24 / 73
第24話:お義姉様の過去~ミリアム視点~
しおりを挟む
「ミリアムの気持ちはよくわかった。キャリーヌ嬢がミリアムにとって、どういう存在なのかも。でも、他国の事に俺たち他国の王族が口をはさむべきではない。それくらい、ミリアムだってわかっているだろう?とにかく、涙をぬぐって」
いつの間に私の瞳からは、涙が溢れ出ていた。
確かにお兄様の言う通り、他国の事に他国の王族が首を突っ込むべきではない。そんな事は、私もわかっている。
ただ…
やっぱり私は王女失格なのだろう。またお義姉様に呆れられるかしら?それでも私は、キャリーヌの為に何かしたい。王女としてではなく、1人の人間として。
「ミリアム、頭を上げて」
「はい」
ゆっくり頭を上げると、真顔のお義姉様と目が合った。
「要するに、ディステル王国の陛下に嫁いだ私の友人、アリエルにラミア王女が行っている事を知らせ、彼女の行いを止めて欲しいという事ですね。でももし、ラミア王女の問題が解消し、アラステ王国に平和が戻ったら、キャリーヌ嬢は自国に戻ってしまうのではなくって?そうなると、大切なキャリーヌ嬢と離れ離れになってしまうわよ」
「それでも構いません。キャリーヌは自国に残してきた家族の事をとても心配していましたし。それに母国には、キャリーヌにとって大切な人たちが沢山いるのです。確かに私は、キャリーヌに傍にいて欲しい。でも…それ以上に私は、キャリーヌには幸せになって欲しいのです。それに、離れ離れになっても、私たちの絆は消えない。私はそう信じています」
自分でもびっくりする程、すらすらと言葉が出てくる。私はキャリーヌの役に立ちたい、たとえ王女失格だとしても!
真っすぐお義姉様を見つめると、小さなため息をついたかと思ったら、一瞬ほほ笑んだのだ。
今、ほほ笑んだ?
「ミリアムの気持ちはよく分かりました。すぐにアリエルに連絡を入れて頂戴」
近くにいた使用人に指示を出しているお義姉様。
「お義姉様?」
「ミリアムにもやっと、心から信頼できる大切な友人が出来たのですね。ミリアム、あの日あなたに“王女失格”だなんて言って、ごめんなさい。あの時のあなたは、まさに昔の私そのものだったから…ミリアムを見ていたら、なんだか昔の自分を見ている様で…それであんな酷い事を。私の方こそ、王女失格だったの。そんな私を助けてくれたのが、親友でディステル王国の現王妃、アリエルよ」
お義姉様は何を言っているの?かつてお義姉様も、私の様だったというの?
「私もね、ずっと孤独だったの。国王の子供は私1人だったでしょう。両親は忙しくほとんど傍にいてくれない。その上、唯一の子供として、両親はもちろん、周りからの期待も大きかった。だから、立派な女王にならなきゃっていう思いが強すぎて…自分を立派に見せる事ばかりにこだわって、いつしか周りとも溝が出来てしまっていたの。そんな自分が大嫌いで、どうして私はこんな人間なのだろう。こんなんじゃあ、女王なんてとてもなれない。私は王族失格だって、いつも思っていたわ」
いつも凛として、立派に女王陛下を務めあげているお義姉様が。まさか私と同じ気持ちを抱えていただなんて…
「そんな中、アリエルに出会ったの。彼女は公爵令嬢でありながら、とても相手の気持ちを思いやれる優しい子でね。正直最初はアリエルを見ていると、自分が惨めで仕方がなかった。だから彼女に、酷い言葉を浴びせたこともあった。でもアリエルは、そんな私を見捨てずに、傍にいてくれた。いつしかアリエルの事が大好きになった。彼女のお陰で、少しずつ周りとの溝も埋まったの。でも、彼女はディステル王国の王太子に見初められ、隣国に嫁ぐことになった。寂しくて、行かないで!て言ってしまったの…本当にダメよね」
涙をハンカチでぬぐっているお義姉様の肩を、そっと抱き寄せるお兄様。
「結局私は、私を助けてくれた友人の門出を、快く見送る事が出来なかった。今でもその事を物凄く後悔しているわ。それなのにアリエルは、今でも私の事をとても大切にしてくれているの。私はね、女王陛下だなんて言われているけれど、1人では何も出来ないの。あなたのお兄様を始め、沢山の人に支えられて何とか女王が出来ているのよ」
そう言うと、お義姉様がほほ笑んだのだ。
「ミリアムは私よりもずっと、立派な王族だわ。自分の気持ちを犠牲にしてまで、親友の幸せを願ったのだから」
「私は…立派な人間ではありません。正直私は、キャリーヌにずっと傍にいて欲しい、キャリーヌを他の誰かに取られたくない。ずっとそう思っていました。それに今回だって、カイロ様を始め、お義姉様やお兄様、沢山の人に迷惑を掛けました。だから私は…」
「私は迷惑だなんて思っていないよ。ミリアムはキャリーヌ嬢の為に、勇気を出して義姉上に会いに来たのだろう?いくら兄上の奥さんだとしても、他国の女王陛下にお願いに来るだなんて、相当勇気がいったと思う。私は友人の為にそこまで出来るミリアムを、尊敬しているよ」
「カイロ様の言う通りですわ。ミリアム、大切な人を幸せに出来ない人間が、民を幸せに出来ると思いますか?あなたは誰よりも優しく強い人間だと私も思っております。だからこそ、私もあなたに協力したいと思いました。それに…」
「女王陛下、ディステル王国の王妃殿下と通信が繋がりました」
お義姉様が何かを言いかけたタイミングで、何やら大きなモニターが運ばれてきたのだ。一体何が始まるのだろう。
いつの間に私の瞳からは、涙が溢れ出ていた。
確かにお兄様の言う通り、他国の事に他国の王族が首を突っ込むべきではない。そんな事は、私もわかっている。
ただ…
やっぱり私は王女失格なのだろう。またお義姉様に呆れられるかしら?それでも私は、キャリーヌの為に何かしたい。王女としてではなく、1人の人間として。
「ミリアム、頭を上げて」
「はい」
ゆっくり頭を上げると、真顔のお義姉様と目が合った。
「要するに、ディステル王国の陛下に嫁いだ私の友人、アリエルにラミア王女が行っている事を知らせ、彼女の行いを止めて欲しいという事ですね。でももし、ラミア王女の問題が解消し、アラステ王国に平和が戻ったら、キャリーヌ嬢は自国に戻ってしまうのではなくって?そうなると、大切なキャリーヌ嬢と離れ離れになってしまうわよ」
「それでも構いません。キャリーヌは自国に残してきた家族の事をとても心配していましたし。それに母国には、キャリーヌにとって大切な人たちが沢山いるのです。確かに私は、キャリーヌに傍にいて欲しい。でも…それ以上に私は、キャリーヌには幸せになって欲しいのです。それに、離れ離れになっても、私たちの絆は消えない。私はそう信じています」
自分でもびっくりする程、すらすらと言葉が出てくる。私はキャリーヌの役に立ちたい、たとえ王女失格だとしても!
真っすぐお義姉様を見つめると、小さなため息をついたかと思ったら、一瞬ほほ笑んだのだ。
今、ほほ笑んだ?
「ミリアムの気持ちはよく分かりました。すぐにアリエルに連絡を入れて頂戴」
近くにいた使用人に指示を出しているお義姉様。
「お義姉様?」
「ミリアムにもやっと、心から信頼できる大切な友人が出来たのですね。ミリアム、あの日あなたに“王女失格”だなんて言って、ごめんなさい。あの時のあなたは、まさに昔の私そのものだったから…ミリアムを見ていたら、なんだか昔の自分を見ている様で…それであんな酷い事を。私の方こそ、王女失格だったの。そんな私を助けてくれたのが、親友でディステル王国の現王妃、アリエルよ」
お義姉様は何を言っているの?かつてお義姉様も、私の様だったというの?
「私もね、ずっと孤独だったの。国王の子供は私1人だったでしょう。両親は忙しくほとんど傍にいてくれない。その上、唯一の子供として、両親はもちろん、周りからの期待も大きかった。だから、立派な女王にならなきゃっていう思いが強すぎて…自分を立派に見せる事ばかりにこだわって、いつしか周りとも溝が出来てしまっていたの。そんな自分が大嫌いで、どうして私はこんな人間なのだろう。こんなんじゃあ、女王なんてとてもなれない。私は王族失格だって、いつも思っていたわ」
いつも凛として、立派に女王陛下を務めあげているお義姉様が。まさか私と同じ気持ちを抱えていただなんて…
「そんな中、アリエルに出会ったの。彼女は公爵令嬢でありながら、とても相手の気持ちを思いやれる優しい子でね。正直最初はアリエルを見ていると、自分が惨めで仕方がなかった。だから彼女に、酷い言葉を浴びせたこともあった。でもアリエルは、そんな私を見捨てずに、傍にいてくれた。いつしかアリエルの事が大好きになった。彼女のお陰で、少しずつ周りとの溝も埋まったの。でも、彼女はディステル王国の王太子に見初められ、隣国に嫁ぐことになった。寂しくて、行かないで!て言ってしまったの…本当にダメよね」
涙をハンカチでぬぐっているお義姉様の肩を、そっと抱き寄せるお兄様。
「結局私は、私を助けてくれた友人の門出を、快く見送る事が出来なかった。今でもその事を物凄く後悔しているわ。それなのにアリエルは、今でも私の事をとても大切にしてくれているの。私はね、女王陛下だなんて言われているけれど、1人では何も出来ないの。あなたのお兄様を始め、沢山の人に支えられて何とか女王が出来ているのよ」
そう言うと、お義姉様がほほ笑んだのだ。
「ミリアムは私よりもずっと、立派な王族だわ。自分の気持ちを犠牲にしてまで、親友の幸せを願ったのだから」
「私は…立派な人間ではありません。正直私は、キャリーヌにずっと傍にいて欲しい、キャリーヌを他の誰かに取られたくない。ずっとそう思っていました。それに今回だって、カイロ様を始め、お義姉様やお兄様、沢山の人に迷惑を掛けました。だから私は…」
「私は迷惑だなんて思っていないよ。ミリアムはキャリーヌ嬢の為に、勇気を出して義姉上に会いに来たのだろう?いくら兄上の奥さんだとしても、他国の女王陛下にお願いに来るだなんて、相当勇気がいったと思う。私は友人の為にそこまで出来るミリアムを、尊敬しているよ」
「カイロ様の言う通りですわ。ミリアム、大切な人を幸せに出来ない人間が、民を幸せに出来ると思いますか?あなたは誰よりも優しく強い人間だと私も思っております。だからこそ、私もあなたに協力したいと思いました。それに…」
「女王陛下、ディステル王国の王妃殿下と通信が繋がりました」
お義姉様が何かを言いかけたタイミングで、何やら大きなモニターが運ばれてきたのだ。一体何が始まるのだろう。
2,242
お気に入りに追加
4,142
あなたにおすすめの小説

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?
柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。
お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。
婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。
そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――
ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております

愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!
風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。
結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。
レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。
こんな人のどこが良かったのかしら???
家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)


愛してくれない婚約者なら要りません
ネコ
恋愛
伯爵令嬢リリアナは、幼い頃から周囲の期待に応える「完璧なお嬢様」を演じていた。ところが名目上の婚約者である王太子は、聖女と呼ばれる平民の少女に夢中でリリアナを顧みない。そんな彼に尽くす日々に限界を感じたリリアナは、ある日突然「婚約を破棄しましょう」と言い放つ。甘く見ていた王太子と聖女は彼女の本当の力に気づくのが遅すぎた。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる