私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi

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第56話:久しぶりに王宮に向かいます

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「それじゃあキャリーヌ、今日はゆっくり休んでね。また明日、折を見て公爵家に顔を出すから」

「サミュエル様、送って下さり、ありがとうございました。足を運んでいただかなくても、私が王宮に出向きますわ。陛下や王妃殿下にも、ご挨拶をしたいですし」

「いや、王宮にはまだ来なくてもいいよ。とにかくキャリーヌは疲れているだろう。ゆっくりお休み」

 私のおでこに口づけをして、そのまま馬車に乗り込んでいったサミュエル様。もう、両親もいるのに、口づけをするだなんて、恥ずかしい。

 でも、まあいいか。

 サミュエル様には、今まで散々辛い思いをさせてしまったものね。これからは、目いっぱいサミュエル様の思う様にさせてあげよう。

 ただ、さすがに今日は疲れた。

 自室に戻り湯あみを済ますと、ベッドに入った。やっぱり自分のベッドが一番落ち着くわ。この日は、あっという間に眠りについてしまったのだった。

 翌朝
「クラミー、おはよう。今日は登城するから、すぐにドレスに着替えさせて。サミュエル様の瞳の色に合わせて、青いドレスにしましょう。どれがいいかしら?これなんていいわね。これにするわ」

「お嬢様、今日はお屋敷でゆっくり過ごす予定では…」

「何を言っているの?私はサミュエル様の、婚約者になるのですもの。のんびりお屋敷で過ごしている訳にはいかないわ。散々サミュエル様には迷惑を掛けたのですもの。早速登城して、陛下と王妃殿下に挨拶をしないと。それから、次期王妃になるための勉強も始めないとね。既に王妃教育は全て終わっているけれど、もう一度復習をしないと」

 とにかく私には、やる事が沢山あるのだ。今までは王妃の仕事ばかりに目がいっていたけれど、やはり人脈も大切だ。この国の令嬢たちを呼んで、お茶会も開催したい。カリアン王国で学んだことを、アラステ王国でもしっかり生かさないと。

「お嬢様、着替えが終わりました。本当に登城なさるのですか?旦那様は、この事をご存じなのですか?」

「お父様?お父様はさっさと登城してしまったから、話していないわ。本当に薄情よね。娘を置いて、お兄様と2人で登城してしまうだなんて!それよりクラミー、あなた、明日から休暇でしょう。今日はもう上がっていいわよ。カリアン王国では、休みなしでずっと働いてくれていたものね。本当にありがとう。あなたには感謝しているわ」

 私の為に、急遽カリアン王国に行く事になったクラミー。彼女には本当に感謝している。

「カリアン王国でも、しっかりお休みはもらっておりましたから、今日はしっかり働かせていただきますわ。それよりも、やはり勝手に登城は…」

「大丈夫よ、今までも毎日登城していたし。それよりも、クラミーは本当に働き者ね。私もクラミーを見習わないと」

「お嬢様の方が、ずっと働きものですわ。それよりも、やはり勝手に登城は…」

 もう、クラミーはしつこいわね。王宮には好きに出入りしていいと、陛下からも王妃殿下からも許可を頂いているのに。どうしてそんなに私が登城する事を、嫌がるのかしら?

 まあいいわ。

 部屋から出て、そのまま玄関へと向かう。

「あら?キャリーヌ、どこかに出掛けるの?」

「ええ、今から王宮に行って参りますわ。それでは行ってきます」

 お母様にそう伝え、馬車に乗り込んだ。

「ちょっと待って…」

 なぜかお母様が追いかけてきたが、そのまま馬車は出発した。お母様ったら、一体どうしたのかしら?もしかしてお母様も、今日は屋敷でじっとしていろとでも言いたかったのかしら?

 もう、皆心配性なのだから。私は元気なのに。

 そう思いながら、王宮へと向かう。しばらく走ると、懐かしい王宮が見えて来た。ただ、王宮を見た瞬間、ジェイデン殿下の顔が頭をよぎった。あの日私に側妃になる様に迫り、拒否すると薄暗い地下牢に閉じ込めた男。食事も与えず、私を殺そうとしたあの男がいる王宮。

 そう思うと、足がすくむ。

 大丈夫よ、ジェイデン殿下はもう、王太子ではない。それに何より、王宮には大切なサミュエル様もいる。陛下も王妃殿下もいらっしゃる。それに王宮は広いのだ。王宮に着いたら、すぐにサミュエル様を呼んで貰えば問題ないだろう。

 ただ、やはり王宮を見ると、思い出したくもない事を思い出してしまうのだ。

 そんな事を考えているうちに、王宮に着いてしまった。とりあえず門番に、サミュエル様を呼んできてもらう様に頼んでもらった。このまま王宮の中に入ってもいいのだが、万が一ジェイデン殿下に会ってしまったら…

 そう考えると、なんだか怖くて王宮に入れない。私ったら、いつからこんなに弱くなってしまったのかしら?本当にダメね。

 しばらくすると、サミュエル様と一緒に、なぜかお父様もやって来たのだ。お父様は別に、お呼びではないのだけれど…

「キャリーヌ、私に黙って王宮に来るとは、何を考えているのだ!」

 その上、お父様に怒られてしまった。怒られる筋合いはないのだが…

「お父様こそ、私を置いてさっさと登城なさって。今日は一緒に登城しようと思っておりましたのに」

「今日は屋敷でゆっくり過ごすようにと、伝えただろう。それなのに、勝手に登城して。サミュエル殿下、申し訳ございません」

 どうしてお父様が、サミュエル様に謝るのよ。どうして登城してはいけないのか、さっぱりわからない。

「マディスン公爵、僕は大丈夫です。キャリーヌ、今日は一旦公爵家に戻ろう。僕が送っていくからね」

「えっ、せっかく王宮に来たのに…」

 どうして公爵家に帰らないといけないのだろう。もしかして、皆私の事を歓迎してくれていないのかしら?そんな不安が、私を襲う。

 その時だった。
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