37 / 73
第37話:カリアン王国に向かいます~サミュエル視点~
しおりを挟む
僕の留学が決まり、旅立ちの日が迫っていたある日。
「サミュエル、君、カリアン王国に行くのだってね。僕もカリアン王国への留学をお願いしたら、あっさり断られたよ。どうして弟の君がカリアン王国に留学が出来て、兄の僕が出来ないのだい?こんなの、おかしいと思わないかい?」
兄上が僕に文句を言って来たのだ。兄上は王太子をはく奪され、いずれは公爵の爵位をもらい家臣に降りる方向で話が進んでいる。
ただ、問題を起こした兄上に、公爵という高貴な身分を与えるのはいかがなものか、という話が出ており、こちらはまだ結論が出るまで時間がかかりそうだ。
「婚約者だったキャリーヌを捨て、他国の王女にうつつを抜かし、さらに言う事を聞かない貴族を牢にぶち込むという王族として有るまじき行為を行った兄上を、カリアン王国が受け入れる訳がないでしょう」
兄上は何を思ったのか、自分もカリアン王国に行きたい、キャリーヌとまたやり直したいと言い出したのだ。そしてカリアン王国に手紙を送ったらしいが、あっさり断られたらしい。
カリアン王国からは
“罪もない公爵家の人間に酷い仕打ちをした非道な王子を、我が国に留学させようとするとは何事か”
と、抗議の手紙まで、父上の元に届いたらしい。兄上がカリアン王国に留学の件を打診していたことを知らなかった父上は大激怒。これ以上勝手な行動を起こさない様に、厳しい管理下に置かれているところだ。
「僕はラミア殿下の口車に乗せられただけだ!それなのに…僕は別に王太子になんてそこまで興味はなかった。でも、キャリーヌと結婚できるのなら、王太子も悪くないと思っていたんだ。僕は誰よりもキャリーヌを愛していたのに…ねえ、サミュエル、キャリーヌを奪ったりしないよね?きっとキャリーヌも、きちんと話をすれば分かってくれると思うんだ」
あれほどまでにキャリーヌに酷い仕打ちをしたにもかかわらず、兄上は何を言っているのだろう。この人が兄だなんて、正直僕は恥ずかしくてたまらない。
「兄上がなんと言おうが、キャリーヌにした仕打ちを、僕は絶対に許すことはできません。もしキャリーヌに少しでも悪いと思っているのなら、もう二度とキャリーヌには関わらない事ですね」
「なんて酷い事を言うのだ。僕だってキャリーヌの幸せを思って、側妃を提案したんだ。僕は何も間違っていない!それにキャリーヌだって、あの時僕を選んでくれたんだ。それに僕たちには、7年間婚約者として過ごした大切な思い出もある。僕は絶対に、キャリーヌを諦めないから!」
そう吐き捨てると、兄上はどこかに行ってしまった。何がキャリーヌの事を思ってだ!結局自分の事しか考えてないじゃないか!
あんな兄上に構ってなんていられない!せっかくカリアン王国の王女殿下がくれたチャンス。絶対にものにしないと!
そんな思いで、カリアン王国に向かった。道中、考える事と言えばキャリーヌの事ばかり。僕がカリアン王国に行ったら、キャリーヌはどう思うかな?迷惑に思われないといいのだけれど…
キャリーヌに会える喜びと、万が一迷惑がられたらどうしようという不安が、僕の心を支配していく。それでも僕は、キャリーヌに会えるのが嬉しくてたまらない。兄上と婚約して以降、ずっと自分の気持ちを封印してきたのだ。やっと自分の気持ちを伝えられる。
そしてついに、カリアン王国についた。3ヶ月間、王宮でお世話になる事が決まっているのだ。王宮に着くと、沢山の人たちが僕を待っていてくれた。
「サミュエル殿下、よくいらしてくださいました。私がこの国の国王です。どうぞお見知りおきを」
穏やかな表情を浮かべた陛下が、挨拶をしてくれたのだ。
「カリアン王国の国王陛下、お初にお目にかかります。アラステ王国の第二王子、サミュエル・グロッサム・アラステと申します。3ヶ月間、どうぞよろしくお願いいたします」
僕も急いで挨拶をした。さらに
「サミュエル殿下、お久しぶりですわ。キャリーヌを始め、家族が大変お世話になりました。本当にありがとうございました」
僕にお礼を言って来たのは、キャリーヌの姉上だ。
「お久しぶりです、アリーナ殿。失礼いたしました、クレスティル公爵夫人。この度は兄の愚かな行いのせいで、キャリーヌを始めマディスン公爵には多大なる迷惑をかけてしまった事、本当に申し訳なく思っております。クレスティル公爵夫人におかれましても、さぞ心を痛めていた事でしょう。なんとお詫びしてよいか…」
「サミュエル殿下、頭を上げて下さい。私どもは、サミュエル殿下に感謝しているのです。やはりアラステ王国には、サミュエル殿下の様な方が国王になって頂かないと。それにキャリーヌの件も、ご配慮して頂いたと聞いております。本当にありがとうございました」
何度も僕に頭を下げるクレスティル公爵夫人。そういえばキャリーヌの姿が見えない。
「あの…キャリーヌは?」
もしかして僕の事を、歓迎していないのかもしれない。そんな不安が、僕を襲ったのだった。
「サミュエル、君、カリアン王国に行くのだってね。僕もカリアン王国への留学をお願いしたら、あっさり断られたよ。どうして弟の君がカリアン王国に留学が出来て、兄の僕が出来ないのだい?こんなの、おかしいと思わないかい?」
兄上が僕に文句を言って来たのだ。兄上は王太子をはく奪され、いずれは公爵の爵位をもらい家臣に降りる方向で話が進んでいる。
ただ、問題を起こした兄上に、公爵という高貴な身分を与えるのはいかがなものか、という話が出ており、こちらはまだ結論が出るまで時間がかかりそうだ。
「婚約者だったキャリーヌを捨て、他国の王女にうつつを抜かし、さらに言う事を聞かない貴族を牢にぶち込むという王族として有るまじき行為を行った兄上を、カリアン王国が受け入れる訳がないでしょう」
兄上は何を思ったのか、自分もカリアン王国に行きたい、キャリーヌとまたやり直したいと言い出したのだ。そしてカリアン王国に手紙を送ったらしいが、あっさり断られたらしい。
カリアン王国からは
“罪もない公爵家の人間に酷い仕打ちをした非道な王子を、我が国に留学させようとするとは何事か”
と、抗議の手紙まで、父上の元に届いたらしい。兄上がカリアン王国に留学の件を打診していたことを知らなかった父上は大激怒。これ以上勝手な行動を起こさない様に、厳しい管理下に置かれているところだ。
「僕はラミア殿下の口車に乗せられただけだ!それなのに…僕は別に王太子になんてそこまで興味はなかった。でも、キャリーヌと結婚できるのなら、王太子も悪くないと思っていたんだ。僕は誰よりもキャリーヌを愛していたのに…ねえ、サミュエル、キャリーヌを奪ったりしないよね?きっとキャリーヌも、きちんと話をすれば分かってくれると思うんだ」
あれほどまでにキャリーヌに酷い仕打ちをしたにもかかわらず、兄上は何を言っているのだろう。この人が兄だなんて、正直僕は恥ずかしくてたまらない。
「兄上がなんと言おうが、キャリーヌにした仕打ちを、僕は絶対に許すことはできません。もしキャリーヌに少しでも悪いと思っているのなら、もう二度とキャリーヌには関わらない事ですね」
「なんて酷い事を言うのだ。僕だってキャリーヌの幸せを思って、側妃を提案したんだ。僕は何も間違っていない!それにキャリーヌだって、あの時僕を選んでくれたんだ。それに僕たちには、7年間婚約者として過ごした大切な思い出もある。僕は絶対に、キャリーヌを諦めないから!」
そう吐き捨てると、兄上はどこかに行ってしまった。何がキャリーヌの事を思ってだ!結局自分の事しか考えてないじゃないか!
あんな兄上に構ってなんていられない!せっかくカリアン王国の王女殿下がくれたチャンス。絶対にものにしないと!
そんな思いで、カリアン王国に向かった。道中、考える事と言えばキャリーヌの事ばかり。僕がカリアン王国に行ったら、キャリーヌはどう思うかな?迷惑に思われないといいのだけれど…
キャリーヌに会える喜びと、万が一迷惑がられたらどうしようという不安が、僕の心を支配していく。それでも僕は、キャリーヌに会えるのが嬉しくてたまらない。兄上と婚約して以降、ずっと自分の気持ちを封印してきたのだ。やっと自分の気持ちを伝えられる。
そしてついに、カリアン王国についた。3ヶ月間、王宮でお世話になる事が決まっているのだ。王宮に着くと、沢山の人たちが僕を待っていてくれた。
「サミュエル殿下、よくいらしてくださいました。私がこの国の国王です。どうぞお見知りおきを」
穏やかな表情を浮かべた陛下が、挨拶をしてくれたのだ。
「カリアン王国の国王陛下、お初にお目にかかります。アラステ王国の第二王子、サミュエル・グロッサム・アラステと申します。3ヶ月間、どうぞよろしくお願いいたします」
僕も急いで挨拶をした。さらに
「サミュエル殿下、お久しぶりですわ。キャリーヌを始め、家族が大変お世話になりました。本当にありがとうございました」
僕にお礼を言って来たのは、キャリーヌの姉上だ。
「お久しぶりです、アリーナ殿。失礼いたしました、クレスティル公爵夫人。この度は兄の愚かな行いのせいで、キャリーヌを始めマディスン公爵には多大なる迷惑をかけてしまった事、本当に申し訳なく思っております。クレスティル公爵夫人におかれましても、さぞ心を痛めていた事でしょう。なんとお詫びしてよいか…」
「サミュエル殿下、頭を上げて下さい。私どもは、サミュエル殿下に感謝しているのです。やはりアラステ王国には、サミュエル殿下の様な方が国王になって頂かないと。それにキャリーヌの件も、ご配慮して頂いたと聞いております。本当にありがとうございました」
何度も僕に頭を下げるクレスティル公爵夫人。そういえばキャリーヌの姿が見えない。
「あの…キャリーヌは?」
もしかして僕の事を、歓迎していないのかもしれない。そんな不安が、僕を襲ったのだった。
1,553
お気に入りに追加
4,142
あなたにおすすめの小説

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?
柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。
お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。
婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。
そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――
ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております

愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!
風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。
結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。
レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。
こんな人のどこが良かったのかしら???
家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)

愛してくれない婚約者なら要りません
ネコ
恋愛
伯爵令嬢リリアナは、幼い頃から周囲の期待に応える「完璧なお嬢様」を演じていた。ところが名目上の婚約者である王太子は、聖女と呼ばれる平民の少女に夢中でリリアナを顧みない。そんな彼に尽くす日々に限界を感じたリリアナは、ある日突然「婚約を破棄しましょう」と言い放つ。甘く見ていた王太子と聖女は彼女の本当の力に気づくのが遅すぎた。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる