あなたの事は好きですが私が邪魔者なので諦めようと思ったのですが…様子がおかしいです

Karamimi

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第27話:アルト様ときちんと話をしました

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 う~ん、なんだか揺れが気持ちいい。

 ここは?

 目を覚ますと、アルト様と目が合った。

「カナリア、目が覚めたかい?今君を部屋に運んでいるところだよ。まずは湯あみをしないとね」

 湯あみ?

 どうやらアルト様に抱きかかえられ、王宮内を歩いている様だ。私はあの後、馬車の中で眠ってしまったのだわ。

「あの…アルト様、本当にごめんなさい。私…」

「話は後でゆっくりしよう。さあ、部屋についたよ。立てるかい?」

 ゆっくりアルト様が降ろしてくれた。

「はい、大丈夫ですわ。あの…」

「すぐにカナリアを綺麗にしてあげてくれ」

「かしこまりました、カナリア様、どうぞこちらへ」

 私をメイドたちに託すと、すぐに部屋から出て行ってしまった。やはり勝手な行動をとった私に、アルト様は怒っているのかしら?

 私はずっと、アルト様とシャーラ様がヒーローとヒロインだと思っていたけれど、どうやら違ったみたいだ。まさかあんな修羅場を見せられるだなんて…

 一体何が起こっているのだろう。さっぱりわからない。ただ1つ言える事は、アルト様はシャーラ様を愛していなかったという事だ。

 それなのに私は、アルト様がシャーラ様を心から愛していると思い込んで、アルト様に酷い事を…

 一気に血の気が引いていくのを感じる。私は、なんて事をしてしまったのかしら?どうしよう…

 パニックに陥っている私を他所に、体中を磨き上げ、ドレスに着替えさせてくれたメイドたち。

 着替えが終わると、すぐにアルト様が部屋に入ってきて、再びアルト様に抱きしめられた。

「アルト様、あの…」

「カナリア、ゆっくり話そうか」

 よく見ると、アルト様、なんだかとてもやつれているわ。目の下にもクマが出来ているし。どうして今まで気が付かなかったのかしら?

「アルト様、あの、かなりお疲れの様ですわ。少し休まれた方がよろしいです。お話しなら、後にしましょう」

 まずはアルト様を休ませることが専決だ。そう思ったのだが…

「いいや、僕は大丈夫だ。さあ、こっちにおいで」

 アルト様に腕を掴まれ、そのまま彼の隣に座った。すぐにメイドたちが、なぜかサラミと炭酸ジュースを準備してくれたのだ。一体どういうことなの?

「カナリアは、サラミとこのジュースが大好きなのだよね?僕はカナリアの事なら、何でも知っているよ。カナリア、どうして僕を捨てて国を出ようとしたのだい?そんなにシャーラ嬢が、気になるのかい?彼女は君にとって、どんな存在なのだい?でも、残念だったね。シャーラ嬢はシモンが好きな様だよ」

 ニヤリと笑ったアルト様。なんだか様子がおかしいわ。

「ねえ、カナリア…僕から逃げたりしないよね?僕がどれほど君を愛しているか…君がどこに逃げようと、僕は地の果てまで君を追いかけるよ。絶対にカナリアを逃がしたりしない。だから、どうかもう僕から逃げようとするのは、諦めて…」

 そう言うと、それはそれは美しいお顔でアルト様が笑ったのだ。その瞬間、背筋が凍りつく。私は前世で、沢山の小説を読んできた。その中には病んでしまった男たちのお話しも、沢山あった。

 悲しいかな、きっとアルト様も病んでしまったのだわ…そう直感で分かった。どうしよう、このままだと私、監禁される?それとも…

 ふと頭によぎったのが、無理心中…

 いいや、いくら何でも、アルト様はそこまではしないはずだ。多分…

「あの…アルト様、申し訳ございませんでした。確かに私は、アルト様と婚約を解消し、国を出ようとしました。でも、それには訳があるのです」

「訳?どんな訳があるのかな?」

「はい、実はあの高熱を出したあの日、私は何度も同じ夢を見ました。アルト様が他の令嬢と一緒になり、私を捨てる夢を。何度も何度も同じ夢を見るうちに、きっとこれは正夢だと思ったのです」

「それで君は、熱の後僕の事を避けていたのかい?」

「はい、そうです…申し訳ございません」

「でもその後、カナリアはいつも通り過ごしていたではないか。それなのに、どうして急に…もしかして、シャーラ嬢と僕の仲を疑った?いや、シャーラ嬢とカナリアでは、天と地、女神様とゴミくずぐらい差がある。いくらなんでも、僕がシャーラ嬢を好きになるだなんて、天と地がひっくり返っても起らないような事を、信じたりはしないか…」

 アルト様、シャーラ様を一体何だと思っているのですか?シャーラ様はとてもお美しいのですよ。それをゴミくずとは…

 そう言いたいが、もちろん言える訳がない。

「ええ…実はシャーラ様が、夢に出て来た女性によく似ておりましたので…ですが、決してシャーラ様が悪いという訳ではありませんわ。私の完全なる勘違いだったのです。本当に申し訳ございません。まさかシャーラ様とシモン様が、恋仲だっただなんて…」

 その上、シモン様の事がお好きなルミン様が、あのような事をするだなんて…

 まるで小説の世界の様だったわ…
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