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第31話:あなたはなんて事を~サミュエル視点~
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その後、キャリーヌと兄上が正式に婚約を結んだ。もう二度と、僕とキャリーヌが結ばれることはない。
でも…
あの日、貴族たちの圧に耐えながら、最後まで抵抗を続けてくれたキャリーヌ。僕はそれが嬉しかった。だからこそ、キャリーヌの幸せの為に、僕は身を引く決意が出来た。
キャリーヌ自身も、僕に申し訳ないと思っているのか、あまり話しかけてこなくなったのだ。正直寂しいが、仕方がない事。
それでも僕は、キャリーヌが心配で、陰ながらキャリーヌを見守り続けた。次期王妃になる事が決まったキャリーヌは、王妃教育も必死にこなし、慈善活動にも精力的に参加していた。
兄上との仲も良好の様だ。
ただ、キャリーヌが兄上に見せる優しい微笑を見ると、なんだか胸が張り裂けそうになる。でも僕は、キャリーヌを見守ると決めたのだ。どんなに辛くても、キャリーヌが幸せならそれでいい。そう思っていた。
そんな日々が7年ほど続いたある日、ディステル王国から王女が視察に来たのだ。ディステル王国は最近我が国が貿易を始めた国。国力もあり、我が国の2倍以上の領土を持っている事も有り、出来る限り良好な関係を築いておきたいと考えている国の1つだ。
ただ、視察にやって来た王女が、とんでもない女だったのだ。あろう事か、兄上を誘惑し始めたのだ。キャリーヌに自分と婚約してくれなければ、王太子を辞めるとまで言った兄上だ。さすがに王女の誘惑には乗らないだろう。
そう思っていた。ちなみにあの王女、何を思ったのか、僕にも誘惑を掛けて来たのだ。もちろん、断ったが…なんて尻軽な女なんだろう。
ただ、あんなにキャリーヌを愛していると豪語していた兄上だったが、美しいラミア殿下に惹かれている様だ。兄上の目は節穴なのか?ラミア殿下はかなり我が儘で、使用人たちが苦労している。さらに貴族令嬢たちにも悪態をついている様で、貴族たちからも苦情が来ているというのに…
出来るだけ穏便に、なおかつうまくラミア殿下を帰国させようと、父上も母上もあの手この手を使っていたが、中々うまくいかない。その上、兄上がラミア殿下の帰国を、猛烈に反対しだしたのだ。
そんな中、両親がどうしても外せない公務の為、国をしばらく開ける事になったのだ。一応王太子でもある兄上に、決定権が与えられることになった。
ただ…
「サミュエル、ジェイデンは少し抜けているところがある。それに、ラミア殿下の事も気がかりだ。もしジェイデンが間違った方向に進んだら、すぐに教えてくれ。それから、これをお前に預けておく。この書状には“全ての権限をサミュエルに与える”という文面が書かれている。ただ、この書状を使う前に、必ず私に相談して欲しい」
父上も何か思う事があったのだろう。僕に書状を渡してきたのだ。さらに、通信機も一緒に預けられた。
「わかりました、兄上が何かしでかさない様に、僕が監視します。それから、ラミア殿下の件、なんとか帰国させられないのでしょうか?」
「ラミア殿下にはそれとなく話をしているのだが“まだやる事が終わっていないから帰れない。ディステル王国の国王でもある兄からも、もう少しお世話になれと言われている”の、一点張りで…とにかく、ディステル王国ともめ事を起こしたくはないから…」
そう言って父上が頭を抱えてしまったのだ。そしてそのまま、両親は視察に出かけてしまった。
両親が視察に出掛けた翌日。
「サミュエル殿下、大変です。王太子殿下が…」
血相を変えて僕の元にやって来たのは、専属執事だ。一体何があったというのだ?
「実は先ほど、王太子殿下とキャリーヌ嬢の婚約が白紙に戻り、さらにキャリーヌ嬢が投獄されました」
「キャリーヌが投獄されただって?一体何があったんだい?」
意味が分からない。一体キャリーヌが何をしたというのだ。
執事の話だと、ラミア殿下と結婚したい兄上は、キャリーヌとの婚約を白紙に戻したい旨を、キャリーヌとマディスン公爵に迫り、婚約解消に至った事。さらに兄上がキャリーヌも傍に置きたいという我が儘な理由で、側妃になれと迫り、拒否したキャリーヌが投獄されてしまったとの事だ。
「そんなふざけた理由で、キャリーヌを!今すぐキャリーヌを牢から出せ…いいや、まずはマディスン公爵と話をしないと。それから、大至急父上に通信を入れてくれ」
何の罪もないキャリーヌを、あんな薄暗い地下牢に閉じ込めるだなんて!いくら実の兄でも、絶対に許せない。
怒りに震える中、さらに驚くべき情報が入って来たのだ。
「大変です、王太子殿下に抗議をしたマディスン公爵まで投獄されました。さらにマディスン公爵家を家宅捜索するそうで、今準備を進めているとの事です」
「一体どういう事だ。マディスン公爵まで投獄だって?そもそも何を家宅捜索するというのだ?何の罪もない公爵たちを、自分の思い通りにならないからと言って投獄なんてすれば、大問題だぞ。とにかく、すぐにマディスン公爵の居る場所に向かう。案内してくれ」
兄上は本当に何を考えているのだろうか?王家を潰すつもりなのか?とにかく、マディスン公爵に会わないと。そんな思いで、急いで公爵の元へと向かったのだった。
でも…
あの日、貴族たちの圧に耐えながら、最後まで抵抗を続けてくれたキャリーヌ。僕はそれが嬉しかった。だからこそ、キャリーヌの幸せの為に、僕は身を引く決意が出来た。
キャリーヌ自身も、僕に申し訳ないと思っているのか、あまり話しかけてこなくなったのだ。正直寂しいが、仕方がない事。
それでも僕は、キャリーヌが心配で、陰ながらキャリーヌを見守り続けた。次期王妃になる事が決まったキャリーヌは、王妃教育も必死にこなし、慈善活動にも精力的に参加していた。
兄上との仲も良好の様だ。
ただ、キャリーヌが兄上に見せる優しい微笑を見ると、なんだか胸が張り裂けそうになる。でも僕は、キャリーヌを見守ると決めたのだ。どんなに辛くても、キャリーヌが幸せならそれでいい。そう思っていた。
そんな日々が7年ほど続いたある日、ディステル王国から王女が視察に来たのだ。ディステル王国は最近我が国が貿易を始めた国。国力もあり、我が国の2倍以上の領土を持っている事も有り、出来る限り良好な関係を築いておきたいと考えている国の1つだ。
ただ、視察にやって来た王女が、とんでもない女だったのだ。あろう事か、兄上を誘惑し始めたのだ。キャリーヌに自分と婚約してくれなければ、王太子を辞めるとまで言った兄上だ。さすがに王女の誘惑には乗らないだろう。
そう思っていた。ちなみにあの王女、何を思ったのか、僕にも誘惑を掛けて来たのだ。もちろん、断ったが…なんて尻軽な女なんだろう。
ただ、あんなにキャリーヌを愛していると豪語していた兄上だったが、美しいラミア殿下に惹かれている様だ。兄上の目は節穴なのか?ラミア殿下はかなり我が儘で、使用人たちが苦労している。さらに貴族令嬢たちにも悪態をついている様で、貴族たちからも苦情が来ているというのに…
出来るだけ穏便に、なおかつうまくラミア殿下を帰国させようと、父上も母上もあの手この手を使っていたが、中々うまくいかない。その上、兄上がラミア殿下の帰国を、猛烈に反対しだしたのだ。
そんな中、両親がどうしても外せない公務の為、国をしばらく開ける事になったのだ。一応王太子でもある兄上に、決定権が与えられることになった。
ただ…
「サミュエル、ジェイデンは少し抜けているところがある。それに、ラミア殿下の事も気がかりだ。もしジェイデンが間違った方向に進んだら、すぐに教えてくれ。それから、これをお前に預けておく。この書状には“全ての権限をサミュエルに与える”という文面が書かれている。ただ、この書状を使う前に、必ず私に相談して欲しい」
父上も何か思う事があったのだろう。僕に書状を渡してきたのだ。さらに、通信機も一緒に預けられた。
「わかりました、兄上が何かしでかさない様に、僕が監視します。それから、ラミア殿下の件、なんとか帰国させられないのでしょうか?」
「ラミア殿下にはそれとなく話をしているのだが“まだやる事が終わっていないから帰れない。ディステル王国の国王でもある兄からも、もう少しお世話になれと言われている”の、一点張りで…とにかく、ディステル王国ともめ事を起こしたくはないから…」
そう言って父上が頭を抱えてしまったのだ。そしてそのまま、両親は視察に出かけてしまった。
両親が視察に出掛けた翌日。
「サミュエル殿下、大変です。王太子殿下が…」
血相を変えて僕の元にやって来たのは、専属執事だ。一体何があったというのだ?
「実は先ほど、王太子殿下とキャリーヌ嬢の婚約が白紙に戻り、さらにキャリーヌ嬢が投獄されました」
「キャリーヌが投獄されただって?一体何があったんだい?」
意味が分からない。一体キャリーヌが何をしたというのだ。
執事の話だと、ラミア殿下と結婚したい兄上は、キャリーヌとの婚約を白紙に戻したい旨を、キャリーヌとマディスン公爵に迫り、婚約解消に至った事。さらに兄上がキャリーヌも傍に置きたいという我が儘な理由で、側妃になれと迫り、拒否したキャリーヌが投獄されてしまったとの事だ。
「そんなふざけた理由で、キャリーヌを!今すぐキャリーヌを牢から出せ…いいや、まずはマディスン公爵と話をしないと。それから、大至急父上に通信を入れてくれ」
何の罪もないキャリーヌを、あんな薄暗い地下牢に閉じ込めるだなんて!いくら実の兄でも、絶対に許せない。
怒りに震える中、さらに驚くべき情報が入って来たのだ。
「大変です、王太子殿下に抗議をしたマディスン公爵まで投獄されました。さらにマディスン公爵家を家宅捜索するそうで、今準備を進めているとの事です」
「一体どういう事だ。マディスン公爵まで投獄だって?そもそも何を家宅捜索するというのだ?何の罪もない公爵たちを、自分の思い通りにならないからと言って投獄なんてすれば、大問題だぞ。とにかく、すぐにマディスン公爵の居る場所に向かう。案内してくれ」
兄上は本当に何を考えているのだろうか?王家を潰すつもりなのか?とにかく、マディスン公爵に会わないと。そんな思いで、急いで公爵の元へと向かったのだった。
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