28 / 48
第28話:旦那様の仮面がありません
しおりを挟む
旦那様が屋敷に戻ってきた翌朝、私が目を覚めると既に動物たちが窓の外で待ってくれていた。
「おはよう、わざわざ迎えに来てくれたの?ありがとう。でも、いくらなんでも早すぎない?」
“早くレアンヌを森に連れて行きたくてさ。でも、あの仮面男も来るんだよね…何とか来ない様に説得できない?”
どうやら動物たちは、旦那様が一緒についてくることが不満な様だ。
「旦那様は私の事を心配して付いて来てくださるのだから、さすがに来ないで欲しいなんて言えないわ」
“でもあの仮面男、今回の戦いでとても疲れていると思うんだ。昨日帰って来たばかりだろう?さすがに疲れている人間を、森に連れて行くのは可哀そうだよ”
確かにそうよね。旦那様は昨日やっと帰って来たのだ。今日はゆっくり過ごして欲しい。
「分かったわ。旦那様にはそう伝えるわ。とにかく、朝食を食べないと」
“それじゃあ、僕たちも行くよ。ここの果物は美味しいからね”
動物たちと一緒に、食堂へと向かう。
「おはよう、レアンヌ。なんだ、動物たちも一緒か」
銀色の髪に緑色の瞳をした男性が、嬉しそうにこちらにやって来る。この人は?
「レアンヌ、どうしたんだい?固まって」
この声は!
「もしかして、旦那様ですか?仮面はどうされたのですか?」
どんな時でも仮面を被っていたのに、急にどうしたのだろう。それにしても旦那様って、こんな顔をしていたのね。カトレナ王女が獣人だ!なんていうから、てっきり私は獣人の様な勇ましい顔をしていると思っていたわ。
「仮面なのだが、もう私には必要ないと思って外したんだ。それに、いつまでも妻である君に、素顔を見せないのもどうかと思ってね」
そう言ってにっこり微笑んだ旦那様。
「確かに素顔の方が、旦那様の表情もよくわかりますわ。でも、仮面姿になれてしまっておりますので、なんだか別人の様な気がして…」
正直いつもの仮面姿の方が落ち着くのだけれど…そんな事はもちろん言えない。
「それじゃあ、私の顔に早く慣れてもらう様に、これからは極力一緒に過ごそう。さあ、朝食を食べようか」
そう言うと、いつもの様に向かいに座った旦那様。やっぱり仮面を被っていないせいか、落ち着かない。
“レアンヌ、あの仮面男、仮面を外すとあんな顔をしているのだね。結構カッコいいじゃないか”
“確かに美形ね。それよりもレアンヌ、森の件、早く話してよ”
そうだったわ、旦那様に森の件を話さないと。
「旦那様、改めてお疲れ様でした。旦那様もお疲れでしょう。どうか今日は、屋敷でゆっくり休んでください。森には私と動物たちで行って参りますので」
そう笑顔で伝えたのだが…今まで穏やかな表情だった旦那様の顔が、見る見る険しくなっていった。そして
「レアンヌ、森の動物たちにそう言えとでも言われたのかい?昨日ゆっくり休んだから、私は元気だよ。それから、君1人なら森にはいかせないよ。分かったかい?」
ギロリと睨まれ、はっきりと告げられた。今までは仮面で表情が見えなかったが、今ははっきりと見える。はっきり言って怖いわ。
「ごめんなさい、旦那様と一緒で大丈夫です」
「それなら良かった。それじゃあ、食後早速森に行って、さっさと帰ってこよう」
旦那様が再び穏やかな表情に戻った。旦那様って、意外と表情が豊かなのね。今までは仮面で表情が見えなかったから、気が付かなかったわ。でも…ある意味表情が分からなかった仮面姿の方が良かったかも…
食事が終わると、着替えのため一旦自室に戻ってきた。
「ねえ、リサ。旦那様、急に仮面を外して一体どうしたのかしら?仮面姿ばかり見ていたせいか、なんだか落ち着かなくて」
「旦那様もいつまでも仮面を被っていては良くないと思ったのでしょう。それに、レアンヌ様に素顔を見て欲しいとも…最初は慣れないかもしれませんが、きっとそのうち慣れますわ」
そう言ってリサが笑っていた。そのうち慣れるか…そう言われても、なんだか変な感じがするのよね。
「今日は森にお出掛けになるのでしょう?早く着替えないと、動物たちに怒られますわ」
そうだったわ。今から森に行くのだった。
急いで着替えを済ませ、旦那様の待つ玄関へと向かった。
「今日は私も一緒に馬車で行くよ。さあレアンヌ、行こうか」
やっぱり仮面を被っていない旦那様が待っていた。馬車に乗り込み、森を目指す。素顔の旦那様の姿に慣れず、つい見つめてしまった。
「レアンヌ、私の顔に何か付いているかい?そんなにじっと見つめられると、なんだか照れ臭いな」
「申し訳ございません。旦那様の素顔に、まだ慣れなくて…」
「もう私は仮面を被るつもりはないから、きっとそのうち慣れるよ。それよりもレアンヌ、いいかい?森は危険がいっぱいだ。絶対に私から離れてはいけないよ。動物たちに何を言われてもだ。いいね、分かったね」
旦那様ってこんな真剣な顔をなさるのね。やっぱり慣れないわ…
「レアンヌ、聞いているのかい?」
「ごめんなさい、分かりましたわ」
やっぱり慣れない旦那様の顔を見つめながら、とりあえず頷いたのだった。
「おはよう、わざわざ迎えに来てくれたの?ありがとう。でも、いくらなんでも早すぎない?」
“早くレアンヌを森に連れて行きたくてさ。でも、あの仮面男も来るんだよね…何とか来ない様に説得できない?”
どうやら動物たちは、旦那様が一緒についてくることが不満な様だ。
「旦那様は私の事を心配して付いて来てくださるのだから、さすがに来ないで欲しいなんて言えないわ」
“でもあの仮面男、今回の戦いでとても疲れていると思うんだ。昨日帰って来たばかりだろう?さすがに疲れている人間を、森に連れて行くのは可哀そうだよ”
確かにそうよね。旦那様は昨日やっと帰って来たのだ。今日はゆっくり過ごして欲しい。
「分かったわ。旦那様にはそう伝えるわ。とにかく、朝食を食べないと」
“それじゃあ、僕たちも行くよ。ここの果物は美味しいからね”
動物たちと一緒に、食堂へと向かう。
「おはよう、レアンヌ。なんだ、動物たちも一緒か」
銀色の髪に緑色の瞳をした男性が、嬉しそうにこちらにやって来る。この人は?
「レアンヌ、どうしたんだい?固まって」
この声は!
「もしかして、旦那様ですか?仮面はどうされたのですか?」
どんな時でも仮面を被っていたのに、急にどうしたのだろう。それにしても旦那様って、こんな顔をしていたのね。カトレナ王女が獣人だ!なんていうから、てっきり私は獣人の様な勇ましい顔をしていると思っていたわ。
「仮面なのだが、もう私には必要ないと思って外したんだ。それに、いつまでも妻である君に、素顔を見せないのもどうかと思ってね」
そう言ってにっこり微笑んだ旦那様。
「確かに素顔の方が、旦那様の表情もよくわかりますわ。でも、仮面姿になれてしまっておりますので、なんだか別人の様な気がして…」
正直いつもの仮面姿の方が落ち着くのだけれど…そんな事はもちろん言えない。
「それじゃあ、私の顔に早く慣れてもらう様に、これからは極力一緒に過ごそう。さあ、朝食を食べようか」
そう言うと、いつもの様に向かいに座った旦那様。やっぱり仮面を被っていないせいか、落ち着かない。
“レアンヌ、あの仮面男、仮面を外すとあんな顔をしているのだね。結構カッコいいじゃないか”
“確かに美形ね。それよりもレアンヌ、森の件、早く話してよ”
そうだったわ、旦那様に森の件を話さないと。
「旦那様、改めてお疲れ様でした。旦那様もお疲れでしょう。どうか今日は、屋敷でゆっくり休んでください。森には私と動物たちで行って参りますので」
そう笑顔で伝えたのだが…今まで穏やかな表情だった旦那様の顔が、見る見る険しくなっていった。そして
「レアンヌ、森の動物たちにそう言えとでも言われたのかい?昨日ゆっくり休んだから、私は元気だよ。それから、君1人なら森にはいかせないよ。分かったかい?」
ギロリと睨まれ、はっきりと告げられた。今までは仮面で表情が見えなかったが、今ははっきりと見える。はっきり言って怖いわ。
「ごめんなさい、旦那様と一緒で大丈夫です」
「それなら良かった。それじゃあ、食後早速森に行って、さっさと帰ってこよう」
旦那様が再び穏やかな表情に戻った。旦那様って、意外と表情が豊かなのね。今までは仮面で表情が見えなかったから、気が付かなかったわ。でも…ある意味表情が分からなかった仮面姿の方が良かったかも…
食事が終わると、着替えのため一旦自室に戻ってきた。
「ねえ、リサ。旦那様、急に仮面を外して一体どうしたのかしら?仮面姿ばかり見ていたせいか、なんだか落ち着かなくて」
「旦那様もいつまでも仮面を被っていては良くないと思ったのでしょう。それに、レアンヌ様に素顔を見て欲しいとも…最初は慣れないかもしれませんが、きっとそのうち慣れますわ」
そう言ってリサが笑っていた。そのうち慣れるか…そう言われても、なんだか変な感じがするのよね。
「今日は森にお出掛けになるのでしょう?早く着替えないと、動物たちに怒られますわ」
そうだったわ。今から森に行くのだった。
急いで着替えを済ませ、旦那様の待つ玄関へと向かった。
「今日は私も一緒に馬車で行くよ。さあレアンヌ、行こうか」
やっぱり仮面を被っていない旦那様が待っていた。馬車に乗り込み、森を目指す。素顔の旦那様の姿に慣れず、つい見つめてしまった。
「レアンヌ、私の顔に何か付いているかい?そんなにじっと見つめられると、なんだか照れ臭いな」
「申し訳ございません。旦那様の素顔に、まだ慣れなくて…」
「もう私は仮面を被るつもりはないから、きっとそのうち慣れるよ。それよりもレアンヌ、いいかい?森は危険がいっぱいだ。絶対に私から離れてはいけないよ。動物たちに何を言われてもだ。いいね、分かったね」
旦那様ってこんな真剣な顔をなさるのね。やっぱり慣れないわ…
「レアンヌ、聞いているのかい?」
「ごめんなさい、分かりましたわ」
やっぱり慣れない旦那様の顔を見つめながら、とりあえず頷いたのだった。
24
お気に入りに追加
1,628
あなたにおすすめの小説
殿下、側妃とお幸せに! 正妃をやめたら溺愛されました
まるねこ
恋愛
旧題:お飾り妃になってしまいました
第15回アルファポリス恋愛大賞で奨励賞を頂きました⭐︎読者の皆様お読み頂きありがとうございます!
結婚式1月前に突然告白される。相手は男爵令嬢ですか、婚約破棄ですね。分かりました。えっ?違うの?嫌です。お飾り妃なんてなりたくありません。
転生おばさんは有能な侍女
吉田ルネ
恋愛
五十四才の人生あきらめモードのおばさんが転生した先は、可憐なお嬢さまの侍女でした
え? 婚約者が浮気? え? 国家転覆の陰謀?
転生おばさんは忙しい
そして、新しい恋の予感……
てへ
豊富な(?)人生経験をもとに、お嬢さまをおたすけするぞ!
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
契約結婚の相手が優しすぎて困ります
みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
王城の廊下で浮気を発見した結果、侍女の私に溺愛が待ってました
メカ喜楽直人
恋愛
上級侍女のシンシア・ハート伯爵令嬢は、婿入り予定の婚約者が就職浪人を続けている為に婚姻を先延ばしにしていた。
「彼にもプライドというものがあるから」物わかりのいい顔をして三年。すっかり職場では次代のお局様扱いを受けるようになってしまった。
この春、ついに婚約者が王城内で仕事を得ることができたので、これで結婚が本格的に進むと思ったが、本人が話し合いの席に来ない。
仕方がなしに婚約者のいる区画へと足を運んだシンシアは、途中の廊下の隅で婚約者が愛らしい令嬢とくちづけを交わしている所に出くわしてしまったのだった。
そんな窮地から救ってくれたのは、王弟で王国最強と謳われる白竜騎士団の騎士団長だった。
「私の名を、貴女への求婚者名簿の一番上へ記す栄誉を与えて欲しい」
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢
美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」
かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。
誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。
そこで彼女はある1人の人物と出会う。
彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。
ーー蜂蜜みたい。
これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる