れているのでは…
その瞬間、ニヤリと笑ったジェイデン殿下の顔が浮かんだ。どうしてジェイデン殿下の顔が浮かぶの?サミュエル様はジェイデン殿下にとって、実の弟だ。さすがにジェイデン殿下が、サミュエル様に何かするだなんて、考えられない。
でも…
「サミュエル殿下の容態が急変したとお伺いしました。すぐに診察を行いましょう!」
すぐにお医者様が診察を始めたのだが…
「えっと…これといって悪化している様には見えないのですが…」
「何を言っているの?さっきよりも明らかに顔色が悪い…て、あれ?」
ふとサミュエル様の方を見ると、さっきまで苦しそうにしていたが、なぜか今は、スヤスヤと眠っている。一体どうなっているの?
「きっと薬が効いて来たのでしょう。もしまた殿下の容態が悪化する様でしたら、お知らせください」
そう言って、部屋から出て行ったお医者様。本当に薬が効いて来たのかしら?
ただ、お医者様のおっしゃった通り、この日はサミュエル様の容態は安定し続け、夜には普通に食事が出来るまで回復したのだった。
「ごめんね…キャリーヌ。食欲がなくて…」
「…分かりましたわ、せめてお水だけでも飲んでください」
サミュエル様が飲みやすい様に、水を口元に持って行くが、ほとんど飲んでくれない。水も飲んでもらえないだなんて…それに、さっきより明らかに体調が悪化している様な気がする。
それにしても、凄い汗ね。きっと気持ち悪いだろう。
「サミュエル様、かなりの汗をかいていらっしゃるようなので、着替えをいたしましょう」
さすがに男性でもあるサミュエル様を着替えさせるのは不可能なので、男性の使用人に頼み、サミュエル様の着替えを依頼した。それでも少しでも何かしたくて、サミュエル様の体を綺麗に拭いていく。
「あら?この花の様なアザは何かしら?」
首の後ろを拭いている時、ふとピンク色のアザに気が付いたのだ。確かサミュエル様の首には、こんなアザはなかったはず。
「ねえ、あなた、サミュエル様のこのアザ、一体何かしら?」
近くにいた使用人に問いかけた。
「私には分かりかねます。申し訳ございません。ただ、アザと言うよりも、体に刻まれた模様の様に見えますね。殿下がご自分で刻まれたのではないでしょうか?」
確かに使用人の言う様に、体に刻まれたような綺麗な花の形をしている。でも、サミュエル様が自らこんな模様を、体にいれるとは思えないわ。
その時だった。ドアがガチャリと開いたと思ったら、何とジェイデン殿下がやって来たのだ。
「ジェイデン殿下、勝手にお部屋に入られては困ります。今すぐ出て行ってください」
すぐに護衛が止めに来たが
「僕はただ、サミュエルが心配で様子を見に来ただけだよ。サミュエル、随分具合が悪そうだね。大丈夫かい?」
「あ…にうえ…出て行って…」
「言葉を話すことも辛いのだね。可哀そうに…大丈夫だよ、すぐに楽になるだろうから」
すぐに楽になる?この人は一体何を言っているの?
「キャリーヌ、サミュエルの看病をしているのかい?君は優しいな。今のうちにサミュエルとの時間を…いいや、何でもないよ。それじゃあ、僕はもう行くよ」
ジェイデン殿下はニヤリと笑うと、そのまま部屋から出て行った。
一体何だったのかしら?サミュエル様の事が心配で、お見舞いに来た感じではなかった気がするけれど…
「キャリ…ヌ」
ふとサミュエル様の声に気が付き、彼の方を見た。さっきよりも明らかに顔色が悪いし、言葉も発しにくそうだ。それでも私の方に必死に手を伸ばしてきている。
急いでサミュエル様の手を握った。さっきよりも、さらに手が熱い。
「クラミー、すぐに医者を呼んで頂戴。明らかにサミュエル様の容態が悪化しているわ」
こんな短時間で、こんなに容態が悪化するだなんて。本当にただの疲れからくる体調不良なの?
…いいえ、私にはとてもそうは思えないわ。もしかして、何か重大な病気が隠れているのでは…
その瞬間、ニヤリと笑ったジェイデン殿下の顔が浮かんだ。どうしてジェイデン殿下の顔が浮かぶの?サミュエル様はジェイデン殿下にとって、実の弟だ。さすがにジェイデン殿下が、サミュエル様に何かするだなんて、考えられない。
でも…
「サミュエル殿下の容態が急変したとお伺いしました。すぐに診察を行いましょう!」
すぐにお医者様が診察を始めたのだが…
「えっと…これといって悪化している様には見えないのですが…」
「何を言っているの?さっきよりも明らかに顔色が悪い…て、あれ?」
ふとサミュエル様の方を見ると、さっきまで苦しそうにしていたが、なぜか今は、スヤスヤと眠っている。一体どうなっているの?
「きっと薬が効いて来たのでしょう。もしまた殿下の容態が悪化する様でしたら、お知らせください」
そう言って、部屋から出て行ったお医者様。本当に薬が効いて来たのかしら?
ただ、お医者様のおっしゃった通り、この日はサミュエル様の容態は安定し続け、夜には普通に食事が出来るまで回復したのだった。
1,018
お気に入りに追加
4,142
あなたにおすすめの小説

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?
柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。
お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。
婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。
そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――
ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております

愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!
風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。
結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。
レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。
こんな人のどこが良かったのかしら???
家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)


愛してくれない婚約者なら要りません
ネコ
恋愛
伯爵令嬢リリアナは、幼い頃から周囲の期待に応える「完璧なお嬢様」を演じていた。ところが名目上の婚約者である王太子は、聖女と呼ばれる平民の少女に夢中でリリアナを顧みない。そんな彼に尽くす日々に限界を感じたリリアナは、ある日突然「婚約を破棄しましょう」と言い放つ。甘く見ていた王太子と聖女は彼女の本当の力に気づくのが遅すぎた。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる