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第1話:自由に生きる事を決めました

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卒業まで3ヶ月に迫ったある日、私はいつもの様に1人中庭で食事をする。

相変わらず私に聞こえる様に悪口を言う令嬢たち。もう悪口にも慣れたわ…ここにいても悪口を言われるだけだし、図書館にでも行きましょう。そう思い、1人図書館へと向かう。

ふと中庭を歩いていると、私の婚約者でもある、王太子のエイダン様が何人かの貴族に囲まれていた。

「後3ヶ月もすれば、僕はあの女と結婚しないといけないなんて、本当に地獄以外何者でもない」

また私の悪口を言っている。

「お可哀そうなエイダン様。それにしても図々しい女ね。ここまでエイダン様が嫌がっているのに、頑なに婚約破棄を受け入れないなんて」

「そうだろう?僕が何度も婚約を破棄して欲しいと言っても、“エイダン様と結婚できないなら死んでやる”って、ヒステリックを起こすから困っているんだ。本当に、どうにかして欲しいよ」

「ヤダ、死んでやる!だなんて、本当に品の無い令嬢ね」

そう言って皆で私を笑いものにしていた。

その瞬間、私の中で何かが切れた。
私だってあんな男大嫌いよ!あんな男と一生を共にしないといけないなんて。
私はいつまで我慢をすればいいの!

溢れる涙を堪えられず、1人静かに泣いた。泣いて泣いて泣き続けたら、少しすっきりした。落ち着いたところで、図書館に向かう。いつもの様に、恋愛小説を読もうとした時だった。
ふとある本に目が留まる。

「今悩んでいるあなたへ」

と言う題名の本だった。どうしても気になって、その本を手に取る。
“自分を偽るのは止めましょう。あなたはあなた、自分が思うがまま生きれば、おのずと道は切り開かれる“

そう書かれていたのだ。自分を偽るのを止めるか…

今の私は、皆に嫌われている。きっとこれからもずっと、嫌われ続けるのだろう。もちろん、エイダン様からも…

それならいっそ、好きな事をして生きるのも悪くない。王妃様の話では、結婚後私は離宮に住むことになっているらしい。その話を聞いた時はショックだったけれど、でも離宮で暮らせるなら、あの男の相手をしなくてもいいのだろう。

そうか、私はあの男と結婚すれば、両親とも離れられる。もう両親に干渉されることも、嫌味を言われることもなくなるんだわ。離宮に引きこもれば、王妃様にも会わなくて済む。

エイダン様の相手は側室に任せておいて、今までできなかった事をしよう。どうせ私は、あの男と結婚しないといけないんだ。ずっと悲しんでいるなんてバカらしい。よし、そうと決まれば、なんだか気持ちが軽くなった。

後3ヶ月大人しく過ごしていれば、私はある意味で自由になれる。そうね、離宮では何をしようかしら?特に取柄もないもの。まあいいか、離宮に移動してから考えよう。


それからと言うもの、両親やエイダン様、王妃様から暴言を吐かれても、それほど気にならなくなった。ただ、この人たちを怒らせると面倒だ。いつもの様に、無難にやり過ごす。

そして迎えた卒業式の日、何を思ったのかエイダン様からドレスと宝石が贈られてきた。エイダン様の瞳の色でもある紫色に金の刺繍がしてあるドレス、さらにアメジストのネックレスとイヤリング、ティアラまである。

どうやら結婚直前まで、私に嫌がらせをしてくるつもりの様だ。こんなものを身につけて行ったら、令嬢たちからバカにされることは目に見えている。きっとその姿を見て、笑うつもりなんだろう。本当に性格の悪い男だ!

増々あの男が憎くてたまらなくなってきた。本当は暴言の一つでも吐いてやりたいが、もちろんそんな事をするつもりはない。とにかく、関わらない様にすることが先決だ。

案の定、卒業式の時には、令嬢たちにバカにされた。でもなぜかこの日に限って

「サーラ、今日は学院最後の日かつ、君の独身最後の日でもある。せっかくだから踊ろう」

そう誘われた。でも、正直こんな男と踊るつもりはない。体調が悪いと伝え、すっとあの男から離れた。その瞬間、令嬢たちの暴言が飛ぶ。はいはい、もうなんとでも言ってください。それで気が済むなら、私は構いませんから。

無事卒業式を終え、家に帰ると両親が待っていた。

「サーラ、明日はお前とエイダン殿下の結婚式だ。やっとここまで来た。さすがにもう、婚約破棄はないだろう。お前みたいなトロい女でも、家の役に立つこともあるんだな。いいか、殿下に取り入り、世継ぎを産め。そうすれば、我が家もさらに安泰だ」

そう言って嬉しそうにワインを飲んでいるお父様。何が殿下に取り入って世継ぎを産め!よ。悪いけれど私は、あの男に指一本触れさせるつもりはない。それに輿入れしてしまえば、もうお父様に指図される事もなくなるだろう。

そんな思いから、私はベッドに入った。明日から私は、生まれ変わるのよ。もうあいつらの言いなりなんかにはならないわ。離宮で新たな人生を歩むのだから!
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