私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi

文字の大きさ
上 下
19 / 73

第19話:邪魔者は退散します

しおりを挟む
「それならどうして、カイロ様を切なそうに見つめていたのですか?それにこの美しい木だって、本当はカイロ様に見せたかったのではないのですか?」

「ちょっと、キャリーヌ、少し黙って頂戴。私は別にカイロ様にこの木を見せたかったわけではないし、カイロ様の事なんて、これっぽっちも好きではありませんわ」

 プイっとあちらの方向を向いてしまったミリアム様。相変わらず素直じゃないわね。

「私の元婚約者も、他の女性にうつつを抜かし、私に側妃になれとおっしゃいました。確かにカイロ様はなんと申しますか、いつも令嬢に囲まれていて、その…私の元婚約者と似ていますものね。ミリアム様が嫌うのも無理はありま…」

「ちょっと、あなたの元婚約者とカイロ様を一緒にしないで。カイロ様は優しくて思いやりのある素敵な方よ!間違ってもあなたの元婚約者の様な、最低な人間ではないのよ。いくらキャリーヌでも、これ以上カイロ様の事を悪く言ったら、許さないわ!」

 勢いよく私に詰め寄るミリアム様。つい笑いがこみえげて、笑ってしまった。

「何がおかしいのよ!」

「ごめんなさい。確かにカイロ様は、私の元婚約者とは全く違いますね。だって彼は、いつもミリアム様の方しか見ていないのですもの。私がカイロ様をお誘いした時も“ミリアム殿下に誤解されたくはないから”と、一緒に来ることを拒否しておられましたし。とても誠実な方だと思いますわ。ただ…」

 交互に2人の方を見つめた。

「お2人とも、今まで一度でもご自分の気持ちを伝えたことがありますか?私たち人間は、魔法使いではありません。相手が何を考えているのか、知ることが出来ないのです。だからこそ、言葉と言うものがあるのです。どうか今一度、お2人で話し合ってください」

「でも…」

 俯くミリアム様を、真っすぐと見つめた。

「ミリアム様、あなた様はこの国に来て最初にできた大切なお友達です。初めて貴族学院に来たあの日、私は令嬢たちから無視され、心無い言葉を言われ、心が折れそうになりました。婚約者に裏切られ、逃げる様にして国を出て来た私を、この国の貴族たちは受け入れてくれないのだと思うと、とても悲しかったのです。そんな中、ミリアム様は私を心配そうに見つめていましたよね。あなた様は、誰よりも優しい人です。どうか、愛する人と幸せになってください。私の分まで」

 初めて出来た大切なお友達、ミリアム様。誤解されやすい性格をしているが、根は本当に優しくて素敵な人なのだ。どうか彼女には、幸せになって欲しい。

 何よりも、婚約者でもあるカイロ様は、ミリアム様を愛していらっしゃるのだから。これ以上すれ違い、お互いが傷つき続けるだなんて無意味な事、今日で終わりにして欲しい。

「キャリーヌ嬢、ありがとうございます。言葉にしないと伝わらない、本当にその通りですよね。ミリアム殿下、あなたと初めて出会った日の事を覚えていますか?」

「えっと…王宮のお茶会が初めてでしたよね。あの時あなた様はすごい人気で…」

「いいえ、その前に会っているのです。少し早く着いた私は、会場でもある王宮の中庭を散歩しておりました。その時、あなた様の姿を見かけたのです。傷ついた鳥に優しく語り掛け、手当てをしていましたよね。その時の鳥に向ける優しい微笑を見た瞬間、私はあなた様を好きになりました。あなた様はご存じないかもしれませんが、ミリアム殿下と私の婚約は、私の強い希望で結ばれたのです」

「そんな…それではカイロ様は…」

「はい、ずっとあなた様をお慕いしておりました。もちろん、今もです。ただ、私は口下手で、殿下とどう接していいか分からず…それになぜか私の周りには令嬢が集まっていて。それでもなんとか殿下に近づこうと頑張っていたのですが、上手くいかなくて。それでも私は、殿下を誰よりも愛しています。ずっと伝えたかったのですが、拒否されるのが怖くて。臆病者で、申し訳ございません」

「そんな…あなた様は臆病者なんかではございませんわ。私の方こそ、いつも冷たくあしらって…私も、その…あ…あなた様の事は、嫌いではありません事よ!」

 顔を真っ赤にして、必死にミリアム様が訴えている。

 ミリアム様ったら、相変わらずね。それでもミリアム様なりに、必死に気持ちを伝えたのだろう。そう思ったら、つい笑みがこぼれた。

「ちょっとキャリーヌ、何がおかしいのよ」

「ごめんなさい、何でもありませんわ。カイロ様、ミリアム様の嫌いじゃないは、“大好き”と言う意味です。ミリアム様は少し口下手ですが、一緒に過ごすうちに、少しずつ理解できるようになると思いますわ。それでは邪魔者は退散しますね。どうかお2人で、ゆっくり話してみてください。ミリアム様、私と話すときの様に、カイロ様とも話してくださいね。それでは失礼いたします」

 2人に頭を下げると、そのまま歩き出した。

 本当に世話の焼ける人たちね。

 でも…

 チラリと後ろを振り向くと、はにかみながらも話をしている2人の姿が目に入った。

 きっともう、あの2人は大丈夫だろう。なんだかそんな気がした。


 ※次回、ミリアム視点です。
 よろしくお願いしますm(__)m
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?

柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。  お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。  婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。  そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――  ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!

風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。 結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。 レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。 こんな人のどこが良かったのかしら??? 家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

愛してくれない婚約者なら要りません

ネコ
恋愛
伯爵令嬢リリアナは、幼い頃から周囲の期待に応える「完璧なお嬢様」を演じていた。ところが名目上の婚約者である王太子は、聖女と呼ばれる平民の少女に夢中でリリアナを顧みない。そんな彼に尽くす日々に限界を感じたリリアナは、ある日突然「婚約を破棄しましょう」と言い放つ。甘く見ていた王太子と聖女は彼女の本当の力に気づくのが遅すぎた。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

処理中です...