29 / 73
第29話:ミリアム様とお姉様から話を聞きました
しおりを挟む
「キャリーヌ様を追って、わざわざカリアン王国までいらしたのですか?まあ、なんて素敵なのでしょう」
「本当に。まるでおとぎ話の王子様とお姫様みたいですわ。キャリーヌ様、よかったですわね」
なぜか近くにいた令嬢たちが、キャーキャー騒いでいる。
「あの…皆様…」
「皆様、落ち着いて下さい。キャリーヌも急にサミュエル殿下がいらして、困惑しているでしょうし。私達は静かに見守りましょう」
ミリアム様が、必死に皆をなだめてくれている。とにかく一度頭を整理しないと!
ただ、その後の授業もほとんど集中する事が出来なかった。
そしてお昼休み。
「ミリアム様、今日は2人で食事をしましょう」
「え…キャリーヌ…」
授業が終わると同時に、ミリアム様の手を掴むと、急ぎ足で教室を出た。そして…
「ミリアム様は、サミュエル殿下がこの国にいらっしゃることを、知っていたのですよね?どうして教えて下さらなかったのですか?」
「落ち着いて、キャリーヌ。私はね、キャリーヌに幸せになって欲しいと思っているの。キャリーヌは、サミュエル殿下の事が好きなのでしょう?彼もキャリーヌの事を、とても大切に思っているみたいだし。それに何よりも、キャリーヌの気持ちを大切にしたいとおっしゃってね。公爵令嬢でもあるキャリーヌを、無理やり国に帰すことも出来たのに。同じ兄弟でも、こうも違うだなんてね」
「確かにサミュエル殿下は、とても優しくて正義感に溢れ、魅力的な方です。でも…私は彼ではなく、兄のジェイデン殿下を選んだのです。そんな私が、今更サミュエル殿下とだなんて…」
どの面下げて、サミュエル殿下の元にいけというのだ。
「キャリーヌ、あなたは公爵令嬢でしょう?当時8歳だったあなたが、あの状況下でジェイデン殿下を選ばない事なんて出来なったのではなくって?昨日、サミュエル殿下から色々と話を聞いたの。キャリーヌは悪くないわ。それよりもあの元王太子よ。周りを味方に付けて、当時8歳のキャリーヌに圧をかけるだなんて。その上、結局キャリーヌを捨てた!絶対にあの元王太子、許せない。八つ裂きにしてやりたいくらいよ!」
珍しくミリアム様が、顔を赤くして怒っている。もしかして私の為に、色々と我が国の事を調べて下さったのかしら?
「ミリアム様、私の為に怒って下さり、ありがとうございます。ですが私は…」
「私は別に、あなたの為に怒っている訳では…て、またダメな癖が出てしまったわ…私はね、ただキャリーヌに幸せになって欲しいだけなの。ただそれだけよ。だからどうか、サミュエル殿下としっかり向き合ってみて」
きっとミリアム様なりに、私の幸せを考えて動いて下さったのだろう。こんな風に私の為に動いてくれる友人がいる、その事がなんだか嬉しい。
「ありがとうございます、ミリアム様。正直まだ混乱しておりますが、一度サミュエル殿下の事も含め、どうするべきなのか考えてみますわ」
とはいえ、私はどうしたらいいのだろう。
まだ心が落ち着かない中、午後の授業を終え、屋敷に戻ってきた。
「キャリーヌ、おかえりなさい。あら?浮かない顔をしてどうしたの?」
お姉様が不安そうな顔をして駆け寄ってきた。
「お姉様は、サミュエル殿下がこの国に留学してくることを、知っていたのですか?」
きっと知っていたのだろう。ミリアム様も知っていたし、知らないのは私だけだったみたい。
「サミュエル殿下の事?ええ、知っていたわ。ごめんなさい、あなたに話そうかと思ったのだけれど、なんだか話しづらくてね。結局当日になってしまったの。兄でもあるジェイデン殿下から、酷い仕打ちを受けたキャリーヌだもの。もう王太子殿下の婚約者なんて、懲り懲りよね?」
確かにジェイデン殿下からは、酷い仕打ちを受けた。でも…
「サミュエル殿下は、私やお父様たち家族を助けて下さったのでしょう?でも私は…あんなに優しかったサミュエル殿下を裏切って、王太子でもあるジェイデン殿下を選んだのです。ですから…」
「あなた、まだその事を気にしているの?あれはあなたに決定権はなかったわ。そんな事、アラステ王国の貴族なら、みんな知っている事よ。それからね、サミュエル殿下は、あなたを誰よりも大切に思って下さっているの。今回の留学だってそうよ」
「どうしてサミュエル殿下が留学してくることが、私を思っての事なのですか?」
お姉様の言っていることが、さっぱりわからない。
「実はね、アラステ王国の貴族たちは、今すぐにでも優秀で既に王妃教育を終えているキャリーヌを国に連れ戻し、サミュエル殿下と婚約をと声を上げたの。でもね、サミュエル殿下は
“キャリーヌは兄上から散々酷い仕打ちを受け、国を出たのです。それなのに、彼女の意思を無視して僕の婚約者にするだなんて。そんな非道な事、僕は出来ません。僕はキャリーヌの意思で、僕を選んで欲しいのです。ですから、どうか僕に時間をください”
そう訴えたの。それで自らカリアン王国に留学の交渉をしたのよ。もちろん、その間に必死に貴族たちも説得した。その結果、3ヶ月の留学が決まったのですって。本当は半年を希望していたらしいけれど、さすがに王太子に内定している方が、半年も国を離れる事は出来ないでしょう?」
サミュエル殿下が、そんな事を…
彼らしいわ。サミュエル殿下は、いつも私の事を考えて下さっていた。
でも、私は…
「サミュエル殿下のお陰で、キャリーヌも3ヶ月の考える時間が出来たのだもの。ゆっくり考えなさい」
そう言ってほほ笑んだお姉様。
サミュエル殿下の気持ちは、ものすごく嬉しい。でも、どうしても私は、彼を選ばなかった罪悪感が残っている。私はどうすればいいのだろう…
※次回、サミュエル視点です。
よろしくお願いしますm(__)m
「本当に。まるでおとぎ話の王子様とお姫様みたいですわ。キャリーヌ様、よかったですわね」
なぜか近くにいた令嬢たちが、キャーキャー騒いでいる。
「あの…皆様…」
「皆様、落ち着いて下さい。キャリーヌも急にサミュエル殿下がいらして、困惑しているでしょうし。私達は静かに見守りましょう」
ミリアム様が、必死に皆をなだめてくれている。とにかく一度頭を整理しないと!
ただ、その後の授業もほとんど集中する事が出来なかった。
そしてお昼休み。
「ミリアム様、今日は2人で食事をしましょう」
「え…キャリーヌ…」
授業が終わると同時に、ミリアム様の手を掴むと、急ぎ足で教室を出た。そして…
「ミリアム様は、サミュエル殿下がこの国にいらっしゃることを、知っていたのですよね?どうして教えて下さらなかったのですか?」
「落ち着いて、キャリーヌ。私はね、キャリーヌに幸せになって欲しいと思っているの。キャリーヌは、サミュエル殿下の事が好きなのでしょう?彼もキャリーヌの事を、とても大切に思っているみたいだし。それに何よりも、キャリーヌの気持ちを大切にしたいとおっしゃってね。公爵令嬢でもあるキャリーヌを、無理やり国に帰すことも出来たのに。同じ兄弟でも、こうも違うだなんてね」
「確かにサミュエル殿下は、とても優しくて正義感に溢れ、魅力的な方です。でも…私は彼ではなく、兄のジェイデン殿下を選んだのです。そんな私が、今更サミュエル殿下とだなんて…」
どの面下げて、サミュエル殿下の元にいけというのだ。
「キャリーヌ、あなたは公爵令嬢でしょう?当時8歳だったあなたが、あの状況下でジェイデン殿下を選ばない事なんて出来なったのではなくって?昨日、サミュエル殿下から色々と話を聞いたの。キャリーヌは悪くないわ。それよりもあの元王太子よ。周りを味方に付けて、当時8歳のキャリーヌに圧をかけるだなんて。その上、結局キャリーヌを捨てた!絶対にあの元王太子、許せない。八つ裂きにしてやりたいくらいよ!」
珍しくミリアム様が、顔を赤くして怒っている。もしかして私の為に、色々と我が国の事を調べて下さったのかしら?
「ミリアム様、私の為に怒って下さり、ありがとうございます。ですが私は…」
「私は別に、あなたの為に怒っている訳では…て、またダメな癖が出てしまったわ…私はね、ただキャリーヌに幸せになって欲しいだけなの。ただそれだけよ。だからどうか、サミュエル殿下としっかり向き合ってみて」
きっとミリアム様なりに、私の幸せを考えて動いて下さったのだろう。こんな風に私の為に動いてくれる友人がいる、その事がなんだか嬉しい。
「ありがとうございます、ミリアム様。正直まだ混乱しておりますが、一度サミュエル殿下の事も含め、どうするべきなのか考えてみますわ」
とはいえ、私はどうしたらいいのだろう。
まだ心が落ち着かない中、午後の授業を終え、屋敷に戻ってきた。
「キャリーヌ、おかえりなさい。あら?浮かない顔をしてどうしたの?」
お姉様が不安そうな顔をして駆け寄ってきた。
「お姉様は、サミュエル殿下がこの国に留学してくることを、知っていたのですか?」
きっと知っていたのだろう。ミリアム様も知っていたし、知らないのは私だけだったみたい。
「サミュエル殿下の事?ええ、知っていたわ。ごめんなさい、あなたに話そうかと思ったのだけれど、なんだか話しづらくてね。結局当日になってしまったの。兄でもあるジェイデン殿下から、酷い仕打ちを受けたキャリーヌだもの。もう王太子殿下の婚約者なんて、懲り懲りよね?」
確かにジェイデン殿下からは、酷い仕打ちを受けた。でも…
「サミュエル殿下は、私やお父様たち家族を助けて下さったのでしょう?でも私は…あんなに優しかったサミュエル殿下を裏切って、王太子でもあるジェイデン殿下を選んだのです。ですから…」
「あなた、まだその事を気にしているの?あれはあなたに決定権はなかったわ。そんな事、アラステ王国の貴族なら、みんな知っている事よ。それからね、サミュエル殿下は、あなたを誰よりも大切に思って下さっているの。今回の留学だってそうよ」
「どうしてサミュエル殿下が留学してくることが、私を思っての事なのですか?」
お姉様の言っていることが、さっぱりわからない。
「実はね、アラステ王国の貴族たちは、今すぐにでも優秀で既に王妃教育を終えているキャリーヌを国に連れ戻し、サミュエル殿下と婚約をと声を上げたの。でもね、サミュエル殿下は
“キャリーヌは兄上から散々酷い仕打ちを受け、国を出たのです。それなのに、彼女の意思を無視して僕の婚約者にするだなんて。そんな非道な事、僕は出来ません。僕はキャリーヌの意思で、僕を選んで欲しいのです。ですから、どうか僕に時間をください”
そう訴えたの。それで自らカリアン王国に留学の交渉をしたのよ。もちろん、その間に必死に貴族たちも説得した。その結果、3ヶ月の留学が決まったのですって。本当は半年を希望していたらしいけれど、さすがに王太子に内定している方が、半年も国を離れる事は出来ないでしょう?」
サミュエル殿下が、そんな事を…
彼らしいわ。サミュエル殿下は、いつも私の事を考えて下さっていた。
でも、私は…
「サミュエル殿下のお陰で、キャリーヌも3ヶ月の考える時間が出来たのだもの。ゆっくり考えなさい」
そう言ってほほ笑んだお姉様。
サミュエル殿下の気持ちは、ものすごく嬉しい。でも、どうしても私は、彼を選ばなかった罪悪感が残っている。私はどうすればいいのだろう…
※次回、サミュエル視点です。
よろしくお願いしますm(__)m
1,811
お気に入りに追加
4,142
あなたにおすすめの小説

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?
柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。
お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。
婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。
そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――
ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております

愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!
風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。
結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。
レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。
こんな人のどこが良かったのかしら???
家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)

愛してくれない婚約者なら要りません
ネコ
恋愛
伯爵令嬢リリアナは、幼い頃から周囲の期待に応える「完璧なお嬢様」を演じていた。ところが名目上の婚約者である王太子は、聖女と呼ばれる平民の少女に夢中でリリアナを顧みない。そんな彼に尽くす日々に限界を感じたリリアナは、ある日突然「婚約を破棄しましょう」と言い放つ。甘く見ていた王太子と聖女は彼女の本当の力に気づくのが遅すぎた。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる