私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi

文字の大きさ
上 下
2 / 73

第2話:どうして私がこんな目に…

しおりを挟む
「お待ちください、どうして娘が投獄されないといけないのですか?」

「キャリーヌは僕の指示に従わなかった。今父上は、他国での貿易の為、留守だ。その為、残された王族でもある僕に、全ての権限がゆだねられているのだよ。そんな僕の意見を無視したのだから、国家反逆罪でしょう?ただ、公爵とは今後交渉をしたいので、あなたは投獄しません」

「何をふざけたことを!こんな事をして、陛下がお許しになるとお思いなのですか?とにかく、キャリーヌには指一本触れさせない!」

 お父様が私を庇う様に立っているが…

「公爵が何を訴えようと、僕の発言は絶対なのです。さあ、今すぐキャリーヌを地下牢に」

 ジェイデン殿下の言葉で、騎士たちが一斉に私を捕まえた。

「放せ!キャリーヌに触るな!」

「お父様、私は大丈夫ですわ。ですから、どうか冷静に」

 万が一お父様が暴れて、あの男に危害でも加えたら…それこそ大変だ。とにかくここは、騎士たちの言う事を聞いた方がいいだろう。そう思い、大人しく騎士たちに付いていく。

 後ろでお父様が必死に叫んでいる。お父様の悲痛な叫びが、胸に突き刺さった。大丈夫よ、きっと大丈夫。そもそも、こんな横暴な事が許される訳がない。きっとお父様が陛下に連絡を入れて、すぐに地下牢から出してもらえるわ。

 そう自分に言い聞かせた。

 そして、薄暗い地下牢へと放り込まれたのだ。何なの、この気味の悪い場所は…

 辺りは薄暗く、ろうそくが灯されているだけ。もちろん、窓もない。湿気でじめじめしている。私は薄暗いところがとにかく苦手なのだ。

 恐怖から、体をちじこませた。

 こんな恐ろしいところにいないといけないだなんて…

 でも、大丈夫よ、きっとお父様が、すぐに陛下に連絡を入れて下さるわ。

 でも…

 陛下と王妃殿下は今、遠く離れたアバリア王国にいると聞く。急いで帰国されたとしても、きっと2週間はかかる。という事は、私がここから出られるのは、早くて2週間後か…

 きっとお父様やお母様、お兄様やお義姉様が、私の事を心配するだろう。お母様とお義姉様、泣かないといいな。お父様もお兄様も、冷静さを保ってくれるといいのだけれど。

 何より、皆無事かしら?お義姉様のご実家にまで、ご迷惑をおかけしてしまったら…自分の思い通りにならないからと言って、私を投獄する様な男だ。

 私の家族や、お義姉様家族に危害を加えても不思議ではない。

 それにしても、どうしてこんな事になってしまったのかしら?

 “キャリーヌ、僕は君の事を誰よりも愛している。君を絶対に泣かせたりしないし、幸せにするから、どうかサミュエルじゃなくて僕と婚約して欲しい”

 ふとジェイデン殿下の言葉が脳裏をよぎった。ジェイデン殿下の猛烈なアプローチによって、私たちは婚約を結んだ。ジェイデン殿下はその言葉通り、私を大切にしてくれた。

 私も彼の気持ちに応えるべく、辛い王妃教育にも必死に耐えて来た。令嬢たちとお茶をするという、令嬢らしい楽しみも全て我慢して、将来良き王妃様になれる様、必死に頑張って来たのに…

 こんなにもあっさりジェイデン殿下に捨てられたあげく、側妃になれだなんて…

 我が国でも一昔前まで、側妃制度はあった。側妃は基本的に、伯爵以下の身分があまり高くない令嬢がなっていた。

 ただ、側妃の産んだ子供は、基本的に次の王にはなれない。その上、立場も弱く、正妃から理不尽な嫌がらせを受ける事も少なくない。

 面倒な公務ばかり押し付けられ、王宮でも居場所がなく、国王の子供を産んでもその子たち共々冷遇される。

 あまりにも酷い扱いを受けたことから、貴族たちが側妃になる事を拒み始めた。さらに自分の子供を守るため、正妃の子供が暗殺されるという事件まで起こったらしい。

 無駄な争いを避けるためにも、我が国では今から100年近く前、正式に一夫一妻制になったのだ。

 誰が見ても、側妃なんて不幸でしかない。そんな側妃になれだなんて…

 あの人は私の事なんて、愛していなかったのだろう。ただ、自分の好きな様にしたかっただけ…

 一気に涙が込みあげてきた。

「嘘つき…私を愛していると言ったのに…あなたなんか…大っ嫌いよ…」

 溢れる涙を止める事が出来ずに、ジェイデン殿下に対する不満をぽつりぽつりと口にする。どれくらい泣いただろう。

「ぐぅ~」

 と、お腹が鳴ったのだ。こんな状況でもお腹が空くのね。そういえば私、朝から何も食べていないわ。

「あの、私の食事はまだでしょうか?」

 近くにいた看守に声をかけた。食べ物を催促するだなんてはしたない事だが、さすがにお腹が空いて我慢が出来ないのだ。きっとパンとスープぐらいしかもらえないだろうが、何も口にしないよりかはマシだろう。

「申し訳ございません。殿下から”キャリーヌ様が殿下の側妃になると言うまで、食べ物も何も与えるな“と言いつけられておりまして…」

 看守が申し訳なさそうに教えてくれた。

「そう、分かったわ。いいずらい事を言わせてしまって、ごめんなさいね」

 看守に笑顔を向けると、本当に申し訳なさそうに頭を下げ、元の場所へと戻って行った。

 要するに、死ぬか側妃になるか選べという事ね。

「そこまで腐った人間だっただなんてね…私、あの人にここまで酷い仕打ちをされるほどの何かをしたのかしら?」

 こんな酷い仕打ちを受けなければいけない様なことなんて、した記憶がない。

 でも、側妃という惨めな生活を送るくらいなら、このまま人生の幕を閉じるのも悪くないのかもしれない。

 私にだって、公爵令嬢としてのプライドがあるのだから。

 私は絶対に、あんな男の側妃になんてならない!たとえこの命を落とす結果になろうとも!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?

柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。  お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。  婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。  そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――  ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!

風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。 結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。 レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。 こんな人のどこが良かったのかしら??? 家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

愛してくれない婚約者なら要りません

ネコ
恋愛
伯爵令嬢リリアナは、幼い頃から周囲の期待に応える「完璧なお嬢様」を演じていた。ところが名目上の婚約者である王太子は、聖女と呼ばれる平民の少女に夢中でリリアナを顧みない。そんな彼に尽くす日々に限界を感じたリリアナは、ある日突然「婚約を破棄しましょう」と言い放つ。甘く見ていた王太子と聖女は彼女の本当の力に気づくのが遅すぎた。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

処理中です...