私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi

文字の大きさ
上 下
60 / 73

第60話:やっとキャリーヌに会えたのに~ジェイデン視点~

しおりを挟む
 何とか僕もカリアン王国に行きたくて、色々と手を尽くした。でも、なぜか相手国が、頑なに僕の入国を許してくれないのだ。

 僕がカリアン王国に、何をしたというのだ!そういえばカリアン王国の王女殿下が義姉に泣き付き、ディステル王国の陛下と王妃殿下に、アラステ王国の状況を教えたと言っていたな。

 僕の入国を拒んでいるのも、その王女だと聞いた。カリアン王国の王女め、どうして僕をそこまで目の敵にするのだろう。きっと性格の悪い女に決まっている。

 もしかしたら、サミュエルを好きになって、それでサミュエルを手に入れるために留学を決めたのか?もしそれなら、ある意味ラッキーだ。サミュエルがその王女と結婚すれば、僕はキャリーヌと結婚できる。

 これはいい感じの流れだぞ。そうなると、やっぱり僕が傷ついたキャリーヌに寄り添う為に、カリアン王国に行かないと!

 そう思い、再びカリアン王国に手紙を出すことにした。今度は王女宛てにだ。僕が君とサミュエルの恋を応援する、だからどうか僕もカリアン王国に留学させてくれ、という旨の手紙を書いた。

 早速執事に、手紙をカリアン王国に送ってもらう様に頼んだのだが…

「殿下、またカリアン王国に手紙を送るつもりなのですか?どうかもう、カリアン王国と関わろうとするのはお止め下さい!それになんですか、この手紙の内容は。カリアン王国と我が国の関係を、これ以上ぶち壊すおつもりですか!」

 そう執事に怒られたのだ。

「でも、カリアン王国の王女は、サミュエルが好きなのだろう?だからサミュエルの留学を許した。それなら僕が、2人の仲を取り持てば、王女だって…」

「何を愚かな事を…カリアン王国の王女殿下は、キャリーヌ様の親友との事です。キャリーヌ様の為に、王女殿下は動かれているのです。そもそも王女殿下には、愛する婚約者がいらっしゃるそうですよ!カリアン王国の王女殿下は、非常に聡明な方と聞いております。きっとキャリーヌ様の事を考え、サミュエル殿下の留学は許可し、殿下の入国は拒否しているのでしょう」

「それはどういう意味だよ!何が聡明な王女だ。キャリーヌは僕の事が好きなのだぞ。それなのに、僕の入国を拒むだなんて、愚かな王女じゃないか!」

「いい加減にしてくださいませ!あなた様がキャリーヌ様にした仕打ちを考えれば、当然のご判断です。これ以上私の頭を悩ませるような事はなさらないで下さい。とにかく、殿下はカリアン王国には行けません。それから、王宮から出る事も禁止されています!とにかくサミュエル殿下がお戻りになるまでは、大人しくしていてください!」

 顔を真っ赤にして、怒って出て行った執事。僕は確かにキャリーヌを地下牢に入れたけれど、それはキャリーヌが僕の言う事を聞いてくれなかったからだ。

 きっと今も、僕がキャリーヌを側妃として迎え入れると思っているのだろう。ラミア王女がいなくなった今、僕はキャリーヌだけを愛し、キャリーヌだけを妻にするつもりなのに…

 そうだ、僕の気持ちをしっかり伝えれば、キャリーヌはきっとわかってくれるはず。とにかく、キャリーヌが帰国するのを待とう。

 こうして僕は、長い長い3ヶ月を耐え抜いた。そして、やっとサミュエルが帰ってきたのだ。

「サミュエル、お帰り。あれ?1人で帰ってきたのかい?キャリーヌは…」

 なぜか王宮に、1人で帰ってきたサミュエル。もしかして、キャリーヌに拒否され、惨めにも1人で帰って来たのか?

 あれだけ“キャリーヌの気持ちを大切にしたい”と豪語していたのに、愚かな奴だな。という事は、キャリーヌはまだ、カリアン王国にいるのか?それとも、別々に帰って来たのか?

 とにかくサミュエルは1人で帰っていた。やっぱりキャリーヌは、僕が好きなんだ!そう確信した。

 そして翌日、サミュエルとマディスン公爵が、朝から何やら話をしていた。サミュエルめ、きっとマディスン公爵に、キャリーヌの件で泣き付いているのだろう。

 その時だった。

「サミュエル殿下、キャリーヌ嬢が門のところでお待ちです」

「何だって、キャリーヌが。すぐに行くよ」

 ん?今なんて言った?キャリーヌが門のところに来ているだって?キャリーヌも帰国していたのか。きっと僕に会いに来てくれたんだ。こうしちゃいられない、僕も急いで行かないと!

 そう思い、門のところまで来ると、そこには夢にまで見たキャリーヌの姿が。嬉しくて近づこうとしたのだが、サミュエルがキャリーヌを隠してしまったのだ。サミュエルめ、どうして僕の邪魔ばかりするんだ!

 そんな思いから、サミュエルに文句を言い、キャリーヌに僕の気持ちを伝えた。きっと君も、僕と同じ気持ちだよね。そう思っていたのだが、キャリーヌは自分はサミュエルと結婚する、もう自分の事は忘れて欲しいと言い出したのだ。

 さらにサミュエルと一緒に、王宮の中にさっさと入って行ってしまった。

 きっとサミュエルや公爵に言わされているに決まっている。可哀そうなキャリーヌ。サミュエルに助けられた恩から、サミュエルとの婚約話を断れなかったのだろう。

 でも、大丈夫だよ。

 きっと僕が、君を助け出してあげるから。

 なんたって僕たちは、愛し合っているのだから。どんな手を使っても、僕はキャリーヌを取り返す。久しぶりにキャリーヌの顔を見られた事で、俄然やる気が出て来たぞ。

 待っていてね、キャリーヌ。必ず僕が助け出してあげるからね…


 ※次回、キャリーヌ視点に戻ります。
 よろしくお願いします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?

柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。  お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。  婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。  そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――  ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!

風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。 結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。 レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。 こんな人のどこが良かったのかしら??? 家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

愛してくれない婚約者なら要りません

ネコ
恋愛
伯爵令嬢リリアナは、幼い頃から周囲の期待に応える「完璧なお嬢様」を演じていた。ところが名目上の婚約者である王太子は、聖女と呼ばれる平民の少女に夢中でリリアナを顧みない。そんな彼に尽くす日々に限界を感じたリリアナは、ある日突然「婚約を破棄しましょう」と言い放つ。甘く見ていた王太子と聖女は彼女の本当の力に気づくのが遅すぎた。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

処理中です...