私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi

文字の大きさ
上 下
6 / 73

第6話:カリアン王国での生活が始まりました

しおりを挟む
「キャリーヌ、君の部屋に案内するよ。さあ、こっちだ」

 お義兄様が私の部屋に案内してくれる様だ。皆でお義兄様に付いていく。すると

「まあ、なんて素敵なお部屋なのでしょう。こんなに素敵なお部屋を、私が使ってもよろしいのですか?」

「当たり前よ、好きに使っていいわ。一応実家のあなたの部屋を思い描いて準備させたのだけれど、気に入らなかったら好きに変えてもいいからね」

「気に入らないだなんて、とんでもありませんわ。ありがとうございます、お義兄様、お姉様」

「どういたしまして。それじゃあ、夕食の時間までゆっくり過ごしてね。今日はあなたがカリアン王国にやって来たお祝いに、ご馳走を準備しているのよ。キャリーヌはすっかり痩せてしまったから、どうかたくさん食べてね」

 一瞬悲しそうな顔をしたお姉様だったが、すぐに笑顔になり、お義兄様と一緒に部屋から出て行った。

「お嬢様、早速湯あみを行いましょう。一応湯あみをしていたとはいえ、ゆっくりする事が出来ませんでしたものね」

「そうね、クラミー。あなたにも過酷な旅をさせてしまって、ごめんなさい。その上、私と一緒にカリアン王国にまで付いて来てくれて、ありがとう。お姉様には話しておくから、あなたもしばらくはゆっくり休んで」

「いいえ、私はお嬢様の専属メイドです。どうかお嬢様の傍で、お世話をさせて下さい。それにしても、こんなにお優しいお嬢様に、あんな仕打ちをなさった殿下を私も許せませんわ」

 相変わらず私の事を一番に考えてくれるクラミー。ただ、彼女にも無理はして欲しくないため、お姉様にはクラミーの休暇の話をしておこう。

 湯あみを終え、久しぶりに立派なドレスに着替えると、食堂へと向かった。お姉様が言っていた通り、わざわざ私の為に、沢山のお料理を準備してくれていた。それもどれも私の大好物ばかり。さらに、見た事のない珍しいお料理もある。さすが大国、カリアン王国ね。

 久しぶりにゆっくり食べる豪華な食事、優しい姉夫婦と、お義兄様のご両親、可愛いグランに囲まれて、楽しい時間を過ごしたのだった。

 翌日、今日はお姉様と元クレスティル公爵夫人が、公爵家の屋敷を案内してくれた。

「キャリーヌはもうこの家の住人なのだから、好きなところに行ってもらって構わないわ。辛い思いをした分、どうかゆっくり過ごして頂戴」

 お姉様がそう言ってほほ笑んでいた。

 ゆっくりか…

 せっかくなので、公爵家の美しい中庭を見ながら、ゆっくりお茶をした。こんな風にゆっくりとお茶を頂けるのは、何年ぶりかしら?思い返してみれば、毎日忙しすぎて、綺麗な花々を見ながらお茶をする事なんてなかった。

 この何にもしない時間が、私にとってはなんだか新鮮だ。さらに私が1人で過ごしていると、お姉様や元夫人が話し相手になってくれた。

 グランも私の事を気に入ってくれた様で、抱っこをせがんできてくれる。初めて抱っこしたグランは、温かくて柔らかくてとっても可愛い。

 お姉様、幸せそうでよかったわ。私もいつか、こんな風に…

 て、無理か。婚約者に捨てられたうえ、側妃になれとまで言われた私が、今後結婚できるとは思えない。それに今はまだ、結婚とか考えたくはない。しばらくは1人でゆっくりと過ごしたい。

 そして夜になると、お義兄様と元公爵も帰って来て、6人で夕食だ。元々お話好きなお姉様だったが、他の家族も負けじとお話好きだ。ずっと笑い声が絶えない楽しい夕食。

 私がまだ小さい頃、我が家もこうやって笑い声が絶えなかったな。なんだかあの頃に戻ったみたいで、心が温かくなる。

 ただその一方で、私のせいで両親や兄夫婦が酷い目になっていないか不安なのだ。最後に会った両親と兄夫婦の悲しそうな顔が、私の脳裏に焼き付いているのだ。

「キャリーヌ、どうしたの?何か辛い事があったの?」

 元気のない私に、心配そうに話しかけてくれたのはお姉様だ。


「いいえ、とても賑やかで、楽しい食事だなって思って。小さい頃は、我が家もこんな感じだったなって思ったら、なんだか懐かしくなってしまって」

「キャリーヌさんは、あのような仕打ちを受けたうえ、急に親元から引き離されて知らない国に来たのですもの。不安になるも無理はないわ。辛いときは遠慮しないで私達にも教えてね。そうだわ、明日は街に出て買い物をしましょう」

「それはいいですわね。キャリーヌ、あなた買い物もろくにできなかったのでしょう?カリアン王国の王都も案内したいし」

「それは本当ですか?嬉しいですわ。ありがとうございます」

「よかった、キャリーヌさんが元気になって。それじゃあ明日は、目いっぱい買い物をしましょう」

 元夫人がそう言ってほほ笑んでくれている。お姉様はこんなにもお優しいお姑さんがいて、幸せね。彼らの為にも、いつまでも泣いていてはダメね。

 彼らに心配をかけないように、前を向いて進まないと!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?

柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。  お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。  婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。  そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――  ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!

風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。 結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。 レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。 こんな人のどこが良かったのかしら??? 家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

愛してくれない婚約者なら要りません

ネコ
恋愛
伯爵令嬢リリアナは、幼い頃から周囲の期待に応える「完璧なお嬢様」を演じていた。ところが名目上の婚約者である王太子は、聖女と呼ばれる平民の少女に夢中でリリアナを顧みない。そんな彼に尽くす日々に限界を感じたリリアナは、ある日突然「婚約を破棄しましょう」と言い放つ。甘く見ていた王太子と聖女は彼女の本当の力に気づくのが遅すぎた。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

処理中です...