23 / 73
第23話:やるしかありません~ミリアム視点~
しおりを挟む
馬車が王宮の門の前で停まった。私達の為に、お兄様とお義姉様が待っていてくれている。早く降りないと。でも、本当に私がお義姉様を説得できるの?
急に不安が押し寄せて来て、馬車から降りる事が出来ない。どうしよう…
「ミリアム、大丈夫だよ。私も傍にいるし、今のミリアムならきっと、女王陛下も理解してくださるはずだ。自分の気持ちを、女王陛下に伝えたらいいんだ」
「でも…私に出来るかしら?もし女王陛下に無礼を働いたら…」
私はつい思ってもない事を言ってしまう癖が、まだ抜けていない。もし女王陛下に無礼を働いたら、お兄様にも迷惑が掛かってしまう。王宮まで来て、往生際が悪いのは分かっている。それでもなんだか怖くてたまらなくなってきたのだ。
「それじゃあ、挨拶だけしてこのまま帰ろう。私はキャリーヌ嬢よりも、ミリアムの方が大切だからね。君に負担を強いてまで、女王陛下に助けを求める必要はないよ」
このまま帰る?
その瞬間、寂し気に笑うキャリーヌの姿が脳裏に浮かんだ。
私、何をやっているのかしら?キャリーヌに少しでも恩返しがしたくて、我が儘を言ってここまで来たのに。それに、カイロ様まで巻き込んだのに…
よし!
「カイロ様、私は大丈夫ですわ。さあ、参りましょう」
ゆっくりと立ち上がり、馬車を降りた。
すると
「ミリアム、カイロ殿もよく来てくれたね。2人で我が国に尋ねてきてくれるだなんて、嬉しいよ」
お兄様が嬉しそうに私の元に駆け寄って来たのだ。後ろには無表情のお義姉様もいらっしゃる。真っすぐ私を見つめるその瞳。正直私は、彼女が苦手だ。
お兄様たちの結婚が決まり、何度か我が国に足を運んでくださった彼女だが、いつも私を無表情で見つめてくるのだ。
両親やお兄様夫婦には笑顔で話をしていたのだが、なぜか私にはにこりともしない。
“キャリーヌ嬢、あなたは王女としてふさわしくないわ。もっと周りを見られる様になりなさい”
お兄様とお義姉様が国を出るとき、お義姉様からかけられた言葉だ。その言葉を言われたとき、苦しくて辛くてどうしようもなかった。でも…
お義姉様の言う事は間違っていない。
本来王女とは、弱い人に寄り添い、誰からも好かれる人物でなければいけない。でも私は…
口下手で思った事と違う言葉を発してしまう。その結果、相手を傷つけてしまう事もある。友人は愚か、婚約者でもあるカイロ様との関係もうまく取り繕えない程なのだ。
きっと私なんかよりも、キャリーヌの方がずっと王女に向いているだろう。キャリーヌは本当に優しくて、こんな私ですら、彼女は受け入れてくれたのだ。キャリーヌのお陰で、私は変わる事が出来たのだ。
そうよ、私がお義姉様に嫌われているとか、今はどうでもいい。キャリーヌの友人として、今この場に立っているのだから。
ゆっくり深呼吸をする。そして
「お義姉様、お兄様、お久しぶりでございます。今回急に訪ねてくることになり、申し訳ございませんでした」
まずは2人に挨拶をする。私の挨拶を聞いて、なぜか目を丸くしているのは、お義姉様だ。何か変だったかしら?もしかして、女王陛下と呼ばなかった事が気に入らなかったのかしら?
「長旅で疲れただろう。とにかく王宮の中に入って、ゆっくり話をしよう」
お兄様に促されて、客間へと案内された。部屋に向かう間も、ずっと私の手を握ってくれているのは、カイロ様だ。彼の存在が、これほどまで心強いだなんて。
部屋につくと、それぞれ向かい合わせに座った。
相変わらず無表情のお義姉様。そんな彼女を見ていると、増々不安が襲う。
「カイロ殿とミリアムは、とても仲睦まじいのだね。母上の話だと、あまり仲が良くないと聞いていたので…すまない、母上の情報は、本当に当てにならないな」
あまり仲が良くなかったか…
「お兄様、その話は本当ですわ。つい最近まで、私とカイロ様の仲は、お世辞にも良いものとは言えませんでした。私の意地っ張りで素直ではない性格のせいで、私たちは長年すれ違っていたのです。でも、そんな私たちの仲を取り持ってくれたのが、キャリーヌなのです」
「キャリーヌ嬢?どこかで聞いたことがある様な…」
「キャリーヌはアラステ王国の公爵令嬢で、王太子殿下の元婚約者ですわ。お義姉様、どうかキャリーヌをお助け下さい。お願いします」
お義姉様の元に駆け寄り、必死に頭を下げた。
「キャリーヌ嬢を助けて欲しいとは、一体どういうことですか?私に分かる様に説明してください」
ゆっくり頭を上げると、相変わらず無表情で私を見つめるお義姉様と目が合った。
私はキャリーヌの置かれている状況を、必死に説明した。キャリーヌは自国の愚かな王太子とラミア王女のせいで、何の罪もないのに我がカリアン王国に避難している事。
今キャリーヌの国は、大混乱を起こしている事。それもこれも、ラミア王女がアラステ王国に留まり、愚かな王太子のバックについているためだという事。
キャリーヌは自国で酷い扱いを受け、傷ついているにも関わらず、今我が国で必死に生きている事。そんなキャリーヌによって、私がどれほど救われたか…
そして
「キャリーヌは私の人生を180度変えてくれた、かけがえのない大切な友人です。いいえ、友人だなんて軽い言葉で表せられない程、私にとって大切な存在なのです。私が今、真っ暗で孤独な世界から抜け出し、色鮮やかで温もり溢れる世界で生きられているのは、キャリーヌのお陰。だからこそ、今度は私がキャリーヌを助けたいのです。どうかお義姉様、力を貸してください。お願いします」
急に不安が押し寄せて来て、馬車から降りる事が出来ない。どうしよう…
「ミリアム、大丈夫だよ。私も傍にいるし、今のミリアムならきっと、女王陛下も理解してくださるはずだ。自分の気持ちを、女王陛下に伝えたらいいんだ」
「でも…私に出来るかしら?もし女王陛下に無礼を働いたら…」
私はつい思ってもない事を言ってしまう癖が、まだ抜けていない。もし女王陛下に無礼を働いたら、お兄様にも迷惑が掛かってしまう。王宮まで来て、往生際が悪いのは分かっている。それでもなんだか怖くてたまらなくなってきたのだ。
「それじゃあ、挨拶だけしてこのまま帰ろう。私はキャリーヌ嬢よりも、ミリアムの方が大切だからね。君に負担を強いてまで、女王陛下に助けを求める必要はないよ」
このまま帰る?
その瞬間、寂し気に笑うキャリーヌの姿が脳裏に浮かんだ。
私、何をやっているのかしら?キャリーヌに少しでも恩返しがしたくて、我が儘を言ってここまで来たのに。それに、カイロ様まで巻き込んだのに…
よし!
「カイロ様、私は大丈夫ですわ。さあ、参りましょう」
ゆっくりと立ち上がり、馬車を降りた。
すると
「ミリアム、カイロ殿もよく来てくれたね。2人で我が国に尋ねてきてくれるだなんて、嬉しいよ」
お兄様が嬉しそうに私の元に駆け寄って来たのだ。後ろには無表情のお義姉様もいらっしゃる。真っすぐ私を見つめるその瞳。正直私は、彼女が苦手だ。
お兄様たちの結婚が決まり、何度か我が国に足を運んでくださった彼女だが、いつも私を無表情で見つめてくるのだ。
両親やお兄様夫婦には笑顔で話をしていたのだが、なぜか私にはにこりともしない。
“キャリーヌ嬢、あなたは王女としてふさわしくないわ。もっと周りを見られる様になりなさい”
お兄様とお義姉様が国を出るとき、お義姉様からかけられた言葉だ。その言葉を言われたとき、苦しくて辛くてどうしようもなかった。でも…
お義姉様の言う事は間違っていない。
本来王女とは、弱い人に寄り添い、誰からも好かれる人物でなければいけない。でも私は…
口下手で思った事と違う言葉を発してしまう。その結果、相手を傷つけてしまう事もある。友人は愚か、婚約者でもあるカイロ様との関係もうまく取り繕えない程なのだ。
きっと私なんかよりも、キャリーヌの方がずっと王女に向いているだろう。キャリーヌは本当に優しくて、こんな私ですら、彼女は受け入れてくれたのだ。キャリーヌのお陰で、私は変わる事が出来たのだ。
そうよ、私がお義姉様に嫌われているとか、今はどうでもいい。キャリーヌの友人として、今この場に立っているのだから。
ゆっくり深呼吸をする。そして
「お義姉様、お兄様、お久しぶりでございます。今回急に訪ねてくることになり、申し訳ございませんでした」
まずは2人に挨拶をする。私の挨拶を聞いて、なぜか目を丸くしているのは、お義姉様だ。何か変だったかしら?もしかして、女王陛下と呼ばなかった事が気に入らなかったのかしら?
「長旅で疲れただろう。とにかく王宮の中に入って、ゆっくり話をしよう」
お兄様に促されて、客間へと案内された。部屋に向かう間も、ずっと私の手を握ってくれているのは、カイロ様だ。彼の存在が、これほどまで心強いだなんて。
部屋につくと、それぞれ向かい合わせに座った。
相変わらず無表情のお義姉様。そんな彼女を見ていると、増々不安が襲う。
「カイロ殿とミリアムは、とても仲睦まじいのだね。母上の話だと、あまり仲が良くないと聞いていたので…すまない、母上の情報は、本当に当てにならないな」
あまり仲が良くなかったか…
「お兄様、その話は本当ですわ。つい最近まで、私とカイロ様の仲は、お世辞にも良いものとは言えませんでした。私の意地っ張りで素直ではない性格のせいで、私たちは長年すれ違っていたのです。でも、そんな私たちの仲を取り持ってくれたのが、キャリーヌなのです」
「キャリーヌ嬢?どこかで聞いたことがある様な…」
「キャリーヌはアラステ王国の公爵令嬢で、王太子殿下の元婚約者ですわ。お義姉様、どうかキャリーヌをお助け下さい。お願いします」
お義姉様の元に駆け寄り、必死に頭を下げた。
「キャリーヌ嬢を助けて欲しいとは、一体どういうことですか?私に分かる様に説明してください」
ゆっくり頭を上げると、相変わらず無表情で私を見つめるお義姉様と目が合った。
私はキャリーヌの置かれている状況を、必死に説明した。キャリーヌは自国の愚かな王太子とラミア王女のせいで、何の罪もないのに我がカリアン王国に避難している事。
今キャリーヌの国は、大混乱を起こしている事。それもこれも、ラミア王女がアラステ王国に留まり、愚かな王太子のバックについているためだという事。
キャリーヌは自国で酷い扱いを受け、傷ついているにも関わらず、今我が国で必死に生きている事。そんなキャリーヌによって、私がどれほど救われたか…
そして
「キャリーヌは私の人生を180度変えてくれた、かけがえのない大切な友人です。いいえ、友人だなんて軽い言葉で表せられない程、私にとって大切な存在なのです。私が今、真っ暗で孤独な世界から抜け出し、色鮮やかで温もり溢れる世界で生きられているのは、キャリーヌのお陰。だからこそ、今度は私がキャリーヌを助けたいのです。どうかお義姉様、力を貸してください。お願いします」
2,338
お気に入りに追加
4,142
あなたにおすすめの小説

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?
柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。
お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。
婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。
そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――
ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております

愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!
風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。
結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。
レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。
こんな人のどこが良かったのかしら???
家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)

愛してくれない婚約者なら要りません
ネコ
恋愛
伯爵令嬢リリアナは、幼い頃から周囲の期待に応える「完璧なお嬢様」を演じていた。ところが名目上の婚約者である王太子は、聖女と呼ばれる平民の少女に夢中でリリアナを顧みない。そんな彼に尽くす日々に限界を感じたリリアナは、ある日突然「婚約を破棄しましょう」と言い放つ。甘く見ていた王太子と聖女は彼女の本当の力に気づくのが遅すぎた。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる