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第18話:全てが豪華で落ち着きません
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「何なの?この馬車。貴族が乗っていた馬車と言うのは、こんなに立派なの?椅子もフワフワしているし、それに個室になっているのね」
私が今まで乗っていた馬車は、長椅子に大勢の人が座るタイプで、市民が利用する馬車だ。それでもよほどのことがない限り、馬車何て乗らない。それなのにただ家に帰るだけで、こんな豪華な馬車を利用するだなんて。
「そんなにキョロキョロしなくてもいいだろう?これからはどこか行くときは、この馬車で移動したらいいよ。ミレイの為の専用の馬車と御者を既に準備しているんだよ」
「私専用の馬車ですって…お願い、アレック。これ以上現実離れしたことを言わないで頂戴。私は歩くから、馬車なんて必要ないわ」
数年前までその日食べるものすら困る生活をしていたのに、まさかこんな立派な馬車に乗らせていただけるだなんて。でも、やっぱり落ち着かない。
しばらく走ると、目の前には立派なお屋敷が見えて来た。まさかこのお屋敷が、アレックのお家なんじゃないでしょうね。そう思っていたのだが、お屋敷に馬車が入って行く。
嘘でしょう…
「ミレイ、着いたよ。降りようか?」
すっと手をのばすアレック。でも、あまりにも立派なお屋敷を前に、固まってしまった。
「ほら、ミレイ。口を開けて驚いていないで、行くよ」
私の手を掴み、馬車から降ろすアレック。すると…
「おかえりなさいませ、アレック様、お連れ様」
数名の男女が出迎えてくれた。見た感じ、使用人の様だが…
「ただいま。彼女は俺の大切な人、ミレイだ。今日からここで一緒に生活をする事になった」
「ミレイ様が見つかったのですね。それはようございました。ミレイ様、今日からよろしくお願いいたします」
1人の男性が、嬉しそうに話しかけて来たのだ。
「あの…ミレイと申します。どうかよろしくお願いいたします」
男性にぺこりと頭を下げた。
「ミレイ、君の部屋はこっちだ」
アレックに連れられ、豪華なお屋敷の中へと入って行く。
「すごいお屋敷ね。こんな立派なお屋敷で、私は暮らすの?」
「当たり前だろう。君は俺の大切な人なのだから。今日から君も、この家の主人だ。どこか気に入らないところや、変えて欲しいところがあれば何でも言って欲しい。この家は、ミレイの家でもあるんだ。自分が思う様に、変えてもらったらいいから」
思う様に変えろと言われても…
そもそもこんな立派なお屋敷、落ち着かないわ。
「ここがミレイの部屋だよ。クローゼットにはミレイの為のドレスやワンピースも準備した。こっちには、アクセサリーもあるよ。ミレイは今まで、あまりおしゃれをしてこなかったよね。これからは目いっぱい、おしゃれを楽しんで欲しいと思ってね。ただ、俺がデザイナーに頼んで適当に準備させたものばかりだから、今後はミレイが好きな洋服やアクセサリーを買えばいいからね」
アレックが案内してくれたお部屋は、村で生活していた家の3倍はあるのではないかというくらい、広い部屋だった。クローゼットには溢れそうなくらいの服が。さらにアクセサリーも沢山ある。はっきり言って、こんなに沢山私には必要ないのだが…
それでもアレックが私の為に準備してくれたのだから、有難く受け取っておいた方がいいのだろう。
「ありがとう、アレック。なんだか本当にお姫様になった様ね」
「ミレイは俺にとって、大切なお姫様だよ。俺はミレイの笑顔を守りたくて、必死に王族や貴族と戦って来たんだ。だからどうかこれからは、ミレイがやりたい事を目一杯やって欲しい。ただ、1つだけ約束して欲しい。俺の傍を離れないで欲しい。この5年、ミレイがいなくて本当に寂しかった。それでもミレイとの未来の為に、必死に戦って来たんだ。やっとミレイと暮らせると思ったら、ミレイは行方不明になるし…ミレイがいなくなってから、俺は生きた心地がしなかったよ」
アレックが私をギュッと抱きしめてくれる。
「ごめんなさい。まさかクリミア様が嘘を言っているだなんて思わなくて…」
「俺の方こそすまない。あの時彼女に頼んだ俺が悪いんだよ!とにかく、これからはこの屋敷でゆっくりと過ごして欲しい。ミレイ、俺はミレイを誰よりも愛している。これからはずっと一緒だ。もう二度と、離れないから」
「アレック…私もアレックが大好きよ。これからはずっと一緒にいられるのね、嬉しいわ」
この5年、アレックを忘れた事なんてなかった。そんな中、クリミア様が現れたのだ。アレックが幸せなら、身を引こうとも思った事もあったが、アレックは私の事を思い続けてくれていたのだ。
正直こんな豪華なお屋敷で生活するのは落ち着かないが、それでもアレックと一緒にいられるのは嬉しい。アレックはこの国の英雄、彼の傍にいるためには、私もそれなりに覚悟しないといけない事は分かっている。
私もアレックの隣に立っても恥ずかしくない様な女性にならないと!
「ありがとう、ミレイ。すぐに結婚の準備を進めよう。ただ、俺は一応総裁だ。ひっそりと結婚する訳にもいかないから、結婚式は大々的に行う事になるだろうから、早くて半年後になるだろう。それでも、俺は一秒でも早くミレイと結婚したいから、急いで準備を進めるよ」
大々的に結婚式を行うのか…
私は村でひっそりと結婚したかったな…て、そんな我が儘は言えない。アレックは今やこの国の英雄で、この国の指導者なのだから…
それにしても、豪華な部屋ね。私、この部屋になれることが出来るかしら?
※次回、アレック視点です。
よろしくお願いいたします。
私が今まで乗っていた馬車は、長椅子に大勢の人が座るタイプで、市民が利用する馬車だ。それでもよほどのことがない限り、馬車何て乗らない。それなのにただ家に帰るだけで、こんな豪華な馬車を利用するだなんて。
「そんなにキョロキョロしなくてもいいだろう?これからはどこか行くときは、この馬車で移動したらいいよ。ミレイの為の専用の馬車と御者を既に準備しているんだよ」
「私専用の馬車ですって…お願い、アレック。これ以上現実離れしたことを言わないで頂戴。私は歩くから、馬車なんて必要ないわ」
数年前までその日食べるものすら困る生活をしていたのに、まさかこんな立派な馬車に乗らせていただけるだなんて。でも、やっぱり落ち着かない。
しばらく走ると、目の前には立派なお屋敷が見えて来た。まさかこのお屋敷が、アレックのお家なんじゃないでしょうね。そう思っていたのだが、お屋敷に馬車が入って行く。
嘘でしょう…
「ミレイ、着いたよ。降りようか?」
すっと手をのばすアレック。でも、あまりにも立派なお屋敷を前に、固まってしまった。
「ほら、ミレイ。口を開けて驚いていないで、行くよ」
私の手を掴み、馬車から降ろすアレック。すると…
「おかえりなさいませ、アレック様、お連れ様」
数名の男女が出迎えてくれた。見た感じ、使用人の様だが…
「ただいま。彼女は俺の大切な人、ミレイだ。今日からここで一緒に生活をする事になった」
「ミレイ様が見つかったのですね。それはようございました。ミレイ様、今日からよろしくお願いいたします」
1人の男性が、嬉しそうに話しかけて来たのだ。
「あの…ミレイと申します。どうかよろしくお願いいたします」
男性にぺこりと頭を下げた。
「ミレイ、君の部屋はこっちだ」
アレックに連れられ、豪華なお屋敷の中へと入って行く。
「すごいお屋敷ね。こんな立派なお屋敷で、私は暮らすの?」
「当たり前だろう。君は俺の大切な人なのだから。今日から君も、この家の主人だ。どこか気に入らないところや、変えて欲しいところがあれば何でも言って欲しい。この家は、ミレイの家でもあるんだ。自分が思う様に、変えてもらったらいいから」
思う様に変えろと言われても…
そもそもこんな立派なお屋敷、落ち着かないわ。
「ここがミレイの部屋だよ。クローゼットにはミレイの為のドレスやワンピースも準備した。こっちには、アクセサリーもあるよ。ミレイは今まで、あまりおしゃれをしてこなかったよね。これからは目いっぱい、おしゃれを楽しんで欲しいと思ってね。ただ、俺がデザイナーに頼んで適当に準備させたものばかりだから、今後はミレイが好きな洋服やアクセサリーを買えばいいからね」
アレックが案内してくれたお部屋は、村で生活していた家の3倍はあるのではないかというくらい、広い部屋だった。クローゼットには溢れそうなくらいの服が。さらにアクセサリーも沢山ある。はっきり言って、こんなに沢山私には必要ないのだが…
それでもアレックが私の為に準備してくれたのだから、有難く受け取っておいた方がいいのだろう。
「ありがとう、アレック。なんだか本当にお姫様になった様ね」
「ミレイは俺にとって、大切なお姫様だよ。俺はミレイの笑顔を守りたくて、必死に王族や貴族と戦って来たんだ。だからどうかこれからは、ミレイがやりたい事を目一杯やって欲しい。ただ、1つだけ約束して欲しい。俺の傍を離れないで欲しい。この5年、ミレイがいなくて本当に寂しかった。それでもミレイとの未来の為に、必死に戦って来たんだ。やっとミレイと暮らせると思ったら、ミレイは行方不明になるし…ミレイがいなくなってから、俺は生きた心地がしなかったよ」
アレックが私をギュッと抱きしめてくれる。
「ごめんなさい。まさかクリミア様が嘘を言っているだなんて思わなくて…」
「俺の方こそすまない。あの時彼女に頼んだ俺が悪いんだよ!とにかく、これからはこの屋敷でゆっくりと過ごして欲しい。ミレイ、俺はミレイを誰よりも愛している。これからはずっと一緒だ。もう二度と、離れないから」
「アレック…私もアレックが大好きよ。これからはずっと一緒にいられるのね、嬉しいわ」
この5年、アレックを忘れた事なんてなかった。そんな中、クリミア様が現れたのだ。アレックが幸せなら、身を引こうとも思った事もあったが、アレックは私の事を思い続けてくれていたのだ。
正直こんな豪華なお屋敷で生活するのは落ち着かないが、それでもアレックと一緒にいられるのは嬉しい。アレックはこの国の英雄、彼の傍にいるためには、私もそれなりに覚悟しないといけない事は分かっている。
私もアレックの隣に立っても恥ずかしくない様な女性にならないと!
「ありがとう、ミレイ。すぐに結婚の準備を進めよう。ただ、俺は一応総裁だ。ひっそりと結婚する訳にもいかないから、結婚式は大々的に行う事になるだろうから、早くて半年後になるだろう。それでも、俺は一秒でも早くミレイと結婚したいから、急いで準備を進めるよ」
大々的に結婚式を行うのか…
私は村でひっそりと結婚したかったな…て、そんな我が儘は言えない。アレックは今やこの国の英雄で、この国の指導者なのだから…
それにしても、豪華な部屋ね。私、この部屋になれることが出来るかしら?
※次回、アレック視点です。
よろしくお願いいたします。
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