48 / 73
第48話:皆様にも心配をかけてしまいました
しおりを挟む
「こんな風にサミュエル様と心が通じ合ったのも、ミリアム様のお陰ですね。ミリアム様が、私に間違いを教えてくれたから。サミュエル様、ミリアム様に聞いたのですが、私と結婚できないなら、一生独身を貫くというのは本当ですか?」
気になっていたことを、サミュエル様に聞いた。
「ああ、本当だよ。僕はキャリーヌ以外と、結婚するつもりはないからね。たとえ家臣たちがなんと言おうと、その気持ちを貫くつもりでいたよ。それくらい僕にとって、キャリーヌは大切な存在なんだ。でも、だからと言って、無理やりキャリーヌを僕のお嫁さんにしようとした訳じゃないからね。ちゃんと養子を迎えて、生涯独身を貫こうと考えていたんだ。もちろん、家臣たちも説得しようと考えていたし」
「あの頭の固い人たちが、納得するとは思いませんが…」
「家臣たちが、僕が独身を貫く事に断固として反対した時は、僕は王位を退くつもりでいたよ」
王位を退くだなんて…そんな事、さらりと言わないで欲しい。でも私の変な意地のせいで、サミュエル様をそこまで追い詰めていただなんて…そして、そこまで私を深く愛してくれていただなんて。
確かにサミュエル様は、ずっと私の事を大切にしてくれていた。それなのに私は、他の令嬢と幸せになって欲しいだなんて、なんて愚かな事を…
私の愚かな考えのせいで、サミュエル様だけでなく、アラステ王国の人々を不幸にするところだった。考えただけで、血の気が引く…
「そんなに驚かなくてもいいだろう?僕は結構本気で色々と考えていたのだけれどな。でも、もうその心配もなさそうだ」
笑顔で呟くサミュエル様。
「そうですわね。とにかく明日サミュエル様は、アラステ王国に帰国されるのですよね。私ももちろん、一緒に帰りますわ。すぐに帰国の準備をしないと」
サミュエル様が帰国するのだ。私も一緒に帰るべきだろう。まさかこんなに急に帰国する事になるだなんて。貴族学院の皆にも、挨拶できていないし。それにミリアム様とも、もうお別れなのか…
ミリアム様の事を考えると、胸がチクリと痛んだ。私にとって、初めて出来た大切な親友。こんなにあっさりとお別れになるだなんて、なんだか寂しい。
「その件なのだけれど、君が僕を受け入れてくれるとわかった今、明日帰国する事は取りやめるよ。当初の予定通り、1ヶ月半後に帰国する事にしようと思っている」
「でも…すでにアラステ王国には、帰国の連絡を入れているのではないのですか?それに、カリアン王国の王族の方たちにも、話しをしているし…」
サミュエル様は、アラステ王国の王位継承第一位の人間だ。そんな人間が、コロコロと意見を変える事なんて出来ないだろう。
「実はアラステ王国には、まだ連絡をしていないのだよ。ミリアム殿下が“キャリーヌは意地を張っているだけです。どうか私に少しだけ時間をください。お願いします”と、頭を下げられてね。それで、アラステ王国には帰国する当日に伝えようと思っていて。どのみち帰国するまでに、4日程度はかかるからね」
「まあ、ミリアム様が、サミュエル様にそんな事を?」
「そうだよ、この国の王太子夫妻も“いつまでもいてくれていいよ”と、言って下さっているし。もしかしたら今頃、ミリアム殿下が王太子夫妻に話しをしているかもしれないね。キャリーヌは本当に素敵な友人を持ったね」
ミリアム様が、そんな事を…
本当にミリアム様ったら…
「はい、私はこの国に来て、最高の友人を持ちましたわ!それでは明日、帰国する事はないのですね。ただ、私のせいで、王太子殿下や王太子妃殿下にまでご迷惑をおかけしてしまったので、後で謝罪に行かないと」
「僕も一緒に行くよ。王太子殿下も王太子妃殿下も、きっと喜んでくれるよ。僕たちの事を、とても心配していたから」
王太子殿下や王太子妃殿下にまで心配をかけていただなんて。本当に私はダメね。でも、それだけこの国の人たちが、私たちの事を心配してくれているという事なのだろう。
それがなんだか嬉しい。
「それじゃあ、早速報告に行こう。きっとミリアム殿下も、心配しているだろうし」
「そうですね。ミリアム様に、早く知らせたいし。行きましょう」
2人で手を繋いで部屋から出ると、心配そうな顔のミリアム様が待っていた。
「キャリーヌ、サミュエル殿下。よかった、その様子だと、気持ちが通じ合ったのね」
ミリアム様が、心底ほっとした表情をしている。私はどこまで彼女に心配を掛けたのだろう。そう思うと、申し訳なくてたまらない。
「ミリアム様のお陰で、サミュエル様と気持ちが通じ合いました。私の愚かな考えのせいで、沢山の人たちにご迷惑をおかけしてしまった様で…ミリアム様にも沢山心配をかけてしまって、ごめんなさい」
「私に謝る必要はないわ。それに、確かに皆心配していたけれど、迷惑だなんて思っていないから。だから謝る必要はないの。もしキャリーヌが申し訳ないと思っているのなら、誰よりもサミュエル殿下と幸せになって頂戴。あなたの幸せな姿を見る事が、私たちは何よりも嬉しいのだから」
少し恥ずかしそうにミリアム様が呟いた。本当に、どこまで素敵な女性なのだろう。彼女がいてくれたから、きっと今の私があるのだろう。
無性にミリアム様が愛おしくなって、彼女に抱き着いた。
「ちょっと、急に抱き着かないでよ。びっくりするじゃない」
「ごめんなさい、どうしてもミリアム様に抱き着きたくて。少しだけ、お付き合いください」
「もう、キャリーヌったら!」
文句を言いながらも、抱きしめ返してくれたミリアム様。その後ミリアム様と一緒に、王太子殿下や王太子妃殿下、お姉様夫婦、さらにカイロ様の待つ部屋に行き、改めてお礼と謝罪をした。
私達が結ばれた事を、自分の事の様に喜んでくれた王太子殿下夫妻やお姉様夫婦、カイロ様を見ていたら、なんだか温かい気持ちになった。
サミュエル様の明日の帰国は取りやめになり、予定通り1か月半後、私も一緒に帰国する事で話は纏まったのだった。
気になっていたことを、サミュエル様に聞いた。
「ああ、本当だよ。僕はキャリーヌ以外と、結婚するつもりはないからね。たとえ家臣たちがなんと言おうと、その気持ちを貫くつもりでいたよ。それくらい僕にとって、キャリーヌは大切な存在なんだ。でも、だからと言って、無理やりキャリーヌを僕のお嫁さんにしようとした訳じゃないからね。ちゃんと養子を迎えて、生涯独身を貫こうと考えていたんだ。もちろん、家臣たちも説得しようと考えていたし」
「あの頭の固い人たちが、納得するとは思いませんが…」
「家臣たちが、僕が独身を貫く事に断固として反対した時は、僕は王位を退くつもりでいたよ」
王位を退くだなんて…そんな事、さらりと言わないで欲しい。でも私の変な意地のせいで、サミュエル様をそこまで追い詰めていただなんて…そして、そこまで私を深く愛してくれていただなんて。
確かにサミュエル様は、ずっと私の事を大切にしてくれていた。それなのに私は、他の令嬢と幸せになって欲しいだなんて、なんて愚かな事を…
私の愚かな考えのせいで、サミュエル様だけでなく、アラステ王国の人々を不幸にするところだった。考えただけで、血の気が引く…
「そんなに驚かなくてもいいだろう?僕は結構本気で色々と考えていたのだけれどな。でも、もうその心配もなさそうだ」
笑顔で呟くサミュエル様。
「そうですわね。とにかく明日サミュエル様は、アラステ王国に帰国されるのですよね。私ももちろん、一緒に帰りますわ。すぐに帰国の準備をしないと」
サミュエル様が帰国するのだ。私も一緒に帰るべきだろう。まさかこんなに急に帰国する事になるだなんて。貴族学院の皆にも、挨拶できていないし。それにミリアム様とも、もうお別れなのか…
ミリアム様の事を考えると、胸がチクリと痛んだ。私にとって、初めて出来た大切な親友。こんなにあっさりとお別れになるだなんて、なんだか寂しい。
「その件なのだけれど、君が僕を受け入れてくれるとわかった今、明日帰国する事は取りやめるよ。当初の予定通り、1ヶ月半後に帰国する事にしようと思っている」
「でも…すでにアラステ王国には、帰国の連絡を入れているのではないのですか?それに、カリアン王国の王族の方たちにも、話しをしているし…」
サミュエル様は、アラステ王国の王位継承第一位の人間だ。そんな人間が、コロコロと意見を変える事なんて出来ないだろう。
「実はアラステ王国には、まだ連絡をしていないのだよ。ミリアム殿下が“キャリーヌは意地を張っているだけです。どうか私に少しだけ時間をください。お願いします”と、頭を下げられてね。それで、アラステ王国には帰国する当日に伝えようと思っていて。どのみち帰国するまでに、4日程度はかかるからね」
「まあ、ミリアム様が、サミュエル様にそんな事を?」
「そうだよ、この国の王太子夫妻も“いつまでもいてくれていいよ”と、言って下さっているし。もしかしたら今頃、ミリアム殿下が王太子夫妻に話しをしているかもしれないね。キャリーヌは本当に素敵な友人を持ったね」
ミリアム様が、そんな事を…
本当にミリアム様ったら…
「はい、私はこの国に来て、最高の友人を持ちましたわ!それでは明日、帰国する事はないのですね。ただ、私のせいで、王太子殿下や王太子妃殿下にまでご迷惑をおかけしてしまったので、後で謝罪に行かないと」
「僕も一緒に行くよ。王太子殿下も王太子妃殿下も、きっと喜んでくれるよ。僕たちの事を、とても心配していたから」
王太子殿下や王太子妃殿下にまで心配をかけていただなんて。本当に私はダメね。でも、それだけこの国の人たちが、私たちの事を心配してくれているという事なのだろう。
それがなんだか嬉しい。
「それじゃあ、早速報告に行こう。きっとミリアム殿下も、心配しているだろうし」
「そうですね。ミリアム様に、早く知らせたいし。行きましょう」
2人で手を繋いで部屋から出ると、心配そうな顔のミリアム様が待っていた。
「キャリーヌ、サミュエル殿下。よかった、その様子だと、気持ちが通じ合ったのね」
ミリアム様が、心底ほっとした表情をしている。私はどこまで彼女に心配を掛けたのだろう。そう思うと、申し訳なくてたまらない。
「ミリアム様のお陰で、サミュエル様と気持ちが通じ合いました。私の愚かな考えのせいで、沢山の人たちにご迷惑をおかけしてしまった様で…ミリアム様にも沢山心配をかけてしまって、ごめんなさい」
「私に謝る必要はないわ。それに、確かに皆心配していたけれど、迷惑だなんて思っていないから。だから謝る必要はないの。もしキャリーヌが申し訳ないと思っているのなら、誰よりもサミュエル殿下と幸せになって頂戴。あなたの幸せな姿を見る事が、私たちは何よりも嬉しいのだから」
少し恥ずかしそうにミリアム様が呟いた。本当に、どこまで素敵な女性なのだろう。彼女がいてくれたから、きっと今の私があるのだろう。
無性にミリアム様が愛おしくなって、彼女に抱き着いた。
「ちょっと、急に抱き着かないでよ。びっくりするじゃない」
「ごめんなさい、どうしてもミリアム様に抱き着きたくて。少しだけ、お付き合いください」
「もう、キャリーヌったら!」
文句を言いながらも、抱きしめ返してくれたミリアム様。その後ミリアム様と一緒に、王太子殿下や王太子妃殿下、お姉様夫婦、さらにカイロ様の待つ部屋に行き、改めてお礼と謝罪をした。
私達が結ばれた事を、自分の事の様に喜んでくれた王太子殿下夫妻やお姉様夫婦、カイロ様を見ていたら、なんだか温かい気持ちになった。
サミュエル様の明日の帰国は取りやめになり、予定通り1か月半後、私も一緒に帰国する事で話は纏まったのだった。
1,258
お気に入りに追加
4,142
あなたにおすすめの小説

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?
柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。
お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。
婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。
そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――
ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております

愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!
風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。
結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。
レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。
こんな人のどこが良かったのかしら???
家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)

愛してくれない婚約者なら要りません
ネコ
恋愛
伯爵令嬢リリアナは、幼い頃から周囲の期待に応える「完璧なお嬢様」を演じていた。ところが名目上の婚約者である王太子は、聖女と呼ばれる平民の少女に夢中でリリアナを顧みない。そんな彼に尽くす日々に限界を感じたリリアナは、ある日突然「婚約を破棄しましょう」と言い放つ。甘く見ていた王太子と聖女は彼女の本当の力に気づくのが遅すぎた。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる