私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi

文字の大きさ
上 下
32 / 73

第32話:キャリーヌを逃がさないと~サミュエル視点~

しおりを挟む
 急いで地下牢に向かう。初めて地下牢に来たが、薄暗くて気味が悪い。こんな場所に、キャリーヌは閉じ込められているのか。一刻も早く、キャリーヌを助け出してあげないと。

 でもその前に、マディスン公爵と話をしないといけない。

「サミュエル殿下、こちらです」

「サミュエル殿下!どうしてあなた様がこちらに?」

 地下牢に閉じ込められているのは、間違いない、マディスン公爵だ。

「マディスン公爵、本当に申し訳ございませんでした。まさか兄があそこまで愚かだとは思いませんでした。今至急父に連絡を取っております。とにかくこの様な横暴な事、決して許される事ではありません」

 マディスン公爵に頭を下げた。

「サミュエル殿下、どうか頭をお上げください。まさかジェイデン殿下が、ここまで愚かだったとは…さすがに今回の件、見逃すわけにはいきません。私はジェイデン殿下を、決して許さない!」

「ええ、分かっております。君、マディスン公爵を今すぐここから出してくれ!」

 近くにいた看守に指示を出す。

「しかし…ジェイデン殿下の指示で…」

「僕はこれでも第二王子、立派な王族だ。僕が全ての責任を取る。すぐにマディスン公爵を出すんだ!」

 強い口調で、看守に指示を出した。僕の気迫に負けたのか、すぐにディスン公爵を地下牢から出す看守。

「マディスン公爵、僕の部屋で話をしましょう。それから、あなたの家族が心配だ。今すぐマディスン公爵家に向かい、すぐにご家族を連れて来てくれ」

「はい、かしこまりました」

 近くにいた執事に、指示を出す。とにかく今は、マディスン公爵とその家族を守る事が専決だ。

「サミュエル殿下、助けていただきありがとうございます。まさかジェイデン殿下が、あそこまで愚かだったとは…」

 部屋につくなり、僕に頭を下げるマディスン公爵。

「謝るのは僕の方です。まさか兄上が、あのような横暴な態度に出るだなんて…とにかく、今父上に連絡を入れているところです。今回の件で、さすがに父上も、兄上の行為を許さないでしょう。それから、キャリーヌ…嬢もすぐに牢から出して安全な場所に!」

「ええ、分かっております。キャリーヌにはしばらく、長女の嫁ぎ先、カリアン王国に避難させようと思っております。今この国に留めておくことは、危険ですので…今回の件で、我がマディスン公爵家は、とてもではないがジェイデン殿下に忠誠を誓う事が出来ません。サミュエル殿下、あなたが次期国王になってくださいませんか?」

 僕が、国王に?この人は何を言っているのだろう。この国では、よほどのことがない限り、第一子が国王になる事が一般的なのに…それに今、そんな話をしている場合ではない。

「マディスン公爵、今はその様な…」

「いいえ、大切な話です。このままジェイデン殿下が国王になれば、キャリーヌは無理やり側妃にさせられてしまう可能性もあるでしょう。我が家だってどうなるか…それに、貴族たちだって、王族の横暴な態度に、不満を抱くでしょう。最悪、革命なんて事も…」

 マディスン公爵の目は、真剣そのものだった。“私はジェイデン殿下がこのまま王になるなら、王族を潰す覚悟だ”そう言わんばかりの目をしている。確かにこのまま兄上が国王になったら、キャリーヌやマディスン公爵は…

「わかりました、ですが、今はまずキャリーヌを安全な場所に避難させることが専決です。すぐに…」

「殿下、マディスン公爵家の方々を連れて参りました」

 ちょうどそのタイミングで、キャリーヌの家族がやって来たのだ。既に執事から話を聞いているのだろう。キャスディン殿は怒りに満ち溢れ、夫人たちは不安そうだ。

「サミュエル殿下、まずはお礼を言わせてください。この度はありがとうございました。それから、馬車に乗っている間に、友人たちに文を書き、それぞれ送りました。まだまだ書き足りないのですが、主要貴族の友人達にはある程度我々が置かれている状況を説明した次第です」

 なんと!逃げる途中に、その様な行動を。キャスディン殿は非常に優秀で、人望も厚いと聞いていたが、ここまでとは!

「ありがとう、キャスディン。とにかくまずは、キャリーヌを逃がそうと思っているんだ。この国は危険だからな」

「ええ、分かっております。姉上のいるカリアン王国に逃がすのですね。至急姉上に連絡を入れましょう。それから…」

「お話し中の所、申し訳ございません。サミュエル殿下、ジェイデン殿下がサミュエル殿下の行いに気が付き、たいそうお怒りです。至急サミュエル殿下を呼べとの事でございます」

「もう気が付いたのか…兄上にしては、動きが早いな。マディスン公爵、至急キャリーヌや家族を連れて、王宮を出て下さい。僕はキャリーヌを地下牢から出すように、執事を通して指示を出します。兄上は、その間僕が足止めしておきますから」

「サミュエル殿下、その様な事をして、本当に大丈夫なのですか?国王陛下がいない今、この国で一番権力を持っているのは、王太子でもあるジェイデン殿下です。いくら弟君であっても、最悪投獄と言う事も…」

 心配そうな顔のマディスン公爵。

「僕は大丈夫です。本当は父上の許可なく使ってはいけないと言われておりましたが…致し方ない。とにかく、まずはキャリーヌを、安全にカリアン王国に逃がすことを最優先いたしましょう。公爵たちはキャリーヌを国から逃がしたら、公爵家に戻って頂いて大丈夫です。それまでに、僕が何とかしておきますので」

「わかりました。私どもは、サミュエル殿下を信じます。サミュエル殿下、ありがとうございます」

 マディスン公爵たちが部屋から出て行った。僕の執事も一緒に付いていっているから、キャリーヌの件は大丈夫だろう。

 キャリーヌ、どうかうまく逃げてくれ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?

柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。  お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。  婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。  そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――  ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!

風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。 結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。 レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。 こんな人のどこが良かったのかしら??? 家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

愛してくれない婚約者なら要りません

ネコ
恋愛
伯爵令嬢リリアナは、幼い頃から周囲の期待に応える「完璧なお嬢様」を演じていた。ところが名目上の婚約者である王太子は、聖女と呼ばれる平民の少女に夢中でリリアナを顧みない。そんな彼に尽くす日々に限界を感じたリリアナは、ある日突然「婚約を破棄しましょう」と言い放つ。甘く見ていた王太子と聖女は彼女の本当の力に気づくのが遅すぎた。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

処理中です...