私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi

文字の大きさ
上 下
25 / 73

第25話:良い方向に進んでいます~ミリアム視点~

しおりを挟む
「お義姉様、これは一体?」

「このモニターは、ディステル王国にいるアリエルと、顔を見ながらお話しできる最新の機材なのよ。凄いでしょう?たまたま他国に視察に行ったディステル王国の国王陛下が見つけ、買ってきてくださったのよ。これで直接話が出来るわ」

 他国の人間と、このモニターを通じて話が出来るですって?あり得ないわ、そんな事が出来る機械があるだなんて…

 信じられなくて、モニターを見つめた。すると、次の瞬間、モニターにお義姉様くらいの女性が映ったのだ。後ろにはお兄様くらいの男性もいる。これは魔法なの?ディステル王国にも、魔法使いが?

 “モリアナ、久しぶりね。急にどうしたの?大切な話があると聞いたのだけれど”

「アリエル、それに国王陛下も、お久しぶりです。実は私の義妹が、どうしてもアリエルと陛下にお願いがあるという事で。わざわざカリアン王国から来ているのよ。さあ、ミリアム、アリエルたちに、キャリーヌ嬢の母国で起きている事を話してあげて」

 急にお義姉様に、話しをふられた。どうしよう…

 まずは自己紹介からしないと。

「お初にお目にかかります。カリアン王国の第一王女、ミリアム・キャリア・カリアンと申します。本日はお忙しい中、私の為にお時間を取って頂き、ありがとうございます。どうか…どうか私の友人、キャリーヌをお助け下さい」

 “ミリアム殿下とおっしゃいましたね。あなた様のお話しは、モリアナから聞いていますわ。ただ…なんだかイメージが違う様な”

「ミリアムも私と同じように、自分をさらけ出せる大切な人が出来たのよ。ただ、その友人の事で、ちょっと困っていてね。とにかくミリアムの話を聞いてあげて」

 お義姉様がアシストしてくれた。他国の、それも全く関係のない人と話をするだなんて、正直無礼を働かないか不安で仕方がない。でも、せっかくお義姉様がお膳立てしてくれたのだ。

 やるしかない。

 ゆっくり深呼吸をすると、私はお義姉様やお兄様に話した時と同じように、今アラステ王国で起きている事を必死に話した。

 つたない私の説明を、真剣に聞いてくれるディステル王国の陛下と王妃殿下。気が付くと涙が溢れていた。

 “なんて事なの…確かにラミアからは、アラステ王国の王太子殿下との結婚話が上がっている為、しばらく国には帰らない。正式に決まったら、その時はまた改めて話をするとは聞いていたけれど、まさかそんな事になっていただなんて…”

 “だから私たちが何度も”王太子殿下と結婚話が出ているのなら、アラステ王国の国王陛下と一度きちんと話がしたい#と伝えても、はぐらかしていたのか。まさか婚約者がいる相手を無理やり奪い取り、アラステ王国に居座っているだなんて…何たる愚かで恥さらしな事を…”

 “既に王太子殿下は婚約者と婚約を解消しているから、問題ないと言っていたわよね。それなのに、全く話が違うじゃないの。我が国はアラステ王国に比べると大きな国だから、きっとあちらの国王陛下も、我が国に忖度してラミアの事を言い出せなかったのね。なんて事なの…他国に多大な迷惑をかけるだなんて…あなた!”

 “分かっている、すぐにアラステ王国に向かい、愚かなラミアを連れ戻そう。それから、しっかりあちらの陛下にはお詫びをしないと。それにキャリーヌ嬢にも。一番の被害者は、キャリーヌ嬢なのだろう?でも、どんな顔をして謝罪に行けばいいのだ?我が妹ながら、恥ずかしすぎてアラステ王国の王族や貴族に合わせる顔がない…”

 “あなた、しっかりしてください!とにかく、これ以上我が国の恥をさらす訳にはいきません。ミリアム殿下、それにモリアナ、よくぞ知らせて下さいました。知らなかったとはいえ、ラミアを野放しにした私たちの責任です。キャリーヌ嬢にもまた改めて謝罪させてください。それでは、私たちはカリアン王国に向かう準備があるので、これで”

「ちょっと待って、アリエル…」

 お義姉様の叫び声も空しく、通信が切れてしまった様だ。それにしても、陛下と王妃殿下のあの慌てよう。本当にラミア殿下の行いを、全く知らなかったのね。

「本当にせっかちなのだから。2人で盛り上がって、こちらの意見など全く聞かないのだから。でも…自分の国の王族が、他国で醜態をさらしていると知ったら、気が気ではないわよね。ミリアム、これできっと、もうアラステ王国は大丈夫よ。近々ラミア殿下も、回収される事でしょう」

 にっこり笑ったお義姉様。いつも無表情だった人だけれど、こんな風に笑うのね。私、やっぱり今まで何も見えていなかったわ。

「さあ、全て解決したし、食事にしましょう。今日はミリアムとカイロ様が来てくださると聞いて、料理長が腕によりをかけてお料理を作っているはずよ。それに…今ならミリアムとも仲良く出来る気がするし…ミリアム、王女失格と言って本当にごめんなさい。こんな私だけれど、仲良くしてくれるかしら?」

「もちろんですわ。あの時の私は、本当に王女失格と言うか…人間失格でしたので。どうかこれからは、仲良くしてください。お義姉様」

「よかったわ。そうそう、子供たちを紹介しないとね」

 お義姉様が使用人に合図を送る。しばらくすると、可愛らしい男の子と女の子が入って来た。

「お兄様とお義姉様のお子様ですね。私、子供と触れ合った事がないのですが、仲良くなれるかしら?」

「今のミリアムなら大丈夫だよ。ミリアム、君は本当に変わったのだね。俺も嬉しいよ」

 お兄様が今にも泣きそうな顔で、私を見つめている。お義姉様もカイロ様も、優しい眼差しで見つめてくれている。それがなんだか嬉しかった。

 その後、お兄様の子供たちも加わり、夜遅くまで宴が行われた。お義姉様との沢山お話しが出来た。いつの間にか、苦手だと思っていた人たちともこうやって普通に話しが出来る様になった。

 それが未だに信じられない。

 きっとキャリーヌのお陰ね。キャリーヌ、あなたの国の混乱も、もうすぐ落ち着くはずだわ。近い将来、キャリーヌは母国に帰る事が出来るだろう。

 キャリーヌの喜ぶ顔を想像したら、嬉しくてつい頬が緩んだ。

 でも…

 それと同時に、胸がチクリと痛む。

 それでもお義姉様とアリエル王妃殿下の関係を見ていたら、私たちもきっと大丈夫だ。遠く離れていても、私たちはずっと親友なのだから。

 そう何度も自分に言い聞かせたのだった。


 ※長くなりましたが、次回からキャリーヌ視点に戻ります。
 よろしくお願いします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?

柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。  お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。  婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。  そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――  ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!

風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。 結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。 レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。 こんな人のどこが良かったのかしら??? 家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

愛してくれない婚約者なら要りません

ネコ
恋愛
伯爵令嬢リリアナは、幼い頃から周囲の期待に応える「完璧なお嬢様」を演じていた。ところが名目上の婚約者である王太子は、聖女と呼ばれる平民の少女に夢中でリリアナを顧みない。そんな彼に尽くす日々に限界を感じたリリアナは、ある日突然「婚約を破棄しましょう」と言い放つ。甘く見ていた王太子と聖女は彼女の本当の力に気づくのが遅すぎた。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

処理中です...